6年前 第97管理外世界 現地呼称名「地球」、「日本国」にて、ある実験が行われた。
「電圧異常なし」
「全システム、異常なし。人口磁場シールド展開準備完了」
その実験は、数年毎に発生するソーラーマキシマムによる電磁波が、精密機器に及ぼすのを防ぐために行われた実験だった。
電子機器を守るためのシールドを生成し、その中に陸上自衛隊の特別実験部隊を展開させて、人口電磁波を発生させる。その後部隊の装備品が問題なく稼動したら実験は成功、稼動しなかったら実験は失敗だった。
「人口電磁波発生まで、後5分」
「作業員は直ちに退去せよ」
だが、実験は失敗でも成功でもなかった。
「イレギュラーです!シールドの耐久予測値を超えます!!」
「シールド内の気圧異常!気温低下しています!!」
「操作を受け付けません!!」
偶然、本物のソーラーマキシマムが発生、実験用の人口磁場と合わせて、膨大な量の電磁波が実験部隊を直撃した。
《01より本部、何が起こっている!?状況を報告・・・・・・》
膨大な霧が発生しそれが晴れたとき、実験部隊は姿を消していた。代わりに、草原と1頭の馬に乗った侍がそこにいた。
ミッドチルダ 時空管理局本局
「何、これ・・・?」
なのはは、目の前の画面に映し出された光景に絶句していた。
ミッドチルダの市街地の一角で、ブラックホールのような物が、周囲の物体を飲み込みつつ増殖していた。
「これが初めて現れたのが6年前、そん時はまだゴルフボール大の大きさやった。それがどんどん成長して、この様や」
「何で本局は隠してたの!?」
「対処のしようがないんや。これはあちこちの次元世界に発生して、次々と成長していってる。発表したところで、皆がパニックを起こすだけ・・・って説明をうけたわ」
八神はやて二等陸佐は、ため息を吐きつつ言った。
「じゃあ、このまま世界は飲み込まれるだけなの・・・・・・?」
フェイトは呆然と呟きつつ、画面を眺めた。
「いや、このブラックホールみたいな物を作り出している『原因』には対処できるって、本局の人が言ってたわ」
「原因・・・・・・?」
「どうも、オペレーションロメオ実行部隊『ロメオ隊』指揮官の森一等陸佐です」
「時空管理局『ホール』対策部隊指揮官、八神はやて二等陸佐です。よろしくお願いします」
6年後、ホールと名づけられたそれは、着々と次元世界を飲み込みつつあった。
「今回の任務は、戦国時代にタイムスリップしたと思われる第3特別実験中隊を、現代に連れ戻すことである。彼らの消失以降ホールが発生したため、彼らを連れ戻せばホールも消失すると思われる」
「せやから、うちら対策部隊は陸上自衛隊のロメオ隊と合同任務を行います。時空管理局もこの事態を重く見ている為、うちらも彼らに同行、戦国時代に向かいます」
「戦国時代・・・?どうやって行くんですか?」
「前回第3特別実験中隊が消失した時と同等の電磁波が3日後発生する見込みだ。前回と同じ状況を作り出し、我々もタイムスリップする」
「なおタイムスリップをした場所は、1週間後に現代に揺り戻されるやて。せやからそれまでに第3特別実験中隊を捕捉、フィールドまでつれて来て現代に帰還します」
管理局と自衛隊の合同任務。それは「過去」に向かうというものだった。
「ん、君何やってんだ?」
興味深そうに装甲車を見ていたフェイトに、ある男が話しかけた。
「はわわ、ごめんなさい!ちょっと見ていただけで・・・」
「いや、別に俺は責めている訳じゃないよ。君は?」
迷彩服を着てタバコを吸っているその男は、普通の自衛隊員ではないとフェイトは直感した。
「私はフェイト・T・ハラオウンです。あなたの名は?」
「俺?俺は・・・」
男はタバコを携帯灰皿に捨て、続けた。
「鹿島勇祐、元二等陸尉だ」
こうして幕開けた合同任務。460年の時を超え、彼らは戦国時代へと向かう。
「空がきれいだな・・・。現代とは大違いだ」
「ここが、戦国時代・・・」
だが彼らは、すでに敵の罠中にあった。
《03、攻撃を受けた!あいつら普通の人間じゃない!!》
《ヨークとマリアが地上からの質量兵器の攻撃を受けて撃墜された!八神隊長、指示を!!》
麻酔弾の銃声、非殺傷設定の魔導弾が森の中を交錯する。合同部隊の前に立ち塞がるのは、防弾甲冑に身を包んだ異形の兵だった。
《麻酔弾じゃ効果が無い!!実弾使用許可を!!》
《八神隊長、非殺傷設定解除の許可を・・・うわあああああああああ!!》
倒れてもすぐに起き上がる戦国の異形の兵たちに実弾、殺傷設定魔法を使用して、どうにかその場を切り抜けた彼らを待っていたのは、本来救出対象であった第3特別実験中隊だった。彼らは合同部隊に牙を向く。
《こちらは天導衆である!!おとなしく武器を捨てて投降せよ!!》
《投降しない場合、攻撃も辞さない!!》
異形の装飾を施された攻撃ヘリに包囲された彼らが見た物は、本来この時代にはいない、いてはいけない人物だった。
「人だ、人が飛んでいる!!」
「あれは・・・戦闘機人!?なんでここに!?」
投降した合同部隊が連れて行かれたのは、「本来」の歴史上あるはずのない城。
「どうだ鹿島、この城は?」
「的場さん・・・!あんたの目的は何だ!?」
「目的・・・?日本を作り変えることだ」
そう言って「元」第3特別実験中隊の指揮官であり、「今」では「織田信長」となった的場毅一等陸佐はニヤリと笑った。
「ジェイル・スカリエッティ、何であなたがここに?あなたは去年行方不明になったはず・・・」
「さあね、私もここにいる理由を知りたいよ。いきなり私の研究施設ごとここに飛ばされ、仕方ないから一緒に飛ばされてきた天導衆に協力したんだよ」
「なぜ天導衆に協力を?」
「なぜかって?ふーむ・・・・・・」
戦闘機人によって床に組み伏せられているフェイトを見ながら、スカリエッティは続けた。
「歴史を変革するのが、面白そうだったからかな?」
消滅するのは、全次元世界か?俺達か?
リリカル自衛隊1549
最終更新:2009年10月31日 20:51