僕は体が弱い。何度目かの入院中に、彼は突然やってきた。体格に恵まれていて頭もいいのに、気さくでいつも良くしてくれる。
彼は僕のヒーローだ。
そんな彼が乱暴にドアを開けて僕の胸ぐらを掴み、目にいっぱい涙を溜めて僕を見据える。あぁバレたなと僕は悟った。?
「なんでだよ、俺、お前とずっと…」
俺のヒーロが、無様にチョークスリーパーに必死にあらがっている。頑張れ!負けるな!だがその声援も彼には届かず、必死に抵抗しているが徐々に意識が遠のき、抵抗も虚しく白目を剥き口から泡を吹き失神して落ちてしまった。
午前6時を少し過ぎた朝。いつも通りに朝食の準備をする。目玉焼きにと割った卵が双子だったことに少しの幸福を感じながら>焼けるまで待っていたら、不意にグッと抱き締められた。今日はやたらと力が強い……
「おはよ。どうしたの朝っぱらから、なんかあった。」
「……次の撮影場所決まった。だいぶ遠い所になるから、暫く会えなくなる。」
「そっかー。スーツアクターは大変だねぇ。あ、だから早くから甘えて来たんだなー?」
そうおちょくってやると彼は仏頂面を膨らませて遺憾の念を示している。
「で、今回はどの役のスーツアクターなの?」と朝食を食べながら聞くと
「……今回も悪役だ。」と残念そうに彼は言う。
「そっかー、良かったじゃん。頑張って子供たちに夢与えといで!」
「……悪役は夢なんて見せれねぇよ。」
「そうかなー?ほら、ヒーローは悪を倒して子供に夢を見せるけどさ、言い方変えれば悪がヒーローに倒されるから子供は夢を見れるってことじゃん?なら悪役も立派なヒーローだよ!」
「そんな…もんか?!」
「うん!それに、僕が発作で倒れた時、必死に担ぎ上げて病院まで連れてってくれたでしょ?あの時から君は僕のヒーローだよ。これからもさ。」
「そ、それはもう言わねぇって約束だろ……!」顔を真っ赤にして彼は言う。
朝食も食べ終わって出掛ける用意をする彼に
「いってらっしゃい!僕のヒーロー!」そう言って弁当を手渡そうとすると腕を引かれて、髪にキスをされた……。
「……さっきおちょくった仕返しだ……!」そう言ってそそくさと出ていってしまった。
髪にキスって、意外とロマンチストなんだな……。
君は、周囲の人に希望を与え、笑顔にし、カッコイイ。
僕は君のようになれない。
けれど、君がだめになりそうなとき、
「誰よりも【君のヒーローになりたい】と思う。」
そんなことを真剣に言う僕に、君は「熱烈な告白ありがとう」と、はにかむ。
励ましたつもりが、僕の方が頬を染めてしまうのは、心の熱さのせいだと信じたい。
恥じらいなどでは決してない。
萌やし初投稿します。よろしくお願いします。
図々しく軽率に話しかけてくるアイツが嫌いだ。
今朝も恥を知らない大声で、アダルトな深夜番組の話を振ってきた。
僕は静かに過ごしたい。
図々しく目立つのは嫌いだ。
目立って良いことなんて一度も無かった。
今だって隣のクラスの下らない馬鹿どもに殴られて痛いし、鼻血が出てる。
僕は平穏に暮らしたい。
誰の目にも付かないところで理由もなく虐げられている僕を、
図々しく助けに来るアイツが嫌いだ。
砂だらけで鼻血まみれの僕を抱き寄せて、
「大丈夫だよ」なんて、格好良すぎて好きになれない。
最終更新:2017年04月04日 00:44