苦しかった。生きる事、責任を取り続ける贖罪の日々は辛かった。
だが、人間は諦めなければ。生き続けていればいい事もある。
一人。だが心は折れなかった。約束を果たすため。罪を償うため。
私は10年、がむしゃらに頑張ってきた。
今日この日、この場所に立つために。
「京子。美里・・・」
墓前に私はいた。10年。あの日、あの夜・・・あの
出会いがなければ
私は失意の中、命を絶っていた。
ありがとう。ありがとう・・・
「いらしたんですね」
「・・・美里。会えるとは思っていなかった」
「そうですね」
相変わらず取りつくしまもない、つっけんどんな態度だ。だが、心なしか柔和な表情に
私の10年が思い出される。
「ありがとう」
「・・・こちらこそ。いろいろ、ありましたか?」
「ああ、大変だった。でも・・・悪くはなかった」
晴天の下、先に逝った故人と出会うとは。齢六十。人生に驚きは尽きない。
「ありがとう・・・父さん」
「ん?」
よく聞こえなかった。だが、聞き直す野暮はすまい。私は笑った。美里も・・・笑った。
最終更新:2011年03月05日 23:35