僕は何者にも束縛されない自由な猫だ。

5つ子だったけど、お兄ちゃん達は次々と貰われたり拾われたりして、もう一緒にいられなくなったんだ…。

あ!あのね、素晴らしい家を見つけたんだよ!誰も入って来ないから、何の邪魔もされない。追いかけられる事もないんだ!

「…に…っ…のよ…」

んにゃ?何?誰か何か言った?

「…なにやってんのよ…。出てって…。あたし、猫きらい…」

人間の女の人だ…。やだ!出て行かないもん!折角見つけた、僕の家だもん!

「ここは、あたしの家…あたし達家族が暮らしてた家なの。…今はあたししか残ってないけどね…
ふん!さ、寂しくなんてないわよ!あたしはあんたみたいな野良猫とは違うの!」

え?…僕の言葉が分かるの?人間には僕達、猫の言葉は分からない…ってママが言ってた…。

「あぁ、それはね。あたしが幽霊だからよ。死んで魂だけになってるから、心に直接届くんじゃない?
さぁ、あたしの言う事が分かるんなら、さっさと出て行きなさいよ!」

…ゆうれい…?死んでる…?
「ほら、早く!出てけ!出てけったら!」

…やだ…行かない…!ここにいる!ここじゃないと嫌なんだもん!

「なんで、ここにこだわるの?あんた野良猫なんでしょ?好きな所に行きなさいよ。それともママの所へ帰ったら?」

…いない…もん…。ママは…ママは“くるま”に食べられたから…。そこの前の道で…。ここにいればママの匂いがするんだもん…。

「そう…なんだ…。じゃ、じゃあ…匂いが消えるまでだからねっ!独りぼっちで寂しいからって泣いたりしないでよねっ!」

泣かないもんっっ!僕…僕…強くなるんだもんっ!ママと約束したんだ!強く…強くなるって…もう…泣かない…って…っく…ぅぇ…ひっく…ぅぇ…ぇ…

「もう…泣くなったら!時々、あたしが遊んであげるよ。べ、べつに同情とか、あた…あたしも寂しいからじゃないからねっ!
暇潰し…そうよ、暇潰しする為なんだからねっ!嬉しくなんてないんだからっっ!」

…ぅぇ…ひっく…ぅ…。あ、ありがとう…。

「と、とりあえず…今日はもう寝なさいよね!あたし、あっち行ってるから!」

ママ…僕、強くなるからね。だから安心してよね、ママ…。
最終更新:2011年03月01日 22:56