シェパード将軍曰く、この戦争は今日で終わりにするらしい。奴の手には全軍を指揮する権利が与えられて、もううちの部隊が支援に困ることはないそうだ。
しかし、どうにも胡散臭い気がする。奴はブリーフィングで「我々は民間人を巻き込むような真似はしない」と言っていたが、俺は知っている。いや、Task Force141に所属する者は全員知っているはずだ。この戦争の発端となった、ミッドチルダ臨海空港の虐殺テロ。現場に残されていた、テロ実行犯の一人と思われるアメリカ人の死体。あいつは、うちの部隊から送り込まれたスパイだった。ジョセフ・アレン上等兵。
アレンと話をしたのはほんの少しだが、いい奴だってのはなんとなく分かっていた。たぶん、本当は軍人なんて向いてない優しい奴だったんだろう。どっちかと言えば教師の方が似合いそうだ。だから、スパイとなって奴らの虐殺行為に加担することになった時、あいつが何を思ったのか、どう感じたか、なんとなく想像はつく。しかしそうしなければ、スパイの任務は果たせない。
だから俺は、シェパード将軍が胡散臭いと思う訳だ。「我々は民間人を巻き込むような真似はしない」だって? アレンが虐殺に加担することになることを知っていたんじゃないか、奴は。何しろテロの実行犯――超国家主義者とか言うテロリストたちのリーダー、マカロフの元にアレンを送り込んだのは、シェパード将軍自身だ。
今日の作戦は、マカロフの居場所と思われる二つあるテロリストたちのアジトのうち、隊を半分に分けて両方一気に畳んでしまおうというものだ。俺はローチやゴーストと一緒に、アジトと思われるグルジアとロシアの国境間にある山中のロッジに攻め込むことになった。あの髭の爺さん、プライス大尉とかいう奴はマクダヴィッシュ大尉ともう片方のアジト、アフガニスタンに行く。あの爺さんは凄まじく強いらしいが、ゴーストが彼と組むのを嫌がったんだ。核ミサイルを発射させたから、って。
何はともあれ、とにかくTask Force141はこの戦争の真の元凶であるテロリスト、マカロフをとっちめに行く。確率は二分の一だから、俺の方かマクダヴィッシュ大尉の方か、どちらかにはいるはずだ。殺すか生け捕りにして、シェパード将軍はこの戦争の真実を明らかにするんだろう。
作戦自体に異議はない。前にもこの手帳に書いたが、マカロフがやったのは紛れも無いテロだ。罪も無い人を何人、何十人と殺してる。しかも俺の故郷、ミッドチルダで。許せる訳がない。出来るなら俺が最初に奴を撃つつもりだ。
だけど――これも前に書いたが、俺はこの作戦が終わったら、シェパード将軍にも問い詰めるつもりだ。返答次第ではタダじゃおかない。奴がマカロフのテロを知っていて、その上でアレンを送り込んでいたのなら、その時は奴も撃つ。
ティアナ。俺の唯一の家族、妹よ。兄ちゃんはもう、生きて帰って来れないかもしれない。もちろん無駄に死ぬつもりはないが、そのくらいの覚悟はしてる。だから、この手帳はいざとなったら、信頼出来る奴に託そうと思う。そして、ティアナに渡すよう伝えるつもりだ。
もちろん、生きて戻ったならそんな必要は無いがな。だけどもしそれが出来なくなった時のために、ティアナに俺からのメッセージだ。
ティアナ、今までありがとう。幸せになってくれ。出来るなら、いい男を見つけて恋をして、結婚して、母親になってくれ。あぁ、もちろんいい男ってのは、最低でも俺と同レベルだぞ?
手帳を書き綴っていた青年は、そこまで書いて筆を置いた。馬鹿だな俺も、と自嘲気味な苦笑いを浮かべて、魔導の羽衣ことバリアジャケットのポケットに手帳をしまう。
青年を乗せたヘリは、いよいよ目的地にまで迫りつつあった。接近を悟られないよう、レーダー波に引っかからない低空飛行を続けていたが、それももう間もなく終わる。ETA(到着予定時刻)まで、残り一〇分だった。
Call of lyrical Modern Warfare 2
第16話 "Loose Ends" / 生き残る義務
SIDE Task Force141
六日目 1536
グルジア・ロシア国境付近
ティーダ・ランスター一等空尉
草と木が生い茂る山の中に、彼らの姿はあった。ヘリから降下した後、徒歩にてこの作戦開始の予定地点にTask Force141が投入し得る戦力のうち、半分がこの地に集結していた。
さすがに世界各国の精鋭特殊部隊の中から、さらに優秀な者を引き抜いて編成されたというだけあり、遅れた者は誰一人としていなかった。銃を構えて待機する兵士たちは多少なりとも山道を歩いてきたはずなのに、少しも疲れた様子を見せなかった。彼らにしてみれば、今回の作戦も一種、『いつものこと』なのかもしれない。
しかし、今度ばかりはいつものことでは済まされない。ティーダは自身の得物である拳銃型デバイスを手に――同じTask Force141の兵士たちの持つ銃の中でも、特異な形状だった。悪い言い方をすれば、玩具じみたデザインのよう――スライドを引き、故郷ミッドチルダで一部の魔導師たちの間で流行っている追加装備の確認を行う。ベルカ式カートリッジシステムと呼ばれる、本来彼が使うデバイスには無い装備だ。魔力の篭ったカートリッジを装填することで発動する魔法のリソースを瞬間的にでも爆発的に増加させ、攻撃力や防御力の向上に繋げるための装備。
この世界での任務において、今のところカートリッジシステムは使わないで済んでいる。ティーダはカートリッジの効果は知りつつ、しかしあえて使わない方針を執っていた。確かに射撃魔法の威力向上は素晴らしいものがあるのだが、このシステムは本来ベルカ式という、彼が持つ魔法とは種類が異なるもののために開発された。ミッドチルダ式を使う空戦魔導師に、ベルカ式のカートリッジシステムはいわば強引に組み込んだ装備なのだ。過度な使用は、身体に負担をかける。過度に使用しなければいい、というのは安易な発想だ。一度使えば、おそらくはその威力の高さから乱用する自分が眼に見えている。本来所属する時空管理局では首都防空隊のエースなどと呼ばれてるが、ティーダは自分にそこまでの強い意志があるとは思えなかった。
だが、今回ばかりは使うかもしれない――ガシャ、と機械音を鳴らせて拳銃型デバイス、分かりやすく言ったところのティーダ式"魔法の杖"にカートリッジを込めた。今回の敵は、そういう敵だ。
ウラジミール・マカロフ。Task Force141から派遣された米軍出身のスパイを殺害し、自身がミッドチルダで引き起こした臨海空港の虐殺テロの現場に遺体を残し、アメリカ合衆国に汚名を着せた男。ミッドチルダを事実上の本拠地世界とする時空管理局は報復のために艦隊を出撃させ、ついこの間まで同盟関係にあった管理局とアメリカは戦争状態だ。それこそがマカロフの狙いであり、ロシアから逃れてきた超国家主義者たちテロリストを総括するリーダーはこれを機に、管理局もアメリカも共倒れさせる気だ。
マカロフを倒せば両者の不幸な誤解は解けて、戦争は終わる――本当かよ、と疑いたくなるティーダだが、どうやら管理局はロシアで起きた核ミサイルの"暴発事故"により、侵攻艦隊が壊滅的打撃を被ったらしい。ティーダにとってしてみれば、大勢の同僚が死ぬことで皮肉にも管理局は一旦攻撃を中止せざるを得ず、ここで真実を明らかにすれば、戦争終結の兆しが見えてくるだろう。死体の上に築かれた平和、しかしこれ以上死体を重ねる訳にもいかない。断腸の思いで、彼はTask Force141に残ることを選んでいた。
≪スナイパーチーム、配置についた≫
開きっぱなしにしていた念話という魔導師なら誰でも使える基本的な通信魔法の回線に、若干の雑音が入ってから通信が飛び込んできた。Task Force141の、後方支援部隊だ。振り返ってよく眼を凝らせば、木々が並ぶ山の斜面の最中に蠢く緑の塊と、そいつが持つスナイパーライフルが見える。ギリースーツを着込んだ狙撃班が、M14EBR狙撃銃を構えて配置についていた。
「よし、ストライクチームは前進だ。マカロフは発見次第射殺しろ」
指示を下すのは指揮を任されたTask Force141のナンバー2、ゴースト。骸骨のバラクラバとサングラスで顔を覆ったイギリス陸軍特殊部隊SASの出身で、階級は中尉。ゴーストというのは、無論コールサインだ。階級的にはティーダの方が上なのだが、Task Force141では階級よりも適性と経験がモノを言う。事実、ティーダは自分に指揮官適性はあまりないことを認めていた。管理局でも、基本的に編隊を組まない一匹狼だ。
了解した、とまた雑音が入ってからのスナイパーチームからの返答が聞こえた。どうもこちらの世界の通信機と自分の念話は相性が悪いらしい。とはいっても聞こえないというほどではなく、何より指揮官のゴーストにはしっかり届いているのだから問題あるまい。
「行くぞ。ローチ、俺と一緒に進め。ティーダは後方一〇メートルからついて来てくれ」
「先に飛んで偵察してこようかと思うんだが」
「いや、目立ちすぎる。それに直接支援がいなくなる」
空戦魔導師らしい提案をしたのだが、もっともな理由で却下された。仕方ない、足並みを揃えて進まなければ火力で圧倒される恐れもあるのだ。
そう自分を納得させているのだが、表情に出てしまっていたらしい。意識しないうちに少しばかり不満げな顔をしていると、ほら行くぞ、と肩を叩かれた。叩いたのはローチという兵士だ。能力は間違いなく一級品なのだが、何かと危なっかしい奴だ。何の巡り会わせか、ティーダとは行動を共にすることが多い。
戦友に促されて、ティーダは拳銃型デバイスを構えて進みだした。距離はきっかり一〇メートル、先を行くゴーストとローチの背中を見据えて。さらにその先にはTask Force141の
兵士たちが数人いて、銃を構えて警戒しながら進む。
目標はこの斜面を下った先にあるロッジだそうだが――山を下りながら、魔導師の眼が普通なら見えない先の向こうまで見渡す。視覚魔法で、視力を強化したのだ。はるか前方に、確かにロッジがあった。玄関先に停車しているトラックが二両見えるが、人影は見当たらなかった。
静寂に包まれた山中を、部隊は進む。聞こえてくるのは川のせせらぎ、進む兵士たちのかすかな足音、風に揺れる草木がこすれる音――何だ今のは、とティーダは顔を上げた。風が吹き終わった直後、不自然なタイミングで草が揺れ、葉がこすれるような音がした。ひょっとしたら気のせいかもしれないが、聴覚強化の魔法を行使。歩行は止めないまま、しっかりと周囲の音に耳を傾ける。
スゥ、ハァ、スゥ、ハァと自分のものではない呼吸音が聞こえた。方向は、左から。おかしい、左は崖が立ち塞がっているだけで、隠れようもないはずだ。それとも、あるいは彼には思いもつかない方法で隠れて息を潜めているのか。隠れているなら、何者だ。否、問いかけるまでもない。この状況で隠れている者と言えば――
「っ……」
息が詰まった。小さな金属音が鳴り響き、地面から飛び出してきた謎の円盤を目撃した時、「何だこれは」と言いかけて、生存本能が円盤の正体を即座に見抜いていた。
これは、地雷だ。跳躍地雷。踏むと空中で炸裂し、四方八方に鉄球をばら撒いて破壊と殺戮の限りを尽くす無差別攻撃兵器。
伏せることが出来たのは奇跡だった。すぐ真上で巻き起こった爆発と、草や土を薙ぎ払う勢いで放たれた鉄球は、しかしギリギリのところでティーダに危害を及ぼさなかった。だが地雷は彼の前だけでなく、前進中だったTask Froce141全体に襲い掛かっていた。
爆発、轟音。たちまち、世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルだったはずの精鋭の兵士が数名、一発の銃弾を撃つ間もなく吹き飛ばされた。生き残った者も頭を上げられないでいる。そこに、銃撃が降り注いだ。左の崖の上と、正面から。敵は待ち伏せしていたのだ。
「敵だ! 左から、左から来る!」
爆発のせいで聴覚が完全に回復しきらない最中、耳鳴り混じりで拾うことが出来た声はゴーストのものだった。完全な奇襲を受けたにも関わらず、指揮官が真っ先に立ち上がって反撃を開始していたのだ。
クソ、と吐き捨てた悪態は銃声と爆音に掻き消された。ティーダは立ち上がらず、あえて無様に地に伏せた姿勢のまま、拳銃型デバイスを構えた。土煙と銃撃で揺れる木々の向こう、敵に向かって魔力弾を乱射する。タンタンタン、タンタンタンとデバイスは拳銃らしい外見とは裏腹に、機関銃のような連射速度で魔法の弾丸を放った。敵に当たったかどうかは分からない。そこまで確認する余地がなかった。
先に反撃を開始したゴーストが、指揮官陣頭を体言するかの如くアサルトライフルのACRを乱射しながら突っ込む。奇襲攻撃に出鼻を挫かれたTask Force141だったが、恐れを知らないように突き進むゴーストの背中を追って銃弾の雨の中を前進する。無論、反撃の弾丸を叩き返しながらだ。左の崖の上に見える敵兵たちには一人がグレネードランチャーを撃ち込み、大
きく怯ませた。
「押せ押せ押せ! 負けるな、撃ち返せ!」
指揮官が士気を鼓舞するために怒鳴り、その声でようやくティーダは立ち上がった。地面に伏せていた時は見えなかった超国家主義者たちの姿が今度ははっきり見えたため、銃口を向ける。引き金を引いて、今度は一発ずつ的確に狙って撃つ。詠唱の必要すらないただの魔力弾であったが、正確な照準により放たれたそれは、敵兵を容赦なく殴り飛ばす。
不意に、声をかけられた。ティーダ、と誰かが自分を呼んでいる。銃口は前に突きつけたまま、視線だけを動かしてみれば、同じく銃を前に構えていた兵士の姿が見えた。ローチだ。こんな時に何の用だ。
「何だ、また助けが欲しいのか!」
「そうじゃない、無事かどうか確認しただけだ! 返事があるなら生きてるな!」
「死人は返事しないだろ!」
怒鳴り声に、こちらも怒鳴って返す。とは言え、戦友がそこにいるというのはありがたい。チームワークは重要だ、互いに自分の代わりに撃たれる奴を得られる。もっともティーダにしてみれば、ローチを身代わりにするつもりなどまったく無い。彼とはこれまで共に何度も死線を潜り抜けた。今回もそうだった。
敵は待ち伏せと奇襲によってTask Force141を最初の一撃で殲滅してしまう魂胆だったのかもしれないが、詰めが甘かった。否、相手が他の部隊であれば目論見通りにいったことだろう。
今回は相手が悪かった。ロッジを守る超国家主義者たちにとっての敵は、よりにもよって世界各国から選りすぐりの精鋭の、さらにその中から選抜して選んだ精鋭の中の精鋭だったのである。それがTask Force141という部隊だった。
突然、木の陰に隠れていた敵兵の一人が、見えない誰かに殴られたようにして吹き飛ばされた。彼だけでなく、身の隠し方が中途半端だった者は容赦なく撃ち倒されていった。ローチやゴーストが撃ったものではない。ティーダも同様に身に覚えが無い。何のことは無い、後方で射撃位置に就いていたスナイパーチームが援護してくれているのだ。そこにゴーストからなるストライクチームが突っ込んでくるのだから、超国家主義者たちは精一杯の弾幕でせめてTask Force141の侵攻を遅らせる程度のことしか出来ない。先手を打ったはずの敵の防衛ラインは、もはや崩壊しつつあった。
敵の張った煙幕を抜けて、目標のロッジが目の前に迫る。と、その時、ティーダはロッジの前に停めてあったはずのトラックが消えていることに気付いた。ほとんど時を同じくして、ロッジの裏口から二両のトラックが猛スピードで駆け出していく。誰が見ても分かりやすく、敵は逃げ出しているに違いなかった。
Task Force141は飛び出してきたトラックに集中砲火を浴びせるが、銃弾はいずれも車体に赤い火花を散らすだけで、トラックのスピードは緩まない。窓ガラスにも弾丸は命中しているはずなのだが、やはりトラックが止まる様子は無かった。
「くそ、防弾だ! ティーダ!」
諦めることなくACRを撃ち続ける傍ら、ゴーストが自分を呼んだ。具体的に何をしろ、とまでは言わなかったが、彼には指揮官があのトラックを止めろと言いたいのは即座に理解出来た。そのために他の兵士より目立つ分火力の高い"魔導師"がいるのだ。
名を呼ばれたティーダは即座にデバイスを構え、スライドを手動で引いた。弾丸を込めるような動作に伴い、己の身の内で何かが爆ぜるようにして溢れ出そうになる。ベルカ式カートリッジシステムを作動させたのだ。溢れ返りそうな魔力をもって、その全てを放つ弾丸に叩き込む。
ファントムブレイザーという名を持つその魔法の弾丸は、もやは通常の射撃魔法の範疇に収まらない。ティーダの持つ砲撃魔法だった。
轟音と共に放たれた鮮やかな橙色の弾丸は、防弾加工がなされていたはずのトラックをミニチュアでも蹴飛ばすかのように吹き飛ばし、道路の向こうへと派手な横転を四回も繰り返させた。もう一両は必死に逃げようとするが、これも放たれた二発目の砲撃が命中し、大きく宙に浮いたかと思った瞬間、逆さまになって大地へと叩きつけられた。
よし、とティーダは己の戦果に満足し、しかし次の瞬間には小さな満足感を捨て去った。ロッジから敵が逃げ出していたということは、マカロフがトラックの中にいるかもしれない。ゴーストの指示を受けてスケアクロウ、オゾンというコールサインを持った兵士がほとんど残骸と化したトラックに探りを入れるが、二人は二両とも調べた後に首を横に振った。マカロフはいない。どうやら囮だったようだ。
「報告、マカロフはいない。繰り返す、マカロフはいない」
「了解した。スナイパーチーム、そっちはどうだ」
≪ロッジを監視しているが、トラックが出た以外は誰も出入りしていない≫
二つの報告を受けて、ゴーストは周囲にいた部下たちを見渡し、何も言わずに頷いた。それだけで意思は伝わった。ならばロッジを制圧し、マカロフを探す。
Task Force141のストライクチームは、あらかじめ偵察衛星の撮影した写真でロッジの全ての入り口を把握していた。兵士たちは全ての入り口の前に立ち、一斉に突入するため合図を待つ。その合図とは正面玄関の担当であるゴースト、ティーダ、それにローチの三人の突入そのものだ。
ゴーストが右につき、ローチが左に。ティーダは少し離れてバックアップポジションへ。三人は顔を見合わせ、アイ・コンタクト。突入準備が完了したところで、ゴーストが「GO!」と指示を出した。間髪入れずにローチが持っていた爆薬を扉に仕掛けて起爆。爆風と衝撃で強引にこじ開けられた正面玄関に、三人は一斉に突入する。
お行儀よくロッジの玄関から突入して、最初に見えたのは扉の爆発で吹き飛ばされた敵兵だった。その背後で、彼の仲間たちが慌てた様子で迎撃の構えを見せつつあって――させるか。精鋭部隊の名に恥じない迅速さをもって、ティーダたち三人は立ち並ぶ敵兵たちに瞬時に銃口を向けていた。銃声が響き渡り、敵は一発も撃ち返すことなく薙ぎ払われていった。
正面玄関の制圧から数秒後、ロッジの中で再び複数の銃声が、それぞれ異なる方向から鳴り響いてきた。こちらの突入を合図に突っ込んだ味方だ。最初の奇襲攻撃で見せた勢いが嘘のように、超国家主義者たちは瞬く間に制圧されていった。
最終更新:2013年06月02日 21:47