第3話

――~ちっちぱいぱん♪――

ケータイのアラームで目が覚める…っーかいつオチてたんだろう?

「おはよーございますー」
「おはよう…静…花ッ!?」

なんで静花がとなりに寝てる?どんな奇跡だ?

「なっ…な…っ!?」
「起こしに来たんだけどータクちゃんがあまりに可愛くて添い寝しちゃったー」
「っ!?早く…出てって下さい」
「やだー」
「スリ寄るなよ!?」

当たってます!っーか多分コレは…

「当ててんだよー♪」
「ですよねー…ってバカっ!」
「いいじゃんスキンシップだよー」
「女の子がそんなっ…」
「タクちゃんだって女の子だよー?」

…そうでした。じゃ合法?……そういう事じゃねーしっ!!

「~っやっぱ恥ずいもんは恥ずいっ!!」

溜まらずベッドから飛び出し一目散にリビングに駆け込むと…

「やあ、おはよう☆」
「」

爽やか偽装をした篤史さんキタコレ。…もう、な、速やかに帰れ。
普通に我が家の食卓で新聞読みながらコーヒー飲んでんじゃねぇ!あ、ココアか、お前コーヒー苦手だもんな?
クソっ!新聞読む姿が画になりやがる。このイケメンがっ!……あの…だな、その…

「マグカップ…」
「おう借りてる」
「オレんだし…」
「知ってる」

…その辺だし、いつもオレが口つけんの…

「…知ってる、ワザとだし」
「何がだよ!?」

どうしてコイツといい静花といい、こうなんだ?

「……オトンとオカンは?」
「時計見れ」
「…あー、もう出掛けたんな」
「そゆこと、そこに着替え置いてるって小母さんが」

篤史の指さす先、ソファーの上にオカンの『趣味』の服。つまり、愛がいっぱいフリルいっぱい…

「……」
「おー、ピンクハ○ス!!」
「……ねーよ」
「コレ、その服に合いそうなリボンー」
「静花…余計なコトを…」
「早く着替えよー?メイクとかも教えたげるー♪」

この静花、ノリノリである。篤史写メをスタンバるな。

「髪まとめるねー」
「おぅ、サンキュ」
「ポニーテールにしたげる」
「まかせるよ」
「髪キレーだねー」
「変わりたてだからだろ」
「じゃあこれからちゃんとケアしないとねー」
「うなじがエロいすなあ」
「篤史、少し黙ってろ」

なんとか用意完了。今日は市街地にバスで向かう。新しい女子の制服は帰りに受け取るようにした。

「ところで2人共さ、学校休んで大丈夫なん?」
「おう、届けを出して公休になったよ」
「心配しなくていいよー」
「バスで出掛けるのも久しぶりだねー」
「そうだな前に長距離バスに乗り継ぎの為に…」
「あぁ、卒業旅行で大阪に旅行に行ったときか?」
「3人とも同じ高校なのに卒業予行もねーよな」
「この3人でバスに初めて乗ったのって…」
「小3の頃に映画観に行ったときじゃね?」
「あーそれだー」
「あん時さー帰りにタクが迷子になって」
「そうそうー」
「言うなよ…」
「コイツ置いて帰られたと思って先に家に帰ってさー」
「私たちタクちゃんをずっと探しててー」
「悪かったって…」
「家に着いたらオレらがまだ帰ってないって知って慌ててまたバスに乗ったんだっけ?」
「…そうだよ」
「すれ違いになる可能性とかは?」
「考えてねーよ」

2人への申し訳なさとか、もし事故に遭ってたりしたらオレの所為だとか、そんな事しか考えてなかった。罪悪感と不安でそこら中を走り回った。
その後、2人とは無事再会出来たんだけど…あれは何処だっけ?

「まずは…ユ○クロ?それともG○P?」
「悪くないけどお前そればっかだし…」
「だってそれ以外だと…BE○MSとか…?」
「今のタクちゃんだとB○AMSBOYの方かなー?」
「ピンクハ○スってどこ売ってんの?行こーぜ?」
「却下!いらねーし、今日以外もう着ねーよ」
「えー、似合うぜソレ」
「…もう着ねーし…」

オレはジーパンで良いのに静花も篤史もスカートばっかり勧めてくる。
…オレは篤史みたいな格好とかしたいんだが…元々似合わんし、今のオレはもっと似合わないんだろうな。

その長袖Tシャツ、良いな…え?カットソー?知らん。
篤史、お前が着てるベスト良いよな…え?ジレ?ナニソレ怖イ。

「静花さん?その手に持ってるのは?」
「黒オーバーニーソ」
「で、篤史?お前も何だソレは?」
「白オーバーニーソ」
「…おまいら…」
「ボーダーもあるよー!!」
「黙れよ!!」
「下着は絶対要るから、チュチュ○ンナに行こうねー」
「あー…下着なー…」

そういやそんなイベントがあるんだった…ところでこの胸にブラとか必要なんか?乳首以外まっ平らですけど。

「いや、ブラは要るよー」
「ウハっwww下着屋とかっwww漲ってきたっwww」
「お前、今すぐ帰れ」

下着屋での体験は筆舌尽くし難いものがあった。
店員さん、もう少しなんと言うか手心を…痛くなくても覚えますから…
AAAカップなるものが存在するなんて知らなかった…Aより下とかあるのか…ひんぬーどころじゃなかったな…orz

篤史は店外待機でした。

あとは、メイク道具とか?それと…

「生理用品とか買わなきゃねー」
「ちょっ…!?そんな露骨に…」
「それは必要だろ?お前真っ最中だし」

お前はなんでそんな素の反応なんだ?男子のクセに『生理』って言葉に対してそのリアクションはどうなんだ?

それにだな…

「なんでオレが生理中とか知って…!?」
「いや、保体の教科書」
「じゃ、マ○キヨ行こっかー」

生理用品コーナーなう。

なに?『おりもの』とな!?え?コレとコレ何が違うの?え?布ナプキンってナニ?
初心者には難しいとか、じゃあオレ一生ムリじゃね?
あ、コレはCMで見たことある。意味はわからんかったけど。

篤史は店外待機でした。

帰路の途中、市街地でも一際高いビルの広場でFMの公開録音のイベントがしていた。
オレの好きなアーティストがゲストだ。一瞬、足が止まり聴き入ってしまう。

………アレ?2人は?オレ、はぐれた?…また迷子とか…いや、携帯!そう文明の利器、携帯電話があるじゃないか!!

…電池の残りが殆ど無い?!えっ!?なんで?…昨日充電してねー…orz
一縷の望みを託し…頼むっ…繋がれ!!

【充電してください】…オワタ\(^o^)/

…どうしよう…っ!辺りをウロウロしてみるもそれらしい姿は見当たらない。
同じ所を何度も何度も探してしまう。ずっと駆け足で息苦しい。

ふと、あの日に2人に再会出来た場所を思い出す。

あの日、デパートの屋上の観覧車を見ながら交わした些細な約束。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あの観覧車、撤去されるんだってー」
「じゃあ、帰りに記念に乗るか?」
「そうだな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

はぐれた後、2人はオレが辿り着く閉店間近までそこで待っていてくれた。
そして今日も…

「…今回は早かったな」
「…ごめんなさい」
「そんな顔すんなバカ」
「?静花は!?」
「あー他を探してくれてる、今メールした」
「そっか…」
「よし、行くか」

篤史がオレの手を握り歩き出した。

「なっ…」
「またはぐれたら困るからな」
「もうしねーよ」
「信用ならん」
「ごめん…」
「嘘だよバカ」

商店街の時計台の下、静花がいた。

「…オイっ!?手!!」
「ん?」
「離せよ!」
「なんで?」
「静花がっ…」

静花の顔が珍しく不機嫌だ…。やっぱ彼氏が別の娘と手を繋いでりゃ怒るよな、中身はオレだけど…

「篤史くんっ?」
「何かな?」
「ズルいっ!」

静花はオレのもう片方の手を掴んだ。
アレ?間違ってね?

「私もタクちゃんと手をつなぐー」
「なっ…なんで」
「ずっと3人一緒なんだろ?イイじゃん」
「いや、普通に恥ずい…」

結局、オレが女になってもこの図は卒業式のあの日と変わらなくて。
少し苦い気持ちもあるけど…でも、オレは幸せだと思った…その時は。



第4話へ続く


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最終更新:2011年07月14日 14:30
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