閃光の巨大少年2

 ソフィーがマイクの電源を切る後、アーチャーは出来上がった朝食のセットを御凡に乗せ、彼女の元へと駆け寄る。

「ボス、朝御飯出来ましたよ? 食べないんですか?」
「――――うむ、御苦労様。それを持って貴方も司令室に来なさい。」
「え? あ、はい!」

 アーチャーが皆の分をお盆に纏めた後、ソフィーの机の中に設置してあるボタンを押し、内蔵してあるキーボードを展開させる。やがて、その早打ちに長ける指で“MATRIX KINGDOM”と入力。次の瞬間、この部屋の本立ての一部が設備の整った自動ドアの如く動き出し、その隙間からエレベーターらしき扉が姿を現す。

「さ、アーチャー、行きますわよ?」

ソフィーはそう言いながらも、エレベーターの隣の[↓]ボタンを押す。するとエレベーターのドアが開く。

「アーチャー、早くなさい。」
「あ、待って下さいよ!」

 アーチャーが慌てつつも朝食入りのおぼんを持ちつつもエレベーターの中へ、何時の間に事務所内に入ってきたのか、ホークもまた中へ入り込む。
 猫も含め、全員入り込んだのを確かめたソフィーは、ボタンでドアを閉め、下の階へと自分達をいざなう。
 やがて、目的の階に着いたエレベーターのドアは開き、その先は事務所の背景とは比べてある意味では別世界。まるで特撮番組、或いは映画のセットに出て来そうな秘密基地の通路のようだ。
 猫と二人はその通路をある程度歩き、やがて上に“ブリーフィングルーム”と書かれた自動ドアの前に立ち止まる。其処に近づくと、ドアは自動的に開かれ、その部屋に彼らは入る。
 その部屋は、有りとあらゆる電子機器が周辺に設置され、特に猫を除く二人の目線の先に設置してあるモニターは市販で売られているワイド型のテレビとは比較にもならない程広い。このブリーフィングの設備も勿論だが、この地下基地は正に秘密基地と言う名に恥じない程の設備が整っている。
 そんな部屋に現在居座っているのは20歳の青年と、14歳の少女。その二人こそが、ソフィーが言う弟子であり、調査員と言った所だろう。
 青年の方は、青髪に緑色の瞳。黒いTシャツ、そして黒いジーパンを着用しており、その顔立ちは正にソフィーの一番弟子に相応しい印象が受けられる。
 そんな彼こそ、ソフィーの意思を受け継ぐトレジャーハンターの“ゼスト=ヴォルナット”だ。
 そして、少女の方は、明るみの緑色に輝くロングヘアーが特徴的で、緑色の長袖と白いミニスカート、そして緑色のラインが刻まれたハイソックスを着用している。
 そんな彼女もソフィーの弟子の一人で、ゼストの助手を勤める“リニア=リンゼルス”だ。因みに彼女はアーチャーの妹である。

「あ、ホーク! それにボスにお兄ちゃん。」
「御苦労様です。……ってアーチャー、何故朝食を此処に?」

 ゼストにそう言われたアーチャーは苦笑するしかなかった。その最中、ホークはリニアの座っている席に近付き、デスクの上までに飛び乗る。

「上の方で色々あったんですのよ………。兎に角、朝飯を食べながらで良いですから、ブリーフィングを始めますわよ?」
「ボス、ブリーフィングってまさか………。」

 ゼストの質問にソフィーは溜息をしつつもそれに答える。

「―――そのまさかですわ。依頼主は特殊自衛隊の仁王 突貴参謀。」
「えぇ~!? リニア達、昨日帰って来たばっかりなのに~………。」
「大丈夫ですわ。向こうにもちゃんと貴方達の状態を説明して、特別手当をして貰うように頼んで置きましたから……。」
「―――だと良いんだけどね。折角、TVゲームがいっぱい出来ると思ってたのに……。」
「リニア、グダグダ言うな。ボス、その依頼の具体的な内容とは………?」
「今からそれを言いますわ。アーチャー、みんなに朝食を出してあげて?」
「はい、ボス……。」

 アーチャーは返事後、各席に朝食を配り出す。
 其処で、朝食を食べながらのミーティングが始まる。朝食は、目玉焼きとマーガリン塗立ての食パン、そしてコーヒーのセットである。ホークには缶詰から取り出したビーフ系のキャットフードだ。
 無論、この光景はなんだか良く分からないような感じなのだが………。

「まぁ、特殊自衛隊の参謀様が直々に事務所に来まして、わたくし達に依頼をと言う形でしょう……。」

 ソフィーはこの台詞を吐き出しつつも、仁王参謀から借りたDVD-ROMを取り出す。

「ボス、それは……?」
「―――あぁ、参謀からちょっと借りたんですのよ。これを見ながらだと、貴方達に説明しやすいと思いましてね。」

 ソフィーは付属の機器にそのディスクをセットする。後、付属の大型の画面にソフィーが事務所で見た映像が映し出され、朝食を食べ始めつつある彼らはこの映像に目を通す事になる。

「ボス、これは一体………。」
「参謀が言うには、これは地球衛星ステーション“コウノトリ2号”が付近で撮影した映像らしいんですのよ………。」

 そう言うソフィーも食パンに口を付ける。

「………緑色と灰色か。でもこの光、何か戦ってるみたい……。」

 リニアもまたそう言いつつも目玉焼きを食べ終わる。
後に映像は此処で終わり、停止ボタンを押すソフィーの説明が再開される。

「――――この後、コウノトリ2号は米軍に連絡したらしく、自衛隊は米軍の支援要請を受けた後に特自が合同調査。その結果、これらの光のものとほぼ一致する振動派が、池田湖付近から検出されたらしいんですのよ……。」
「池田湖……? 鹿児島県の薩摩半島の南部にある、あの池田湖ですか?」

 朝食を食べ終えたゼストはコーヒーを口にする。

「えぇ、その池田湖ですわよ。」

 ソフィーも食後のコーヒーを飲みながらそう口にする。後、この基地に付属してあるキーボードを操作し、池田湖を検索する。
 後、大画面に詳細と一緒に池田湖の背景が映し出される。


「―――其処で、貴方達はその特自の調査隊と共に、池田湖の連携調査を行うって訳ですのよ………。」
「―――今度は自衛隊か。先行きが面倒臭そう……」
「リニア、文句は止めなさい。 この件に関してのプランは勿論、“B―――ブレイド―――”プランで行きますわ。」

 ソフィーはまたしてもキーボードに手を入れ、やがて画面が変わりつつある後に1機の人型機体がその詳細と同時に表示されていく。
 バイザー型の赤いカメラアイと頭上に付属してある2本のアンテナと、何処かの作品に出て来るSDのリアルロボット系の機体に似たフォルムが印象的だ。
 また、機体カラーも頭部とボディ、そして脚部は緑色が中心的。そして右腕は白をベースに青と灰色、左腕は灰色をベースに紺色と黒で構成されている。
 それこそが、ゼストが最も使用している探索用小型2脚ロボット“ブレイド”である。
 本来、この機体は複座型で操縦側はゼストが、そして電子サポート側はリニアがと言う形になっている。ゼストが難易度の高い遺跡探索などに殆ど使われているが、ソフィーから使用許可を貰わないと、愛用出来ないのである。
 ソフィーがマウスを使って画面上にあるマウスカーソルを動かすに連れ、ブレイドの周りに様々な武装がその詳細と共に立順に表示される。

「池田湖の調査と言いますから、おそらく水中調査は確実でしょうね。ですから……」

 ソフィーはマウスを操作し、画面上のブレイドに上のカテゴリーに表示されるパーツを付けていく。両肩に水中用のブーストパーツ、右腕にチェーンアーム、そして左腕にパイルバンカー、左手にガンカメラである。

「―――――このプランで行きなさい。」
「水中用のブーストパーツにチェーンアーム、パイルバンカーにガンカメラ…………ですか。」
「えぇ、そうですわ。池田湖と言えば、イッシーって言うじゃありませんの。もしも、そんなモンの類に遭遇しましたら、向こうだって生捕りするに違いありませんわ。無論、生捕りは出来なくても何かのサンプル回収くらいはするでしょうけど………。」
「あぁ、歯とか爪とか………。」
「―――ですけど、万が一と言うのもありますでしょうから………。」
「―――と言いますと?」
「もしも、貴方達と調査隊が生捕りに失敗した場合、2度目であっちが向かってきた時の対策ですわよ。」

 ソフィーはそう言いながらも、再度マウスを操作し、装備パーツを変更する。両肩にバックパックブースター、右腕にビックハンマー、左腕にレーザーブレード、そして左手にマシンガンを装備している。

「―――――このパーツも必要でしょう。」

 彼女のお勧めにゼストもそれを見て納得した。

「―――さて、何か質問は御座いまして?」

 ソフィーは自信あり気に腕を組み、質問を待つ。
 しかし、席に座っている人間からはそれの類の発言すら出てこない。と言う事は………

「宜しい。仁王参謀は明日の午前6時、池田湖付近に集合って仰ってましたから、それに間に合わせるようにゼストとリニアはブレイドの掃除、修理及び補給。それが終わったら直に準備に取り掛かりなさい。」

 ソフィーの指示後、ゼストとリニアは“了解”と返事をする。
 彼等は直に席を立ち、其々の準備作業を急ぐ。
 そんな中、このミーティングルームにただ一人座る彼女は大画面の映像を池田湖に戻し、もう一度それに目を通しつつ、眉間にしわを寄せながらもこう呟く。

「――――これは、本当に何かの前触れになりますわね……。」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年12月08日 00:15
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。