1―
ある秋の夕暮れ。怪しい男二人組みが、我聞達の通う御川高校に向かい、歩いていました。
「なぁ湧次郎、なんでいきなり番司を鍛えてやるなんて言いだすんだよ、訳分かんねぇぞ。
つーかなんで俺が手伝わなきゃなんねーんだ?」
「何を言うか、理来よ。番司君はまだまだ未熟、仙術使いの先輩としては鍛えてやって当たり前じゃろ?」
「そうかぁ?結構やるようになったと思うけどな」
「いや、真芝に捕まるなんぞ、未熟の証だぞい」
「てめぇ俺も捕まったと知ってて言ってんだな?喧嘩売ってんのか!」
「おお!そういえばお主も捕まったんじゃったのう。一緒に鍛えなおすか?わっははははは!」
「くわぁ~ムカつく野郎だ!なにが鍛えなおす、だ。どうせかなえちゃん絡みなんだろ?
番司を鍛えてポイント稼ごうってか?どうせ無駄だぞ?俺はもうあきらめたぞ」
「何を言ってるんじゃ!かなえさんのつれない態度、あれは今流行の『ツンデレ』という奴じゃよ。
プレイボウイに書いてあったぞい。知らぬとはお主もまだ甘いのう、わっはははは!」
わっははは!と大声で笑う湧次郎を見て、『コイツ、バカか?』と言いたげな表情見せる理来。
お前にはツンだけで、デレがないじゃん、デレが!と心の中で叫んでいるようです。
「プレイボウイなんて読んでんのかよ! まぁあれはモテる男のバイブルだからな。湧次郎もこれでモテモテかぁ?」
「妬くな妬くな!かなえさんとの結婚式には招待してやるわい!わっははは~!」
「そうか期待して待ってるぞ、わが友よ」
相方の妄想……いや、夢を聞きながら、光の仙術使い帖佐理来は拳を握り、密かな復讐心に燃えていました。
(我聞の野郎も同じ高校だったな。ついでにこの前のお返しをするかな?)
そんな理来の相方、鉄の仙術使い如月湧次郎は……かなえさんとの結婚式を妄想中です。
2―
その頃、はた迷惑な理由で狙われているとは露知らず、我聞と番司は國生さんと3人で帰宅しています。
「今日は現場の仕事は入っていませんので、社長は仙術の特訓でもしていて下さい」
「いや國生さん、社長として書類整理を手伝おうと考えいるんだ……」
「仕事が増えるので結構です」
即答され凹む我聞。邪魔と言われないだけまだマシでしょうかね?
「頼りない社長もいたもんだな。國生さんも大変ですね」
ここぞとばかりに我聞を攻める番司。これをきっかけに國生さんと会話を!と、ささやかな願いを思い抱いているようです。
「商売敵のあなたに心配される筋合いはありません」
そんなささやかな願いは、氷の眼差しと、冷たい一言で砕け散りました。
(ささやかな願いすら叶わないのか)
番司は肩と落とし、我聞と同じく凹んでしまいました。
3―
それに気付いたのは國生さんでした。
「あれ、あそこにいるのはかなえさんでしょうか?それに……私?」
学校帰りの河川敷、3人で歩いていると前から2人の人物がこちらに歩いてきました。
その人物とは、番司の姉の静馬かなえと……國生陽菜、自分自身だったのです。
「本当だ、國生さんも一緒にいるな。おーい國生さーん!」
向かってくるかなえさんと國生に無邪気にブンブンと手を振る我聞。そんな我聞を異変に気づいた番司が止めます。
「待て、違うだろ工具楽!なんで國生さんが二人いるんだ、おかしいだろ?姉ちゃん、そいつ誰だよ!」
我聞達3人の前に現れた、巫女姿のかなえとスーツ姿の國生さん。
その2人は3人に不気味な笑みを浮かべ近づいて来ました。
「番司、気付いたか?この感じ、アイツ等……」
「ああ、仙術使いだな……テメェ、姉ちゃんじゃねえな?何者だ!」
さすがは2人とも仙術使いです。異変に気づき、身構えます。
「……問答無用!いくぞい!」
偽かなえがその外見からは想像できないようなずぶとい男の声を上げ、番司目掛けて襲い掛かる!
その手はかなえの白くて細い手ではなく、巨大な金槌に変化しており、気合一閃!番司の頭上目がけ振り下した!
「そいやぁ!必殺ハイパーハンマー!(如月仙術 撃・鉄槌)」
「うおぉ、あぶねぇ!テメェよくも!食らえ、撃・大水弾!」
直撃すれば重傷を負いそうなその一撃を、紙一重でかわす番司。そして、すぐさま反撃に出ました。
河の水を使い、巨大な水球を作り、偽かなえ目掛け放つ!轟音とともに、偽かなえに直撃する巨大水球!
だが番司の視線の先には……巨大水球を食らってもダメージ一つない、仁王立ちしている偽かなえの姿が。
「きかんわぁ!」
「は、弾き返しやがったのか?テ、テメエは化物か!」
偽かなえは体を鉄化してるので生半可な攻撃は効きません。
「番司、今助けるぞ!」
「おっと、お前の相手はア・タ・シよん」
我聞の前に立ちはだかる偽國生。我聞は番司との間に割って入ってきた國生の姿に、偽者と分っていても一瞬たじろぐ。
「社長!」
「大丈夫だ國生さん、危ないから離れていてくれ!」
「そうそう怪我しちゃうわよん」
「ふざけるな偽物!食らえ!穿功撃!」
我聞渾身の一撃も、偽國生はなんなく受けとめる。そして一発ボディブローを打ち込み、不適な笑みを浮かべ我聞を挑発する。
「ぐふ!こ、れは……螺旋、撃?……お、お前達、何者だ?」
「誰でもいいじゃない。うふ……いくわよん!」
偽國生が二人三人と次々増えて我聞に襲い掛かる!しかし我聞はその多重攻撃をかわし反撃!
だが偽國生を捕らえたはずのその攻撃は、体を擦り抜け当たらない。
そればかりか、偽國生の攻撃が我聞を捕らえ始めた。少し離れた場所で2人の戦いを見ていた國生さんは、気付きました。
「攻撃が擦り抜ける?これはどこかで……まさか、光の仙術使いの帖佐理来さん?」
「正解!さっすがは陽菜ちゃん」
耳元で自身の考えを肯定する男の声が。驚いて声の方を見ると、すぐ横に偽國生が立っており親指を突き立ててニヤリと笑っています。
「そっくりだろ?」
偽國生は満足げに笑いながらそう話し掛けてきました。
「なぜ社長たちを襲うのですか?それにどうして私とかなえさんに化けてるのです?」
突然自分のすぐ横に自分が現れて、一瞬混乱する國生さんですが、すぐに冷静さを取戻し、偽者に……いや、光の仙術使い、帖佐理来に話しかけます。
「いやね、湧次郎が番司を鍛えるってきかないんだよなぁ。
かなえちゃんに少しでも役に立つ男だってアピールしたいんだろうな。ははは、無駄だって言ってんだけどな。
で、陽菜ちゃんとかなえちゃんに化けたのは、その方が絵的にも面白いだろ?」
そう話しながら、親指を立てる理来が演じる偽國生さん。そんな無邪気な理来に國生さんは怒り爆発です。
「面白いからなんて理由で、マネするのはやめてください!番司さんを鍛えるなら社長は関係ないと思いますが!」
「我聞はついでだよ。しいて言うなら、この間かなえちゃんとこで殴られた仕返しかな?」
「あれは修業のための不可抗力です!」
「じゃこれも修業ということで。まぁタダだからいいだろ?そろそろ本気出してくるから応援ヨロシク!」
理来が発した『タダ』という言葉に動きが止まる國生さん。貧乏会社の経理をしている性なのでしょうか?頭の中で、電卓が働きます。
(確かに社長にもパワーアップしてもらわないと、本業での稼ぎがよくなりません。
本来修業の為に仙術使いを雇うのには、謝礼としてそれなりのお金が必要。
……タダで修行が出来るのなら、別にいいかな?)
答えを出すまでの時間、0,5秒。タダならOKという答えを出した國生さんは、強くなれれば儲けものとばかりに見学を決め込むことにしました。
が、見学しようと我聞たちの様子を見ると……そこにはいつの間にか下着姿の自分が。
黒のブラに、白いお尻が丸見えの黒のTバック姿の自分。
そんな下着を自分が着る姿を、今まで想像すらした事がなかった國生さんは唖然とし、固まってしまいました。
その間にも我聞と番司はボコボコにやられてます。
幸せそうな顔でノビている番司に、まともに偽國生の姿を見ることが出来ない我聞。
2人とも鼻からは大量の出血。鼻血ブーです。
「な、なんで下着になってるんですか!」
やっと我に返った國生さん、マジ切れです。
4―
1時間後、工具楽邸で國生さんと果歩に手当てを受ける我聞と番司がいました。
「しっかしお前らもまだまだだな。色んな意味で修行が足りねぇな」
「その通りじゃな。たかが下着姿の……」
「湧次郎さん!余計なことは言わないで下さい!」
「陽菜さん、下着姿ってなんですか?」
ボロボロの2人が帰って来たことで、最初は驚き慌てた果歩ですが、今は落ち着き番司に赤チンを適当に塗っています。
「何でもないです!ね、社長に番司さん?」
國生さんの刺す様な眼差しに頷く事しか出来ない二人でした。
「ま、いっか。それにしてもハチマキ男もたいした事無いわね~」
「ぐっ……工具楽もやられたろうが!」
「プッ、お兄ちゃんに担がれて来たくせに」
右手で口元を押さえ、にやけたバカにした目で番司を見下す果歩。
「あ、あれは理来さんが……」
「ププッ、言い訳~?負け犬パンツマ~ン」
番司がボロボロにやられたのがよほど嬉しいのか、アハハハと笑いながら番司の顔中に赤チンを塗りたくります。
「てめ~ぶっ殺……」
「あ、手が滑った、ごっめ~ん」
先に謝ってから番司の目に的確に赤チン塗りこみます。
「ふんがるぁるぎゅありゅが~!」
「じゃ、晩御飯用意して来るね」
のた打ち回る番司を無視し、他の皆にニッコリ微笑み台所へと消えていきます。
「……鬼じゃな」
「ああ、鬼だ」
苦しみ悶える番司を横に、湧次郎と理来は工具楽家の真のボスが誰かを悟りました。
「あ、そうそう、皆さんも晩御飯食べていきますよね?
斗馬、肉じゃがだけじゃおかずが足りないから 惣菜でも買出しに行ってきて。理来さん、付き添いお願いできますか?」
「お、飯食わせてくれるの?カワイ子ちゃんの手料理を食べれるってんなら、喜んで買出しいくよ~ん」
「ありがとうございます。斗馬ちょっと来て」
にっこりと微笑みながら斗馬を手招き耳打ちします。
しかし斗馬には、その笑顔が意味する事が分りました。斗馬の目には果歩背後に黒いオーラが見えているようです。
(分ってるわね?これは陽菜さんとお兄ちゃんを2人っきりにする作戦よ。必ず寄り道してくるのよ)
(デルタ4にお任せを、大姉上。しかし大男とハチマキめはどうします?)
(大男はデルタ3に任せるわ。残るハチマキは邪魔だからアタシが止めを刺して庭にでも捨てるわ)
(さすが大姉上、我が侭です)
(では、作戦開始よ。幸運を祈るわ)
果歩の作戦通りに、湧次郎と珠は外で組み手などして遊んでます。
番司は『味見よ』と無理やり食べさせられた、優さん印の薬入り肉じゃがのせいでダウンです。
まったく動かなくなった番司をズリズリと引きずって果歩達の部屋に放置しました。
さすがに庭には棄てなかったみたいです、鬼の目にも涙か?
(お兄ちゃん、男見せなさいよ?せっかく舞台を整えたんだから。しっかし優さんの薬ってホントよく効くわね。
さすがは番司撃退薬!いざという時のためお願いしてて良かったわ。……10粒は入れすぎたかな?)
果歩は、自身の策略で二人きりにすることに成功した我聞と國生さんを気にしながら、
何食わぬ顔をして優さんから貰った優さん印の書かれたビンをポケットにしまって料理を続けます。
5―
その頃、その薬を作ったマッドな優さんは、会社で中之井さん相手に得意げに話していました。
「ホントですってば!その薬を飲めば、誰でも初恋のときめきを取り戻せるんですよ。
薬を飲んだ後、最初に見た人を一目ぼれですよ。あの甘酸っぱい感覚が蘇るんですよ」
「そんな都合のいい薬なんて、ありえないじゃろ?」
「いえ、この優さんの手にかかれば不可能こそがありえない!
真芝のテキストを研究して作った薬はマウスでの実験には成功済み!
中之井さんもどうですか?さなえ様に飲ませればラブラブでっせ!」
うししし、と笑う優さん。マッドにもほどがありますね。
「恐ろしいことを言うない!しかしマウス『には』成功ということは、人ではまだ試しとらんの?
わし等で試そうとしたんじゃろ?……人体実験するつもりじゃったな!」
「ま、まあ、そうとも言うかな~?」
「優君!悪ふざけも過ぎるぞい!そんな薬、没収じゃ!」
「断固拒否しま~す」
「なら國生君に言って給料及びボーナスの大幅カットじゃな」
「そ、そんなご無体な~」
優さん肩をガックリと落とします。給料とボーナスの大幅カットは痛すぎです。
「何処にあるんじゃ、その薬は?」
「この引き出しの中に……あれ?ない。なんで?」
「ないじゃいかんじゃろ優君!」
「あれ、この薬ビン……あ、番司撃退薬と間違えて渡したんだ」
「なんじゃい、その撃退薬ってのは?」
「あはは、こっちの話ですよ。薬は果歩ちゃんに預けてます」
「果歩君ならむやみに使わんじゃろうから安心じゃな。後でワシが回収するからの」
「横暴はんた~い!」
「給料カットとどっちがいいんじゃ?」
「薬は差し上げますのでどうか……」
「うむ、今回は國生君には黙っとくが、次はないぞい」
「はは~、キモに銘じときます」
薬で一儲けしようと企んでいたのか、ガックリと肩を落とす優さん。どうやら中之井さんに完敗のようです。
6―
そんな危険な薬を飲ましたとは露知らず、果歩は調理を終えて襖のあいだから我聞達を覗いています。
(何やってんのお兄ちゃん!そこは抱きしめて熱いキスでしょ!)
「おい」
(何のほほんと喋ってんのよ、手ぐらい握りなさいよ!っていうか押し倒せ~!)
「…おい、無視すんなっ、くそアマ!」
いつの間にか復活した番司が果歩の背後に立っており、顔は怒りで震えてます。当たり前ですね。
「わっ!もう復活したの?邪魔だからこっちへ来なさい!」
2人の邪魔にならないように、慌てて番司を自分の部屋に連れて行きます。
「てめぇコラ!赤チン目に塗りこんだあげく、なに食わしやがっ……た?」
言葉に詰まり、果歩を見つめる番司。何故か果歩から目が離せません。
(なんでクソアマから目が離せないんだ?胸もドキドキするし……変な物、食わされたせいか?)
正解ですよ、番司君。君は知らないうちに、ほれ薬を食べるという人類史上初の体験をしたんですよ。
「今お兄ちゃん達は大事な話し合いしてんのよ、邪魔しないで!……って顔、真っ赤じゃない!大丈夫?」
流石に薬を盛った事に罪悪感があるのか、番司の体を気遣って、熱を測ろうと番司の額に手を当てます。
「うをっ!きゅ、急に触るんじゃねえ!こ、心の準備ってもんが……」
「はぁ?何言ってんの?変な物でも食べたんじゃないの?」
果歩さん、一服盛っといてそれはないでしょ?
(おかしい、なんで熱計られたぐらいでドキドキするんだ?なんでこいつが急に綺麗に見えるんだ?)
「う~ん、熱はないみたいね。少し横になってたら?」
赤い顔した番司の為に、フトンを用意する果歩。
本心は『いいところなんだから、2人の邪魔させないわよ!』ってところですかね?
しかしそんな果歩の本心は露知らず、番司は果歩の言葉に感動しています。
(なんて優しいんだ!……よく見ればエプロン姿じゃないか。よく似合ってるなぁ、ああ抱きしめたい……ん?
抱きしめたい?んな、何考えてんだ、俺は!こいつはいっつも俺の邪魔を……けどよく見るとコイツ、可愛いよな。
料理も上手だし、綺麗な髪してるし……っていかんいかん!熱で頭がおかしくなってんのか?)
「こらっ聞いてんの?ホントに大丈夫?布団敷いとくからしばらく寝とけば?」
「だ、大丈夫だ、ありがとう。……優しいんだな」
果歩の言葉に感動してしまった番司。
心の中では『俺みたいな奴になんて優しいんだ!……まるで天使だ』と大感激してしまってます。
「へ?そ、そんなの当たり前よ。急に何言い出すの?アンタ変な物でも食べたんじゃないの?」
だから食べさしたのはあなたでしょ?
(当たり前だなんて……俺は今まで何を見てたんだ。こんなにいい子を目の敵にしてたなんて……)
「どうしたの、ボーっとして。ホントに大丈夫?」
真っ赤な顔で普段は言わないような事を言い出した番司が不安になり、果歩は首を傾げて顔を覗き込みます。
果歩のその仕草と表情が、あまりにも可愛く、番司は果歩から視線をそらせません。
(か、かわいい……だめだ、興奮して頭が……抱きしめたい……我慢…できない!)
目の前にある可愛い顔。ついに番司は堪えきれずに果歩を抱きしめてしまいました。
「ふわ!ちょっ!何すんの!この、離しなさい!変態パンツマン!」
急に抱きしめられて焦った果歩は、ポコポコと番司の頭を叩き、抵抗します。
頭を叩かれて正気に戻った番司は、果歩の両肩に手を置き自分の想いを語りだしまた。
「……すまん。お前の顔を見ていたら、どうしても我慢できなくて、つい抱きしめちまった。
ビックリさせちまったな、本当にスマン。……だが聞いてくれ!
どうやら俺はお前に、工具楽果歩に……惚れちまったみてぇだ。お前が……好きだ!」
突然の番司の告白に、果歩はキョトンとしています。
しかし、なにを言われたか理解した瞬間、アワアワと慌てだしました。
「あ、あんた絶対変な物食べたでしょ!あ、頭おかしいんじゃないの!」
いや、だからあなたが[以下略]
「違う、今までの俺がおかしかったんだ!お前をぜんぜん見てなかったんだ。今日はっきり分ったよ」
真剣な眼差しで果歩を見つめます。
「冗談にも程があるわよ!ふざけてるのなら……」
「冗談でもねぇし、ふざけてもねぇよ!」
番司は再び果歩を抱きしめ語ります。
「俺が好きなのは……愛してるのはお前だ、果歩。愛してる、好きだ!……付き合ってほしい」
番司は自分の思いを込めて、果歩の細い身体を力強く抱きしめます。
「な、なんで私なの?急に言われても困るよ……信じられないよ……」
「俺だってなんでお前なのかワカンネェよ!けどお前しか考えられねぇんだ!お前しか見えねぇんだ!お前が……好きなんだ!」
2人が抱きあったまま、数分が過ぎました。
「……浮気、許さないからね?……絶対だからね?」
「えっ……てことは?」
「そう、OKよ。こんな情熱的な告白受けたらOKするしかないでしょ?」
ニッコリと微笑みながら番司に顔を近づけます
「こんな可愛い彼女なんだから大事にしなさいよ?」
「あたりまえだろ?俺の最初で最後の女だぞ」
「絶対だよ?……ねぇ番司、もう一度……言って……」
「ああ、何度でも言うぜ。愛してる果歩。お前が好きだ……お前が最初で最後の女だ」
「番司……」
「果歩……」
抱きしめあい、見つめ合う2人の顔が徐々に近づき……そして唇が重なった。
恋人同士になった2人の初めてのキス。2人の人生で初めてのキス。
初めてのキスにお互いを強く抱きしめあい、夢中で唇からお互いの熱を感じあっている。 ……覗かれてるとも知らずに。
(番司……果歩をよろしく頼むぞ)
大声で話していた2人の様子を覗いていた我聞と國生さん。
我聞は愛する妹の幸せに、涙を流し祝福しています。一緒に見ていた國生さんは……
(うわっ果歩さん、キスまでして……私もいつかは社長と……)
隣の我聞を見つめる國生さん。しかし我聞は果歩の幸せを祈って泣きじゃくりです。
(……はぁ、私は前途多難、だなぁ。……優さんに惚れ薬でも作ってもらおうかな?)
いっぽうその頃会社では……
「ところで優君、惚れ薬というのはどのぐらいの期間持つんじゃ?」
「あ~マウスで2週間ぐらいだから……人だと飲む量にも変わりますけど、一粒3日ぐらいかな?」
7―
この日から数年後、この日、工具楽邸にいた男女で3組のカップルが誕生しました。
それぞれのカップルには色んな波乱がありましたが、お互いの力を合わせ、すべて乗り越え幸せに暮らしたそうです。
……ただ湧次郎は相方に『ロリコン野郎!』と言われ続けたそうです。
最終更新:2007年12月20日 00:08