ある日の比呂美・番外編2-8

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前:[[ある日の比呂美・番外編2-7]] 「クッ!!」 奥へ突き込め、という遺伝子の命令を断ち切ったのは、眞一郎の強固な意志だった。 『比呂美を悲しませない』という強い決意が、発射の寸前で腰を捻らせる。 「!!!」 胎内を埋め尽くしていた熱が、瞬時に消え去る感覚を比呂美は味わった。 絶頂の根源たる物体が行為の終息前に抜き取られるのは、比呂美にとって初めての経験である。 その喪失感が、快感で真っ白になっている思考に黒い何かを数滴……ほんの数滴、混ぜ込んでいく。     …………おいてかないで………… 眞一郎と『噛み合わない』という現実が、比呂美の胸の奥に呼び起こす小さな不安。 離れないで欲しいという切ない想いを具現化するように、腿が逃げるペニスを追いかけて内側に閉じる。 「クッ! 比呂美ぃッ!!」 逃亡先に先回りしていた快楽に絡め取られ、眞一郎の声帯は情けない音を発した。 そして、決壊寸前の『自身』を素股で愛撫されることと、もう大丈夫なのだという安心感が、眞一郎の欲望を開放させる。     ビュッ! ビュッ! ビュッ! ………… 内圧によって拡げられた亀頭の出口から、猛烈な勢いで噴き出す、液体とは呼べない高粘度の白濁。 子宮の底へと撃ち込まれるはずだったそれは、比呂美が手をつく浴槽の外壁へとぶち当たり、品の無い音を立てた。 (あぁ……あぁ…………) 絶頂の白い闇の中に漂う比呂美の耳に、粘着質な衝突音がこだまする。 眞一郎の命が胎外で弾ける……願望が成就しなかった証の空しい音が。 (…………ッ……) 快感に耐えるために噛み締められていた比呂美の奥歯が、湧き出した別の思いを表現してギリと鳴った。 だが、その小さな苛立ちは、眞一郎に届かない。 比呂美の感情をよそに、窄められた内股を膣に見立て、眞一郎は腰を送り出して体内の精を搾り出し続ける。 「んッ! んッ! んッ!」 無意識に鼻腔から漏れる声に合わせ、パチン、パチンと比呂美の臀部を打ち続ける眞一郎の下腹。 それはまるで、孕め、孕めと眞一郎の肉体が自分に向かって叫んでいるかのように、比呂美には感じられた。 (……逃げた…くせに…………) 眞一郎の心と身体の乖離に、苛立ちを増幅させる比呂美の中の牝。 だが、恋人たちのすれ違う想いとは関係なく、二人の肉体は快美感に反応し踊り狂った。 そして射精は徐々に終息に向かい、眞一郎の腰は『打ち止め』を示すぶるりという短い震えを比呂美に伝える。 比呂美の肢体もまた、内在する澱みとは裏腹に、『痙攣』という形で味わっている悦びを眞一郎に伝播させた。 ………… ………… 比呂美と眞一郎は、行為が終わった時の体勢でしばらく固まっていた。 ……もう動けない…… ……動きたくない…… そんな事を考えながら、活力の全てを使い果たした二人は、性交が与えてくれた悦楽の余韻に浸る。 しかし、今まで緊張を強いられていた肉体には我慢の限界が近づいていた。 筋肉が意識の制御を離れ、糸の切れた操り人形のごとく、二人の身体は床へと崩れ落ちる。 バスマットにあぐらを掻く形で尻餅をついた眞一郎の上に、追随して落ちてくる比呂美の身体。 眞一郎は僅かに残った体力を振り絞り、身を投げ出すように倒れ込んでくる比呂美を何とか受け止めた。 「比呂美? 大丈夫か?」 精気が失せた様子の比呂美を心配し、眞一郎は首を回して顔を覗き込む。 「…………」 呼びかけに応えない比呂美の視線は、バスタブにべっとりと張り付いた白濁へと、真っ直ぐに向けられていた。 薄く開かれた瞼の奥から発せられる眼光と、浅い眉間のシワが、比呂美の抱えた不満を如実に表現する。 ……眞一郎の判断は正しい…… それは分かっている…… ……けど…… この苛立ちは間違いだと充分に理解しながら、『無言』という鞭で眞一郎を責め立ててしまう比呂美。 (……でも…私は……欲しかった…………) 再び瞼を閉じてから、比呂美はそう胸中に呟き、唇を小さく噛み締めた。 …………初めての……心が満たされないセックス………… 比呂美の焦燥を感じた眞一郎が、謝意のつもりなのか無言で乳房を弄ってくる。 だが、空しさに包まれた比呂美にとって、そんな眞一郎の気配は、今はただ煩わしいだけだった。                 [つづく]
前:[[ある日の比呂美・番外編2-7]] 「クッ!!」 奥へ突き込め、という遺伝子の命令を断ち切ったのは、眞一郎の強固な意志だった。 『比呂美を悲しませない』という強い決意が、発射の寸前で腰を捻らせる。 「!!!」 胎内を埋め尽くしていた熱が、瞬時に消え去る感覚を比呂美は味わった。 絶頂の根源たる物体が行為の終息前に抜き取られるのは、比呂美にとって初めての経験である。 その喪失感が、快感で真っ白になっている思考に黒い何かを数滴……ほんの数滴、混ぜ込んでいく。     …………おいてかないで………… 眞一郎と『噛み合わない』という現実が、比呂美の胸の奥に呼び起こす小さな不安。 離れないで欲しいという切ない想いを具現化するように、腿が逃げるペニスを追いかけて内側に閉じる。 「クッ! 比呂美ぃッ!!」 逃亡先に先回りしていた快楽に絡め取られ、眞一郎の声帯は情けない音を発した。 そして、決壊寸前の『自身』を素股で愛撫されることと、もう大丈夫なのだという安心感が、眞一郎の欲望を開放させる。     ビュッ! ビュッ! ビュッ! ………… 内圧によって拡げられた亀頭の出口から、猛烈な勢いで噴き出す、液体とは呼べない高粘度の白濁。 子宮の底へと撃ち込まれるはずだったそれは、比呂美が手をつく浴槽の外壁へとぶち当たり、品の無い音を立てた。 (あぁ……あぁ…………) 絶頂の白い闇の中に漂う比呂美の耳に、粘着質な衝突音がこだまする。 眞一郎の命が胎外で弾ける……願望が成就しなかった証の空しい音が。 (…………ッ……) 快感に耐えるために噛み締められていた比呂美の奥歯が、湧き出した別の思いを表現してギリと鳴った。 だが、その小さな苛立ちは、眞一郎に届かない。 比呂美の感情をよそに、窄められた内股を膣に見立て、眞一郎は腰を送り出して体内の精を搾り出し続ける。 「んッ! んッ! んッ!」 無意識に鼻腔から漏れる声に合わせ、パチン、パチンと比呂美の臀部を打ち続ける眞一郎の下腹。 それはまるで、孕め、孕めと眞一郎の肉体が自分に向かって叫んでいるかのように、比呂美には感じられた。 (……逃げた…くせに…………) 眞一郎の心と身体の乖離に、苛立ちを増幅させる比呂美の中の牝。 だが、恋人たちのすれ違う想いとは関係なく、二人の肉体は快美感に反応し踊り狂った。 そして射精は徐々に終息に向かい、眞一郎の腰は『打ち止め』を示すぶるりという短い震えを比呂美に伝える。 比呂美の肢体もまた、内在する澱みとは裏腹に、『痙攣』という形で味わっている悦びを眞一郎に伝播させた。 ………… ………… 比呂美と眞一郎は、行為が終わった時の体勢でしばらく固まっていた。 ……もう動けない…… ……動きたくない…… そんな事を考えながら、活力の全てを使い果たした二人は、性交が与えてくれた悦楽の余韻に浸る。 しかし、今まで緊張を強いられていた肉体には我慢の限界が近づいていた。 筋肉が意識の制御を離れ、糸の切れた操り人形のごとく、二人の身体は床へと崩れ落ちる。 バスマットにあぐらを掻く形で尻餅をついた眞一郎の上に、追随して落ちてくる比呂美の身体。 眞一郎は僅かに残った体力を振り絞り、身を投げ出すように倒れ込んでくる比呂美を何とか受け止めた。 「比呂美? 大丈夫か?」 精気が失せた様子の比呂美を心配し、眞一郎は首を回して顔を覗き込む。 「…………」 呼びかけに応えない比呂美の視線は、バスタブにべっとりと張り付いた白濁へと、真っ直ぐに向けられていた。 薄く開かれた瞼の奥から発せられる眼光と、浅い眉間のシワが、比呂美の抱えた不満を如実に表現する。 ……眞一郎の判断は正しい…… それは分かっている…… ……けど…… この苛立ちは間違いだと充分に理解しながら、『無言』という鞭で眞一郎を責め立ててしまう比呂美。 (……でも…私は……欲しかった…………) 再び瞼を閉じてから、比呂美はそう胸中に呟き、唇を小さく噛み締めた。 …………初めての……心が満たされないセックス………… 比呂美の焦燥を感じた眞一郎が、謝意のつもりなのか無言で乳房を弄ってくる。 だが、空しさに包まれた比呂美にとって、そんな眞一郎の気配は、今はただ煩わしいだけだった。                 [つづく] 次:[[ある日の比呂美・番外編2-9]]

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