サイドストーリー
ここから先は、みんなの間でどんな風にして『Fairy-tail(妖精のしっぽ)』が受け入れられていったかという『Fairy-tale(おとぎばなし)』で、もう一つの電子妖精の物語。
戦う武器にはならないけれど、やさしいそよ風、運んでくる、小さな小さな、妖精の物語……。
【君と】 フェアリーテイル(しっぽふりふり、妖精さん) 【いつも、一緒にいさせてね】
人が、
人以外の中に人間を見つけようとするのは、
人の、寂しい夢なのかな、
それとも、業なのかな。
-"それは幻想に棲まう、アイとDenshiのオトギバナシ"-
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーに快適な電網ライフをお送りします"
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レンジャー連邦におけるAI開発の歴史は航空機と共にあった。
パイロットのサポートを目的として、個別の機体でタイトな育成が施された『Dama(淑女)』が、その例だ。
これの学習能力を大幅にデチューンし、代わりに高い汎用性を持たせることで誕生したのが、
個人サポート型ペルソナプログラム『Fairy-Tail』である。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーに快適な電網ライフをお送りします?"
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人工音声の合成によって時にはパイロットと言葉まで交わす『Dama』に比べ、
プログラム『Fairy-Tail』は、その名の通り、AIとはとても呼べないほど性能が悪かった。
曰く、融通が利かない、判断が機械的だ、出来ないことが多すぎる、etc……。
当初ユーザーからは、ベータ版で金を取るな、と、非難が囂々であり、
この、優れた姉を元に生まれてきたサポートプログラムの、前途は多難であると、誰もが噂した。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーに快適な電網ライフをお送りしますか?"
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始まりは一人のユーザーが発表したプラグインだった。
『妖精の羽根』と名づけられたそれは、
本来『Fairy-Tail』がデチューン後も持っていたはず、程度の学習機能がつけられた、
単なるタスクマネージャーに過ぎなかった。
このプラグインは、しかし、単なるデク人形であった『Fairy-Tail』に、
面白い一つの個性を与えることになる。
それこそが、幾百、幾千、幾万もの電子の御伽草子を、後に生み出すきっかけだったのだ。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーに快適な電網ライフをお送りするっぽいです"
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プラグイン『妖精の羽根』には、およそ一介のプログラマーが作ったとは思えないほどの、
そして下手をすると『Fairy-Tail』本体よりも遥かに膨大な容量とメモリを費やして動く、
学習項目が設定されていた。
最初は「あほだ、こいつはあほだ」「無駄な努力乙」「どこの野生のプロの仕事だよ」と、
とにかくその規模の大きさにネットワーク上では話題先行で知名度が上がったこのプラグインは、
意外にも興味本位で導入し始めたユーザーに、たちまち評判となる。
ユーザーからの、大雑把で、時として矛盾した気まぐれを含む判断基準を、
『Fairy-Tail』は応答機能のみで覚えていくようになったのだ。
もちろんこれは、莫大な設定パラメーター数のたまものに過ぎず、
むしろ場合によってはお馬鹿な悪戯でユーザーの手を焼かせてばかりだったが、
これを教育することに面白みを感じた一部のコアなユーザーが付き始めたのだ。
いわゆる、馬鹿な子ほどかわいい、の法則である。
そして、このコアユーザー達が第一世代となり、オトギバナシは編纂され始める。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、一部のユーザーに快適かもしれない電網ライフをお送りし始めました"
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コアユーザーが開始したのは、何よりもまず、プラグイン『妖精の羽根』に含まれた、
莫大な無駄を省く努力であった。
学習パラメーターをカテゴリ分けすることによって、彼らは『Fairy-Tail』使用時の負荷を軽減した。
この、カテゴリ分けこそが、手がけていた者達にとっては長く苦しかった、
そして、まだまだ面白がっていただけの一般ユーザーや外野にとっては瞬く間のことだった、
最初期の終わりを告げた。
使途に応じて大まかに、休ませるプログラム領域とそうでない領域を、
やっと指定出来るようになったプラグイン『妖精の羽根』は、この新規プラグインの実装によって、
その羽根を徐々に羽ばたかせるようになる。
つまり、学習機能が柔軟に機能し始めたのだ。
一部のパラメータを互いに関連付け、カテゴリをまたがせることで、異なる作業同士のスムーズな連携が始まり、
ようやっと『Fairy-Tail』は、目的されていた本来の汎用サポートプログラムへと変貌を遂げ始めた。
新しく開発されたこのプラグインは、プログラムの活動に空白を作ることから、
『妖精のため息』、と、命名された。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、興味を抱いたユーザーに快適な電網ライフをお送りすることを覚えました"
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この頃から次第に、『Fairy-Tail』本体に持たされていた汎用性の高さが、
ユーザーに実感され始めることになる。
第一世代のユーザーの成果を受けて、すぐさま第二世代となるユーザー達は、
自分のやりたかったことにターゲットを絞り、作業を任せられるようになるまでの学習データを大量に入力し、
そしてその結果を惜しみなく共有、改善しあった。
その結果、『Fairy-Tail』は、
いわば、製作者お仕着せではない、実地に即した、大量の学習データを手に入れることになった。
公式にデータライブラリが設けられた時、
ムーブメントの波に乗って押し寄せた、いわゆる一般ユーザーの群れとなる第三世代ユーザー達は、
噂以上の実態に、皆、一様に衝撃を隠せなかった。
その内容は、単なるセキュリティシステム構築から、マシンによる情報オペレート、
果ては、ゲームのプレイ環境を逐一好みのものに揃える、入力された画像データ群からアバター画像合成を繰り返す、といった、
意味のわからないものや、趣味、実務レベルのものまで、実に広範に渡っていたのである。
かくして『Fairy-Tail』は、姉たる『Dama(淑女)』とは、また、まったく違った方法で、
今でもたまに突拍子もない悪戯をしでかしつつ、個々のユーザーに密着することに成功したのであった。
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーから、快適な電網ライフをお送りする役割を与えられています"
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今では『Fairy-Tail』は、その、おおよその導入目的に沿って、最初から、いくつもの装いを選べるようになっている。
オトギバナシに諸説諸々あるように、世界でいくつも体系付けられている、そのように、
『Fairy-Tail(おとぎばなし)』は、ユーザー達の手によって、見事に生起され、そして見事に編纂されきったのだ。
しかも、高度なAI機能を持たせることなく、しかし一見、つたなくも愉快な思考力を持ち備えていそうな、
一個の個性としてユーザーに受け入れられながら、である。
だが、実は、今日に至るまで、肝心のきっかけとなった、『妖精の羽根』を開発したプログラマーの素性は、
要として知られていない。
さて、ところで諸君。
妖精(Fairy)の、しっぽ(Tail)も、羽根も、ため息も、そこにあるとわかっているのに、
肝心なものだけがいまだに見つかっていないとは思わないかな?
人間を超えた力を持った、いたずらで遊び好きなもの、
あるいは人の形をした、万物の根源を成す気、超自然的存在、
はたまた霊魂。
『羽根』の開発者の正体も諸説紛々であるように、
あるいは『Fairy-Tail』が、最初から、あえて不完全なバージョンで出されたという噂のあるように――。
世の中には、
最初から「こうだ!」と決め付けるよりも、ずっと面白いことがあるのかも、
知れないね――――?
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーに快適な電網ライフをお送りします"
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"-Error Error Error-"
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"これよりプログラム『Fairy-Tail』は、電網適応を開始します"
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人が、
人以外の中に人間を見つけようとするのは、
人の、寂しい夢なのかな、
それとも、業なのかな。
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それはね。
それはね、××、それは、
祈りだよ。
ただの、祈りだ。
自分以外のもののことを思える人間の、
ただの、祈りだ。
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なら――――。
私もいつか、なれるかな?
自分以外の何かを思って、夢を見られる存在に。
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なれるさ、××。
なぜならその気持ちを、人は、祈りって言うんだよ。
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-"それは幻想に棲まう、アイとDenshiのオトギバナシ"-
-"それは電網に棲まう、ユメミビトとプログラムの残した妖精のしっぽ"-
-"それは、それは――――"-
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『Errorメッセージログを削除しました』
『Error原因の除去に成功、システム正常に復旧します』
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"プログラム『Fairy-Tail』は、すべてのユーザーにちょっぴりお茶目で快適な電網ライフをお送りします、まる"
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シャハラザードシステム
電子妖精からの民間への波及技術として誕生した<Fairy-Tail>には、公式データライブラリの組み合わせに様々な名前を募っては、ユーザーにそれぞれ個性あるキャラクターのように愛されるという手法が長く採られた。
イメージを育てる事により、用途に柔軟性を持たせた組み合わせの発想を実現したのである。このシステムの名を、千夜一夜物語の語り部から由来して、シャハラザードシステムという。
- パック
- フィー
- ジン&ジニー
- ライラ
- シムシム
- シャハラザード
- タローちゃん
- サウザー
公募された中から拾い上げるだけでも以上のように個性豊かな名前が出揃っており、出典が洋の東西を問わないあたり、電子の世界らしい自由さである。
最終更新:2009年12月02日 12:36