こまったなぁ。と思ってしまった。
愛の国に生まれ、愛を知ると、おちおち狂う事もできやしない。

とても幸せで、幸せであることを知らないくらい幸せだった。
少女から女性へと変わる過程で家族を奪われ、絶望した。
理不尽だった。この世の全ての不条理に憤った。
怒り、苦しんだ。
この世の全てを恨み、呪詛の言葉しか、怒号しか発せない時期があった。

でも。同じ悲しみを抱えた彼が、思い出させてくれた。
「愛しい人がくれた愛までは誰にも奪えない」
諭してくれた。
「愛しい人がくれた愛は誰にも奪えないが、忘れてしまうことはある」
自分も泣きながら、苦しみながら、
「思い出して、貴女の胸に密やかに、でも確かに灯る愛の火を」
私の手をつかみ、見つめながら
「苦しみを忘れなくていい。怒りを忘れなくていい。でも、愛も忘れないで」
共に生きようと囁きながら
「きっと、これからだって、愛は私たちと共にあるのだから」
私に、残されていたものを思い出させてくれた。

彼と共に生き、また、新しい愛を共に育みはじめた。
失った家族を忘れるなんてできない。その不条理を決して許せない。
でも、それは新たに踏み出せない理由にはならないんだ。

新しい命を授かり、私たちは家族になり、愛はまた、輝いていくはず、だった。
また、不条理で全てが奪われていった。
情け容赦なく。全てを。

狂えてしまえば楽だったのに。
私の胸にある愛がそれを許してくれなかった。
あなた達がくれた愛が優しすぎて、強すぎて、暖かすぎて。

私たちは愛の民。連邦の民。
愛は優しく、残酷だ。

全てを抱えて、恨みも喜びも忘れさてはくれず、生きていけと囁く。
死にたい死んだほうがましだと心が叫んでも、お願い生きてと愛が囁く。

そっと詠う
“右手に正義 左手に勇気 胸には愛を”

私たちは愛の民。
誇り高き連邦の民。

生きて
笑って
忘れないで

愛しい人達の声がする。

今はまだ
涙が止まらないけれど、
立ち上がれないけれど、
それでも、歩き出せる自分を未来に感じている。

“立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように”


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嵐吹く 銀の砂舞うこの国で
空が落ちても前を向く 心に描く誰かのために
右手に正義 左手に勇気 胸には愛を
我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日
立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように

陽は燃える 銀の風吹くこの国で
海が割れても前を向く 心に描く何かのために
眼(まなこ)に夢を 唇に歌を 胸には愛を
我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日
いざ行かん 命尽きてなお あなたが愛と在るように
  ――――――――――――レンジャー連邦国歌(非公式)







最終更新:2011年07月15日 20:49
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