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私はいつの間にか死んでいた。トラックが目の前に迫ってくるのが最後に見た光景。
あまりのインパクトにそれ以外のことは思い出せない。
それから、私はここにいる。ガードレール脇のかれそうな老木の根元に。

いつも私が死んだ場所に花を添えてくれる人がいる。
誰なのかしら。彼は。
晴れの日も、雨の日も、雪の日も。
そんな姿に興味をもって声をかけた。
「だれ、あなた」
彼は驚いて逃げ出した。もうこないだろう。寂しくなんかない。

けれど次の日も彼はきた。どうやら私を探しているようだった。
仕方なく声をかける。
「こわくないの?」
彼はなにかをしゃべる。私には聞き取れない。霊とはそういうものかと納得する。
「私に声は届かないの」
彼は寂しそうな表情をした。それから、花をそえ、私に一礼して帰っていった。

次の日も彼は来た。
私はまた、彼に姿を見せる。別に彼に興味があるわけじゃない。ひまだから。
彼は何か私に語りかけ、花と一緒にケーキを供えた。
「私は食べれないのよ」
彼はバツが悪そうな顔をして、線香をたくと供えたケーキを平らげた。
そしてまた一礼して去っていく。

彼はいったい誰なんだろう。私はそれから彼のことが気にかかり始めた。
いや、別に彼のこと自体を気にかけているわけじゃない。なぜ、毎日来るのかが気になるだけだ。
きっと生前の私は探偵並みの好奇心を持っていたんだろう。
しかし、その日から彼はぱったりと来なくなった。
夏の暑い日だった。


なぜこないのかしら? なにかあったのかしら?
体調を崩していたの? 仕事が大変なの? 引っ越したのかしら?
時を追うごとに気になってくる。

次、あったら飛び切りの笑顔でも見せてあげようか。
きっとびっくりするな。もしかしたら照れて顔を上げれなくなるかも。
べ、別に彼を喜ばせようとしてるわけじゃないんだから。驚かせたいだけなの。

時は一巡りし、暑い夏が来た。

彼が花をもってやってきた。私は驚いた。
もう、びっくりさせたかったのは私の方なのに。
私は彼の前に現れようとして気がついた。

彼の横には女性がいた。
すべてわかった。わかってしまった。
彼には好きな女性ができたのだ。
私を必要としなくなったのだ。あの夏の日。
そしてきっと、今日私に別れを告げに来たのだろう。
彼は女性と幸せそうな顔で花を手向けている。
キモチワルイ・・・。幸せそうな顔で私を見下している。
死んだ私にはできない、幸せそうな笑顔。
私は先月その寿命を終えた老木に手を添えた。倒れろと思いを込めて。

老木は難なく倒れ男女を下敷きにした。

それから、ここには霊が出るようになった。
姉と妹と弟の霊が。
「お姉ちゃん、なんてことすんのよ」
「ひどいよ、せっかく妹を連れてきたのに、嫉妬で殺すなんて」
「ば、馬鹿っ、私は記憶を失ってたんだからしょうがないでしょ!!」
夜な夜な三人で喧嘩をしているそうだ。
最終更新:2011年03月06日 08:54