アットウィキロゴ

発情期の終わり

「あのさ、番田って怪我でもしたの……?」

番田はここ一週間ほど学校に姿を現さない。
獣人族の友達では唯一無二の親友……と僕は思っているつもりなのだが、心配してメールをしてもめっきり返信が無い。
番田と同じ野球部(ただし共に万年補欠)の入谷くんに、思いきって事情を訪ねてみる。

「あー、そっか、倉見はヒト族だから知らないよな……」

入谷くんは三角の耳をぱたぱたと動かしつつ、回りの様子を伺った。

「まあ……大したことじゃないんだけどさ」

そしてせり出した口先を僕の耳元へ持っていくと、小さくこう囁いた。

「あいつ今、発情期なんだよ」

 

人獣共学の高校はまだ新設されたばかりでそれほど多くない。
内申が僅かに足りず第一志望を落とし、初の人獣共学とあってナーバスになっていた一年の春だったけど、思っていたより高校生活は悪いものでも無く、その上で初めてできた獣人の友達である番田はいろんな意味で特別な存在だった。

明らかに惹かれている。
スポーツ観戦は好きだけど体力的についてこなくて部活は諦めた身にあって、男らしく体力に溢れ、補欠とはいえ野球部で活躍している番田にはかなり強い憧れを持っていた。
一方番田はと言えば、獣人文化ではあまり発展していないという漫画やアニメ、それからゲームと言う所謂オタク文化に密かに憧れを持っていたそうで、僕も別段オタクというつもりはなかったのだが、とりあえずゲームはする方だったというのが番田の興味を惹いたらしい。
そんなこんなで接点が出来た僕らは次第に互いの家で遊ぶくらいに親密になっていた。

「あいつ今、発情期なんだよ」

入谷くんの言葉に僕は耳を疑った。

「はつ、じょ」

シー、と入谷くんは人差し指を立てる。

「大変なんだぜ……半分動物だからさ、時期が来たら避けられないし……女の生理みたいなもんでさ」

「そ、そうなんだ」

「オレは犬だから危ない時期来たら薬飲んどけば症状軽いけどさ、あいつ虎じゃん? 虎は症状重いからヤバイんだよ」

は、発情期の症状ってなんなんだよ……

「……なんつーか……発情期だからさ、もう性欲すげえみたいな印象あるだろ、それどころじゃ無いんだよ。オレとかは薬飲んでればまだ抑えられるけどさ、もう全身ビンカンで夢精しっぱなしで、すっげー体力落ちるし、精神的にもナーバスでさ……なんかもう、オレ馬鹿みたいってすげー鬱になるし」

うわ、思った以上に深刻だった。

「薬合わないと熱出るし、うっかり寝ちゃうともうパンツべちょべちょでさ、オレの精子ついたパンツの山を母親に洗濯してもらうとか、ぶっちゃけ拷問じゃん……母親は母親でそんなオレ見ていたたまれない顔してるしさあ……」

「うわあ……男子的にしんどいね……」

「だろ? あいつ発情期重いから……そういうのもあってあいつレギュラー入りできないんだよ。いい奴だし、部活でも成績いいしさ……悩んでたんだよ」

知らなかった。
まあ、これは番田的には“知られたくなかった”の域なんだろうが。
……僕的にはそんな事情はできるだけ笑って誤魔化せるぐらいの方が気が楽でいいのだけど。

……そう思うと、急に番田の顔が見たくなった。

 

うちの高校に通うために遠方から来ている獣人の生徒の数はかなり多いらしく、そういう生徒はほぼ学校が急場凌ぎで用意した学生寮で暮らしている。
人間と獣人が同じ社会で暮らせるようになって大分経つが、やはり文化的ギャップを埋めるのはなかなか難しいものらしく、人間関係に疲れて集落に帰ってしまう獣人は今でも社会問題だと聞く。
そういうギャップを埋めるために、学生の段階でコミュニケーションを身に付けることが出来るように国が整備を急いでいるのが人獣共学高校だそうだ。
今年からいよいよ大学にも共学制が導入されるらしいが、なるほど件の発情期のことを考えれば、高校に関して男女共学の前に人獣共学を優先して導入している理由も頷ける。
うちは男子高だから、性関連のトラブルはなんとかできているのだろうが、これが男女人獣共学校なんかになってしまえば、事件は起きなかったとしてもイジメとかに繋がることは十分考えられる、ような気がする。

番田はやっぱり友達だから、ひとりで悩ませるのは気が引ける。
携帯ゲーム機に漫画各種、スポーツドリンクやおかゆも携えて、僕は番田の家の前に立っていた。

「……もしもし番田?」

『……』

電話は繋がったが返事か無い。

「あのさ、今、番田ん家の前いるんだけど……」

『……』

「……漫画もってきたから、上がっていい……?」

『……』

やはりというか、返事はない。

「しんどいなら、また今度にするよ……」

『……鍵は、あいてる』

以外な返事だった。

「……じゃあ……行くね」

そう電話を切り、僕は階段を登った。

「おじゃましま、す」

部屋は暗いまま、玄関からどうしても見えてしまう洗濯籠からは確かに下着の山が見えていた。
ワンルームの奥はと言えば、散らかった部屋のなかで番田らしき人影が背中をむけて布団にくるまっている。
あの図体のデカさは間違いなく番田なんだけど。

「よー、大丈夫かー」

適当にゴミを避け、畳にどっかり腰を据える。
テレビには粛々としたドキュメンタリーが流れて高校生の部屋とは思えない異様な雰囲気が流れていた。

「ついでにおかゆとスポーツドリンク買っといたから」

「……インフルエンザじゃあるまいし……」

「っ、それもそうか」

なんとなくお見舞いの感覚で来てしまった。

「……」

「……」

なんだこの気まずさは。
番田は変わらずデカい背中を向けたまま。
やがてシンとした中で、ふつふつとやるせなさと苛立ちが込み上げる。

「ッ、番田、洗濯機借りるぞ」

「……あ!?」

「洗濯物溜まってんだろ、お母さん来る前に全部洗っちまうからな!」

「バカッ、てめえ……!」

漸く番田がこっちに虎面を向けてきた。

「男同士なんだから別にいいだろー、カーチャンに見られるのとどっちがいいよ」

「ぐッ」

「そんくらいはしてやるよ、よくわかんねえけどしんどいんだろ」

苦虫を噛み潰したような番田の顔を尻目に僕は腕まくりして洗面台に向かう。
そして徐に洗濯物の籠のてっぺんに詰まれたパンツの一つに手を伸ばした。

「……」

確かに内側には、どうした? ヤマトのりこぼしちゃった? と言わんばかりの白濁した液体がべったりと張り付いていた。

「……」

始めはそんなネタで笑ってやろうと思っていたのだが、いま洗濯物の上位に並んでいるパンツが全てそのような状態とあれば笑い事にできない。
とりあえず洗ってしまえ。
山盛りの洗濯物ごとパンツを洗濯機に押し込む。
そのとき、指先になにか冷たいものが触れた。

「うっ」

べったりと、掌に番田の精液が付着していた。
あ、あははー、ついちゃった。
エヴァ旧劇場版にこんなシーンあったの知ってる?
と、これまた笑いのネタにしようと思ったがどう考えてもそれは地雷すぎた。

どうせ洗うならいっしょと洗い物のバスタオルで拭い、それを同じく洗濯機に放り込んだ。

しかしあれだね、よく栗の花のニオイがなんとかとか言うけど、言うほどそうでもないねーなんて言おうとして、三度言いよどんだ。
本気でこれはうっかりすると友情が壊れかねないぞ。

「よーしオッケー。お前んち乾燥機付きのいい洗濯機使ってるじゃん」

無難に過ごすのが一番と決め込んで部屋に戻るやいなや、番田が上体を起こしてちょっと何かありえないものを見るような目でこちらを見ていた。

「……」

「……え?」

ふと視線を下に向けると、制服のズボンの膝上に、なぜかベッチョリと番田の精液が付着していた。

「……!!!!!!!!!」

「おま、おま、おま」

「……あ、はは、や、ヤマトのり、こぼしちゃったの、かな?」

そしてパニックの余り自ら地雷原へ突入!!!!

「馬鹿お前ッ、早く洗わねぇとッ」

慌てて番田が立ち上がる。
だがそのスウェットの前も元気に立ち上がっている!

「うわぁッデカッ!?」

「えっあ、アッ、み、見るな馬鹿ぁっ!?」

しどろもどろになった番田が落ちていたリモコンを踏む!

『ぅン……ハァン……あぁん……ッ』

はだかのおねいさんたち───ッ!?

「うわあぁァッ、あッ!?」

番田が前を隠そうとした瞬間、そのテントの先端から精液が染み溢れる!

「っあァッ!?」

「おッ、お前ッ、イッたん!?」

「……恥ずかしッ……」

番田は慌ててテレビを消し、背中を向けて座り込んだ。

「……」

「……ッ……!」

そしてこの気まずさである。
他人の男が目の前でイく瞬間を見てしまった……
それも、番田が。

「とッ、とりあえず脱げッ……次一緒に洗うから……」

「……ッ」

「んで僕にもなんか履くモン貸せッ」

そう押し入れを開いて、目を疑う。

「……履くもの……」

「……無い……」

「えっ」

「このスウェットが……最後……」

……ま じ か よ 。

「うー、んと」

まさか今洗濯機の中で回ってるのが全部とは……
番田は今のスウェットが無くなったらどうするつもりだったのか。

「とりあえず、脱げ」

「っハァ!?」

「ハァ? じゃない。そのまま履いてるわけにいかんだろ……僕もこんなじゃ帰れないし……」

もう他にどうしようもない。
僕はベルトに手をかける。

「……うわっ、パンツにまで染みてる……ッ」

さすがに時間が経ちすぎたか。
それにそもそもいつ出した精液が着いたのかもわからない。
気にしすぎなのか、なんとなく生臭い臭いを放っているような気がしてならない。

「……これも洗おうッ!」

「なにぃぃい!?」

思いきって番田の目の前でパンツを脱いで見せた。

「別に男同士見せてなんかあるわけでもないだろ」

「なんか無えわけでもないだろ!」

「別にー、番田になら別に恥ずかしくないし」

いっそ開き直ってしまえ。
それが僕の回答だ。

「もう、変な汗かいちゃったから上も洗っちまえ、番田も脱げ!」

「はあ!?」

「下だけ脱いで一日過ごす方がなんか恥ずかしいだろ! 汗くせえだろうから一緒に洗うぞッ」

フルちん全裸で番田の衣服を脱がしにかかるという、冷静に考えてどういう絵面だという状況。

「オラっ脱げ番田ぁっ!」

「うぉおお!? 血迷ったか倉見ぃいッ!」

抵抗させる間もなく着衣を剥ぎ取り、汗くささに顔をしかめながら全部まとめて洗濯籠に放り込む。

「お、おぉまぇぇなぁぁぁ……」

振り向けば、全裸の番田が引け腰で立っていた。
そして、その股間も、しっかりと。

「……お前、でかいのな」

「……は?」

と、言葉をかけた瞬間、番田の元気な息子さんは先端から一発、こちらに向けて白濁液を吐き捨てた。

「……え?」

 

「……なんで来たんだよ……」

畳に落ちた精液を拭き取り、再び番田は僕に背を向けて座り込んでしまった。

「単純に心配だったから……」

リアルタイムで見てしまった射精の瞬間がなぜか異様にこびりつく。

「……なんで友達の裸見て射精しなきゃなんねぇんだよ……変態かよ俺……」

「別に気にしてねえよ……そういう時期なんだろ」

「お前は気にしなくても俺は最悪の気分なんだよ……」

気持ちはわからなくもない。
オナニーですら他人に見られたりはしたくないのに。

「……でも、すげえよな、一発出してまた一発イッたんだろ」

「うるせぇ、ずっとこんなんなんだよッ、ちんこぜんぜん萎えねぇし、意味わかんねぇくらい射精するし……薬も切らしちまったけどこれじゃ医者にも行けねえし……外ちょっと歩いて、たまたまオバサンとすれ違ったってだけで女の臭いに反応してパンツぐちゃぐちゃだし……最低だよマジで……」

うわあ予想を遥かに越えて困った状況だった。

「それだけじゃないんだよ」

落ち込んだ様子で番田が続ける。

「……始まりが先週の練習試合でさ、俺もたまたま出てたんだけど……三回あたりで、腰がムズムズしだしたんだよ……最悪のタイミングで発情期来たかもって思ってたらさ……相手チームの打手がさ、気持ちいいくらいのホームラン打ったんだよ……そのときに」

「……ホームランの音で、イッたのか……?」

「どんだけだよな……どんだけ変態なんだよ俺……もう、ファウルカップのなかべちゃべちゃで……最低過ぎて涙出てきて……」

どんだけだよ発情期……
もうそれ変態云々とかじゃなくて、なんかきっかけがあればとりあえずイッちゃうんじゃないか……?

「……体質だろ、性癖じゃないんだから大丈夫だよ……」

「倉見ィ、俺このまま野球部続けらんねえよッ……球打つ度に勃起してる変態野郎になっちまうよ……ッ!」

「だッ、大丈夫だよッ、常に発情してるわけじゃねーんだから……」

「……俺……」

半ば涙声で番田は呟いた。

「お前にだけは……知られたくなかった……」

な、な、な、なんだその実は呪われた身であることを告白したRPGの旅の仲間みたいな言いぶりは。

「な、何を大袈裟な……」

「だってよ……倉見……人間だから……引かれたらやだなって……友達だから……」

「いやいやいや……むしろあまりに大変そうでかわいそうな位だよ……」

そう言いながら僕は番田の背中を擦ってやった。

「……ッ、……」

「こんな程度のことでお前の友達やめねぇから。まあ、お互い彼女作るのには苦労しそうだけどナ」

裸の男が裸の獣人を励ましている……あいかわらずどんな絵面だ。

「くッ、くらッ、みッ」

番田はいきなり立ち上がり、こちらを向いた。
神がかったタイミングで、ちょうど僕の鼻先に、ギンギンの御立派様を突きつけて。

「こんなだぞッ、俺ッ、こんなやつだぞッ」

「意味がわからんッ、番田は番田だッ」

「くらッ」

そう返した瞬間、生暖かい、いや、生熱い精液が僕の鼻先に吐き出された。

「……みッ……!!」

「……」

その瞬間、番田のあまりに絶望的な表情を見て

「……ぶはははははは!!」

とうとう僕は壊れてしまった。

「くッ、倉見ぃいいいッ!! 拭くものッ、拭くものッ!!」

「やべぇぇええ!! 顔射されたぶはははははは!!」

「すまんッ!! ゆ、許してくれ倉見ぃぃぃい!!」

「うわマッズ!! 番田の精子マッズ!!」

「なめるなァァァァァアアア!!」

ちょっとその前後のことはよく覚えていない。

 

「つかれた」

洗濯物第二陣がぐるぐると回りだしたのを確認して、僕は敷きっぱなしの番田の布団に身を横たえた。

「あーもう、ここにも精子ついてるよ……ちゃんと拭いとけよ」

「うるせえよ……」

その隣、番田も疲れた様子で隣に身を横たえた。

「あんだけビュービュー出してまだ勃起してんのかよ……」

「今日は異常だよ……つーても、虎って発情期の間100回は交尾するらしいから……」

「まじか、半端ねえな」

徐に番田の幹に手を伸ばす。

「太ッ」

「馬鹿、触んじゃねえ」

しかし番田はあまりに疲れているのか抵抗しない。

「もう、なんか見慣れてきちゃった」

「うるせえよ」

「堅ってーなー、完璧に負けたわ」

そう言って自分のモノと見比べた。

「ナッ、なにお前までおっ勃ててんだよッ」

「え、番田の見てたらなんとなく」

「きっもちわりいなぁ、ホモ野郎かよ」

「ぶっかけ野郎がどの口で言うよ」

「ッ……ひ、秘密だかんなッ」

なにが秘密だ、言えるわけが無い。

「……でもさ、僕」

「あ?」

「ホモじゃねえけど、番田のことはずっと前からかっこいいと思ってたよ」

「……は?」

その気持ちに嘘はない。

「運動神経ないからさあ、体力も無くて体育の時間だけでもうヘロヘロだし。だから番田みたいなマッチョに憧れがあるんだよ」

「う、うるせえ」

「だから、ぶっかけられようがなにされようが、僕は番田の友達でいたいよ」

と、言いながら番田のちんこを弄ぶ僕はどっからどう見てもホモではないだろうか。

「……うるせえホモ倉見」

「うるせえホモ番田」

「なんだとぉ!?」

流石にうざったくなってきたのか、番田は寝返りを打って僕にアームロックを仕掛けようとした。

そのとき。

『アッ……はあん……うゥン』

番田が再びリモコンを踏んだのか、テレビにふたたびはだかのおねいさんたち!!

「ぬおッ!?」

番田がビクリ、と体を仰け反らせた。

「ば、番田!?」

『ああぁぁあん……イイーッ、あああああああぁぁぁん』

「やべッ……くらみいぃぃッ、テレビ消してッ……、ぐおッ」

アダルトビデオの音で体が過剰反応してるのか!?
消せっつても、肝心のリモコンはどこだよ!?

『ひゃああああああぅぅぅぅぅぅぅんんんん』

「ウウーッ!!!!」

番田の巨体がのしかかってきた。
そして僕の腹の上に、ガッチガチの番田のちんこが押し付けられる。

『あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ』

さらに番田は僕の上であろうことか思いっきり腰を振り始めた!!

「ばっ、バカ番田ァッ!! なにしてんだよっ!!」

「だからテレビ消せぇ倉見ぃっ、あっ、こっ、腰が勝手に動くんだよオォォッ!!」

などと言いつつ番田は豆だらけの手で僕の肩をガッつりホールドしていて身動きがとれるわけがない!!

『ああああああぁぁぁん!! あっあっあっあっあっ』

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

テレビの音声と合わせて、番田の硬い胸板が上下しながら汗を降らせる。
なんだか自分が番田に犯されているような、そんな妙な気持ちになる。

『ううううううぅぅぅぅぅぅんんんああああああああぁぁぁぁぁん』

なにより上下運動で自分と番田のモノが擦れあって、気持ちよくなってしまっているのが問題だった。

『あああああぁぁぁぁんいくうううううううううぅぅぅぅうぅぅ!!!!!!』

「はぁああッ、ああッ、許せ倉見ィィッ!!!!」

雄たけびと共に、顎下にまた生熱い精液が勢い良く打ちつけた。
一発、二発、三発、四発、五発……

「はあ……はあ……はあ……」

なにもかもが理解の範疇を超えて、半ば放心状態だったのが、下腹部に鼓動のような快感の波がやってきたことで我に返る。

「……僕も……イッちゃった……」

番田の割れた腹筋との間に、ねっとりとした二人分の精液がサンドイッチになっていた。

「……」

番田は真っ青な顔のまま、僕の顔を見つめていた。

「……お、俺……」

「……気が済んだかよ」

僕はそのまま、番田を抱き寄せた。

なんとなく、そうしたかった。

 

どのくらい抱き合っていたかはわからないが、乾燥終了のアラームで再び僕らは我に返った。
身を離すと同時に、番田の毛皮がねっとりと剥がれていくのが気持ち悪いような、それはそれで心地よいような、ヘンな感じだった。

「……すまねえ……」

「……気にしてないって」

立ち上がろうとする僕を、番田の手が引き止める。

「……」

「……」

「……お、俺……」

そして番田はそのまま僕を抱き寄せた。

「……」

「……発情期が終われば、また元にもどるから」

「……」

「心配すんなよ、お前の友達、やめる気はないんだからよ」

そうだ。

番田はいまちょっと、発情期で具合が悪いんだ。

だから、あんなことになった。

「……お前の彼女になる女はめちゃくちゃ苦労しそうだけどな」

そう笑って、終わらせることにした。

番田はその言葉に、ちょっとどう受け取っていいかわからない顔をしていたのだが。

 

「……おっす」

翌日、番田はケロっとした顔で登校してきた。

「お前……あ、アレは?」

「アー……その」

番田は鼻先を耳に近づける。

「お前が帰った後……なんかすげえ勢いで落ち着いてって」

「……そんなタイミングで発情期終わったの……?」

「……らしい」

なんだそれ。
じゃあ昨日、僕があんなことにならなくても番田は元気になったんじゃないか……
いや、元気じゃなくなったのか?
なんていえばいいんだ?

「と、とりあえず……すまんかった」

「……」

「……」

「おい、バカ番田、こんどファミレス奢れ」

「は、はい」

番田は申し訳なさそうに頭を掻いた。

「あ、あと」

「あと、なんだよ……」

再び番田が顔を近づける。

「き、昨日のあれは、みんなには秘密だかんな……」

「……バカか」

そう呟いて番田の頭を一発ハタいてやった。

「なにが秘密だ、言えるわけが無い」

 

おわり。

 

最終更新:2015年02月25日 00:39