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嶄宮くん。

いつからだろう。

こいつのことが、こんなにも心配になるようになったのは。



「そういやさ、ポチエダさぁ」

「あ?」

教科書を鞄に入れようとしたちょうどそのとき、前の席の二堂(にどう)が声をかけてきた。

「B組の嶄宮(ざんぐう)と仲イイんだろ? あいつ何とかしてよ、風紀委員だろ?」

A組の江廉部(えれぶ)と言い、この二堂と言い、最近わりとこの辺の話をよく持ちかけられる。
たしかに嶄宮は中学からの友達だ。
あいつがすぐムキになったり、加減を知らないのもよく知っている。

でも……

「そう言われてもさぁ……あいつにちょっかい出すほうが悪いんじゃないの?」

「は?」

「あいつすぐムキになんの、わかってんじゃん。オレがどーこーできる問題じゃないしさ」

「ん……そう……だけどさぁ、でも、あいつ、なんか……」

二堂は頭の額の角の付け根あたりをコリコリと掻きながら黙り込んだ。

「とりあえずさ、あいつのことはほっとい……」

「すまん望江田(もちえだ)、ちょっと用があるんだが……」

会話に割って入ってきたのは、B組の担任の佐間寄(さまよる)先生だった。



最初に“ポチエダ”というあだ名がついたのは中1のときだった。
望江田なんて苗字は珍しかったし、それに顔が犬に似てるから、という理由でこのあだ名がついた。
もちろん最初は嫌がった。
嫌がる自分をイジメられっ子とでも勘違いしたのか、割って入ってクラスメイトをコテンパンに熨したのが嶄宮だった。
とはいえ今となっては、そのあだ名のほうが本名より定着してしまった。

嶄宮はとかく曲がったことが嫌いだった。
なにかしらあればすぐ怒るし、本当に加減と言うものを知らなかった。
後から聞けば嶄宮には母親が居なく、父親も働き詰めで人付き合いというものをろくにしたことがなかったのだという。

喧嘩っ早くて
口下手で
世間知らずで
加減知らずで

だから嶄宮には、ともだちがいない。



「嶄宮」

「んぁ」

旧校舎の、使われてない体育倉庫。
だいたい嶄宮はここに居る。
授業の出席率は最悪、このままではあまりにも進路がやばいのでなんとかできないかと、遂には先生にまで相談されてしまった。

「またケンカしたんだ」

ホコリくさいマットに大の字に寝そべる嶄宮の頬には、また新しい生傷がついていた。

「……うるせぇ」

「ほら、バンソウコー」

あまりに嶄宮の生傷が絶えないので、遂には小さな救急箱まで持ち歩くようになってしまった。
嶄宮のことがどうしても心配になってしまって、自分でもアホらしいくらいにおせっかいを妬いてしまう。

「ん……」

もうケンカの原因を聞くのは馬鹿馬鹿しくて止めた。
どうせまた大した理由じゃない。
嶄宮の頬に絆創膏を貼り付けてハイ終了、というのがいつもの流れになってしまった。

「佐間寄先生、授業に出ないと留年するよって言ってたよ」

「ベンキョーとか、好きじゃない」

「わかってるけどさ。オレだって好きじゃないし……」

……結局、説法垂れてわかってくれる相手じゃない。
もっとリアルな話をしよう。
そのほうが嶄宮にも焦りが出てくるだろう。

「……オレと学年ズレちゃうんだよ、嶄宮」

「……あ?」

「だってさ、留年したら嶄宮は2年のまんまなんだよ? 遊ぶ機会とか多分減っちゃうよ」

「……わかってる、け、ど……」

「オレはヤだけどなぁー、嶄宮と学年ずれちゃうの」

「……!!」

あ。

ヤバい。

気がつけば、嶄宮の頬は真っ赤に紅潮し、目は爛々と充血していた。
ちょっと刺激が強すぎただろうか……

「や、ま、まだ決まったわけじゃないけどさ、落ち着いて……」

「ぽっ……ポォォチィィエダぁぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!」

「ひ!!」

揺れる巨体。

覆いかぶさる影。

次の刹那、悲鳴を上げるアバラと背骨。

「ちょ……痛……ッ」

嶄宮は、その丸太の様な腕で、オレの身体に力いっぱい抱きついてきた。
オレの倍はありそうな体重を一心に受け、腰骨が砕けそうになる。

「ポチエダ……やだよ、俺……」

「わ、かった……から、ちょ……痛いよ……」

はっと我に返ると、嶄宮はゆっくり労わる様に腕の力を緩めた。

「……ごめん」

軋む骨。
痺れるような感覚。
毎度毎度のことながら、その痛みは何故か苦痛ではない別のものに感じられる。

「……ううん」

嶄宮の分厚い胸板を通して感じる温もりが、なぜか異様に心地よかった。



今思えば、嶄宮と肌を触れ合わせることが気づかないうちに当たり前になっていた。
ああして抱きつかれたり、肩を寄せ合ったりすることは、人付き合いのへたくそな嶄宮の友情表現だとばかり思っていた。

あの日が来るまでは。



「そう、それでね、このxの数がyより小さいとき……」

先生がどうしてもと言うので、結局オレが嶄宮に勉強を教える羽目になった。
たぶん自分の理解の限界を裕に超えているだろう数学の公式を必死に理解しようとする嶄宮の姿が痛ましい。

「……だぁぁああああッ!!」

「ああ……だめかぁ……どうしよう、もう暗くなったし、今日は帰ろうか」

「……いやだ。リュウネンしたくない」

思っていた以上に嶄宮は頑なだった。
さすがのオレも授業に加えて嶄宮に噛み砕いて勉強を教えるのには疲れてしまった。

「っつっても、まだ期末までぜんぜん時間あるんだしさ、そんな焦って……」

「ポチエダ、きょう、俺の家に泊まれ」

「……え?」

「もっと俺にベンキョー教えてくれよ……でないと……」

しゅんとする嶄宮の顔に、さすがに罪悪感が付きまとう。

「……わァったよ……こうなりゃとことん付き合うよ」

「よ、よし、じゃ、帰るぞ!! お前、チャリンコの後ろ乗れ!!」

オレの言葉に表情を嬉々と一変させると、嶄宮は興奮に息を荒げながら昇降口へと駆け出していった。
もしかして、嶄宮んちに泊まるの、オレが始めてなんじゃなかろうか。
だからあいつ、あんなに……

「ポチエダああああああ!!」

「あー、はいはい」

もしかしたら、あんなに嬉しそうな嶄宮の顔を見たのは初めてかもしれない。
このとき、オレの胸はなぜか微かに高鳴っていた。



「ほら、早く入れよ」

恐る恐るアパートの扉に入る。
想像していたより嶄宮の家は小奇麗だった。
むしろ、殺風景と言ったほうが正しいかもしれない。
入ってすぐのリビングの奥には開けっぴろげな和室が見える。
敷きっぱなしの布団はお父さんのものだろう、そしてそのそばに小さな仏壇が見て取れた。

「親父、今日も帰ってこないって」

仏壇に手を合わせながら嶄宮が言った。
多分お母さんのものだと思われる遺影は、明かりが写りこんでよく見えなかった。

「……ポチエダ?」

「あ、うん、何?」

「腹、へってる……?」

「あ、ううん、大丈夫……」

嶄宮は学ランを脱いで椅子に引っ掛けると、黙々と冷蔵庫の中を物色し始めた。
その背中からふわりと汗の臭いが漂う。

「……嶄宮さ」

「ん?」

「さびしく、ないの?」

……オレの問いかけに、嶄宮は一瞬動きを止めた。

「……さびしい」

見ればテレビもずいぶんと旧式のようで、ゲーム機の類は一切見当たらない。
嶄宮は一言だけつぶやくと、そっと冷蔵庫の扉を閉めた。

「家のなかでしゃべったの、久しぶりだ……」

「……ごめん」

「……」

嶄宮はオレに歩み寄ると、そっと腕を背中に回してきた。
ずいぶんと加減しているようで、ぎこちない動きで、ゆっくりと。

「俺、さびしかったんだな……たぶん」

「たぶん?」

「ずっと……なんか、胸んなか、もやもやっていうか……そんな感じで、いらいらしてた」

「……」

「……お前が来て、すごく、うれしい」

嶄宮の声が、だんだん涙声になっていく。
その途絶え途絶えの一言を聞くたびに、胸がきゅっと締め付けられた。

「嶄宮、今日、勉強やめよ」

「……え」

「オレ……今日はずっと嶄宮のそばに居るから」

「ぽ、ポチエダ……」

「っ……」

急に嶄宮の腕に力がこもった。
圧迫される胸。
息苦しくなる呼吸。
でも、それで嶄宮が満たされるなら、どうなってもいいと思った。

「……ごめん、ポチエダ……おれ……」

「……え……」

首筋に走る、やわらかくて、ぬるぬるとして、ざわざわとした、なにか。

「……あ、ぅ……ざんぐ、ぅ……ッ?」

その、感じたことのないなにかは、オレのからだのド真ん中をつき抜け、全身の力を奪っていった。

「ッぁ、ぽちえだ……」

崩れ込むように、フローリングに横たわるオレのからだ。
その上に覆いかぶさる、嶄宮の大きなからだ。

オレの腹の上に、なにか熱くて硬いものが触れた瞬間に、全身がビクリと硬直した。

「はぁ……ざんぐ、だめだよ……オレたち……」

「むりだよ……おれ、もう……」

嶄宮の大きな手がオレの腕を押さえつけ、全体重がのしかかる。
何の抵抗もできないまま、オレの唇を押しのけて、嶄宮の舌が進入する。

「ん……くぅ」

今までにないほどの嶄宮の強引さに、正直、怯えている。
ともだちのはずの嶄宮が、オレの体を押さえつけ、まるで女を強姦するかのように、激しく、オレを弄っていく。
ありえないはずのことなのに、何故か、体が火照っている。

「っくはッ!」

呼吸が辛くなるほどのキスに、オレは無意識にうちに嶄宮を押しのけた。

「ぽち……」

「……なんなんだよ」

「……」

「……オレ、わかんねぇよ……どうしたんだよ……」

突然のキス。
産まれてはじめてのその経験に、オレは困惑していた。
友達の、それも男の嶄宮からの、キスだなんて。

「……いや、だったんだ……俺」

「え?」

「ポチエダが、俺以外の奴としゃべって、仲良くして、俺から離れていくのが」

「……そんな」

嶄宮は、潤んだ眼のまま、うわ言の様に言葉を続ける。

「だから……この腕の中に、ポチエダを捕まえていたかった」

「……」

「でも、ポチエダが嫌そうな顔して……痛がるのが……怖くて」

「……嶄宮」

「でも、どうしても、どうしても、ポチエダが欲しくて」

「嶄宮」

「俺、きっと、ポチエダが」

「もういい……ごめん、嶄宮」

顔を真っ赤に紅潮させ、ぼろぼろと涙を溢す嶄宮の姿。
その大きなからだを振るわせながら、オレに曝け出したその小さな心。

オレは、どう、したらいい?

「ポチエダ……一晩だけで……いいから」

「?」

「もう、二度と口聞いてくれなくていいから……だきしめて、ほしい……」

その言葉が、胸に突き刺さった。
嶄宮が、これまで感じてきた底無しの孤独。
それから救ったつもりになって、余計どん底に突き落としたのは、誰だ?

「……ごめん、オレ……」

結局、なんて言えばいいのか、わからない。
でもこれは、オレの責任だ。
さびしがりやの嶄宮を、オレはここまで追い詰めた。
ならもう、答えは決まっているのかも知れない。

「……オレたち、ともだちだろ……そんな悲しいこと、言うなよ」

ゆっくり、ゆっくり。
怯えて震えそうな手を、嶄宮の太い首にまわす。

「……ぽちえだ……」

瞼を閉じ、嶄宮に身をゆだねる。
濡れた鼻が感じ取る、嶄宮の呼吸。

「……」

やわらかな感触。
舌に触れるぬるぬるとしてざらついたなにか。
吸い込まれるような、なにか深みに落ちていくような、不思議な感覚。

ああ、わかった。

きっと、人が恋に落ちる瞬間って、こういう感覚なんだ。

「……ッ」

離れる唇の間を渡る、銀色に輝く糸。
今までの恐怖が不思議と解けて、嶄宮の体温が直に伝わってくる。

「……あ」

再び嶄宮の股の間に、熱いものが隆起し始める。
それを感じ取ったかのように、オレの下半身も熱くなり始めた。

「……ぽちえだ……俺、からだに……さわりたい……」

泣いた嗚咽のせいなのか、興奮のせいなのか、荒い息に乗せて嶄宮はそうつぶやいた。

「……うん」

オレが頷くと、嶄宮はゆっくりと体勢を変え、オレを軽々と持ち上げた。

「ちょ、ざんぐ……」

そのまま嶄宮はオレをベッドに横たえると、シャツのボタンを外していく。
露になったオレの胸元に、嶄宮が頬を寄せる。

「あっ」

ぞくりとした感覚に思わず声が出る。

「……俺にも……さわって」

嶄宮がシャツを脱ぎ捨てる。
その体は思っていた以上に逞しく、筋肉の上の脂肪がたゆたゆとした層を作っている。
テレビでみるプロレスラーとか、そう言うのに似ていた。

「……うぅ」

分厚い胸板に手を這わせると、嶄宮の顔が歪む。

こいつの顔、こんなに凛々しかったんだ。
そう思うと、何故か胸の奥がウズウズし始めた。

「……俺……我慢できないよ」

嶄宮がベルトを外し、ズボンを下ろす。

「……ッ」

立ち込める雄の臭い。

隆起し、糸を引くそれは太く、皮を纏い、未だ若々しい色をしていた。
恐る恐る、嶄宮の男の部分に手を伸ばす。

「あ……っ」

あつい。

それは手の中でビクンビクンと脈打ちながら、透明な液体を吐き出し続ける。
ゆっくりと幹を扱くと、ずるりと頭が露出した。

「はぁ……ぽちえだ……」

「嶄宮……オレのも」

オレがそう言うと、嶄宮はそっとオレのズボンを脱がした。
ヒクヒクと、オレのものも脈を打つ。

「あっ」

何を思ったのか、嶄宮がオレの幹を舐め始めた。

「だ、め……きたないよ……」

その言葉をものともせず、嶄宮はそれを口に含んだ。

「あっ、痛いッ」

発達した犬歯が亀頭にぶつかる。

「ごめん……」

「ん……へいき……」

オレがそう言うと、嶄宮はオレをまたいで丹念にそれを舐め始めた。

「あ、ひ……あ……」

オレの目の前で、嶄宮のそれが涎を垂らしながら揺れている。
恐る恐る、その大きなものに手を伸ばしてみる。
重量のある、太い幹。
オレより太く、硬い。
その陰嚢には随分と精子が溜まっているのか、だらりと垂れ下がるそれにすら重量感があった。

「……ッ」

その迫力に、唾を飲む。
始めて見た自分以外の雄の象徴。

「あッ……!!」

その先端を、口に含む。
すこし塩辛い。

「だめ……俺のは汚いから……」

嶄宮は腰を浮かせ、体勢を変える。
オレの体を引き起こし、抱きしめ、その分厚い胸板に顔を埋めさせる。

「どうして……だろう」

嶄宮が徐に口を開いた。

「俺……ポチエダの体に触ると……安心するんだ」

「安心?」

「うん……あったかくて、それに……俺のこと、気持ち悪がらないし」

「……へ?」

突然、嶄宮が頬を赤らめた。

「俺、ポチエダ以外のともだち作りたくて……だっこ……したくて……」

「は、はぁ……?」

「そしたらみんな……気持ち悪い、って……怒って……」

まさか。

まさか、みんなの訴えてた被害って……

「俺はさ……なかよくなりたいから……あったかいから、だっこしたかっただけなのに……」

こ……こッ……

こ れ は ひ ど い。

いかに嶄宮が非常識で不器用だからといってもこれは酷いッ!
嶄宮が友達を作りたいという切実な気持ちは痛いほどわかる……でも! それでも!

「嶄宮……あのな、ほんとうは、男同士じゃだっこしないんだよ。このトシになったら……」

「ッ、え……そう、なのか?」

「うん……変な誤解されちゃうし……」

「……でも……」

嶄宮の目が訴えるのは、なぜオレはだっこされても怒らないのか、という一縷の疑問に違いなかった。

……たしかに、自分でもわからない。

だけど確かなのは、嶄宮の腕の中がオレにとってすごく居心地がよくて、あったかくて……

「……オレも、嶄宮といっしょだよ」

「?」

「嶄宮のからだに包まれてると、安心する。」

「……」

嶄宮は顔を真っ赤に染めると、そのまま俯いてしまった。

「だから、オレは特別。」

俯く嶄宮の胸元に入り込み、オレはその頬にキスをした。

そう。
たぶん、そういうことなんだ。
何故か嶄宮のことが気になって、心配で、放っておけなかった、この気持ちの真意。

オレは、男の嶄宮に、惚れてしまったんだ。

「ぽち……」

「……ん?」

「お、おれ、ぽち、え、だ、と……」

真っ赤な嶄宮の顔を見た瞬間、嫌な寒気が背筋をよぎった。
この血走った目、コレは間違いない……

嶄宮が大爆発する前兆だ。

「ざ、ざん、ぐ……」

「おれ、ぽちえだと、せ……ッ……す……したいッ」

「え、なに、聞こえ……」

「ぽちえだと、せっくす、したいッ!」



……せッ……?



「ざ、ざんぐ、セックス、ったって、男同士で、どう、やって……?」

その言葉に呆気に取られている間に、オレは嶄宮に押し倒され、何の抵抗もできない状態になってしまっていた。

「おれだって、せっくすのしかたくらい、わかるッ!」

余りの興奮に、嶄宮の言葉が半ば片言になっている。
いうなれば、そう、原始人。

「あっ、ん、せっ、くすの……仕方、って……ッ!?」

嶄宮の少し乱暴な愛撫で感じてしまう自分がにくい。
絶え絶えに成りながらもそう尋ねると、嶄宮は生命の神秘に対する驚愕の全知識を口にした。




「穴にッ」

「挿れるッ」




あなに、いれる……ッ……

間違ってはいない、たしかに間違ってはいないッ!
でもこの口ぶりは間違いなく……

「ちょ、ざん、ぐぅッ、まっ……」

嶄宮はオレの両足をつかみ、天高く掲げると、その赤らめた顔を下半身へと近づけていく。
そうだ、間違いない。

嶄宮は、“それ専用の穴”が女のからだにしか無いことを、知らない。

「ざんぐ、ッ、その穴は、違ッ―――――」

ひたり。

生暖かく、ざらついたものが、オレの肛門に触れた。

「ひゃ、あああぁあッ!!!」

今までに無いゾワゾワした感覚が、尻から頭のてっぺんにかけて走り抜けた。
気持ち悪さ、とは似て非なる感覚が恥ずかしさを増長させる。

「……」

嶄宮の指先が肛門に触れる。
オレの尻の肉を押し広げながら、ゆっくり、ゆっくり指先がオレの中に入ってくる。

「や……ぁ、ッ」

モゾモゾと指先が動くたび、オレの身体は大きくよじれた。

「……本当に……入るかな……」

見れば嶄宮のそれはさっき触れたときよりも大きく反り返り、脈打ちながら透明な液体を吐き出し続けていた。

「はぃらッ……ん、ぃよぉ……」

必死の訴えも、もはや届かない。
嶄宮は指を引き抜くと、信じられない太さにまで腫れ上がったそれを肛門に押し当てた。

絶対、入るわけがない。

絶対、入るわけが……



「んッ、あああああぁぁぁッ!!!!」



はい、った。

「あッ、ぐぅぅ……」

うなり声に我に返ると、嶄宮の顔が苦痛の表情を浮かべていた。

余りにも一瞬のことで、その瞬間自分がどうなったのかはわからなかった。
ただ、今の状況としては、鈍い痛みが脈にあわせてずきずきと下腹部に響くだけで、想像していたよりも痛みは少なかった。

「……いたく、ないか?」

「……へぇ……き……だけど……もう少し、このままで……」

痛みが引くにつれて、自分の体内に異物が入っている感覚が徐々に明らかになっていく。
嶄宮の太いそれはズクズクと奥へ侵入し、オレの腸壁がそれに抵抗しようと波打つのが感覚でわかる。

「おくまで……入った……」

眉をしかめ、それでもオレを見据える嶄宮の顔が妙に男らしく見える。

「……中……どんなかんじ……?」

嶄宮の耳元でそう尋ねてみた。

「んッ……すごく……締まる……そんで、なんか……まとわりついて……すごい、きもちいい……」

肉棒がビクンビクンと脈打つのが、体内でわかる。
ちょうど嶄宮の亀頭が当たる位置に、ツボというか、いちばん気持ちいい場所がある。
それに気づいた直後、嶄宮はゆっくりとその大きな身体を揺らし始めた。

「あっ、待っ……ざんぐ……ぅッ」

「おれ、身体が……勝手に……」

オレを強く抱きしめたまま、嶄宮はオレを貪り始めた。
ちょうど肉棒のエラ張った部分が、オレのツボをゴリゴリと刺激した。

「はぁうッ……! なに、コレ……ぇッ」

「あっ、がァッ、締まるッ……」

オレのものからも大量に透明な涎があふれ出した。
嶄宮は息を荒げながら、上体を上げ、腰を振るペースを上げ始めた。

「ぽちえだッ、おれ、もう……」

あれだけ溜まっていたんだ、限界が近いのだろう。
オレは恥ずかしさに顔を隠しながら、何度もうなづいた。



「あっ、あ……ッ、ガァああああぁぁぁぁっ!!!!!」



オレの身体を突き上げると同時に、嶄宮が野太い雄たけびを上げた。
ビクンッ、ビクンッと嶄宮のものが体内で跳ね回る。
同時に熱い何かが体内の奥深いところに注入されていった。

それとほぼ同時に、オレのなかで何かがプツリと切れてしまったように、モノから盛大に白濁液が噴き出した。
自分で抜いたときの倍はあろうかという量を噴き上げたあと、オレはしばらく放心してしまった。



次に気づいたときは、嶄宮の腕の中だった。
夕方まではただのともだちだったはずの嶄宮の腕の中が、不思議と特別に思えた。

「……ごめんな」

ふいに嶄宮が口を開いた。

「……あやまんなくて、いいよ」

嶄宮の頬に、キスしてみる。

「オレは、何があろうと嶄宮のともだちだから」

「……」

そのとき、嶄宮がどんな表情をしていたのか、オレにはうかがい知れなかった。

「……ともだち、だけか」

「え、なに?」

「……」

何かをつぶやくと、嶄宮はオレを抱いたまま寝息を立て始めた。

「……なんて言ったんだよぉ、ねぇ……」

いまだに、そのときつぶやいた嶄宮の一言は、わからない。



それから、オレと嶄宮の仲はより深まったと思っている。
とりあえず嶄宮の留年も回避できたし、ハグ事件もなんとか解決。
遊びに連れ出す回数も増えたからか、嶄宮にもともだちができ始めた。

ただ、不思議に思うのは、嶄宮があのころみたいな無茶なハグをしなくなったこと。
二人きりだとなんだかモジモジして、もどかしく思うときがある。

それでも、オレは嶄宮と“ともだち”でいられて、よかったと思う。



いつからだろう。

あいつのことが、こんなにも愛しく思うようになったのは。



おわり。
最終更新:2010年01月10日 02:12