Well come to Earth1

「す……凄い! まるで本当に怪獣映画を見てるみたい!」
「―――あぁ、しかし………あの水竜を相手にこんな事出来るなんて、何てヤツだ………!」
「もし、何らかの使命があってあの大怪獣と戦っているなら、 あの巨人はきっとリニア達を助けようとしてるんじゃないかな?」
「おい、如何してそう言い切れる? 相手は未知の存在なんだぞ!」
「だって~、リニア達を守ってあの怪獣と戦っているんだよ? 味方に決まってるじゃん。」
「見せかけの可能性だってある。今は様子を見よう。」

 二人は水竜と格闘する巨人の様子を伺う。しかし、リニアはテンションが高めの状態でその戦いを見上げていた。
 10代の少女がそんな顔をするのも無理はない。この戦いは、普段と変わりない日常生活を繰り返している者にとっては、驚くべき光景だろう。
 しかし、ゼストはそれに対して、何とか冷静さを保っている。トレジャーハンターである彼等の仕事には、不測事態が発生する事が時々ある。が、このような事態ではないのは勿論の事である。
 だが、彼等も未知との遭遇をしている為、この光景にはやはり驚いている。
 水竜は巨人をその牙で噛もうと口をあけ、巨人は水竜の口を両手で押さえ込んでいる。その態勢のまま、両者は其々の力を押し合う。
 だが、押し合う両者の力が互角。
 それをゼスト達はただ只管見届ける。
 そんな中、何らかの光粒子が水竜の口に中に集中する。おそらく、自分の破壊光線で巨人の顔にダメージを与えるつもりだろう。それに気づいたのか、巨人は水竜の首を右足で蹴り、距離を取る。その振動に襲われながらも、水竜は破壊光線を吐くが、狙いが上手く定められなかった故、攻撃は外れてしまう。
 が、しかし……

「――――危ないッ!!」

 その弾が足元付近に居るブレイドに流れて行き、彼らは緊急回避に移行。破壊光線の速度、自分達との距離の差で回避はとても間に合いそうに無い。
 ―――が、そんな厳しい状況の中で、彼らはその難を免れた。

「……何とか間に合ったな。」
「うん。でも、やっぱりあの巨人を助けた方が良いんじゃないかな。何か苦戦している感じだし………このままじゃ!」
「待て、早まるな! この状況で下手に行動を起こしたら、俺達も危険に巻き込まれる可能性だってある。」
「………だって!」

 リニアは多少の焦りを覚える。

「お前らがそう言うのなら、俺だってそうしたいが、今はこいつ等に対する情報が不足だろ? まずは出来る限りの分析が必要だ! 今は我慢してくれ……」
「………分かった。」

 リニアは剥れ顔をしつつ、巨人の方を見上げる。
 この状況の中に居る人間の誰よりも早く巨人を味方だと認識した彼女にとって、これは何も出来ない事に対しての苛立ちなのだろう。
 しかし、その味方を自分の力で助けようとする正義感は忘れた訳ではない。
 ブレイドは一旦距離を取り、2体の巨体に向けてガンカメラを向け、戦いの分析を試みる。その最中に鷲尾から通信回線が繋がれる。さっき直撃した体当たりのショックで通信機はノイズが目立っている。
 挙句の果てにガンカメラから捕えている映像が送信出来ない状況だが、通信機のノイズは次第に消えていく。

<―――…い、聞k―――るか! 応答しろッ!! 無事か!?>
「こちらブレイド、我々は何とか無事です!」
<……そうか。さっき君達が感じた強い衝撃の御蔭で、こっちに送られている映像のモニターにはサンドノイズしか映らない。>
「―――なんだって!?」
「きっと、アイツにぶつかった時にガンカメラの送信装置が壊れちゃったんだよ! ダメになっちゃう程に……」
「あの時か―――――リニア、映像の送信をガンカメラからヘッドバイザーに切り替えてくれ。出来る筈だ。」
「出来るは出来るけど、“出来る筈だ”って決め付けないでよ!」

 リニアはゼストの指示通りにガンカメラの映像送信をOFFにし、ヘッドバイザーの映像送信をONにする。撮影によるカメラの性能はガンカメラより劣る物の、ちゃんと映っているし、映像送信も出来る。

<映像の受信を確認した! ……ってオイ、巨大生物と向き合っているコイツは一体何なんだ! ヒューマノイドタイプのようだが、コイツも湖に住み付いているのか!?>
「正直、俺達にも分かりません。 が、巨大生物に襲われている所を救われましたから、敵ではないようです。」
「ちょっと! 何で味方だって言ってくれないの!?」
「―――リニア、ちょっと黙ってろ! これより、我々はこの2体の分析に取り掛かろうと思います。何か因果関係が掴めるかも知れませんので……」
<―――分かった。何度も言うが、機体の大破だけは避けろ!>
「分かってます。リニア、直ぐに始めるぞ!」

 索敵に関しての全ての準備が整った後、彼らは巨人と水竜に対しての索敵を始める。
 さっきの破壊光線により、砂煙がまだ残る中、巨人は中腰の状態から立ち上がり、構えのポーズをし直す。
 後に水竜は目から青色の怪光線を発射。巨人はその攻撃を一度は回避するも、2度目はそうは行かない。巨人はその痛みに右手で胸を抱える。
 どうやら、この怪光線は見た目とは裏腹に、それなりにダメージがあると考えられる。
 そんな状態を未だに保つ巨体を、二人のブレイドは分析を試みる。
 水竜は目をもう一度輝かせ、怪光線をもう一度試みようとしている。

「ねぇ、ちょっと……今度こそヤバくない?」
「―――待て、慌てるな。まだそうと決まった訳じゃない。」

 後、怪光線の第2派が押し寄せ、巨人は飛翔、宙返りをして水竜の上を飛び越える。
 彼の身の危険を予想したリニアにとって、これはハズレになるだろう。
 水竜は振り向き、巨人の着地と同時に口から火球に酷似した光弾を連続発射。

「―――あっ、危ないッ!!」

 少女の言葉が通じたのか、巨人は身を伏せ、光弾は彼の上を反れてしまう。その流れ弾は後ろ側の地面に流れ、爆散するが、その為に起こった砂煙が巨人の視界を多少著しくする。
 しかし、その光弾が嵐となって、またしても巨人に押し寄せてくる。
 その状況の中で、巨人は右腕から金色に輝く棒状の物体を展開させ、それを使って光弾郡を次々と切り払う。
 それは、剣の刃の部分に全く酷似している。どうやら、巨人の主力武器のようだが、レーザーブレードの類だろう。
 しかし、水竜は次の光弾攻撃に備えた上で大きく深呼吸の後で口からまた吐かれ、巨人はブレードを左腕からも展開。自分に2度降り注ぐ火の嵐を双方の剣で迎え撃つ。
 結果は巨人側の悪戦苦闘のような状態だったが、何とか一つも直撃せずに防ぐ事が出来た。


「―――凄いッ! アイツ……光弾をあの剣で弾いちゃった!」

 巨人は右腕を力ませ、横に薙ぎ払うかの如く右手を大きく振り、其処から光波が飛び出す。水竜は自分の方に向かうその光波を避け、直ぐに怪光線で反撃をし、それは巨人の胸部に当たる。
 それに怯んだ隙に、水竜はその長い体を使って巨人に巻き付き、更にその力を強く締め付ける。それに対し、巨人は腰を下ろし、まるで悲鳴を上げるかのように首を振るう。
 彼の抵抗がまだ激しいと分かった水竜は、巨人の右肩を噛み付く。そのダメージは巨人にとって大きいが、まだ抵抗を続ける。
 しかし……

「―――あ、二人とも。アレを見て!?」

 巨人の胸に付属してある蒼い真珠のような物体が点滅し始める。

「……もしかして、危険信号なのかな?」
<そのようだな。今我々の方で調べて分かったが、あの巨人の生態の組織は人間と良く似ており、あの点滅は自分の体力の危険な状況を意味しているようだ。>
「………そんな事言っている間に段々とチカチカが早くなって来てるんだけど!」
「―――じゃあ、もし……あの点滅が更に激しさを増してきたら、あの巨人の体力はおそらく……!」

 巨人が苦戦する光景を見届ける中、二人の考察に一瞬凍りつくリニアはいそいそとゼスト側の操縦席へ一旦上がりこみ、後に彼側の機器に触れる。

「―――オイ! 何勝手に操作してるんだ!」
「決まってるでしょ!? あの巨人をリニア達で助ける! このままテュポールにやられるのを黙って見られないもん!」
「……テュポール?」
「あの大怪獣に名前付けてみたの。“宇宙水竜 テュポール”、カッコ良いでしょ~?」

 自分側の機器を操作するリニアに対して深く溜息をし、“この状況で良くそんな事が言えるな……”と言わんばかりに顔を多少顰め、鷲尾は引き続きリニアに反発する。

「良し、射突ブレードは健在だね。行ける!」
「―――ォイ、退いてろ! しょうがないヤツだ……」
<おい、ちょっと待て。お嬢さんは一体何を考えているんだ!?>
「リニア達に任せて、きっと上手く行くって! それに悪い怪獣と戦う巨人は味方だって昔から決まってるでしょ?」
<味方って言ったって、良いか君、良く聞いてくれ! 相手は3~40mの巨体を持っているんだ! 吹き飛ばされて返り討ちに遭うのがオチだぞ!?>
「大丈夫。あんなヤツの返り討ちになる程リニア達は馬鹿じゃないもん。一旦通信を切っちゃうね?」

 後の忠告を最後まで聞く事無く、通信回線が切れた。


 自分の言いたい事を無視された鷲尾は不満をぶつけつつも自分の席に戻り、向こう側が撮っている映像に目線を戻す。少女の予告通りに2体の巨体に近づいて行く様子がわかる。リニアのプロフィールも事前に確認した。
 彼女は14歳、思春期あるいは反抗期に入っている年齢だ。
 さっきのような突っ走りは多少予想してはいたものの、まさかこんなに早く起こる事は想定してはいなかった。
 テレビの中で暴れているような巨大生物に興奮しているのか、或いはそれと戦っている謎の巨人を助けたいのか………
 どちらにしても今の彼等の行動にやがて不安と胸騒ぎが過ぎて行き、次第に一人の自衛官の苛立ちを消す。
 だが、彼等は湖の中。それに比べて自分達はそれに対応出来る装備も装置も持ってはいない為、通信支援以外は成す術が無い。かと言って、何もしないのは自衛官としては癪に障るのは当然の事。
 何か策は無いのかと言わんばかりに頷く中、一緒に乗車していた彼の部下の一人が自分の視線を上司に向ける。

「隊長、我々は如何します?」
「一先ず、何時もどおりレーダーと電子通信で彼等を支援だ。あー、それから……」

 鷲尾は質問に応じつつ別の部下に目線を配る。

「―――お前は機銃の用意だ。巨体が湖から上がって来るかもしれないからな。」

 部下の一人は直ちに装甲射の上部へと上がり、機銃の安全装置を解除し、何時でも撃てるようにと準備を整える。火器は然程大きくも無く、巨大生物に痛みを感じさせる事の出来るダメージも高くは無いが、牽制攻撃にはなる装備ではある。
 周辺の自分の部下が作業中の中、鷲尾はブラウン管の中で動く巨体を見つめ続けつつ、今後の自分達の上の動きを予測した。

(今後のこいつ等の動き次第では、上の連中が黙っている訳が無いだろうな………。)


「………ったく、またやってくれたな。如何してくれるんだよ。」
「だって、放っておけないものは放っておけないんだもん!」
「怒られるのは毎回俺だし、始末書とか書くのも俺なんだぞ? 少しは苦労って言うのを考えろ。始末書だけはお前にも手伝って貰うからな? 逃げんなよ!?」
「―――分かったよ。ちゃんと手伝うから………。」

 不満をぶつけるゼストの視線を受けつつも、リニアは軽い調子で返した。
 ブレイドは左腕の拳を握り締め、何時でも射突ブレードが突ける態勢を取っていた。
 しかし、その気配をテュポールは察知し、眉間にしわを寄せて睨む。その目から放たれた雷は蝿に等しい彼等に触れる事は出来なかったものの、攻撃の態勢を崩した。
 態勢を熊崩されたブレイドは5秒弱ほど、ドミノ倒しの如くバランスを崩してしまう。

「クソッ、あの光線さえ無ければ良い所だったのに!」

 機体バランスが整った直後、更に2発、3発と続いて電流状の光線が次々と襲い掛かって来る。その光線に混乱を感じつつもゼストは双方の操縦桿を動かしつつもペダルを強く踏み、水中用ブースターを使って機体をロールさせ、光線を避けつつも距離を詰め、竜の牙を目掛けて射突ブレードの構え体勢を再び整える。
 が、続く光線により、その構えは虚しくも崩れてしまい、今でも続く光線の弾幕によりブレード攻撃は振り出しに戻る。
 未だにキリがない弾幕を避ける中、ブレイドは射突ブレード攻撃を諦め、反対側の腕に装備されているチェーンアームに切り替える。目の前の竜の牙をターゲットに照準を合わせ、右の操縦桿のトリガーボタンを押して銛を発射する。
 銛はテュポールの牙に刺さった。が、テュポールはその痛みを感じるべく、眉間に皺を寄せるだけであり、その痛みを感じつつも怪光線を出し続ける。
 ブレイドは水中用ブースターを駆使し、目の前の包囲網を突破しつつ、自分がくっ付きそうになる程に間合いを詰める。後にそのパイルバンカーを目の前の牙に目掛けて突き刺す。烈しい突きの轟音が響き、その強烈な痛みにテュポールは悲鳴を上げる。更に突かれた衝撃で、銛が刺している牙が口から剥がれ、竜はその場から離れる。
 銛は巻かれるチェーンの牽引で元の場所に戻り、未だに刺している牙のお陰で、チェーンアームは特大なハンマーにその姿を変える。そんな中、巨人は呼吸を激しくした状態で、テュポールを見上げる。

「良し、戦利品ゲット!」
「でも、侮るな。あの巨人から身を離してもまだまだ安心は出来ない!」

 ゼストの言う通りだった。
 テュポールは牙を痛め付けられても尚、もう一度その身を彼らの方に投げる。巨人はそのタイミングを見計らってテュポールの顔を右手で殴りつける。
 それでも竜は諦めずに飛び掛るが、目の前に居る敵の皮膚に触れる前に首を掴まれる。
 しかし、もがく姿勢を見せずに首を動かし、敵の顔面に噛み付くべく、顔と首を暴れさせる。それをゼストとリニアは巨人が再度追い詰められると判断し、彼らのブレイドは竜の頭上に密着する。
 何とかバランスを整えた後、未だに銛に刺さっている牙をハンマーとして、竜の頭に叩きつける。牙の刃先を叩きつけている為、多少のダメージを与えている。
 頭上からの衝撃より相手が怯んだ隙を見逃さず、巨人は正面の機体が自分の視線が離れたタイミングを見計らい、竜の顔面にパンチを食らわせ、次にブレードを展開させ、光波を喰らわせる。
 攻撃は二つとも命中し、テュポールはそのまま水面へと逃げ、やがて浮上する。それを見上げる巨人もまた飛翔し、やがて水面に上がって行く。

「先輩、リニア達も上がろうよ!」
「分かってる! しかし、之はマスコミとどの軍の連中も黙っちゃ居ないだろうな……」



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最終更新:2008年07月28日 01:37
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