収録:名鑑未収録作品
補足
●ウルトラQ第20話(制作No.26)1966年5月15日放映
●登場宇宙人・怪獣:海底原人ラゴン
●ダイジェスト
伊豆沖の海底火山が噴火した。取材に向かった由利子と万城目は、その足で付近の岩根島に住む海洋学者・石井博士とその妹を訪ねた。石井博士は、かつて日本が沈むと論文を発表し学会を追われた人物だった。二人が訪ねると、石井博士は海底火山の調査に協力してほしいと、地元の漁師代表に交渉している最中だった。しかし申し出は断られ、しぶしぶと帰路につく石井姉妹、その後を追う由利子と万城目。途中、知り合いの漁師が声をかけてきた。彼らは噴火現場付近まで行き、奇妙な卵のようなものを網にかけ、島に持ち帰っていた。
●海底原人ラゴン/身長2メートル・体重100kg
爬虫類から進化した原人、2億年前に隆盛を誇った。現代でも5000メートルの深海に種を維持し続けている。卵生。知能レベルはゴリラかそれ以上(石井博士推測)。深海の水圧に耐えうる強靱な肉体と怪力を持つ。上陸時、なぜか音楽に興味を示した。
●今回登場したラゴンは、漁師が網にかけた卵の母親、つまり雌。そのため、ウルトラマンに登場したラゴンと異なり、乳房があります。爬虫類のくせに…。
●5000メートルの深海に適応した生物にもかかわらず、上陸し、空気呼吸も可能なラゴン。卵は地殻変動の影響により浮上したと考えた石井博士ですが、ラゴンの行動能力や、卵が陸上で普通に孵化したことを考えると、産卵や初期の子育て、さらには捕食行動などは、海上や海面近くに出て行う習性なのかもしれません。爬虫類から進化しているので、もともと空気呼吸をしており、エラに相当する水中呼吸器官は再度の進化によって獲得したと思われます。
●ラゴンの生息域と考えられる伊豆周辺は、諸島を含む伊豆・小笠原海嶺から、東の太平洋側にかけて水深7000〜9000メートルの伊豆・小笠原海溝があり、その先に水深6000メートルの太平洋海底が広がっています。西側は水深4000〜4500メートルと比較的浅い南海トラフやフィリピン海底。となると、水深5000メールに住むラゴンは、海溝の言わば崖の途中のような場所に生息していると思われます。水深1000〜3000メートルの斬深海帯で、すでに海中プランクトンは激減し、捕食行動や日周鉛直運動を行う生物もほとんどいなくなります。やはり、少なくとも捕食のためには、深海←→海面を鉛直運動しているはずです。深海潜行型のクジラとして有名なマッコウクジラでも潜水深度は3000メートル程度が限界。2億年もの間、種を維持し続けてこれたのは、このラゴンの特殊な能力・習性によるものでしょう。また1億年前の白亜紀は、北アメリカ・ヨーロッパ・北アフリカ・中近東など、世界的に海が浅くなり表層水と深海水の循環がよどんだため、大量のヘドロが形成されそれが黒色有機質泥岩となり石油資源の源になったという説があります。現在、ラゴンの生息が伊豆周辺でしか確認されないのは、この時期、生息分布域が著しく狭められたのだと考えられます。
●光の届かない5000メートルの深海に生息するラゴン(人間の目が感じる光は水深400メートルが限界と言われています)。上陸後の行動でかなり高感度の視覚を持っていることは明かですが、それ以上に通常は聴覚に頼った行動を取っていると考えるの自然。クジラやイルカと同様、低周波音によるコミュニケーションや、エコロケーションを図っている可能性が考えられます。ラゴンは、ラジオから流れる音楽に興味を示し、人の声には苛立ちを見せました。おそらく、音楽に含まれる人には聞こえないその領域・波長パターンに何らかの反応を示したものと思われます。逆に、人の声の周波数域は、ラゴンにとって騒音にしか聞こえないのかもしれません。
●怪獣図鑑で有名な大伴昌司氏が脚本で参加。
●「日本沈没」と言えば小松左京。作品が有名になったのは単行本化や映画化が行われた1973年と、Qよりも後ですが、執筆自体は1964年から。
最終更新:2009年05月31日 13:36