すぐに退院した翌日、痛みを堪え教室に入ると、
皆が一斉にこっちを見てきた。
「…?…え、な、なんですか?」
皆は黙ったままだ。
とりあえず自分の机に行くが、そこに皆が固まっていたらしく
避ける人も居れば僕を止めようとする人も居た。
机を見ると、ひどい落書きがあった。
『死ね』
『SOS団キモい』
『廃部しろ』
といった罵倒の文字。
頭の中が冷たくなって、吐き気がしてくる。
僕は、鞄を放り投げるように置いて5組に走っていった。
5組につくと、僕は一旦深呼吸し、落ち着いてから入って目的の名前を呼んだ。
「…!古泉、どうした?」
「あ、あの、ちょっと席を見せて貰えますか?」
「…?ああ、これだけど」
彼についていくと、そこには何事もない机があった。
思わず安堵の溜息をつく。
「お前…どうしたんだ?また何かあったのか?」
「い、いえ…」
涼宮さんの所に危害が及んでないなら問題はない。
涼宮さん達がやられていないなら朝比奈さんや長門さんはもっと安全だろうし。
僕はとりあえず教室に戻り、自分の席を何とかしようと思った。
が、彼に引き留められた。
「お前…、昨日は痣だらけだったのに、どうしたんだ?
まさか一日で治ったなんて事は…」
そう、昨日鏡を見ると結構酷い事になっていた。
しかし、それを涼宮さんに見られたら絶対誤魔化しても追求されるだろうから…
「あの…森さんにメイクで隠してもらって…」
彼も納得した表情を見せた。
教室に戻ると、クラスの皆が心配してくれたが、
一人で文字を消した。
しかし、油性のペンだけならまだしも
カッターで書かれた文字もあり、完全に消す事は不可能だった。
……負の感情が湧き上がる。
あの不良の二人がやったのならまだ話は分かる。
だが、彼らはこの事を知らないようだった。
彼らは、涼宮さんにやられた事に対しての憂さ晴らし。
まさか、こっちも…。
……その可能性は大いにある。
何しろ、書かれていたのは主にSOS団に対する侮辱だ。
こんな事涼宮さんに知られたら…。
しかし、今日も部活に行かなければならない。
…出来る限り平然とした顔で。
結局今日は、先生やクラスメートの質問攻めに対しても
何とか誤魔化しきり、傷だらけの机で乗り切った。
僕が部室へ足を運ぶと、いつものように長門さんが先に来ていた。
「こんにちは」
挨拶をする。返事は期待しない。
しかし、いつもは無言で頷くだけの長門さんが、ゆっくりと顔を上げ、こっちを見た。
「………古泉一樹」
涼やかな声が部室に響いた。
あの話しかけても反応してくれない程無口な長門さんが。
「は、はい?」
思わずどもってしまった。
長門さんの口が、ゆっくりと動く。
「…私は、情報操作は得意だから」
「……………」
「………」
これは……気遣って貰えているんだろうか。
しかし、こんな些細な事で迷惑をかけるのは嫌だった。
相手はただの人間。閉鎖空間や位相空間の出来事とは違うのだから。
「…この位、自分で何とかしますよ。
ありがとうございます」
永劫かと思われる時間、じーっと見つめられたが、
やがて彼女が一言、「そう」というと、もう手元の本に目を向けていた。
最終更新:2007年06月19日 16:46