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 帰路の途中で夕立に遭ってしまった僕たちは、手近なコンビニに避難した。
外はバケツをひっくり返したような雨が降っており、道路の向こう側が白く霞んでしまっていてよく見通せないほどだ。
「さむっ」
横に立つ彼女の肩が小さく震えた。冷房の効き過ぎた店内は濡れた体にはきつ過ぎる。
出ましょうか、と言いかけて彼女の姿を見た途端、己の顔の表面温度が一気に上がるのが分かった。
なんて格好だろう、濡れそぼったセーラー服は体にぴたりと貼り付き、白い布地の部分は肌の色が透けてしまっている。
肩や腕、腰のラインが露わになっており、何よりも下着がセーラーの襟の下から薄っすらと。
水色!オッケー!オッケーです!神様、仏様、涼宮ハルヒ様!ありがとうございます!
今、出勤コールが鳴り響いても絶対に出ないぞ。神人など知った事か。
とりあえず心のHDDに彼女の姿を録画しておこう。もちろん最高画質で。
もう一度彼女の姿を目に焼き付けようと視線を向けると、彼女の背後の防犯ミラーに僕以外の北高の男子生徒が数人映っていて、こちらを見てニヤニヤと何事かを小声で話していた。
話している内容は先程の僕が考えていた事と同じだろうと容易に想像がつく。
彼らの好色な視線を遮るように移動すると、小さく舌打ちする音が聞こえた。
ここで彼女の肩を抱きながら彼らに余裕の笑みを向けられればいいのだが、残念ながら僕の一方通行片思いであり、そういった関係ではないので実現は出来ない。
諦め悪くじわじわとこちらに近寄ってくる彼らを一睨みして退かせ、僕は彼女の方へ向き直った。
「僕の家はここから歩いて10分ほどですので、よろしければ寄っていかれませんか?着替えをお貸しします」
心のHDDを一杯にしたいのは山々だが、他の男にもお裾分けしてやる必要は無い。
「本当か?助かる。寒いんだよな、コンビニって」
短めに切られた前髪からぽたりと垂れた雫が彼女の頬を伝い、そのまま首筋を流れていく様を思わず目で追い、透けた下着まで見てしまった。
目の毒とは正にこのことだ。今、僕の幸せ銀行に預けてあった幸せポイントはどこまで使われてしまっているのだろう。
「では早く出ましょうか」
平静を装いながらビニール傘を二本取りレジに向かおうとすると、勿体無いと彼女に止められた。
「ビニ傘、そんなに何本もあっても邪魔だろ?」
全く仰る通りです。仰る通りですけど、相合傘になってしまいますよ?いいんですか?
・・・いえ、分かっています。彼女が僕の事などこれっぽっちも意識していない事なんて。
だから相合傘なんてしてもらえるんですよね。
コンビニを出て小さな傘を広げ、精一杯二人分の体を詰め込み、少しでも長く一緒に歩けるようにと殊更ゆっくりした歩調で歩き出す。
彼女がこれ以上濡れないように、僕の右半身を犠牲にして傘を差していると、
「傘が小さいんだからもっと寄れ」
と言われ、腕を引き寄せられた。む、胸当ててんのよ状態なんですけど!
幸せポイント、今日一日で向こう何年分を使ってしまったのだろうか。


このあと、部屋に着いてからがまた凄かった。もう止めて、僕の幸せポイントはゼロよ!
過ぎた幸せはもはや幸せでもなんでもなく、一種の災害に近いものになるのだと痛感した。

体が冷えたからシャワーを浴びさせてくれと彼女にせがまれ、
聞こえてくる雨の音とは違う水音に悶々としてしまい、
着替えにと上下を用意したのにもかかわ らず、ウエストがでかいんだもんと
長めのTシャツのみを着て脱衣所から出てきた彼女に危うくTKOを取られかけて、
慌ててバスタオルをもう一枚用意して腰 に巻かせたり、
入れ違いに入った浴室の温められた温度に心臓がばくばくしてしまったり、
風呂から出たら出たで脱衣所の乾燥機の中で回っている一対の水色の 布地の物体に
思わず元気になりかけるもう一人の僕を必死に諌めてみたり、
リビングでニュースを見つつようやく心がいつもの平静さを取り戻せた頃に、
ちょっと厚めのパー カーかなんか無い?と訊ねられ、なぜでしょうと返すと、
非常に言いにくそうに下着付けてねーしと言われ、
思わず彼女の羽織ったバスタオルの下を出来もしな い透視をしかけたりした僕に罪は無いと思いたい。

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最終更新:2007年07月16日 19:59