『ちぇりー☆ぶらっさむ』【前編】

ちぇりー☆ぶらっさむ~登場人物~



◆大前 明(おおまえ あきら)
14歳・男
白谷中学2年2組
野球部(捕手)
野球部主将

鳥山、柴崎とは小学校からの幼馴染
今作の主人公的ポジション

◆鳥山 翼(とりやま つばさ)
14歳・男
白谷中学2年2組
野球部(投手)

◆水上 さくら(みなかみ さくら)
14歳・女
白谷中学2年3組
女子バスケットボール部

◆柴崎 つつじ(しばさき つつじ)
14歳・女
白谷中学2年2組
女子バスケットボール部主将



ちなみに前スレでも言いましたが、こいつらの名前はKO線の駅名からとってます
一部はもじるとまんま駅名として出てきます






 漫画とかエロ本とかでなんとなくその「物体」については把握していた。
 中学生。一番異性に対して興味が沸いてくる年頃だ。
 姿かたちはぼんやりとだけ知っていた。
 ただどんなものなのか、ということを知っているだけで、詳しくは分からない。
 知っているようなやつもいるみたいだが、俺はよく分からない。
 だから今日、授業でモザイクのかかっていない写真で見ることにわくわくしていた。


 昼休みも終わり、うるさかった教室も若干落ち着いてきている。
 隣の席の翼は相変わらず小難しそうな本を読んでいる。
 相変わらずこういうことには興味がないんだな、とつくづく思う。
 ヤツとは小学校からの付き合いだが、昔っから変わりない。
 自分自身は気づいていないようなのだが、ヤツは意外ともてる。
 もし俺が翼の立場だったら楽しいのだろうな、といつも思っている。



 そうこうしているうちに、保健の先生ががらっと扉を開けた。
 おおっという歓声が一部男子から沸きあがる。
 先生が入ってくるだけでこんなに騒ぐなんて、本番が始まったらどうなることやら。
 先生は入ってくるやいなや黒板に「女体化」とでかでかと白いチョークで書いた。
 傍目から見たら「なんだこれ。」としか思われないだろうが、これは授業だ。
 おふざけでやっているわけではない。自分達の将来に関わる問題なのだ。
「最初に言っておくけど、先生は女体化してしまった人です。」
 案の定教室はざわついた。
 そりゃそんなこと言えばこう反応するのは当然だ。
 俺はそんなことより無修正の写真が見たんだ。
 なぜか口元が緩み、俺はにやけ始めた。
「ふふふ、俺自重w俺自重しろwww」
 にやにやしながら翼に目をやると、冷たい目線でこちらを見つめていた。



 その授業は思っていた以上の衝撃を受けた。
 ぼんやりとは分かっていたものだが、パンドラの箱の中身を見てしまったような感じがした。
 授業中、俺の息子はずっといきり立っていた。
 たぶん他の男子も俺と同じ状態だっただろう。隣の翼を除いて・・・。
 だが俺はこの授業を通して、何かとても重要なことを考え始めていた。
 授業の始めの頃は、「無修正!無修正!」と腕を振りながら待っていたのだが、先生の話を聞いていくうちに自分の中の考えが少しずつ変ってきた。
 こんなおおっぴらに女性の体が見れるなんてのは、年頃の中学生にとっては嬉しいこと。
 でも見れるだけで、自分達の女体化が食い止められるなんてことはない。
 俺はそんな単純なことを忘れていた。
 辺りを見回してみる。一部のヤツは俺と同様に気付いている人もいるが、大部分は能天気にヘラヘラしながら授業を受けている。
 現時点で非童貞、もしくは女体化希望の人たちなのだろうか。
 少なくとも、俺は女体化を望んではいない。
 女体化を望む人なんて、ごく少数だろう。俺には翼との夢もある。
 心の中では、様々な思いが交錯していた。



 授業が終わると、教室は一気にざわついた。

「むは、すごかったな。」
 表面だけ元気そうに翼に話しかける。
 俺は表と裏では相当温度差あるのだろうな、と冷静に考えていた。
 翼は興味がないと一言で言った。
 相変わらずオクテなやつだな、と思う。
 俺も心では色々と考えていても、体は正確に反応してしまっていた。
 いきり立った息子を翼にアピールする。 翼は例によって冷たい反応。ため息をつきながら雨振る景色を見ている。
(俺だって・・・ため息つきたいよ・・・)
 萎える息子とともに、俺は教室を後にした。



「明、今日はどこで練習だ?」
 掃除中、机を後ろへ動かしている俺に翼が問いかけてきた。
 そういえば、まだ雨は降っている。
 昨日からしとしとと降り続いている雨は、まだ止みそうにもない。
 こういうときは体育館で軽い練習か、視聴覚室でスコアを書く練習のどちらかだ。
 ただ体育館は、他の部活動が使用しているので、大抵は使うことができない。
「今日はバレー部、練習休みだって聞いたぞ。」
 翼との会話の中でいい情報があった。
 善は急げといわんばかりに、掃除が終わるとすぐに顧問のいる職員室へ向かった。

「高幡先生、バレー部休みみたいですよ。」
「俺も聞いたよ。バレーの先生からね。」
 高幡先生は、職員室の一番端っこの席で新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。
 うちの顧問の先生は数学の先生だが、結構面倒くさがりやで、授業とかも適当に行う。
 他の教職員の人からはあまり評判はよくないが、生徒からは絶大な支持を受けている。
 俺個人としても結構好きな先生だ。
「それじゃ、今日は体育館で素振りとかだな。」
 無精ひげをさすりながら言う。
 俺はわかりました、と一言言ってから職員室を出て行った。



 体育館を借りたはいいのだが、投手陣はどうすればいいのか。
 どうせこれから主要な大会はないのだから、走りこみでもしようかな・・・
 いや、みんなと一緒にティーでもやらせようかな・・・
 俺は体育館に向かう間、ずっと悩んでいた。
「それじゃ、俺らは・・・階段ダッシュでもする?」
 野手に指示を出した後、俺は投手陣と捕手陣に問いかけた。
 翼はいいんじゃないのという感じで軽く頷いた。
 他の人を見ると、翼と同じような反応だった。
「よし、じゃあ階段に行くか。」
 そういうと俺らは体育館の階段へ向かった。
 ここの学校の体育館は2階建てで、1階に卓球場、剣道場などがあり、2階にはバスケットコート2面ほど取れる広さの体育館となっている。
 建てられてからそれほど経っていないのだが、なんだか古臭い。
 階段のある場所は陽のあたらない場所に位置し、電気を付けないと薄暗い。
「んじゃ、とりあえず10往復。」
 俺たちは階段を一気に上り下りし始めた。



 俺たちは目標としていた10本を軽くこなし、さらに20本プラスした。
 流石に30本もやったからだろう。みんな息を切らしている。
 入部してまだ半年の1年は、肩で息をしていた。
 体力に自信のある俺でさえ、相当きつい。
 チームの大黒柱である翼もへばっている。
「それじゃ・・・俺らは筋トレだな。」
 ふうっと一息ついてから、俺たちは体育館へ向かった。
 体育館では野手は新聞紙でティーバッティングをやっているのだが、一部の人はふざけて遊んでいた。
 ずっと同じ練習をしていると飽きるものだ。
(筆者にとっても雨の日の練習は地獄でした。必ずふざけます。主将サーセンwww)
 俺は遊んでいる人たちに注意を促し、自分の練習に向かった。
「ったく、ちゃんと練習しろって。」
 そこまで人数のいないチームではあるが、ひとつのチームを纏め上げるというのは大変だ。
 俺は主将になってからまだ3ヶ月も経っていない。
 全員に意識がいっていない自分にも落ち度はあるのだが、同級生には何とか補ってもらってほしいとつくづく思う。
 女体化しちゃえばこんな面倒なことから逃げられるのに、と最近思うようになってきた。
 ある種の現実逃避。でも俺は翼と都大会で優勝して全国に出るという夢を、小学校の頃から約束していた。
 絶対に逃げてはいけない。

 逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。

 ・・・やります、僕はやります!

 俺は何かを告白するかのように、隣でせっせと腹筋をしている翼に声を掛けた



「なあ翼。」
「ん、どうしたの?」
 翼は腹筋をしている体を一旦止めた。
 俺が非常に真面目な顔をしているので、翼はやや戸惑っている。
「あのさ、今日の女体化の授業のことだけどさ、女体化のこと結構真剣に考えないとやばいぜ?」
 翼は「は?」というような表情になった。
 真面目な顔してこんなこと言ってくるとは思ってもいなかったのだろう。
 授業中はエロイことしか考えていなかったのだろうというような顔をしている。
「なんで?」
 なんとなく予想通りの答えが返ってきた。
 俺は間を入れずに言う。
「なんでって・・・野球できなくなるぞ?」
「女体化したってできるじゃん。」
 女体化したってできる・・・そんなことは一切ない。
 俺の聞いた話だと、各スポーツで活躍していて女体と化てしまった人は、見るも無残な身体能力になっていたらしい。
 記憶、知能などのものはそのまま残るらしいのだが、骨格や筋肉などは全く別のものと化してしまう。
 どうしてそうなってしまうのかは今のところ解明されていない。
 世の中不思議なことだらけだが、こればっかりは不思議すぎてどうしようもない。
「いや、そういうことじゃなくて、今まで通りにできなくなるってこと。」
 俺はやや強いトーンで翼に言った。
 この言葉を聞いた翼は、何かを考えるように床を見つめていた。
 外はまだ、なかなか止まない雨が降っていた。



 高幡先生の話も終わり、今日の部活は終わった。
 体育館に備え付けてある大きな時計に目をやると、5時40分を示していた。
 奥では女子バスケ部が一所懸命練習をしている。
 つつじの大きな声が体育館に響いた。

 どうせ早く終わったんだから、今日はさっさと帰ろうと思った。
 早く帰れるときに帰っておかないと、日課である早朝ランニングがきつい。
「翼、今日はさっさと帰ろうぜ。」
 こくんと頷く。
 それを見た俺は後輩達と談笑しながら部室へ向かって行った。


~~~~~~~~~~~~~~


「あれ、そういえば翼先輩は?」
 後輩の一人が部室前でふと気付く。
 いまさらだが、俺も翼がいないことに気付いた。
「忘れ物でもとりに戻ったんじゃないの?」
「ですかね?」
 そう言いながら俺らは部室へ入った。



 5分くらいしてから翼は部室へ戻ってきた。
「どうしたの?忘れ物?」
「多分後輩のものじゃないかと思ってね。」
 翼は帽子とタオルを手に持っていた。
「あっ、先輩それ俺のです。」  
 後輩の一人が慌てるように翼の元へ行く。
「ったく、タオルはともかく、帽子くらいちゃんと持ってけよ。」
「サーセンwww」
 後輩は頭を掻きながら恥ずかしそうに言った。



「翼、さっさと帰ろうぜ。」
 俺はぱっぱと着替えを済ませ、翼を待っていた。
「いや、申し訳ないんだけど・・・」
 どこか遠慮がちに言う。居残りでもさせられるのだろうか。
「どうした?居残りとか?」
「ん、まあ、そんなところ・・・」
 少しバツが悪そうな感じで言う。
 どこか腑に落ちない言い方であったが、俺はそれほど気に留めなかった。
「――――てな訳で、まだ帰れそうにもないから。悪いね。」
「いやいや、そんなことがあるんだったら仕方ない。頑張って。」
 ごめんね、と一言言残して、翼は教室へと歩いていった。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月19日 22:10
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。