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ファンタスマギア異聞録-老獄-

南国性気候の太陽はまるで釜戸の火の様に肌を焼き付ける。
整地されているとはいえまるで森のように木々が生い茂っているからこそ、こうやって自由に散策が出来るというものだ。

人の気こそ少ないが、ここはこの一帯では大きな村だ。
だがここには本来の村人など殆どいない、居るのは遺産目当ての好き者冒険者ばかりだ。

この村、その前身たるこの森は、かつて大盗賊グンダリが奪い去った財宝の数々を隠し持っていたとされる伝説が在る。
尤もその伝説ももはや何十年はくだらないほど昔の話で、金銀財宝などここには殆ど残っていないだろう。
だがそれでも一部の冒険者はその“ロマン”に吸い寄せられるものなのか。

俺はといえば、そんな真面目な連中が見向きもしない“本当の財宝”を求めて、この森を訪れたわけだが。



小さな宿に殆どの荷物を預け、短刀と飲みかけの酒だけ携え着のみ着のまま森へ繰り出すと、獣道を10分ほど下っていく。
草むらを掻き分け現れるのはちょっとした沢になっていて、ひざ上までの澄んだ水を湛えた向こう側に、目当てのものは在る。

服を脱ぎ、適当に纏めて小脇に抱えると、俺は下着姿で湖に足を踏み入れ、黙々と歩みを進めていく。

「おい、小僧」

ふと声の方向を見れば、でかい魚を野太い腕で鷲づかみする男の姿。
野太くしわがれた声、俺も一瞬怯むほどの筋骨の肉体、獅子の様に蓄えた髭。
だが、その顔には相当の年輪が刻まれ、髭も半分以上は白く染まっていた。

「小僧ってほど若くもねえぜ」

俺はそう言い返した。

「ならずモンか、おれからしちゃア小僧に違えねえ」

「かもな、なんでえ爺さん」

「その先ニャあ行かんほうがええ、そんな装備じゃあな」

ざぶさぶと音を立てて爺さんが近づく。
老いてなお鋭い眼光、まるでオーガでも前に立ったかのような威圧感だ。

「そんなかい、爺さん」

「怪物は出ねえが、盗賊の罠がそこらじゅう仕掛けてあんのさ、財宝ももう無え」

「そうか、俺ァ観光のつもりだったんだが」

「よけえ止めとけ、命が足らんぜ」

爺さんは豪気に笑った。
顔には刀傷、それどころか真っ黒に日焼けした体中に傷跡が走る。

「爺さんは慣れたもんかい」

「おうよ、何せ……」

「?」

「おれァ、グンダリ盗賊団の一員だったからな」



爺さんの話は信じられないものだ。
あのグンダリ盗賊団だったとしたら、ガキのころだったとしてももう七十はとっくに通り越した歳のはずだからだ。
確かに巨岩のような顔の皺は相当だが、筋肉の張りが老人のそれではない。

「俄かに信じられねえよ、そんな身体じゃあ」

俺はつい沢渡りを止めて、爺さんに着いていってしまった。

「ガハハッ、団のほとんどがおっ死んじまったが、おれァ飛び切り丈夫だったのさ」

爺さんは焚き火で魚を焼きながら、俺の酒に気を良くしたのか饒舌に語りだす。

「……でな、おれらァどんなモンでも手に入れたさ」

傾いた日に爺さんの黒鉄のような肌が照る。

「村を襲って焼き払っては、毎晩毎晩さらった娘に種仕込んでやったもんだ、そんでこの村ができた」

「ハハ、とんでもねえ話だな、みんなグンダリ一味の末裔かい」

「一番とんでもねえのはグンダリの御頭さ、全部の娘に五、六発は仕込んでもまだおっ勃ったまんまで、女男かまわず食っちまった、とん

でもねえ“雄の象徴”だったさ、あんなギラギラした眼で見られちゃあ男でも惚れちまう、おれらのムスコもおさまんねえで、どんな奴にも種つけちまった、腹ボテの女なんざ誰の子孕んだんかもわかんねえ」

爺さんは昔を思い出したか、下着姿のまま豪快に股間を弄った。
それを見て俺は思わず唾を飲む。

「だが流石に若ぇとき頑張りすぎたせいか、今じゃあ夢見ても勃ちゃしねえ」

「無茶すんなよ爺さん、にしても、流石に毎晩は若くても無理だったろ」

ここで俺の本題だ。

「いやいや、グンダリの御頭にゃあ“取っておき”があったからな、おれらもそれにあやかったもんよ」

「取っておき?」

「“傾国の宝珠”さ、アレで精つけたからこの身体があるようなもんさ」

噂のとおりだ。

亡国の秘宝と言われていた“傾国の宝珠”、それを失い国は滅びたというが……それを奪ったグンダリはその力で勢力を拡大したという。
爺さんの話もあながち嘘ではなさそうだが。

「んで、その宝珠を他の奴らが狙わないのはなんでだ?」

「狙うも何も、グンダリの親方がおっ死んだときに向こうにもってっちまったからよ、またあやかりたいもんだぜ」

「なんだ、そうかい」

俺は席を立った。

「小僧、傾国の宝珠が目当てだったか」

「まあ、腐った貴族に高く売れそうだと思っただけさ、快く諦めるよ」

「そうしろ、グンダリの御頭のバチがあたるぜ」

「邪魔したな」

ちょうど汗も引き身体も乾いた、服に袖を通し、俺は沢を後にした。



このときは。



月が昇り、人が寝静まったときを狙って俺は再び沢を訪れた。

ここは知るものには有名な場所だ、所謂“傾国の宝珠”は無くとも、ここには別の“好き者”が集う。
あの爺さんの語ったグンダリ伝説にあやかったものだろうか。
ここは男色家共の秘密の“遊び場”なのだ。

再び下着姿になった俺は、沢を渡り、向こう岸の丘を上り詰めた。
既に幾人もの男が通った道だろう、草は踏み固められ道が出来ている。
月明かりを頼りに俺は黙々と足を進めた。

木々が茂り、外界の視線をさえぎっている。
だが眼を凝らしても、他の男の姿は見えない。
今日はハズレか?

「……ん」

ふと、目の前の樹の枝に赤く光る何かを見つけた。

あれは。

周りの木々がまだ花をつけて間もない中で、唯一、実を結んだ大樹が一本。

あれは、まさか。

駆け寄った俺はそれが何かを確認した。

間違いない、“傾国の宝珠”だ!

一国の王が世継ぎを増やし、その版図を広げるために用いたとされる天然の精力剤。
その強烈な効能ゆえに王と周りの女を色に狂わせ、国を傾かせたとまで言う逸品だ。
この苗木を盗賊王グンダリは奪い去り、原木は火を放たれ焼失したという……

「ジジイめ、隠してやがったな……」

俺は一つ果実をむしりとる。
気が競ってまだ他の男が現れる前にたどり着いてしまったのかもしれない。
どうせ夜は長い。
その上ここは野生化した“傾国の宝珠”の群生地、噂が本当なら……

俺は宝珠をひとかじりした。
まるで渋い林檎のほうがマシの味、美味いもんではないが、肝心はその効果のほうだ。

「……ん?」

不味い実をひとつ平らげるころ、月明かりの中に、なにか蠢くものを見た。
汗に照る男の胸。
激しく前後する半身は村の若い男のようだ。
押し殺したような嬌声が続いて耳に入る。

なんだ、お楽しみじゃねえか。

ふと、男の動きが止まった。
果てたのだろうか。

「……ッ!?」

崩れ落ちる男の背後の闇から、黒鉄色の胸板が汗に輝く。

鋭い眼光が既に俺を捕らえている。

「じい、さん……!?」

茂みから一糸纏わぬ姿で爺さんは月明かりの下に現れた。

なんて身体、それに一物だ。

精液なのか何の液なのか、もはや解らん粘液で濡れた一物はふてぶてしく垂れ下がり揺れている。

ぬらぬらと濡れた一物を弄びながら、爺さんは笑っている。



誘っていやがる。



俺は自然ににやつく顔をそのままに一歩を踏み出した。

「……っ」

腰に力が入らない。

「……なんでえ、もっとリキ入れやがれ」

爺さんは野太い声で言う。

その声を聞いただけで、俺の息子が鎌首もたげる。

なんだこれは。

なんだこれは。

「……おめえ、“アレ”を喰ったのか」

「は、ああ……」

諸手を地に突き、顔だけ辛うじて爺さんの方を向ける。
身体が熱い。
相変わらず力が入らない。
それなのに、一物だけが痛いぐらいにパンパンに膨れ上がってくる。

「……バカ野郎め」

爺さんはそう笑うと、枝から一つ実をもぎ取り、一口、音を立ててかじりついて残りを棄てた。

「こいつァな、効きすぎるんだよ」

下着がきつい。
自分の限界を超えて勃起しているような感覚。

「そうなっちまったら、もうお楽しみはできねぇな」

俺の眼前に、爺さんのぶっとい幹が突き出された。

次の瞬間には既に、俺は自然にそれをなぶっていた。

まるで、犬のように。

「フウウウ……」

流れてくる風の向きまで解るほどに肌の感覚が敏感になっている。

それと同時に、肌に感じる何か突き刺さるような寒々とした感覚。

これは視線だ。
周りに潜む連中の。
羨望と嫉妬に満ちた。

そうか。
ここにいる連中全員、爺さんの身体が目当てなんだな。
そらそうだ、俺だってそうだ。
まるで戦神みたいにぶってえ足腰、分厚い胸板、熊のような腕、年輪刻む顔の鋭い眼光。

たまんねえ。

たまんねえよ。

痺れる手で何とかそのぶっとい腰にしがみ付く。

「オラッ!」

「ギャんッ!?」

爺さんに殴り倒され、俺は情けなく吹っ飛んだ。
何故だ、痛みは感じない。

「こっちをよこせよ」

爺さんは俺の脚を掴んで引きずり寄せ、力いっぱい下着を引きちぎる。
そしてあられもなく開かれた俺のケツに一発唾を吐きつけた。

「あ、ああ」

まるで焼けた鉄のように熱を持つ爺さんの肉棒がケツの穴に押し付けられる。

やめてくれ、裂けちまう!

「おらァッ!」

「ああああああああ!!」

冗談じゃなく、ケツの中に破城槌でも打ち込まれたかような衝撃があった。
しかし、痛みは感じない。
感じないが、俺の身体は大きく跳ねた。

「おおぅッ、が、おおうッ!!」

爺さんが腰を打ち付ける度に、ケツの中で大砲でも撃ち合ってるかのような異物感が全身に響き渡る。
逃れようとする俺の腕を地面にねじ伏せて、爺さんは遅くも早くもない一定のリズムで俺を掘り進める。

「があああッ、はあッ、あああああ!!」

爺さんの身体が俺と一つに繋がっている。

そう思った瞬間、顔に生暖かい液体が飛んできた。

自分の精液だった。

「もう、イッちまったのかァ……? ふう、若造が……」

もはや絶頂を迎えたかもどうかも解らない。

「真ッ昼間から色気づいた目で俺見やがって……いいぜ、今夜はお前でシめてやる」

ズボンといきなり一物を引き抜かれた。
開放感、その後にすぐ“物足りなさ”が押しかけてきた。

爺さんに蹴られるようにして俺はうつ伏せに転がされ、咄嗟に俺は恥ずかしげも無く尻を突き出した。

「い、いれ……」

「おう言われなくても挿れてやるよ」

再び爺さんは穴に一物を当てがい、容赦なく突っ込んだ。

「ひゃがあああッ!!」

ケツから背中まで衝撃が走る。

力の入らないはずの腕の先まで痙攣する。

「ぎゃあ、あ、あああ、がああッ!」

情けなくよだれを垂れ流しながら、もう獣言葉しか出てこない。

突き上げと同時に背筋が引きつり、四つん這いからそのまま自然に上体が起きてしまった。

俺の愚息は未だに上下に首を激しく振りながら白い雫を撒き散らしている。

「はぁ……いいぜ……坊主は丈夫そうだからな……お前の望みの場所にブッ放してやるよ」

俺を強く抱き寄せながら、爺さんは耳元で囁いた。

「ふッ、ぐおお、がああああああッ!!」

ミシミシッと、爺さんの大腿の筋肉が戦慄いた。

その直後、直腸の中に、ドドドッと精液が鉄砲水の様に注ぎ込まれる。

「ぐるォオおおおおッ! があッ! へぇあああああッ」

爺さんは俺と繋がったまま地面に倒れ、絶頂に痙攣し、のた打ち回る。

俺の身体は鋼の肉体に引き伸ばされ、捩られ、噛まれ、まるでボロ雑巾にでもされたかのようだった。

数分間、穴の中で一物は暴れ狂いながら精液を吐き続け、その中で俺は半ば意識を失った。




坊主、傾国の宝珠がなんでそう呼ばれているか、教えてやろうか。

その効果は身をもって知ったろうから、今更もう言うこたぁねえ。

その喜びを知っちまえば、王様もお姫様も関係ねえ、そこに居るのは盛りのついたケダモノ共よ。

そんだけでも国は十分傾くが、この“毒”はそれじゃあすまねえ。

この実には、とんでもねえ“常習性”があるのさ。

あの味を知っちまったら、もう普通のまぐわいで満足できる奴はいねえ。

ケツもチンポも、あの快楽じゃなきゃ満足できねえ。

それが解ったころにはもう遅ぇ。

グンダリの親方は、満足きかねえ自分のチンポコに苛立って、自分で切り落としておっ死んじまった。



そうさ、この沢に来る奴ァ、みんなその快楽が忘れられねえのさ。

おめえも、その仲間入りか?

この“肉の牢獄”のよォ……



全身の痛みはあのまぐわいで筋を伸ばしてしまったせいか。
白み始めた空の中、漸く俺は宿に戻ってきていた。

頭がくらくらする。
おまけに二日酔いの様に頭が痛い。

そして爺さんの昔話が頭痛の中で反復している。

心臓が緊張している。

俺もその肉欲に囚われてしまうのか?




なるだけ早く、この沢から離れてしまおう。

でなければ、一生ここから出て行けなくなる。

身支度を整え、宿を後にする俺の姿を、村の男が一人、なぜか見つめている。



あの視線を感じる。



しばらく歩いて、あれだけ精液を吐き出した一物が、なぜか唐突に硬くなり始めていることに気付いた。

そして直腸の中に、あの晩の衝撃が残響していることに気付いた。



まずい。



身体が、求めている。

あの夜の刺激を求めている。



ふと、顔を上げた眼前に。

赤々と煌く、あの木の実が不気味に実を結んでいた。



-了-
最終更新:2014年04月21日 01:38