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安価『ウサミミモードでーす』

「なんでこんなことしなくちゃいけないんだろ・・・ブツブツ・・・」

小声で文句を言いながら、俺は指定の位置で待機をする。
人が来たら「ぐわっ!」とか「うおっ!」とか驚かさなければならない。
薄暗く、もわもわと湿気の高いその場所。一刻も早く抜け出したかった。

学校祭でやるような質の低いお化け屋敷になんて人がくるわけがない。
狭い教室に机や椅子を重ね、窓は黒いカーテンで光を遮る。
天井にはモールやらなにやらくっつけ、無駄に装飾する。
所々光が漏れて、ガムテープで貼り付けてあるところが見えるというのが痛々しい。

どうせ来たとしても友達とか、親とか、先生とか、身内程度のもの。
「なんでこんな役俺がやらなくちゃいけなんだ・・・第一ウサミミつけたお化けとかってなんだ!?」

俺らのクラスの出し物がお化け屋敷に決まったとき、同時に配役も決めた。
誘導係、設置係、そして来た人を驚かす係。
俺は学校祭という馴れ合い行事が嫌いだった。
その日はぽけーっと外を眺めていた。
「おい飯能!お前この役やってくれないか?」
突然声が掛かった。俺はむっとした顔で声のするほうを見る。
悪友、小手指とその仲間達が何かを持ってにやにやしていた。
「お前になら似合うはずだ!」
俺のところに来てそれを被せる。
頭を前後に揺らすと、ふゆっふゅっと動くものがあった。
「・・・なんでウサミミなのれすか・・・」
思いっきり口を尖がらせて言う。だが小手指たちはお構いなしに話す。
「おいおい、すっげぇ似合ってるジャン!」
「めっちゃ可愛いよな!」
「飯能君かわいいー!」



クラスの皆が俺のことを見て騒ぎ出す。
なんだか悪い気分ではない気がしてくる。
俺は恥ずかしくなり、頬が少しだけ赤くなった。
「その恥ずかしがる表情、可愛いぜ!」
小手指の最後の一押し、俺はこの役をやる気になった。
「そ、それじゃ、やってみよう・・・かな・・・?」
小声で呟くと、大きな歓声が教室中から巻き起こった。
「べ、べつにやりたくてやってるわけじゃないのれすよ・・・///」
ちょっと怒った感じで言うと、教室はさらにヒートアップ。
顔に熱が帯びてくるのが自分でも分かっていた。すごく恥ずかしい。
その場の流れに任せて、俺はこの役に決まった。

「・・・今思うと、はめられた気が・・・」
煽てられるとすぐに調子に乗ってしまう俺。
自分の性格に後悔しながら、小手指たちのことをちょっぴり恨んだ。

「それじゃ、今から始まるのでお願いしまース。」
扉付近の誘導係から声が掛かる。
お化け役の人たちがういーと温い返事をする。
先程までついていた電気がふっと消え、闇が教室を包んだ。
俺はため息をつき、指定の位置に隠れた。
おっと、ウサミミをくっつけないとな・・・。

ガラガラッ・・・!

入口のドアが開く。
結構早めに始めの一人が入ってきた。
・・・いや、一人ではない。カップルで入ってきた。



「ねぇネリー、ぜんぜん怖くないんだけド~?」
「所詮学校の出し物だからな。ハハハハ!」
声の感じでは他校のDQNカップルと見受けられる。

「ぐおうぉぉぉぉ!」

最初のやつがDQN達を驚かせに行く。

「うおっ!」「キャッ!」

なめきっていたそいつらも流石に驚く。
すると男の方が襲い掛かったやつに殴りかかる。
「テメー、驚いたじゃねーかYO!」
ドスッ、ガスッと鈍い音が教室に響き渡る。
ううっと小さな声が漏れる。
女のほうはペタンと座り込んで泣きそうな顔をしていた。
「ネリー、こわいよぉぉぉ」
「俺がこいつボコボコにしてやんよ?(シュババババ)」

誘導係の人が異変に気付き、ようやく止めに入る。

「おい小手指、大丈夫か?」
「こりゃやべーな。もろで意識ないぞ・・・」
誘導係のぼそぼそっとした声が聞こえる。
どうやらやられたのは小手指のようだ。
俺は制止しに行こうと思ったが、怖かった。
巻き添え喰らうんじゃないかと動けずにいた。

いきなりの災難。今後の展開を暗示しているようにも思えた。



ちょっと間を置いてから二人目が入ってきた。

・・・いや、「二人目」というより「二組目」と言ったほうが正しいのだろう。
声を聞く限りでは、男同士っぽい。

「・・・ですから、この世に妖怪、化け物というものは存在しないのですよ、石神井氏!」
「いや、いる可能性だってあるんですよ、所沢氏!」
話し方からしてPC研究部のやつらっぽい。
いつもは無表情な彼らが、どんな反応を示すのかちょっと興味がわいてきた。
俺はわくわくしながら彼らの通過を待った。

「ぐおっ!」
一人目が出る・・・驚かない。

「うぎゃぁ!」
二人目が出る・・・驚かない。

「キシャー!」
三人目が出る・・・驚かない。

「やっぱり空想的な化け物ばかりでしたね、石神井氏!」
「学校祭で高レベルなお化け屋敷を期待してはなりませんぞ!所沢氏!」
冷静沈着な意見。まったく驚いている様子はなかった。



「しかたない!おれがいくのれす!」
何だかんだ言って気合十分の俺。
口ではこう言っていても、心の中ではやる気まんまんなんだお!

彼らが俺の前を通りかかった・・・

今だっ!

「てぇぃっ!」
拍子抜けするような俺の高い声が響く。
ウサミミをふるふると震わせる俺に、彼らは冷たい目線で見る。
すごい冷酷な目をしている。俺はちょっぴり固まった。
「こ、こわいですぅ・・・」
ぷるぷると震えながら涙目になる。
意識しないうちにこんな言葉が出てきた。

「・・・石神井氏、なんでこのお化けはウサミミモードなんでしょうかね?」
「これは興味深いですな。」

じっくりと俺のことを観察する二人。
小動物のようにぷるぷると震えている俺。
今すぐにこの場から逃げ出したかった。

「そ、そんなにみないでほしぃですぅ・・・」

涙目の俺。ふとその言葉を漏らすと、彼がが興奮し始めた。
「しゃ、石神井氏・・・これは・・・萌え・・・ですな。萌え!」
「あ、ああ。萌えますな!これは・・・ハァハァ・・・」



異変に気付いた誘導係の人は、俺のところに駆け寄る。
「おい、何飯能のこと泣かしてるんだよ!」
誘導係の入曽。柔道部出身の彼により、PC研究部の彼らは教室外へ放り出された。
「大丈夫か?飯能?」
心配そうに俺を見つめる。
なんかいつも以上に入曽がかっこよく見えた。
「ふぇ、だいじょうぶなのれすぅ・・・」
なぜだか分からないが、舌が回らない。
というより、このウサミミをつけていると、この口調になってしまう。
涙が溜まった目で入曽を見つめると、彼の顔はどんどん赤くなっていった。
「う、大丈夫そうだな・・・何かあったらすぐに来るからな。」
「うん、いりしょくんをたよりにしてるのれす!」
「そ、そうか///」
彼は顔を赤らめながら、ささっとその場から離れていった。

(なんでこんな話し方になるんだろ・・・?)
不思議に思いながらも、次々と来る人を驚かせて・・・いや、萌えさせていった。


「なんで喋り方変るんだ?」
「このうさみみのせいなのかもしれないのですぅ・・・」
午前の部が終了し、俺らは休憩に入る。
入曽が俺の変貌振りに驚いたのか、皆に俺の様子を話していた。
確かに女体化したから色々なところは変っているのだが、ここまで変るとは思ってもいなかったのだろう。
自分でもびっくりだ。
女体になってから、一度も意識して口調を変えたことはなかった。
やっぱり今回の件、このウサミミが原因なのだろう。



「ねぇ飯能君、そのウサミミ私に貸して。」
誘導係の女子が俺のウサミミに興味を持ったみたいで、ぽふっと被ってみた。
クラス一の美女が、ウサミミを被る。
「・・・話し方変らないね・・・」
左右にぷるんぷるんと揺らしながら話す。
サラサラとした長い髪とともに、大きな胸も揺れた。
そこにいた男子は、彼女のウサミミ姿に釘付けだ。
彼女は俺にウサミミを被せる。自分で位置を微調節し、ふるふると揺らした。
「でもふしぎなのれす。いしきしないでこんなしゃべりかたになるなんて・・・」
「ま、午後に影響はないんだから・・・それで頑張って!」
「う、うぅ~ん、わかったのれすぅ・・・」
消え入りそうな声で答える。俺は再び元の位置に戻った。

「にぱー♪」
「お化けなのかな?かな?」

後半のカオスっぷりは異常だった。
すでにお化けというものではなく、ただのウサミミ女と化していた。
しかも客付が午前中に比べて半端ない。
多分俺の萌え姿を見に来るというのが目当てなのだろう。
仕舞いにはカーテンをはずし、電気を煌々とつけたお化け屋敷となっていた。


数日後、いつの間にか俺は学校一の人気者となっていた。
ツンツンとした顔に似合わぬ幼女言葉。
異性のみならず、同性からの人気も高い。
俺はというと、すっかりそのウサミミが気に入ってしまった。
さぁ、今日も学校だ。
俺は手馴れたようにウサミミを被り、学校に向かう。
「きょうもウサミミモードなのれすぅ!」


240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/22(土) 04:05:02.73 ID:q/oO4fy70
>>239
キャラ者ではないんだなぁ・・・
西武線の駅名からとったwww
相変わらずの鉄道ネタで申し訳ない

主人公 飯能(はんのう)
悪友 小手指(こてさし)
柔道部 入曽(いりそ)
PC研 石神井(しゃくじい)
PC研 所沢(ところざわ)

ちなみにDQNカップルの「ネリー」は練馬からとったw





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最終更新:2008年08月02日 16:26
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