想う。
フォロン
余の知らぬ、300年の孤独を想う。
雨。
風。
嵐。
涙。
貴女が何であっても、
余は貴女を想うだろう。
薔薇でもなく、
雌鹿でもなく、
貴女が貴女であることの
奇跡を想う。
冬、銀色の雪を見るたびに、
貴女を想う。
春、ギンバイカを見るたびに
貴女を愛す。
夏。銀の陽が光射し
貴女にまた恋をする。
秋。静寂の季節に、
魂は生まれ変わり
その輪廻の度に ひととせ
再び貴女に出会い。貴女に抱かれ
ああ、魂は
引き寄せられて、
貴女の世界へと、かえる。
あの人は、森の薔薇。
高い樹上に咲き
余を見下ろす、棘もなく、毒をもち。
その毒は、されど優しく、
少しの憤りと戸惑いを持って風に揺れる。
余は少し背伸びして、
その薔薇にささやきかける。
祝福あれ。
黎々の薔薇の淑女はこう囁くと
頬染めて恥じらうが
あの人はただ苦笑して、
毒も抜けた顔。
否定はしませんよ、という。
どうやらこの薔薇の魔術師は
ただ一人の 得難き河の流れ。
深き流れに、囁くは感謝の言葉。
その心に 触れてみたいと願い
手を伸ばせば 触れたのは月虹で
この手をすり抜けていった。
月が眠る夜の裏側に触れた手が
掴んだものは、一つの星だった。
清らかな星
美しい宇宙
悲哀しい夜
消して触れえない記憶
それでも余は
月に触れたいと思う。
されど月は形を変えて
いつもこの手をすり抜ける
どうか、その心 欠けたることなかれ
そうすれば触れられる
そんな気が、するのだ。
吐息
エティック
吐息を感じるほど近くで
抱き締めた時 あなたは泣いた
心の音はせず 何者かに
生かされているあなたの
涙も吐息も熱かった
ああ、だのにあなたが
生きて得ぬというのなら
なにぞ世界の真理なるか?
笑い合う その声の
吐息も熱く 脈打つのに
笑顔は 青玉さながら
光輝くのに。
脈打つ人生がここにあるから
あなたのその吐息が
余が背負い思う
あなたの人生なのだから
銀鈴の音色と共に
貴女はやってきた
まるで風のように
そうして いつか
去りし時も貴女は
風のように去るか
だとしたらきっと
その 風の名前を
匂いを 頬撫でる
その感触や 記憶
きっと忘れないと
誓おうエルヴィカ
余にとって貴女は
初めての風の記憶
におい
ヘリオス
雨 夜 陰謀と血と罪の臭い
ああそれはなじみある物もの
卿に感じる においはいつも
影が付きまとい離れない
罪に陰謀に纏われしわれらの
においはならば
同じ魂から発される
兄弟のように似てはいまいか。
余にその権利はなくとも
卿の罪を罰を咎を虞を後悔を
いつか余と卿のその体に纏わりし
雨と影と闇のにおいで
赦し洗い流されんことを願う
卿の生が罪と言い
存在が罰であるのならば
その罪悪を赦すことはせず
共に背負い 歩んでいきたい
貴女を見上げると こんなにも
強い女性がいるのかと 思う時がある
貴女を見上げると こんなにも
弱い女性がいるのかと 思う時がある
それはやさしさという名前で
貴女をつなぎとめる鎖
優しい姉のように
余を導く魂の標
いつか余が貴女を
見上げる日が来るまで成長しても
余はきっと いつまでも
あなたを見上げてばかりいるのだろう。
その生き様に 様々な想いと共に
今度は あなたを見上げ学んだ
その優しさが 誰かの眼差しとなり
人々を見守り 護り 旅立つように
最終更新:2017年02月10日 23:14