安価『悪魔召喚』

「お兄ちゃん、起きて!もう学校に行く時間だよ!」
毎朝恒例となったこの光景。
いつもなら軽く揺すれば起きるのだが、今日の兄貴は手ごわかった。
「お兄ちゃん!本当に起きないと駄目だって!」
「うう~ん・・・あと5分・・・」
低い声で答える。正気のないその声では、到底あと5分で起きるようには思えなかった。
埒が開かないと思った私は、最近私の周りにいるようになった「アレ」を呼んだ。

「ねえ、今日は兄貴が起きそうにもないから、何か罰を下してよ。」
「そんなの自分でやりなさいよぉ・・・こちとら寝起きなんですよ・・・」
私の目の前には、なにやら不思議な生き物がふわふわと浮いている。
生き物という表現は適切なのか分からないが、世間一般では「悪魔」だとか「化け物」だとか言われている。
不気味な格好をしており、頭には角みたいものが生えている。
「しゃあない・・・そこにあるバットで兄貴の股間を強打しなさい・・」
悪魔は眠い目をこすりながら、面倒くさそうに指示をする。

「そうすれば何か罰を与えてくれるの?」
「ん、ああ・・・多分・・・」
歯切れの悪い言い方。最後に何やらぼそっと言っていたのだが、よく聞き取れなかった。
私は勉強机の横に立てかけてあったバットを手に持った。
よくおもちゃ屋さんとかで売っているプラスティックのバットで、しっかりとしたバットではない。
握る手に力を入れ、バットの先端部分で布団に包まっている兄貴の股間をまさぐった。
「この辺り・・・なんか固い・・・」
コンコン、とその位置を確認し、私は思いっきりフルスイングした。
ボスッという鈍い音と共に、兄貴の口から「うっ」という声が漏れた。
(いやいや、こんだけ強打しちゃ、俺の出番ないだろ・・・)
悪魔はそう呟くと、そそくさと自分の家に帰っていった。

私はその後兄貴に滅茶苦茶怒られたのは言うまでもない。
「これが使えなくなったらどうするんだ!」と延々と怒られた。
私と話している間、兄貴はずっと股間を押さえていた。
顔には苦痛の表情が浮かんでおり、痛みを耐えるように歯を食いしばっていた。
それだったら早く起きろよ、と心の中で思っていたが、私はずっと黙っていた。

それから数日後、私には兄貴ではなく姉貴ができた。
やっぱり使い物にならなくなっちゃったんだな、とちょっぴり悪い気がした妹なのである。




時系列的に、安価『狸寝入り』の前に入る話です


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最終更新:2008年08月02日 16:14
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