うん・今はちょっと……
▼うん
ドルチェ「
黒曜館の舞台にメグを連れてきて。 待ってるから。」
▼今はちょっと……
ドルチェ「そう……。」
ドルチェ「なら、手が空いた時にでもお願い。 待ってるから。」
マーガレット「あ、誰か連れてるね。じゃ、準備が出来たらまた来て。」
マーガレット「う、裏口から行こうね? 町の西にある湖の近くだよ。」
マーガレット「ひ、ひえぇぇ……。 早く舞台へ行こうよ……。」
女性客「やあ、はじめまして!」
女性客「今日はよろしくねーっ♪」
マーガレット「い、いつの間に……?」
主人公「なんだか元気な人だね……。」
女性客「ごめんね、手間かけさせちゃって。」
主人公「あ、いえ……。」
女性客「どうしても聴きたい曲でね、突然なんだけどお願いしちゃった。」
主人公「……大切な曲なんですね。」
女性客「うん……そうね。大切な曲だわ。」
女性客「それで楽譜なんだけど、きっとどこかの引き出しに入ってると思うの。」
女性客「大変だと思うけどよろしくね。」
怖いの?・おなかすいた?
無理しなくていいよ・がんばろう
マリーナ「ねぇねぇ、あなたはだぁれ?」
マリーナ「ごめんね、おどろいた? でもどうしてここに一人でいるの?」
マリーナ「さっき、バイオリンのおとが きこえたの。」
マリーナ「あなたがえんそうしてたのよね? とってもじょうず。」
ユリウス「……ほんと?」
マリーナ「あ、やっとしゃべってくれた♪」
ユリウス「あ……。」
マリーナ「あたしマリーナ。 あなたは?」
ユリウス「えっと……僕は、 …………ユリウス。」
マーガレット「うう……何か出そう……。 は、走り抜けるのはどう?」
あぶないよ・ついてこれる?
▼あぶないよ
マーガレット「そ、そうだよね……。 人にぶつかったら危ないよね。」
マーガレット「……ってこんなところで人に ぶつかったらヤだよ~!!」
▼ついてこれる?
マーガレット「お、おいていかないで! 手つないで行こうよ!」
マリーナ「がんばってるのね、 ユリウス。」
ユリウス「マリーナ、 いつからそこに?」
マリーナ「さっきからいたわ。」
マリーナ「あなた、音楽に夢中になると 何も見えないのね。」
ユリウス「そ……、そんな事ないって。」
マリーナ「……ふふっ。」
ユリウス「なに? なにかおかしかった?」
マリーナ「そうね。」
マリーナ「昔は全然話してくれなかったのに 今ではこうして楽しく話せるんだもん。」
マリーナ「それが、なんだかおかしくって♪」
ユリウス「……はは、確かにそうだ。」
マリーナ「それと同時に、なんだか うれしくって。」
ユリウス「マリーナ……。」
マリーナ「ねえ、ユリウス。 今度の週末なんだけど……。」
マリーナ「……聞いてる? 何してるの?」
ユリウス「……ああ、 楽譜を書いてるんだ。」
マリーナ「また……音楽に夢中なのね。」
ユリウス「ああ。すまないけど、 また後にしてくれないか?」
マリーナ「…………どうして?」
ユリウス「…………。」
マリーナ「ねえ、どうして!? いつもいつも音楽の事ばかり!」
ユリウス「マリーナ、すまない。 今はとても大切な時期なんだ。」
マリーナ「そんなのわかってる……! でも……誕生日くらい……っ!」
ユリウス「とにかく、今は話しかけないでくれ。」
ユリウス「……今は、この楽譜を 間に合わせないといけないんだ……。」
マリーナ「…………。」
マーガレット「私はこれを初めて聴いた時、 とっても感動しました。」
マーガレット「きっと、これは誰かとても大切な人に あてた曲なんだと思います。」
聞いてくれるかい、マリーナ。
……ずいぶん久しぶりに 話しかけてくれたわね。
お、怒ってるかい……? ごめんよ……。
いいわよ。いつもの事だし。
……それで、 その聞いてほしい事があるんだ……。
聞いてほしい事? なに?
実は今度、演奏会を開く事になったんだ。
え、演奏会? あなたの? すごいじゃない!
そう、僕の。 いや、違うかな……。
???
日にちは君の誕生日。
だから、この演奏会は君に捧ぐよ。 そのために、新たな曲を書いたんだ。
えっ――
会場に特別席を用意したんだ。
その席にはキミに座って欲しい。 そこで僕の演奏を聞いてくれないか?
うそ……。
……ほんとうに? ほんとうに……私なんかでいいの?
ああ、もちろん。 いや、キミじゃないとダメなんだ。
演奏会が開かれる日。 キミを迎えに行くよ。
そこで、大切な音楽と、 大切な言葉を聞いてほしいんだ。
とびきりの、ドレスを着てきて くれないか?
女性客「ユリウス……。 この曲なのね……?」
女性客「あなたが……私に聞いてほしいと 言ってた曲……。」
マーガレット「……?」
ドルチェ「メグ、演奏を続けて。 何があっても、止めないで。」
マーガレット「……え? う、うん……。」
女性客「ユリウス……!」
ユリウス「マリーナ……。ごめん、とても待たせたね。」
マリーナ「そうね……。 本当に、長い間待ってたわ……。」
ユリウス「今、彼女が弾いてくれているこの曲が 僕の気持ちだ。」
マリーナ「ユリウス……。」
ユリウス「もう行こう。 ここは僕達の居場所じゃない。」
マリーナ「……そうね。」
ユリウス「これからは、ずっと一緒だ。」
マリーナ「……ええ。」
ユリウス「……ありがとう。」
マリーナ「……本当に、ありがとう。」
マーガレット「えっ……?」
ドルチェ「メグ、あの男の人はね。 あなたと同じ音楽家よ。」
マーガレット「そ、そうなの?」
ドルチェ「あなたが弾いた曲の作曲者。 隣にいた彼女のために作ったの。」
マーガレット「え……あの人が……?」
ドルチェ「これはもうずっと昔の話なんだけど。」
ドルチェ「彼はあの曲を彼女に贈るため、 音楽会を開いたの。」
ドルチェ「彼女を、この
黒曜館の特別席へ 招待したわ。」
ドルチェ「そして馬車で一緒にここへ 向かっていたのだけれど。」
ドルチェ「その日は大雨で……、 あちこちで土砂くずれが起きていた。」
ドルチェ「彼らはそれに巻き込まれてしまって、 …………帰らぬ人となったわ。」
マーガレット「そんな……。」
ドルチェ「彼は彼女に音楽を届けるため。」
ドルチェ「彼女は彼の音楽を届けてもらうため。」
ドルチェ「ずっと、ずっとここで 演奏が始まるのを待っていたの。」
ドルチェ「あなたたちは、2人の願いを 叶えてあげたのよ。」
どうしたの?・大丈夫?
▼どうしたの?
マーガレット「う、うん、なんだろう。 なんで泣いてるんだろうね。」
▼大丈夫?
マーガレット「う、うん、だいじょうぶ。 なんで泣いてんだろ、わたし……。」
最終更新:2023年02月21日 22:44