元々酒は好きじゃない。
なのに最近酒が飲みたくて仕方ない。
友人に言われた。お前は悪霊に取り憑かれている、と。
その悪霊の容姿を聞いて、思い当たる節があった。
いつかは忘れたが、居酒屋で飲んでいた時に怖い顔してこっちを睨んでいたオッサン。
思い出してみるとその
出会い以降確かに酒量が増えている。
オッサンと俺とは霊的相性がいいらしく、友人の力では祓えないとか。このまま放置すると取り殺されると忠告を受けた。
ちゃんとした場所へ御祓いに行こうと思っていたが、酒を飲んでいるうちにどうでもよくなった。
深酒が増え、普段の生活での失敗も増えた。
その夜も随分と飲んだ。
気が付くとオッサンと肩を組んで歩いていた。オッサンは上機嫌に見えた。俺もとても楽しかった。
突然の強烈な光に目がくらんだ。
目を開けると病院だった。
人通りの少ない場所でひき逃げに遭い、そのまま朝まで放置されたらしい。
生きていたのは奇跡だと医者にも警察にも言われた。
入院中、夢うつつの中人の気配を感じ、目をやる。
しょぼんとしたオッサンの姿がベッド脇に見えた。
事故以降、相変わらず酒を飲みたい衝動はあっても飲めなくなった。
注がれたはずの酒はいつのまにか無くなる――前述の友人曰く、不機嫌な顔したオッサンが片っ端から飲んでいるらしい。
購入しようとすると急にレジや自販機が動かなくなる――オッサンが邪魔しているらしい。
買えないようにって財布とか金運まで取り上げるのは勘弁してください。
彼女が出来た。オッサンの事を説明すると笑って受け入れてくれた器の大きい女性だ。
彼女に生活管理をしてもらえるようになって以来、徐々にオッサンの気配は消えた。
それに伴い飲酒欲求も消えた。
彼女との結婚式は内輪ではちょっとした伝説になった。
披露宴、そして二次会、三次会。
俺が参加している宴席全てで、酒と名のつくもの全て、瓶やグラスが倒れたり割れたり空になったりして、人の口に入る事がなかった。
視える人には、オッサンが上機嫌で会場内を飛び回っている姿が視えたそうだ。
今でも酒は消える。
見守ってくれているのかそれともただ飲み足りないだけなのか、まだオッサンは側に居るらしい。
元々酒好きじゃないし、仕事の付き合いで飲まなきゃいけない状況も増えたので結構ありがたい。
最終更新:2011年03月06日 08:19