「っこ……い、ず、み」
むかつくくらい余裕たっぷりなニヤケ面が俺を見下ろす。
さっきまでぶっ飛んでいた恐怖が再び蘇ってきて、俺は目をいっぱいに見開いた。
「いい子で待ってました?」
そう言って、にやにやと俺を観察する。
無遠慮なまでの視線に晒されて、見られている部分がかっと熱を持つのがわかる。
じわりと再び溢れ出したのに気づいたときの絶望といったらなかったね。
「そんなに物欲しそうな顔して……、我慢も限界ですか?」
違う、俺は今すぐこれを抜いて欲しいんだ。
次にどんなひどいことをされるのかと怯える俺に、古泉がゆっくり近づいてくる。
やだ、怖い、怖い!
「うっ……く、ふ、」
ガタガタと腕を動かしたが縛めは緩む気配もない。
古泉は俺の正面にしゃがみこみ、間近で目線を合わせてきた。
そっと手が頬に滑らされ、古泉は俺の顔を両手で包み込むように固定して覗き込んできた。
「もっと気持ちよくなりたいでしょう?」
いやもう十分だ。お願いだから解放してくれ。
確かに気持ちいい、気持ちいいがな、よすぎるのも考えものだぞ。
ここまでくると苦痛と紙一重だって。
見ろよ、俺なんかもうこんな涙ぼろぼろで息も荒くて震えて怯えていっぱいいっぱいじゃないか。
可哀想だと思わないか。
ていうかお前はそんなに俺を苛めて楽しいのか!
「楽しいですよ。あなたの泣き顔を見ると性的興奮を覚えます」
「なっ……!」
「ほら、こんな風に」
言うが早いかローターの振動が激しくなった。
「ひゃああぁあ! あっあ」
きっと最強にされたんだろう。
「あっあう、ひ、あぁ……」
泣きながら喘ぐってかなり苦しい。酸素が足りない。
古泉は魚みたいに跳ねる俺の腰を掴み、割れ目に指を押し当てる。
水っぽい音がして、俺は息を呑んだ。
「ひぅ」
「とろとろですね。ローターもそれなりに楽しんでいただけたようで良かったです」
「や、ち……ちが」
ぐじゅっ、と指先が中へ挿れられた。
「ぁあっ!」
「こんなに濡らして……いやらしい人だ」
「やっ! ひやあぁっ!」
ローターが入っているのにもお構いなしに、指が中をかき回す。
そしていつの間にか二本に増え、ばらばらに動いて壁のあちこちに触れる。
ローターの刺激に加えてこれはきつい、耐えられない。
や、やだ、いく、いかされるっ……!!
眼の裏が真っ白くチカチカした。
はぁはぁと荒い呼吸をするいったばかりの俺の身体は古泉の指によってもう一段階上へと押し上げられた。
敏感な突起を軽く潰されて、背骨がぐんと反る。
「んぅぅっ……!」
いい加減にしろ、誰かこいつを止めて俺を助け出してくれ。
この際誰でもいい、誰だって古泉よりはマシだろう。
でも救いの手は差し出されず、代わりに古泉の手が俺の太ももを掴んで左右に大きく割った。
「!!」
あまりの恐怖で身体が強張る。
いよいよきやがった、レイプで処女喪失とか嫌だ、絶対嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ、怖いよお母さんっ……!
俺は恐慌状態に陥り、恥も外聞もなく泣き喚いた。
「やだあぁぁ、やめ、いやだぁ」
バージンロードをバージンで歩くんだなんて古臭いことを言うつもりはないがだからってこんな無理やり奪われるなんて最低だ。
自分が可哀想過ぎて悲しくてどんどん泣けてきた。
みっともなく泣けば古泉も萎えてくれるかもしれない、と一縷の望みを抱いたからでもある。
考えが甘かった。
さっき古泉も言ったのにな、俺の泣き顔に興奮するとか。
それにこいつは女の子を縛ってローター責めするような鬼畜だった。
「仕方ありませんね」
やれやれ、と溜息をつくこいつの頭を殴り飛ばしたい。
「まあ、こんな形で純潔を散らしてしまうというのも味気ないかもしれませんし。どうせならもっとちゃんと舞台を整えて、次の機会にということで」
「……?」
指が割れ目に沿ってすっと下りる。さらにその下へ。
「では今回はこちらにしましょうか」
うそ、だろ。
やだ! 絶対やだ! ずっと嫌のターン!!
あまりの展開に脳が理解を拒否する。
古泉の指がゆっくりと後ろの穴をなぞる。
その手つきに鳥肌が立ちそうだ。
「ひっ……」
もう俺なんか生まれたての子羊か何かのようにぷるぷる震えているというのに古泉の野郎はやれやれ呆れましたという感じで、
「そんなわがままを言われても困ります」
お前が困ろうと知ったことか、むしろいい気味だからもっと困れ。
「まあ、僕は僕のやりたいようにさせてもらいますけど」
おもむろに指先が沈んだ。
「っ!?」
たぶん爪の先がちょっと入ったくらいだったんだろうが、俺にとっては大根突っ込まれたくらいの衝撃だった。
いや、大根を突っ込まれたことなどないが。
「僕も結構限界なんですよね、あなたのその顔だけでかなり……」
そう言うやつのズボンの前は膨らんでいて、窮屈そうだ。
ファスナーを下ろす音、取り出されたブツはでかくてグロくて俺は自分の体温が低下するのを感じた。
指で大根レベルなのに、あんなの突っ込まれたらスイカだ。
産みの苦しみは鼻からスイカを出すのに匹敵するというが、出産もしないのに似たような苦しみを味わうとか怖すぎる。
「やだっ、無理い! い、から、ふつうに」
古泉は俺の言葉に軽く目を見張り、それからにやりと口の端を吊り上げた。
「いいんですか? 処女、いただいても」
よくはない、決してよくはないが、そっちは元々受け入れるための器官だし、引き換え後ろの穴は出すための穴で入れるところではないし、どっちがマシかっていったら前のほうがいい気がする。
それに前より先に後ろを経験するってのもなんか心情的に嫌だし。
本当はものすごく不本意だけども、もう十分苦しんだ俺としては、これ以上痛いのも苦しいのもやめて欲しいんだよ。
だから、やるなら早くしろ。そして俺を解放してくれ。
そろそろ死ぬんじゃないかと、冗談じゃなく思えてきたんだ。
「っく、は、やく……っ」
終わらせろ、と続けたかったのだが最後まで言えなかった。
そのせいで、はやく挿れろだと誤解されたらしくて不本意だが訂正もできない。
古泉がローターを勢いよく引き抜いたからだ。
「ぅっふぁああああ!!」
快感ってやつは天井知らずなのか? よく生きてるよ俺も。
気力的にも体力的にもそろそろ限界だ。
いった余韻でぐったりと力の抜けた俺の両太ももをつかみ、古泉はぐっと腰を押し付けてきた。
う、やっぱ怖い、怖い嫌だ、当たってる、ひあ、は、入ってくる……!
反射的に逃げを打つ身体を古泉は離さない。
ぐ、と身体を押し広げられていく感じがする。
「んっ……はぁ……っ!」
すでにとろけているそこは古泉をなんなく飲み込んでいく。
小さなローターとは違う、熱くて大きい。
途中少しつっかえたような抵抗があった気がしてちょっと痛かったが、これが破瓜ってやつなんだろうか。
痛みには個人差があるらしいけど、俺は幸いにしてそんなに痛くないほうだったんだろう、たぶん。
「あなたの中、すごい、ですよ」
古泉が満足げに息を吐く。
ああそうかい、じゃあとっととやることすまして出てってくれ。
心の中でぶぶ漬けを出したり箒を逆さに立てたりする一方で、俺は必死に呼吸していた。
も、意識ぶっ飛びそう。
むしろぶっ飛ばないでいられることが不思議だ。
「っ……はぁ、はぁっ、んんっ」
身体の中が熱い。熱くて溶け出してるんじゃないかと思う。
今動かれたら何かが溶岩みたいに溢れるかもしれない。
実際に古泉が動き出し、俺は自分の予感が捨てたもんじゃないことを知った。
結合部がちゅぷちゅぷと音を立て、時折その隙間から液体が流れるのを感じる。
「はっ……ぁあ、ん、あ! やっあ」
古泉がぐいぐいと腰を動かし、抜き差しを繰り返す。
そのたびに俺の膝から下が浮き上がり、力なく震えた。
「やっ、ん、あ、あっあ、ぁう」
「っ……」
柔らかな肉の壁を古泉の先端がつつく。
ひだがざわめき、古泉を締め付けている。
俺は嫌なのに、疲れてるのに、身体は貪欲に求め続けている。
「こんな、絡み、ついて。男が欲しくて、しょうがない、みたいです、ねっ」
「……!」
ぐっと突き立てられて、たまらず喉が反る。
さらけ出されたそこに古泉が吸い付く。軽い痛みが走る。
それすらも今は快感の火種にしかならない。
「いやらしくて、可愛い」
そんな、違う、
「ちが……ぁっ」
否定の声は我ながら嫌になるほど甘くて、誰が聞いても肯定と受け取るだろう。
ふにふにと胸を揉まれて、腰の辺りがじんと痺れるような、疼くような、なんだろうこれ、変だ。
「ねえ、あなた、気持ちいいこと好きでしょう? これじゃ、まだ、足りないですよね……?」
何を言ってるんだ、足りないどころか飽和状態だっての。
俺はもうかなりギリギリのラインにかろうじて踏みとどまっているだけ、崖に片手でぶら下がってるようなもの。
これ以上されたら本当に命に関わりかねない。
しかし、瀕死の俺の訴えを綺麗に無視して、まあ訴えといってもほとんど喘ぎ声しか言えなかったんだが、古泉は俺の愛液にまみれてぬるぬるのローターを、あろうことか後ろに押し込んできやがった。
「ひっ……」
指でぐっと奥に押し込まれ、中で波打つように振動しているのがわかる。
なんだ、何がどうなってんだ。俺の身体、壊れるんじゃないだろうか。
「やぁ、な、にこれ、おかし……っ」
ひく、と軽いひきつけを起こしたみたいに身体が跳ねて、それにあわせて涙がぽろぽろこぼれる。
身体の中の薄い壁ごしに二つの刺激があって、お互いがお互いを高めあう相乗効果でありえない快感を生む。
前の古泉はぐりぐりと抉ってくるし、後ろは絶えず振動して、やばい、変になる。
「や、こ……ずみっ、こんなの、やだぁっ」
今まで嫌だといったことが止めてもらえた例がなくても、懇願の泣き声を言わずにはいられなかった。
「嫌? 嘘ですね、気持ちいいんでしょう?」
奥深くまで突きこみながら言われ、反論しようとした俺の思考は一瞬真っ白になった。
「……っは……っ、あ」
ぱくぱくと水面の鯉みたいに口を開け閉めして、端からは涎をたらし、きっとすっごいだらしない表情になってるだろう。
「だってこんなに僕に絡み付いて、後ろだって」
指がローターを飲み込んでいる穴に触れた。
びくっと身体が竦む。
「んぁ!」
「ほら、ひくひくしてる」
古泉は俺に思い知らせるようにそこを撫でて笑った。
必死に否定しても「身体は正直だな」って自分でもそんなエロ親父みたいなことを思うくらい反応しちまって、もう嫌過ぎる。
意識が全部そっちに持っていかれて気持ちいいことしかわからない。
このまま死んだら末代まで語り継がれる恥だ。
「んっ……や、ぁ……や、」
古泉が背をかがめて胸を舐め、乳首に強く吸い付いた。
「やぁっやああ! らめぇ!」
まさかこの俺がみさくらあえぎをさせられる日がやってこようとは。
この調子で次には、こんなやつに悔しいでも感じちゃうとか言わされたりビクビクッさせられたり極とかハードとかされんのは絶対ごめんだ。
「らえ……っう、らめら、って」
フルマラソン走り終わってぶっ倒れる選手みたいな呼吸、苦しくてそろそろお花畑が見えそうだ。
ぐぷぐぷ泡立つような音が下半身から響いて思考を溶かしていく。
繰り返される律動の間隔が狭まってきている。
古泉が乳首を触りながら耳元で囁く。
「ね……あなた、今日、危険日なんですよ」
知ってました? って、俺は今まで危険日を把握する必要なんてなかったから知るもんか。
「このまま、中に出したら……さて、どうなるでしょう?」
溶かされていた思考が一気に形を取り戻した。
危険日。
危険日って、子供ができやすい日ってことだよな?
子供って受精したらできるんだよな?
受精って、精液を中に出して……。
理解とともに血の気が引いていく。
もちろん古泉はコンドームなんてつけてない、生だ。
このまま、中に出したら――――出されたら、妊娠しちゃうかもしれないってことで。
「ひっ……やぁ、あ、や、やああ! はなせ、はなし」
嫌だ、怖い怖い怖い!!
力なんてほとんど入らなかったが、それでも精一杯暴れたつもりだ。
けど、やっぱりどうしたって古泉の力にはかなわなくて、逃げられないようにがっちりと捕まえられ、揺さぶられるがままになる。
「やだ、やだぁあ、うっく、うっ、やああ」
まだ高校生なのに。
人を好きになって、彼氏彼女になって、デートしたりキスしたり、愛情を深めていって、いつかは身体を重ねて、結婚して。
そんな風に大好きな人と進んでいくんだと信じ込んでた。
全部すっ飛ばして、無理矢理犯されて妊娠なんて、夢にも思わなかったし、ありえないことだったはずだ。
ひどすぎる。なんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだ。
急き立てられて、絶頂まで間もないことを悟る。
たぶん古泉はそのとき一緒に行く気なんだ。
俺はどうしたら、わからないよ、怖い。
現実感を帯びた不安が襲ってきて、涙が溢れて止まらない。
中に入っている古泉の熱さに、そこから絶望が広がっていくような錯覚を覚える。
しっかり埋められていて、出て行かない。
逃げようとしても逃げられない。抜けない。
唇が、耳たぶを柔らかく食む。
「んっ……」
「大丈夫ですよ」
古泉の片手が下腹部に伸びる。
「……僕とあなたの子供なら、きっと可愛いですから」
俺は目を見開いて、きわから涙が零れ落ちるのを感じた。
ぬるり、と指がクリトリスを摘まんで滑った。
ぐっとつま先が丸まる。
「や――――ぁああああ……っ!!」
「……んぅ……っ」
古泉のどこか恍惚とした呻き声が聞こえ、体内で脈動するものと、何かが溢れるような感覚が、俺の心を粉々に砕いた。
気を失っていた。
どのくらい時間が経過したのかわからないが、古泉がまだ入れられたままだったから、そう長い間じゃなさそうだ。
真上に見える古泉の顔は満足げに微笑んでいて、すごく優しい顔で、なのに俺は泣けて仕方なかった。
顔がたちまち滲んでぼやける。
繋がったままの下半身が、しゃくりあげるのにあわせて揺れる。
ずいぶん体力を消耗してしまっていて、指一本動かすのすら億劫だ。
古泉がその手を取って重ね、指と指を絡めてきても振り払えない。
「楽しみですね、できてるか、できてないか、どっちだと思います?」
「……!!」
かちりと歯が鳴った。嫌だ考えたくない、こんな、
「お、前……、こんな、ことして」
俺の言葉を聴く古泉の、手を握りこむ力が強くなる。
「もし、俺が、ハルヒ、に、言ったら……」
「――――言いませんよ」
指先にキスをされた。
「言えません。そんなことをしたら僕はきっと死ぬか、世界が崩壊する。あなたは僕を殺すことも、世界を崩壊させることもよしとしないでしょう」
断定的な口調で古泉は言った。
卑怯者。
確かに俺は、古泉を許すつもりはないが、だからといって殺せない。
それに世界が崩壊するなんてあってはならないことだ。
古泉は全部わかってて、俺をレイプしたんだ。
「あなたは涼宮さんに、少し前から僕と付き合っているとだけ言えばいい。愛し合う二人が身体を重ねるのは、なんら不自然ではありませんよ。時には若気の至りで避妊がおろそかになることもあるでしょう。その結果、子供ができてしまうなんてこともね」
古泉の言葉が毒みたいに浸透していく。
「たとえ親や友人に見離されても、世間がなんと言おうと、気にする必要はありません。僕がいますから」
そっと髪をなで、涙の伝う頬をなで、息をする唇に触れる。
「ああ、やっとあなたを手に入れた」
唇が重なる。
やがて古泉が身体を起こし、性器がようやく引き抜かれ、足の間を伝う液体に俺は泣くことしかできなかった。
「今回できなくても、またいくらでも注いであげますからね」