『虚像』プロローグ

書いてみた。



日曜の午後、何故か周り気にしながら、威圧的な本棚の間を進む。

あった。「医療関係」。

分厚い本棚の廊下側の側面には、プレートに手書きでそう書かれている。

奥へ進むと、棚に比例して分厚く、いかにも専門的そうな本が並んでいた。

さらに2、3歩歩くと本と本の間に突き出た、鉄製の仕切りが目に入った。


「女体化」

そこには、はっきりとゴシック体でそう印刷されている。

思わず「あった!」と声を上げてしまった。



その声に反応して、既にそこでその種類の本を熟読していた若い女性が、怪訝そうにこちらを見た。

私…いや、俺が目を逸らすと、そそくさと本を棚に戻し、駆け足でどこかへ行ってしまった。

すると、急に自分もこの場にいるのがとてつもなく恥ずかしくなってくる。

近くの、「女体化」の三文字が見える本を慌てて手にとり、何かに追われるようにしてその場を後にした。

貸し出し所の初老の男は、目の前に置かれた本をみて、不思議そうな顔で俺を一別したが、すぐに元の初老の顔に戻り、以降は機械的に作業を進めた。




あらあらしく本をカバンに詰め込み、いつもより速く自転車をこぐ。

上下する太ももに合わせて、妹から借りたスカートが揺れる。

周りに誰もいない事を確認して、呟いた。

「…なんで…俺が…」

一週間前まで男だった俺が…

溜息混じりに前髪を掻き分けた。

そして、今の仕種がいかにも女性らしい気がして、そんな自分が嫌になり、さらにペダルをこぐ足に力が入った。


プロローグ終

(難しい………)


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月17日 17:56
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。