truetearsVSプレデター8

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truetearsVSプレデター8 - (2008/04/04 (金) 21:49:47) の編集履歴(バックアップ)





「雷轟丸、石動 純・・・みんなの遺志は受け取ったぁああああ!!!」
炎のように猛った鮮血で丸出しの筋肉を覆ったような体躯。
白い翼を広げたような巨大な目と、顔の下半分を占める裂けた口。
しかし、残虐性の権化のような外見に対してその胸中は、真っ青な空のように高潔であった。
「真実の涙‘TRUE TEARS’!!!」


「・・・涙、お兄ちゃんの・・・」
乃絵はトラックの運転席から、鉄塔の中心にいる紅いモンスターを見上げていた。
しかし不思議と恐怖も嫌悪も感じない。むしろ湧き上がってくるのは・・・愛おしさ。
ずっと離れていた娘に、初めて会ったはずの母親が覚える母性のような。

兄は死んだ。もういない。
ロボットに胸を貫かれ、鉄塔から投げ捨てられ、原型を留めぬほどに地面へブチ撒けられた。
しかし湯浅 比呂美の心に、その肉に、ひとつに混ざって生き続ける。
少女は毒を以って狩人へ転生した。
その礎に兄がいることが嬉しかった。最高の4番だと思えた。


「たかが残骸を纏っただけで何をいうっ!!」
修復用のナノマシンで、ロケットパックを復活させたアームスーツが飛翔しTT(TRUE TEARS)に殴りかかる。
「っ!!」
鉄骨から飛び上がった怪物が、向かってくる高速の機体にしがみ付いた。
「亡骸の意匠を被って、自分が成長したつもりか!!」
鉄塔の中を細い支柱にぶつかりながら、グングンと天辺まで上昇していく2体。
「それこそが愚民の卑劣!矮小!傲慢!そして限界!」
「これは飾りじゃないっ!!」
あちこちに当たりながら、塔の内部に血管のような触手を張り巡らしてTTは巣を作っていた。
その張力が限界まで絞られると、勢いよく飛んでいたはずのマシンは空中にミチミチと引き止められる。
「貴様を倒す武器!その闘いを私は継ぐ!」
ゴム鉄砲の弾のように、地面へ垂直に弾き落とされるアームスーツ。
「おぉぉおおぅううう!!!???」
ドグワラガァアアアンンッッッ
隕石のように大地を抉って墜落するマシン。
しかし、その手にTTを抱え離さなかったため、彼女も相当な衝撃を受けた。
両者はもつれるように転がって、火花の路線を地に描く。
「人間を捨てて化け物に成り下がった裏切り者め!!」
TTの上に乗ったスーツが高速震動カッターを腕から展開して、首を狙う。
「それは違うっ!」

首の筋肉を変形させ、骨折気味に曲げてカッターをかわす比呂美。
刃は地をバターのように溶かして突き刺さる。
「どっちも守る!」
ジャキンッ
腕に仕込んだプレデターのリストブレイドを発生して、横凪に迫るカッターへ交差させる。
「人も!獣も!どっちも私!」
大陸プレートがせめぎ合うように超圧力でカッターとブレイドが拮抗する。
「理屈に押されて、嘘をつきたくない。力に呑まれて、今を逃げたくない」
アームスーツのマスクが比呂美の額を押し潰してくる。
「逃げるさ、何度でも。弱いんだからなぁ!」
カッターがじりじりと彼女のブレイドを圧迫して首筋に迫る。
「そう。私は大切なことから・・・逃げて、隠れて、忘れてきた」
TTの額がグッとスーツを押し返す。
「だけど今は一人じゃないっ!!」
ガキィッ!
TRUE TEARSのブレイドが強化外骨格のカッターを叩き折った。
「なにぃっ!?」

怪物の蹴りが覆いかぶさったアームスーツを跳ね除けると、
即座に立ち上がった両者がガッチリと組み合う。
「全部殺してやったわっ!誰もこのオレ様に敵いわせぬわっ!」
鮮血の涙に包まれた比呂美の爪を握り締める。
「みんなの記憶が、血が、涙が!今の私にはあるんだ!あんただって倒してみせる!!」
「そんなこと、出来るはずがないっ!!」
機械の豪腕が、比呂美の腕を宙に抱え上げ、投げ落とそうと振りかぶる。
「ぃやってみせるっう!!」
ハンマーのように地上に叩きつけられるはずだったTRUE TEARSは、
空中で渦を巻くようにして腰を回し、その勢いを返して、逆にアームスーツを背負い投げた!
「ぐおぁああああっっ!?」

雪の上を滑るように転がってゆく鋼鉄のマシン。
「ならば見せてやろう・・・強化外骨格の力!!」
立ち上がったアームスーツが全身から蜘蛛の足のようにアンテナ塔を突き出すと、
放出した高圧力電磁波の閃光が徐々に集まり、回転をはじめる。
「貴様のプラズマ砲を今さっき解析したのだ・・・分かるか?」
収束した光源は雷のように強烈な眩さを放ち、大気をブルブルと揺るがすように唸る。
「我が機体は進化する。それは光よりも速い、文明の輝きなのだ!」
医療用ナノマシンによって、破壊されたはずのロケットパックを修復すると、
花火のように一気に空へ向けて飛ぶ上がる。
「いっときの成長程度で追いつけるものでない!」
龍のように天空を駆け抜けるマシンは、雲を切り抜け遥か天空まで達していた。
そこまで到ると停止して、空中に浮遊したまま凝縮エネルギーを精製する。
「全て光となれ・・・」
アームスーツは金色のの粒子を気球のような大玉にして、頭上に高々と掲げる。
その輝きはさながら太陽のように世界を照らし、富山の夜空が日の出のように白く染まった。
「貴様ごとき小娘に、何ができるっ!?」

「なんすか、ありゃ?」
白い粉が舞う繁華街を先に行く丁稚が呟く。
「俺のデビューを祝ってくれたわけじゃなさそうだが・・・」
真っ暗だったはずの夜空が、突如山の向うから日が昇ったように明るくなったのだ。
「・・・比呂美・・・乃絵」
尋常でない現象。それがなにを意味するか知っている気がする。
「え?さっきのコそんな名前だったんすか」
「いや・・・それよりもう一軒行こう」

「綺麗・・・流星かしら?」
ベッドの上で横たわる愛子が囁く。
最初に男と交わったのは、もうずっと昔だ。
どれも技巧に長け、壺を心得た名器の持ち主だった。
なのに何故、経験も白紙同然、拙く幼い彼との触れ合いが、
今までのどんなSEXよりも満たされるのだろう。
「・・・愛ちゃんほどじゃないよ」
傍らで寝る三代吉が返す。お決まりのお世辞。が、彼がいえば価値は2000倍増しだ。
「んもぅっ!・・・ね、浮気しちゃヤダよ?」
「愛ちゃんに言われ、ゲフンゲフン!・・・大丈夫、俺競争率ないから」
彼の胸板に納まると、愛子は母の子宮に帰ったかのように安らぐ。
「そんなことないよ。ちょっと時代が早すぎただけなんだから」
「それ褒めてんの?」

「んん・・・UFO?」
眞一郎の母が、寝床から夜空に咲く光を見る。
夫はもう隣で寝息を立てているが、夜町に出た息子が心配で彼女は寝つけない。
ふと、いつも彼女の身の回りをかいがいしく世話してくれる少年のことが気に掛かった。
都合のいい、自分の衝動を満たすだけの相手。
母とてうぶではない。色町に行ったとなれば、どう言い繕うと、やることは明らかだ。
そんなことは勝手に致せばいいし、病気だけ気をつければ構わない・・・はずなのに。
丁稚が他所の女性の肢体に目を奪われている、それが何故か不愉快だった。

「できるわ!わたしたちならなんだって!!」
比呂美が宣誓すると、呼応するようにシンビオートが震える。
天空から来るおぞましい攻撃をどう迎え討とうか辺りを仰ぐと石動乃絵の姿が目に入った。
「来てたんだ。意外とタフね」
トラックの運転席まで近寄ると、彼女に語りかける。
「あなたもすごい顔だけど、それが素顔っていったら信じるわ」
乃絵も軽く返す。
言われて比呂美は自分が狂気を体現したような奇怪であると気付き、
恥ずかしそうに顔面部分の寄生体を解除する。
「なんだか・・・随分久しいわね」

「実に大した働きだぁ、湯浅 比呂美。いや、TRUE TEARS」
「あなたたちは・・・」
比呂美と乃絵の周囲に青白い電光が人影を描くと、そこから幾体ものプレデターが姿を現した。
比呂美が友情を結んだ雷轟丸と異なり、
彼─プロフェッサー・プレデターの日本語は洋画吹き替え(高木 渉)のように流暢だ。
「君の兄上もだ、石動 乃絵」
プロフェッサーが乃絵に頷く。沈鬱な面持ちになる少女。
比呂美はシンビオートが蓄えた純の記憶(断片的ではあるが)から、事情を察する。
「大分えげつないわね、あなたたちも」
プロフェッサーを睨む比呂美。奇生体がその憎しみに反応しかけるが、彼女はそれを抑える。
「そっちの価値観に立ち入る気はないけど。助けられたわけだし」
ポリポリと顎をかくプレデター。後ろの仲間に合図すると、彼らは透明になって退散していく。

「とにかくあのマシンは我らで処分する。宇宙船からビームでドッロドロにしてやんよ」
「やんよ?」
このプレデター、あんまり人間臭くて却って気持ち悪い・・・とか思う比呂美。
「ん、日本の大型webサイトで使われてたんだが?」
どこ見てんだか、と突っ込みたくなったがグッと押さえて続きを待つ。
「君らも一緒に退避させよう。狩りは終わりだ」
キィイイイイイイイイイインンンン
地上の航空機械とは全く異なる外観の小型船が空中に現れる。
その機動音もせいぜいクーラー程度と恐ろしいほど静かだ。プロフェッサーが船に向かう。しかし、

「まだ闘いは終わってない」
比呂美の顔を鮮血の寄生体が覆い、白銀の牙がニタリと笑う。
思考と感情を共有して力を与えるシンビオートが闘争に歓喜している、
比呂美の威信に一点の翳りもないという、完璧な証明であった。
「ま、いーけど。てこたぁ何かい?アレを倒さなくてもいーと?」
だ、だから・・・中に誰か入ってるだろ?といいたくなって頭を押さえる比呂美。
「え、えぇ・・・強化外骨格は私が倒すわ」
激しくシリアスな雰囲気を阻害されてる気がするが、気にしたら負けだ。
「ヤツの光線を喰らったら富山の土は向う百年ペンペン草も生えないよ」
「へ?」
古臭い表現と裏腹の凶暴な内容に、素っ頓狂な返事をしてしまう。
「負けたらキレイキレイ♪ってこと」

あのエネルギー球にそこまで破壊力があるって・・・。
望むところだ!といってやりたいが、自分だけならまだしも、
生まれ育った土地の全て、見知ったひとも、そうでないひとまでも巻き込む気にはなれない。

「闘って。そしてアイツを倒してきて」
声は比呂美の隣からした。
「石動さん・・・?」
石動乃絵。中学生と見紛う小さな少女が、しかしその決意の瞳は訴えるものがった。
「気にしないで・・・というのも無理でしょうけど、大丈夫よ」
そして比呂美にニッコリと微笑む。こんな笑みを向けて貰えるとは思いもしなかった。
「だってここで生まれたんでしょ?そしてずっとここで育った」
流れがみえないが、コクコクと頷く比呂美。
「そして、この場所に辿り着いたのがあなたなら、ここを背負う資格は存分にあるわ」
悪魔のようになった比呂美の手に、そっと自分の手を重ねる乃絵。
「私にもお兄ちゃんにも、眞一郎にも、市長だって県知事だってそんな無茶は許されないけど
でもあなたは戦った。闘って、たかかって(あ、噛んだby比呂美の心)・・・ここまで来た」
ギュッと、奪ってきた命で染まった紅い手を握り締める。
「努力賞とかじゃない。ここで育ったあなたが、ここで起きたことに関わって、挑んで、そしてケリをつける」
乃絵と比呂美の視線が合わさる。
「だったら当たり前じゃない。
これは始まりから終わりまで、富山の、富山人 湯浅 比呂美の戦よ」

どくんっ
「わたしの・・・?」
ゾクッときた。
屁理屈極まれり、といった演説だったが胸にストンと落ちるものがあった。
「そうよ。宇宙人なんかにおおとり持ってかれてなるもんじゃないわ」
そう、とられたくない。
「富山代表 湯浅比呂美」
復讐?けじめ?贖罪?どれも心を動かす要素だが、決定稿ではない。
「県民代表の後見人はわたし 石動乃絵」
この闘いは私から始まった。
あのとき、レイプ犯を殺さなければ雷轟丸とも出会わず、誰も死なずに済んだ。
「これが最後の闘いになるわ」
比呂美は天空を見上げる。目指す先には閃光の塊があった。
「地べたの鳥が飛べることを教えてきて」
あんなものが何だ。機械の羽に、真実の空は舞えない。
「あなたの翼を見せて・・・・・・比呂美!」
覚悟は決まった。

「行くわ、乃絵ちゃん!」


つづく
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