隈井係長(43歳既婚)は二年目の単身赴任を迎えた所で自身の食生活に不満を覚えていた。
大学時代に獣人ラグビーの花形フランカーとして、狼獣人特有のシャープな筋肉で数々の女性を魅了してきたあの頃はどこへやら、加齢に次いで長年培ってきたその腹囲から、クマの隈井と渾名されるまでに落ちぶれた鏡の中の自らに、係長は深いため息を吐いた。
この間、ディスカウントストアで購入した楽して腹筋を割る機械の恩恵でそれなりに腹回りは引き締まり、往年の筋肉の硬さは帰ってきた気がしなくもないが、それでも体格は相変わらずクマの隈井のままだった。
何故なら運動量が多少増したところで乱れた食生活は変わっていないのだ。
自炊など学生時代の極貧期にスパゲッティを茹でたことくらいしか経験の無い隈井係長には、今やその程度の調理も出来ないほどにくたびれていた。
ただあの追い詰められていた時期に比べれば、圧倒的に異なる部分がある、すなわちカネだ。
とりあえずカネには困っていないので、帰り道のコンビニで弁当を二つ買ってあたためてもらう程度なら余裕で出来る。
あとは帰宅して適当に背広と靴下を脱ぎ散らかし、二つ分の弁当をチューハイと共に流し込めばそれで夕食は済むのである。
これはまずいな、と言う自覚はあった。
年に一度の健康診断で肝臓のガンマGTPが声なき悲鳴を上げているのを見て見ぬフリを決め込んだところで、事態は何も好転しない。
今まさにテレビを眺めながら二つ目の竜田揚げ弁当をペロリと平らげたその瞬間にも、隈井係長の頭の片隅には“まずいぞ”という言葉が引っ掛かっていた。
「……野菜、食わねぇとなぁ」
隈井係長はぽつりと呟いた。
しかし、アパートの周辺にはコンビニと飲み屋くらいしかない。
スーパーは閉まっているし、コンビニのサラダはいまいち食指が動かない。
どこかの外食チェーンでも行けば良いのだろうが、そのためにわざわざ電車に乗って隣町まで行くのも馬鹿馬鹿しい。
そも、その厳つい見た目と過去の栄光からクールでドライな渋い性格と思われているが、彼の本質は単なる面倒臭がりなズボラ男でしかなかったりするのは誰もまだ気づいていない。
“いつものレストランをボタンひとつでデリバリー!”
──ふと、テレビCMの甘言に目を奪われる。
いわゆるオンラインフードデリバリーサービス、出前のサービスが無い店舗の持ち帰り商品を自分の代わりに自宅まで運んでくれるというものだ。
隈井係長はここに活路を見いだした。
隈井係長はやると決めたらやる男だ。
そして大概、面倒に勝るのは少年のような好奇心、プライベートではそんな男だ。
「ちわーッ、デーマーイーツでーッス!」
扉を開いた先に居たのは、大きな箱を抱えた青年だった。
制服のポロシャツにはうっすらと胸板が浮かび上がり、ラグビーOBである隈井係長の目には一発で体育会系出身者である事が看破できた。
「悪ィね、なんだか……」
「いえいえ、出前料のマージンもらってますから!」
隣町のレストランチェーンからテイクアウトされた野菜カレーとミネストローネのセットを手渡しながら、出前屋の青年は爽やかに笑った。
「あ、隈井さん、今回ご注文初めてでしたよね。ウチ、まだまだ新しいサービスなんで、先着順で試供品のお渡しをしてるんですよ」
唐突な青年の言葉に、隈井係長の辛うじて尖った耳がピクリと動く。
「スマートスピーカーってご存じですか、あの、ヘイ、アレグルみたいなやつなんですけど」
「あー、CMで見たことあるかもしれない」
「あれ、ウチでもやってみようって、先着順で、特別に、テスト機を差し上げてるんです」
先着順で、特別に。
隈井係長はこういう言葉に異様に弱い。
箱形バッグを漁る青年を見る瞳はすでにプレゼントを前にした少年のように輝いていた。
「このスマートスピーカー“でまえさん”にザックリ食べたいものを話しかけると、注文履歴から学習してオススメのグルメを自動で注文できるんですよ」
出前屋の青年から渡されたフクスケ風の女将さんフィギュアを、隈井係長は色々な角度で眺めてみる。
「へぇ、じゃあ“野菜が食べたい”とか言えば適当に見繕ってくれンの」
「そうッス、ただ、今だと注文一回しかないんでまた野菜カレーになっちゃいますけど」
「あっ、そっかあ」
なるほど賢いビジネスモデルだと、隈井係長は感心する。
こうして“でまえさん”の精度を上げさせようと複数回は注文させて、慣れたころには“でまえさん”を使うのが当たり前になると言うわけだ。
「単身だと疲れちゃって食べたいもの思い付かない時あるじゃないですか、そういうとき是非利用して下さい。玄関あたりに置いといて頂ければ」
「え、いいの、こんな高そうなの」
「はい、今だけ特別サービスです!」
今だけ特別サービス。
隈井係長はそういうのに弱い。
「──じゃあ、使ってみようかなぁ」
こうして隈井係長の食生活は潤ったが出不精は加速し、野菜を採り入れたにも関わらず体重は変わらぬ一方だった。
ただそれはそれとして生活は便利になった。
例えば“でまえさん”、今日は魚が食べたいとでもザックリした要望を伝えれば、太戸屋の焼きサバ定食などはいかがでしょうと即座に提案をしてくれる。
そしてザックリと同意すれば、一時間もしない内に何時もの爽やかな青年が自宅まで届けてくれるのだ。
職場の他に特に話し相手のいない隈井係長にとって、この気さくで爽やかな青年との会話はそれなりに楽しかった。
聞けばついこの間まで大学で野球をやっていたらしく、今も社会人草野球チームを探しているらしい。
同じ体育会系出身者と言うのもあって話は弾んだ。
すっかりと魔術にハマってしまった隈井係長の出不精は、こうしてさらに加速するのだった。
「でまえさん、今日はなんかヘルシーなやつで……」
『少々 おまちください』
「んッ?」
その日は珍しく、“でまえさん”が数十秒ほど考え込んだ。
『お待たせ しました。 では、華丸製麺 の とろろ醤油うどんセット はいかがですか?』
「お、いいね。じゃそれで」
『かしこまりました。本日 悪天候により お届けまで 少々 お時間を いただきます。ご了承ください』
その言葉で、隈井係長はしまったと頭を掻いた。
この日は台風による荒天で、自分も有給を使ったのだった。
恐らく“でまえさん”が考え込んだのは、一部のチェーン店が荒天を理由に臨時休業しているのを除外して検索をかけていたのだろう。
何時もの青年にも悪いことをしてしまった。
彼が来たら小遣いでも持たせてやろう。
隈井係長が暮らす地域ではそれほど大きな被害は予想されなかったが、それでもテレビは台風速報一色に染まっているし、窓の外からは雨が叩きつける音しか聞こえてこない。
単身のくたびれた男には、下着一枚で万年床の布団の上に寝転がり、うとうととする他にやることが思い付かなかった。
「……ンっ……やぁん……こん、な、とこでぇ……だめよォ……」
「……あ?」
「……ソ……コ……だめぇ……」
微かに、微かに、やたらと艶っぽい女の声が聞こえてくる。
「……なんだァ? 隣がおっぱじめやがったか……?」
台風だと言うのにお盛んなことだ。
いや、台風だから他にすることも無いのかもしれないな。
そう思いながら隈井係長は再び瞼を閉じる。
「……ひゃ、だぁ……おっきぃ……おっきぃの……っ」
「……っ、……」
「……んッ、ゴイ……すッ……ゴイの……んんっ……」
──隈井係長はご無沙汰だった。
男43歳、大学の頃ほどではないにしろ、ソコのアレは未だ現役を退くつもりはないらしい。
ただここ最近の出不精が相まって、ソープもピンサロもご無沙汰だった。
「……ちきしょうめ、こっちの気も知らねぇで……」
ムラつく気持ちに、トランクス前面のボタンが千切れそうな程に布地を突き上げる努張りをごつい親指で揉みしだく。
「……もうすぐ出前来ンだよな……」
思わず何時もの調子でトランクスのゴムに手をかけたところで思い出す。
さすがに雑談するような仲になったとは言え、出前屋の青年に見せてよい姿ではないだろうと、隈井係長は意識を性から引き戻す。
「……んっんッ……太い……太いわ……こンなの……はッ……じめてよ……っ」
「ったく、俺のブツ見てから言いやがれって……」
と、小さく悪態ついてから気がついた。
隈井係長の部屋は角部屋だ。
そしてこの安アパートの薄い壁の向こう、隣に暮らすのは確かほぼ寝たきりのじいさんだったはず。
どういうことだ?
そういうことか?
「……オイオイオイ、じいさん、マジかよ……!?」
「あッ、だめよ、そ、んなぁ……!」
隈井係長は思わず壁に耳を這わす。
「………………?」
だが、老人の部屋からは微かなテレビの音しか聞こえない。
「……だッ、めよ、こんなひとの家の前で……聞かれちゃったらどうするのッ、ン……」
「あァ!? ウチの前でナニやってンだァ!?」
確かに声は玄関先から聞こえてきていた。
隈井係長はたまらず飛び起き、扉の覗き穴を見る。
ウチの前でナニやってンだ。
その言葉の4割くらいは好奇心で出来ている。
ちなみに残り6割の内、3割くらいはスケベ心が含まれる。
隈井係長はヤる時はヤる男だ。
しかし。
「……誰も居ねェじゃねえか……?」
『アッ……だめぇ……そんな、こんな場所で挿れたらダメェ……』
……しかし、艶っぽい声は確かに聞こえる。
その声の聞こえる先にあるものは──
『やぁん……ダメだったらぁ……ン……』
「──でまえさん!?」
ぴんぽぉ────────ん。
呼び鈴が鳴ったのはその刹那。
「んなァ、ハイぃ!?」
唐突な呼び鈴に驚いた拍子、正常な判断を欠いた隈井係長は思わず扉を開いていた。
「ちわーッ、デーマーイーツでーッ……ス!」
当然ながら、扉の向こうに居たのは、濡れ鼠になった何時もの青年だった。
手拭いでびしょびしょの身体を拭いながら、向けた笑顔が僅かに下を向く。
「……アッ、すんません! お楽しみ中でしたか!?」
「えっ、アッ!? べ、別に!?」
「いやいや、た、タイミング悪くてすんませんッ!」
青年はそうはにかんだ。
「あ、いや、今──」
と、隈井係長は“でまえさん”に視線を向けるが、スマートスピーカーは何事も無かったかのように沈黙したままだった。
「……あぇ?」
「あッ、その、こちら、ご注文のやつですッ」
青年ははにかみながら、箱形バッグからうどんセットを取り出した。
「……あッあ、そ、そうだった、スマンかった、この嵐のなか……」
「い、いえ、出前料のマージン、貰ってるンで……」
青年と係長の間にちょっとした妙な空気が流れる。
「……あッ、あの隈井さん……その、悪いんですけど」
「ひッ、あ、なに?」
「ぼ、僕と隈井さんの仲に免じて、と言うか──その──」
隈井係長は妙な中腰姿勢のまま、パニック状態で青年の言葉を待つ。
「その、あ、雨で冷えちゃって、お手洗い借りたいンスけどっ、いいですかッ!?」
「──え、あ、なんだ、そんなことか!? い、いいよ、使ってくれよ」
「はぁぁ、助かりますッ!! 膀胱バクハツしそうでッ」
青年は顔を緩ませて、汚い玄関に上がり込んだ。
「もうすぐ左手の扉だから……」
「あーッ、助かります!! 隈井さんとこの配達でよかったァッ! あ、でも濡れ──」
「いいよいいよ、緊急事態だろ、あとで拭くから──」
青年がそわついていた理由に安堵したのか、隈井係長は何時もに増して寛大だった。
と言うよりは、股間の努張りさえ誤魔化せればそれでよかったのだが。
「失礼しまッス!!」
青年はトイレに飛び込むと、扉も閉め切らないまま濡れたハーフパンツをズリ下ろす。
「はは、せめて戸くらい閉めてく……」
──隈井係長が戸の隙間に見たのは、青年の割れた腹筋に兜を擦り付けて反り上がる凶悪な逸物だった。
「──へ?」
「……な、ナイショにしてくださいね……」
青年は小さく呟いた。
「その……隈井さんのデッカいの見たら……納まらなくなっちゃって……」
「……???」
「く、隈井さんのだけ見せて貰ったんじゃ、フェアじゃない、ッスから……」
恥ずかしそうにあどけない笑みを浮かべなから、一方で若さを誇示するように反り勃ち脈打つそれを、青年は隈井係長に見せつける。
「え……その……あ」
ぷちん、と小さな音と共に、努張りを押し止めていたトランクスのボタンが吹き飛んだ。
その勢いで飛び出た黒光りする鉄兜が、青年に向かって突き出される。
「うわッ、隈井さんめちゃくちゃ太いッスね……」
「あッ、こらッ……」
青年は隈井係長のそれに遠慮もなく指を這わす。
「すっげえなぁ……現役のころめちゃめちゃ女の子泣かせてきた色してますね……」
「なっ……き、君だってえげつないのしてるじゃねぇか」
「あは……僕、童貞なんスよ……」
青年は呟きながら跪く。
「どっちかってえと、こっちなんで」
「──ふぬぅおおおう!?」
青年は、一回り以上歳上であろう隈井係長の、使い込まれた逸物をぬらつく舌で包み込んだ。
「な、ばか、なにをほぉぉぉおおお!?」
「──、──」
隈井係長は青年の刈り込まれた頭を掴んで抵抗しようとしたが、あまりの舌技に力が入らない。
青年は係長のトランクスを無理やり引き下げて、その逸物を根本まで飲み込んだ。
「──ふぬぅうううぅ、んぬぅぅうう!?」
これ、ピンサロより、すごい。
隈井係長の脳裏には諸々の感情や困惑が渦巻いていたが、その渦の中にぽっかりとそんな雑念が確かに浮かんでぐるぐると回っていた。
「んぐぅはぁぁッ、か、勘弁して、勘弁してくれェッ!!」
情けない声を上げながら、逸物の代わりに足腰の立たなくなった隈井係長は尻餅を突く。
青年は、妙に艶っぽい表情を浮かべたまま隈井係長に馬乗りになり、その野球で鍛えられた丸い双丘の谷間にぬらつく兜を押し当てた。
「何をふぅぅぅううううんッ!?」
暖かで、柔らかく、だが硬く締め付ける何かが自身の逸物を包み込み、飲み込んだ。
これ、あれだ。
アナルだ。
隈井係長の脳内のどこかが誤作動を起こしたのか、どこかこの異常事態を俯瞰して楽しんでいるところがあった。
「……ッ、太ッ……!」
一瞬、青年が苦痛に顔を歪める。
「……っ、でも、全部……入った……ッスよ……」
「──っ、???」
「……ずっと……隈井さんに……抱かれたかった……ッス」
騎乗位の形で繋がりあった青年は、隈井係長の肉厚な胸板に両手を這わせ、ゆっくりと腰を上下させた。
「フヌ、ッ!?」
まさかの、アナル生本番。
ソープランドで高額のコースを選んでも許してくれない禁断の世界。
僅かに零点数ミリの隔たりすら廃された、生の腸壁が自身の亀頭に絡み付く。
「隈井さん、カッコ、よくて……憧れのオトナで……いつも、逢うのがたのしみでッ……」
「ぅぐッ????」
「だんだん、すげえ、僕のなかで、“特別なひと”になってって──注文無い日は、めちゃめちゃ──寂しくて──」
苦痛に顔を歪めながらも、青年はゆっくり、ゆっくり尻を上下させる。
隈井係長は、抵抗ができない。
なぜなら、こんな切ない声で“特別なひと”などと云われることにつくづく弱かったからだ。
「こんな……嵐の中でも……隈井さんに逢えるって思ったら……嬉しくて……抑えきれなく、て……!」
「──、──!!」
「嫌いに……ならないで……ッ」
「──!!!!!!」
その、何時もの爽やかな、後輩のような出前屋の青年が見せた切ない表情に、隈井係長のなにかがおかしくなった。
「ぁグッ、くッ、隈井、さンッ!?」
青年の引き締まった腰をがっしりと掴み、隈井係長は自ら腰を突き上げた。
「──ッ!!」
「んぁガ、あ、当たるぅっ!?」
ズン、ズン、と、鈍い快楽が青年の胎内から頭の先まで突き上げた。
「首、掴め」
「へぇぁ!?」
「いいから首掴めッ!!」
ドスの効いた声で言われるがまま、青年は隈井係長の太い首に腕を絡める。
「絶ッ対、離すなよッ!?」
「──ンぁ、ひ、んあぁ!?」
隈井係長は青年と繋がったまま身を跳ね上げて立ち上がり、尻を支えながら巨体を震わせ腹の中を掻き回す。
「ん、ン、ンンン──!!」
駅弁の体勢で青年の身体を貫いたまま、隈井係長は青年の刈り込まれた頭を抱えてその唇に舌を捩じ込んだ。
そして破砕重機のごとき無慈悲さで、衝動任せに己自身を腸壁の奥深くへと打ち付ける。
一介の雄としてのリビドーと、なし崩しに身を重ねた一介の大人としての情けなさとが、隈井係長の胸中で跳ね回る心臓に掻き回されて、頭に巡って真っ白になっていく。
太い大腿とふくらはぎがはち切れんばかりに膨れ上がり、快楽に蕩けていく青年の全体重をその身に受けて、溶け合おうとしている。
「──んがァッ、出、出るぞッ、出ッからなァッ!!」
「ぁぁあッ、な、かに、中に下さァいッ!!」
「──ふグゥ、ッ、──っ!!」
そして、青年の腹のなかで、まるで破裂したかのように、隈井係長の精液が注ぎ込まれた。
肋骨が軋むほど、太い腕が抱き止めた身体の中に、隈井係長の雄としての衝動、切なさ、情けなさの全てが吐き出され、満たされていった。
「──すみません、ッした」
青年は再び濡れたハーフパンツを纏い、伏し目がちに頭を垂れる。
「……その……」
「──いいよ」
隈井係長は青年の頭を軽く撫でた。
「ただ、こういうの、ほんとはダメだかんな」
「……はい」
青年は、力無く応え、玄関の戸を開けた。
「──また、注文するよ」
「──」
隈井係長の言葉に、青年は言い様の無い、複雑な感情から無理やり笑顔をつくって会釈し、玄関の戸を閉じた。
「……ぁあ」
──そして、隈井係長は情けない溜め息をひとつ吐いて、雨と汗と自らの精液で汚れた床にへたりこむ。
なにか、取り返しのつかないことをしたぞ。
その、後々になって襲いかかる情報量の多さに呆けた隈井係長の顔を、“でまえさん”は微笑みを浮かべて見つめていた。
「──あ、お疲れーッス! やー、まさかあそこまで行くとは思わなかったッスねー!」
「あ、どうですか、“でまえさん”のカメラでバッチリ撮れてました? おー、駅弁も挿入部もバッチリっスか! 身体張った甲斐がありましたねー」
「いやぁ、スマートスピーカー様サマって言うか、行動パターンの分析まで完璧だったんで、マジちょろかったッスね」
「あ、配信の時は音声カットしてくださいよ、あんなクッサい台詞さすがに恥ずかしいんで」
「そんじゃ、お疲れ様っしたー!」
─またのご注文心よりお待ち申し上げます。─
最終更新:2019年10月31日 02:10