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Melody A.M.01:So Easy

未だ仄暗い午前四時のロイクソップ・アストロパークのエントランスでは、簡素な箱型のドロイドが忙しなくクリーナーを回していた。

0013ボストークという名を持つその簡素な形状のドロイドは、その見た目に反して規格さえ合えばあらゆる機器を使いこなせる、万能オペレーションドロイドと言うやたら器用なドロイドだった。
本来ならばボストークを含む多くの万能オペレーションドロイドは、例えば園内のアトラクションの運営だとか整備だとか、もっと大層な用途の為に使われるべき高級な存在だった。
しかし、ボストークがわざわざこんな早朝から園内の清掃を行わなければならないのには理由があった。

つまり、ロイクソップ・アストロパークと言うこの寂れた遊園地は、園内に配備されている全てのドロイドをフル稼働させるだけの来園者数を全く満たしていなかったのだ。



レトロフューチャーブームに便乗するカタチで作られたこのテーマパークは、開園以来まともに運営されたことは無い。
著しい不景気がもっともらしい理由だったが、人間の都合を従属なドロイド達が知るわけもなく、現在は園内の自家発電機構で賄えるだけの最小限のドロイドだけで運営されていた。

万能オペレーションドロイドという器用すぎる出自が災いして、かわいそうなボストークは園内のあらゆる整備を任されていた。
恐らく園内で一番の働きモノとして、ボストークは早朝から広い園内を文句も言わずに駆けずり回った。
そもそも万能オペレーションドロイドとは言え、さすがに文句を言う口が付いていなかったが故なのだが。

すべてはそう、とても簡単なこと。

ただ無人の園内を巡回し、与えられたタスクを消化すればいい。

それは、とても簡単なこと。

ボストークは自分にそう言い聞かせながら、ただ黙々と職務をこなしていった。

そう、とても、簡単なこと。

簡単なことの、はずだった。



その時、ボストークは今までこなしてきた仕事とは比較にならないほど難しい状況に陥っていた。

午前九時、開園一時間前。

その“廃棄物”として単純に片付けられないイレギュラーな物品を発見したのは、UFOを象ったコーヒーカップの前の広場だった。

もちろん彼は毎日のようにそこの巡回は怠らなかったし、見落としがあるほど忙しいことはなかったのも事実だった。
しかし、その“遺失物”は、確かにそこで拾得されたのだ。

園内データベースで拾得物のシルエットを照会すると、おおよそ90%の確率でそれは“クマのぬいぐるみ”であるらしいという結果が返ってきた。
しかし、ここ数日の来園者数から考えて、遺失物があるとは到底考えられなかった。



来園者数は、ゼロなのだから。



とても簡単なこと、簡単なことのはずだった。
ボストークはこの異常事態に無い頭を抱えていたが、それほど緊急性を要す事態ではないというもっともらしい理由をつけて、ボストークはこの問題を一番簡単な方法で片付けてしまうことにした。



そう、これは簡単なこと……

これはとても簡単なこと……



ボストークは、そのイレギュラーな拾得物に、規定通り“遺失物0001番”という味気のない名前をつけて、その箱型の身体の大口を開くと、中のカーゴスペースにそれをぞんざいに放り込んだ。



これはとても簡単なこと。

簡単なことの、はずだった。



-Melody A.M.01:So Easy END-
最終更新:2011年04月21日 03:48