過去からの手紙


イベント関係者(レオン、キール、フォルテ、アーサー、シャオパイリンファ

1日目

キール「あ、フレイさん!」
キール「レオンさん見なかった?」
フレイ「レオンさん?」
キール「どこを探しても見当たらないんだ。」
キール「コレ、読んでもらおうと思ったのに……。」
フレイ「その紙は?」
キール「お姉ちゃんと町の外に行った時、見つけたんだ。」
キール「昔の言葉で書かれてるんだけど、ボクじゃあ読めないから。」
フレイ「へえ……。」

フレイ「あれ?紙の後ろにも文字が……。」
キール「あ、うん。」
キール「そっちはね、今と同じ言葉で書かれてるんだよ。」
キール「一方には、昔の文字、その裏には、今の文字。」
キール「ね?なんだかワクワクしてこない!?」
そうだね ・ そうでもないよ
▼そうだね
キール「くふふー♪」
▼そうでもないよ
キール「えー。」
キール「フレイさんは、ロマンがないなあ。」

キール「でも、こんなヘンテコなもの、どんな状況ならできるんだろ?」
フレイ「そ、そんなに抱きしめたら、紙がクシャクシャになっちゃうよ?」
キール「大丈夫。こっちは写しだから。」
キール「オリジナルはアーサーさんのとこ。これはレプリカだよ♪」
フレイ「そ、そう……。」
キール「どんな想いが込められてるんだろ?」
キール「うー、はやくコレ、読んでみたいなあ……。」
キール「レオンさんなら、読めるかもって思ったのに。」
キール「どこに行ったんだろう……。」
かわりに渡しておこうか? ・ どこにいったんだろうね
▼どこにいったんだろうね
キール「ねー。」
キール「レオンさんなら、読めるかもって思ったのに。」
キール「どこに行ったんだろう……。」
<<無限ループ>>
▼かわりに渡しておこうか?
キール「あ、いいの?」
キール「じゃあ、お願いしちゃおっかな。」
キール「実は、お姉ちゃんのために、ケーキを焼いてあげたかったから♪」
フレイ「うん。分かった。」
キール「それと、こっちの紙も一緒に渡してくれるかな?」
フレイ「これは……。」
キール「たぶん、最初に渡した紙と関係のあるものだよ。」
キール「ほら、コッチの紙も、表と裏で文字が違うでしょ?」
キール「こっちはまだ、アーサーさんにも渡してないんだけどね。」
フレイ「え?いいの?」
キール「だって、早くつながりが知りたいんだもん♪」
フレイ「そ、そっか……。」
キール「というわけで、よろしくお願いします!」

 キール「でも、レオンさん、ホントにどこ行ったんだろ?」
 キール「またお姉ちゃんとケンカでもしてるのかなあ。」

フォルテ「レオンさんですか?」
フォルテ「いえ、今日はお会いしてません。」
フォルテ「そういえば、アーサーさんも探していたようですが……。」
フレイ「そうなんですか。ありがとうございます。」
フォルテ「あ、フレイさん。」
フレイ「はい?」
フォルテ「以前からお聞きしたかったのですが、あんなののどこが――」
フォルテ「あー、こほん。いえ、あの方のどこがいいのですか?」
フレイ「それは……。」
かっこいいじゃないですか ・ かわいいじゃないですか ・ どうしようもないじゃないですか
▼かっこいいじゃないですか
フォルテ「……なるほど。」
フォルテ「やはり私には、恋愛はまだ早いということでしょうか……。」
フレイ「え?」
フォルテ「……いえ、なんでもありません。」
▼かわいいじゃないですか
フォルテ「……なるほど。」
フォルテ「やはり私には、恋愛はまだ早いということでしょうか……。」
フレイ「え?」
フォルテ「……いえ、なんでもありません。」
▼どうしようもないじゃないですか
フォルテ「ええと……、どうしようもないんですか?」
フレイ「はい。」
フォルテ「なるほど。愛とは、奥が深いのですね。」

 パート2
 フォルテ「レオンさんなら、アーサーさんも探していましたよ。」
 フォルテ「それにしても、あんなのの……、いえ、あの方のどこがいいのですか?」
 フレイ「それは……。」
 >かっこいいじゃないですか ・ かわいいじゃないですか ・ どうしようもないじゃないですか
 ▼かっこいいじゃないですか
 フォルテ「……なるほど。」
 フォルテ「やはり私には、恋愛はまだ早いということでしょうか……。」
 フレイ「え?」
 フォルテ「……いえ、なんでもありません。」
 ▼かわいいじゃないですか
 フォルテ「……なるほど。」
 フォルテ「やはり私には、恋愛はまだ早いということでしょうか……。」
 フレイ「え?」
 フォルテ「……いえ、なんでもありません。」
 ▼どうしようもないじゃないですか
 フォルテ「ええと……、どうしようもないんですか?」
 フレイ「はい。」
 フォルテ「なるほど。」
 フォルテ「恋愛とは、奥が深いのですね。」

アーサー「え?レオンさんですか?」
アーサー「そういえば、今日はまだ見てないですね。」
フレイ「そうですか。」
アーサー「このところ、よく考え事をしているようでしたけど……。」
アーサー「シャオさんかリンファさんなら、何か知っているかもしれませんよ。」

 アーサー「レオンさんなら見ていませんよ。」
 アーサー「このところ、よく考え事をしているようでしたけど……。」
 アーサー「シャオさんかリンファさんなら、何か知っているかもしれません。」

リンファ「レオンさんですか?」
リンファ「ああ、一緒に出かけられるんですよね。レオン・カルナクに。」
フレイ「え?」
リンファ「2人分のお弁当を持ってたので、すぐに分かりました♪」
リンファ「……あれ?」
リンファ「でも、どうしてフレイちゃんがここに?」

シャオパイ「レオンさんか?」
シャオパイ「ああ、それなら、出かけていくのを見たが。」
シャオパイ「レオン・カルナクまで行ってくるとか聞いたようだ。」
フレイ「レオン・カルナクまで……?」
シャオパイ「2人分のお弁当を持っていたが、一緒じゃなかったのか?」
フレイ「え……?」

  • レオン・カルナク
フレイ「レオンさん……?」

レオン「フレイ。なんでここに?」
フレイ「えっと、レオンさんにちょっと用事があって。」
レオン「用事?なんだ?」
フレイ「それは……。」
キールくんが探してましたよ ・ 2人分のお弁当って……?
▼キールくんが探してましたよ
レオン「キールが?」
フレイ「はい。コレを読んで欲しいからって。」
レオン「これは、アーサーが持ってきた……?」
フレイ「え?」
レオン「ああ、いや。」
レオン「分かった。後でキールには話しておくよ。」
フレイ「あ、はい。」
フレイ「…………。」
レオン「なんだ?まだ聞きたいことがあるのか?」

▼2人分のお弁当って……?
レオン「そんなこと気にしてたのか。」
フレイ「そりゃあ、まあ……。」
レオン「他に誰もいやしないさ。」
フレイ「え……?」
レオン「ただ、気分だけでもと思っただけだからな。」
フレイ「……?」
レオン「なんだ?まだ聞きたいことがあるのか?」

  • 選択肢二つを選ぶと追加選択肢
どうしてこんなところに? ・ キールが探してましたよ ・ 2人分のお弁当って……?

▼どうしてこんなところに?
レオン「見えるか?これ。」

フレイ「人の名前がたくさん書かれてますね……。」
レオン「その一番上にあるやつだ。」
フレイ「えっと……コレは?」
レオン「ずっと昔の文字だ。俺の時代でもあまり使われていない。」
フレイ「昔の文字……。」
レオン「前にも言ったかもしれないが――」
レオン「俺の国でも、セルフィアと同じ文字や言葉が使われていたんだ。」
レオン「これは、俺たちとは違う国の文字。もっともっと古い国の文字だ。」
レオン「外国語っていってもいいな。」
フレイ「なんて書いてあるんですか?」

レオン「『レオン』」
フレイ「え?」
レオン「その隣にあるのが、『マリア』だ。」
フレイ「マリア……さん……?」
レオン「何百年も昔に、亡くなったヤツの名前だよ。」
レオン「俺の幼なじみだったんだ。」
フレイ「あ……。」
レオン「アイツは妹みたいなもんだった。」
レオン「うっとうしくて、でも、かわいくて仕方ない。」
レオン「俺は兄貴ヅラして、よくアイツの世話を焼いてたもんだ。」
レオン「……いや、そう思ってたのは俺だけだったのかもな。」
フレイ「……?」
レオン「泣き虫のアイツは、いつも俺の背中にひっついてた。」
レオン「本当に、どこに行くのも一緒だった。」

レオン「……ここに名前を刻んだ日もな。」
レオン「あの日もここで、マリアが泣いてたんだ。」
レオン「なかなか泣き止まなくて、困り果てた俺は、」
レオン「しょうがないから、アイツに言ったんだ。」
レオン「『泣き虫じゃなくなったら、なんでも言うことを聞いてやる』って。」
レオン「で、アイツは答えた。」
レオン「『俺のお嫁さんになりたい』――てな。」
フレイ「え……?」
レオン「まだまだ子供だった俺は、かるい気持ちでうなづいた。」
レオン「その証として名前を刻んだんだ。覚えたばかりの別の言葉で。」
レオン「二人だけの、秘密の暗号のつもりだった。」
フレイ「…………。」

レオン「ありがちな話だろ?」
レオン「俺も、単なるママゴトだと思って、すっかり忘れてたんだ。」
レオン「でも、アイツはそれ以来、けっして泣かなくなった。」
レオン「俺にいじめられても、タンスの角に小指をぶつけても。」
レオン「それに──」
レオン「俺が竜の神官として、守り人になると決めたときでさえな。」
フレイ「……!」
レオン「守り人になると決めて、みんなが見送ってくれたあの日。」
レオン「家族や友達が見送る後ろに、アイツは、ポツンと一人たたずんで、」
レオン「ただ静かに、こっちを見てたよ。」
レオン「今にも泣き出しそうな顔でさ。」
フレイ「…………。」
レオン「バカ正直な妹が、あんな約束をずっと信じてたんだって。」
レオン「そのときになって、バカな兄貴はやっと気づいたんだ。」
レオン「ホント……、」
レオン「……救いようのないバカだ、俺は。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「だから、俺は誰とも結婚しない。」
フレイ「あいつとの約束を、これ以上、踏みにじらないために。」
レオン「……そんなことしても、……何にもならないことは分かってるがな。」
レオン「でも……。」
レオン「そうでもしないと、俺は俺のことを許せない。」
レオン「俺は、弱い人間なんだ。」
フレイ「…………。」

レオン「変な話を聞かせて、悪かったな。」
レオン「……ヤキモチ、焼いたか?」
……そんなこと聞かないで下さい ・ 別に……そんなこと……
▼……そんなこと聞かないで下さい
▼別に……そんなこと……

レオン「はは。期待通りの反応だな。」
レオン「本当にまいるよ。」
レオン「アンタはいちいち、かわいすぎる。」
フレイ「う……。」
レオン「なんて、からかうのはこれくらいにしてだ。」
フレイ「レオンさん!!」
レオン「まあ、でも、俺にとっては大事な思い出なんだ。」
レオン「だからこそ、あんたには聞いてもらいたかった。」
フレイ「…………。」
レオン「アイツから涙を奪ったのも、アイツにあんな顔させたのも、」
レオン「全部、俺だったんだ。」
レオン「俺は、あの時のアイツの顔を、一生忘れない。」
レオン「……忘れられるはずがないんだ。」

レオン「悪かったな、マリア。」
レオン「約束、守ってやれなくて。」

フレイ「…………。」
レオン「なあ、フレイ。」
レオン「俺と付き合ったこと、後悔してないか?」
フレイ「え?」
レオン「マリアの話を聞いて、」
レオン「それでも、俺のことが好きだと言えるか?」
好きですよ ・ 裏切られたという気持ちもあります
▼好きですよ
レオン「…………。」
▼裏切られたと言う気持ちもあります
レオン「そうか……。」
レオン「……すまない。」
フレイ「…………。」

レオン「マリアのことは、誰にも話すつもりはなかったんだ。」
レオン「俺の中だけで、俺一人だけで、あの約束を守り続けていれば、」
レオン「ずっと抱え込んで生きていけば、それでいいって思ってた。」
レオン「けど、何でだろうな……。」
レオン「アンタには、話しておきたいって思った。」
レオン「……話さずにはいられなかったんだ。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「それで、何が変わるわけでもないって分かってるのにな……。」

変わりましたよ ・ そうですね
▼変わりましたよ
改行後に飛ぶ
▼そうですね
フレイ「でも、少しだけ、分かったこともあります。」

レオン「え……?」
フレイ「レオンさんにも過去があって、私の知らないレオンさんがいて、」
フレイ「そんなの、当たり前のことで、どうしようもないことなのに――」
フレイ「それでも……胸がざわつくのは……。」
フレイ「それもまた、あなたを好きっていう気持ちの1つなんだって。」
フレイ「分かりました。」
レオン「俺のことを……?」
フレイ「はい。」
フレイ「それだけ、あなたのことが好きなんです。」
レオン「…………。」
フレイ「心の形は、別に1つじゃなくてもいいんじゃないですか?」
フレイ「苦しくてツライのも、楽しくてうれしいのと同じくらい、」
フレイ「あなたのことを、好きだってことで……。」
フレイ「……いいじゃないですか。」
レオン「そうか。」
レオン「……そうかもしれないな。」
フレイ「はい。」
レオン「まったく、本当にタイクツしないな。」
レオン「アンタといると、色々なことに気付かされる。」
フレイ「そうなんですか?」
レオン「ああ。」
レオン「最近の女は意外と積極的だとか、」
フレイ「どんな状況だろうが、恥ずかしいセリフはやっぱり恥ずかしいとか。」
フレイ「もう……レオンさん!」
レオン「それにだ。」
レオン「……こんなにいとおしいのに、……近づけないツラさとかな……。」
フレイ「え?」

レオン「さて……。」
レオン「俺はもうちょっと、ここでコイツにあいさつしてくよ。」
レオン「数百年分の、積もる話もあるしな。」
フレイ「分かりました。」
フレイ「じゃあ、私はこれで。」
レオン「ああ。」
レオン「ありがとうな、色々と。」
フレイ「いいえ。どういたしまして。」
レオン「…………。」

 レオン「……マリアはあの後、どうしたんだろうな。」
 レオン「いや……。」
 レオン「今のは忘れてくれ。」
 フレイ「…………。」

 キール「レオンさん、あの塔に行ってるんだってね。」
 キール「あ、あの紙、渡しておいてくれたんだね!」
 キール「ありがと♪」
 キール「あ、そういえば、フレイさん。」
 キール「この町にあったおまじないについて、前に話したことってあったっけ?」
あるよ ・ おまじない?
 ▼あるよ
 キール「あれ?そうだっけ?」
 キール「じゃあ、まあいっか♪」
 ▼おまじない?
 キール「ある洞くつにあったおまじないでね。」
 キール「そこに名前を書いた人たちは、幸せな家族になれるって──」
 キール「そんな話があったんだ。」
 フレイ「名前を?」
 キール「うん!」
 キール「でも、そのおまじないは元々、位の高い人が眠る場所にあって、」
 キール「長い年月の中で、位が暗いに変化して、」
 キール「どうくつの中に場所が変わったんじゃないかって。」
 キール「そんな言い伝えがあるんだよ。」
 フレイ「へえ……。」
 キール「そういう言葉の取りちがいで、変化しちゃうものって多いからね。」
 キール「だから、昔の文字を見つけると、ついコウフンしちゃうんだあ。」
 キール「今には残ってないことを、教えてくれるかもしれないってさ♪」
 フレイ「なるほど……。」

  • 自宅
フレイ「さてと……。」
フレイ「レオンさんも、そろそろ塔から帰ってるころかな。」
フレイ「キールくんから預かった古い文章も、読んでくれてるといいけど……。」

レオン「…………。」
レオン「キールのヤツ、とんでもないものを探し当てたな。」
レオン「しかし……。」

レオン「『それだけ、あなたのことが好きなんです』か。」
レオン「…………。」
レオン「俺だって……。」
レオン「俺だって、アンタにもっと近づきたいし、抱きしめたいと思うよ……。」
レオン「けど……。」
レオン「これ以上、あの約束を踏みにじるのか……?」
レオン「そんなこと、許されるのか……?」

レオン「……俺の胸が、こんなにも苦しいのも、」
レオン「それだけ、俺がアイツのことを、好きになっちまったってことか……。」
レオン「…………。」
レオン「……参ったな。」

2日目

レオン「ああ、フレイ……。」
レオン「…………。」
フレイ「レオンさん?」
レオン「……悪い。アーサーから仕事をたのまれててな。」
レオン「用事があるなら、また今度にしてくれ。」
フレイ「……?」

フレイ「アーサーさん。またお仕事ですか?」
アーサー「ええ、モチロン。」
アーサー「…………。」
フレイ「……? どうかしましたか?」
アーサー「フレイさん。レオンさんと何かありました?」
フレイ「え……?」
アーサー「いえ、ホンヤクの仕事を しばらく休ませてほしいと頼まれて。」
フレイ「レオンさんが?」
アーサー「はい。」
アーサー「キール君の見つけた古い文章を訳している途中だったのですが、」
アーサー「どうしても休ませてほしいと。」
アーサー「一体、どうされたんでしょう……?」
フレイ「…………。」

 アーサー「レオンさん、どうされたんでしょうね。」
 アーサー「キール君なら何か知っているかもしれませんが……。」

キール「うーん……。」
フレイ「どうしたの?キールくん。」
キール「あの文章、レオンさんでも読めなかったんだ。」
キール「あ、この前に渡してもらった、あの古い文章のことね!」
フレイ「ああ、うん。」
キール「レオンさん、一枚目の途中で訳すのやめちゃって、」
キール「どうしてって聞いたら、『俺にはもう読めない』って……。」
フレイ「え……?」
キール「途中から、暗号にでもなってたのかなあ。」
キール「レオンさんでも読めないなんて……。」
そういうときもあるよ ・ その文章はどこに?
▼そういうときもあるよ
キール「そっかあ。そうだよねー。」
キール「でも、気になるなあ……。」
▼その文章はどこに?
キール「ボクの部屋に、書きうつしたものが置いてあるよ。」
キール「オリジナルはアーサーさんに保管してもらってるから、」
キール「書きうつした方は好きに読んじゃって。」

  • キールの部屋 机の上
フレイ「机の上に、2枚の紙が置かれてる。」
1枚目(―) ・ 2枚目(△) ・ 読むのをやめる
▼1枚目(―)
フレイ「古い文字の上にルビが振られてる。」
フレイ「レオンさんが訳したのかな。」
フレイ「ええと……。」

あるところに、幼なじみの男の子と女の子がいました。
女の子は泣き虫で、いつも男の子に慰められてばかり。
ある日、男の子が言いました。
「泣き虫じゃなくなったら、一つだけ、お願いきいてあげる」
彼の言葉を聞いて、女の子はこう答えました。
「じゃあ、しょうらい私のおヨメさんになってくれる?」
男の子はうなづきました。
そして、そのちかいを忘れないように、
覚えたばかりの古い言葉で、二人の名前を残しました。
二人だけのひみつの暗号のつもりでした。
                              (-)
フレイ(この話、レオンさんから聞いた話と同じ……?)
フレイ(えっと、紙の後ろには――)
東の森。谷にはさまれた場所。三角形の重心。
フレイ「こっちは最初から、セルフィアの言葉で書かれてたみたい。」
フレイ「この場所に行ったら、2枚目がうまってたんだよね……。」

▼2枚目(△)
                (△)
フレイ「こっちはまだ訳されてないみたいだ。」
フレイ「後ろは……。」
洋館の南。秋への変わり目を越えてさらに南。四角形の中央。
フレイ「メモがあるだけか……。」
フレイ「『俺にはもう読めない』って、レオンさんは言ったみたいだけど、」
フレイ「…………。」

フレイ「あの、レオンさん。」
レオン「なんだ?」
フレイ「…………。」
ホンヤクをやめた理由を聞く ・ やっぱりなんでもない
▼やっぱりなんでもない
「なんだ。変なヤツだな。」
 会話終了
▼ホンヤクをやめた理由を聞く
レオン「…………。」
……私には話しづらいことですか? ・ あの文章はマリアさんが……?
レオン「ああ……。……いや……。」
フレイ「…………。」
フレイ「……やっぱり、あの文章はマリアさんが……?」
▼あの文章はマリアさんが……?

レオン「アンタも読んだのか?」
フレイ「………………はい。」
レオン「……アンタの言うとおりだ。」
フレイ「え……?」
レオン「あれは多分マリアの書いたものだよ。」
レオン「俺とアイツの約束は、他の誰も知らないはずだからな。」
レオン「それに二枚目の文章は一枚目の続きだった。」
レオン「だから、アレの続きを探せば、」
レオン「俺が眠ったあと、アイツがどうなったか分かるかも知れない」
フレイ「それじゃあ――」
レオン「……怖くなったんだよ。」
フレイ「え?」
レオン「そう思った瞬間、怖くなった……。」
レオン「考えても見ろ。」
レオン「自分との約束で、幼なじみの一生が台無しになったかもしれないんだぞ?」
レオン「これで怖くないって方が、どうかしてる」
フレイ「…………。」
レオン「別れ際のアイツの顔がまぶたから離れないんだ。」
レオン「もし、アイツが、あの後もあんな顔をしてたら――」
レオン「……想像するだけで……体が震える……。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「アイツがもし、不幸な最期をとげてたとして。」
レオン「俺だけが幸せになることなんて、絶対に許されるはずがない。」
レオン「だから、俺は……。」
レオン「もうこれ以上、アンタを好きにならないって決めた。」
フレイ「……!」

レオン「でも……。」
レオン「アンタといると、分からなくなる……。」
レオン「あんたに触れたいと思う。もっと近づきたいとも思う。」
レオン「同じくらいアイツとの約束を大事にしたいと思う。」
レオン「どっちも本当で、」
レオン「だからこんなにキツいんだ……。」
フレイ「…………。」
レオン「逃げていいものじゃないことも、分かってる。」
レオン「ただ、少しだけ時間がほしい。」
レオン「だから……。」
レオン「……悪い。しばらく一人で考えさせてくれ。」

 レオン「…………。」
 レオン「……悪い。しばらく一人で考えさせてくれ。」

3日目

シャオパイ「ああ、フレイ。」
フレイ「シャオさん……。」
シャオパイ「このところ、レオンさんの元気がないようだ。」
シャオパイ「マーマも心配してるのだが、なにかあったのか?」
フレイ「……ええ。ちょっと……。」
シャオパイ「……?」
フレイ「……私だと役に立てないみたいなんです。」

シャオパイ「まあ、一人で乗り越えることも大切だからな。」
シャオパイ「なんでもかんでも人に頼ったらダメになるようだ。」
フレイ「…………。」
フレイ「……そう、ですよね。」
シャオパイ「だが。」
シャオパイ「一人の方がダメになるときもあるようだ。」
フレイ「え?」
シャオパイ「ワタシを見るといい。」
シャオパイ「この身長だから、高いところには手が届かない。」
シャオパイ「記憶力もよくはないから、オーダーがあまり覚えなれない……。」
シャオパイ「一人では、どうしようもないことばっかりだっ!!」
フレイ「あの……シャオさん?」
シャオパイ「ああ、すまない……。つい熱くなってしまったわけだが。」
シャオパイ「ともかく。」
シャオパイ「一人でなんとかしたいが、何ともならない。」
シャオパイ「そんなとき、よくよく思うようだ。」
シャオパイ「一人で抱え込むにはこの世界はあまりに広すぎる。」
フレイ「…………。」
シャオパイ「でも、だからこそ。」
シャオパイ「この世界には、いろんな人がいるんじゃないのか?」
シャオパイ「時にはおせっかいかもしれないが、」
シャオパイ「お互いを手伝うために。」

フレイ「……私にも、手伝えることがあるのかな?」
シャオパイ「それはワタシにはわからないが。」
シャオパイ「まあ、フレイなりにがんばったらいい。」
フレイ「私なりに……。」
シャオパイ「うむ!」
シャオパイ「ワタシはいつも、そうしているようだ!」
フレイ「…………。」

 シャオパイ「一人で抱え込むには、世界はあまりに広すぎる。」
 シャオパイ「レオンさんでも、そう思うことがあるんじゃないか?」
 フレイ「…………。」
 シャオパイ「まあ、なんにせよ、どう行動するかはキミ次第のようだ。」
 シャオパイ「がんばれ!」

フレイ「レオンさん。」
レオン「…………。」
レオン「……すまない。悪いが今は一人にしてくれ。」
………… ・ ……イヤです
▼…………
レオン「…………。」

▼……イヤです
レオン「な……。」
フレイ「そんな顔してる人、放っておけるわけがないです。」
レオン「…………。」
フレイ「好きな人が、一人で苦しんでるのに……。」
フレイ「何もしないで待ってるなんて、そんなこと……。」
フレイ「できるわけないですよ。」
レオン「フレイ……。」
フレイ「レオンさん。」
フレイ「私は、マリアさんにはなれませんけど、」
フレイ「マリアさんが、どんな人だったかも知りませんけど、」
フレイ「でも、彼女もレオンさんのことが、私と同じように好きだったのなら……。」
フレイ「きっと、今の私と同じことを考えてると思います。」
レオン「同じこと……?」
フレイ「レオンさんのために、なにかしてあげたいって。」
フレイ「あなたと一緒に、悩んだり、迷ったりしてあげたいって。」
フレイ「そのためにできることは、それぞれ違うだろうけど──」
フレイ「私は、私のやり方で、レオンさんを助けたいです!」
レオン「…………。」
フレイ「その……、」
フレイ「……おせっかい…………かもしれませんけど……。」
レオン「…………。」
レオン「ああ。そうだな。」
フレイ「……っ。」
レオン「……でも、心強い。」
フレイ「え……?」
レオン「なあ、ちょっと聞いておきたいんだが。」
レオン「ただいまとおかえり、どっちの言葉が好きだ?」
フレイ「は……?」
レオン「いいから、答えてみろ。」

ただいま ・ おかえり
▼ただいま
▼おかえり
レオン「そうか……。」
レオン「これが終わったら、また二人で塔に行こう。」
フレイ「え……?」
レオン「それで、今度こそ、俺の気持ちを伝えさせてほしい。」
レオン「……約束だ。」
フレイ「それって……。」

フレイ「……はい。」
レオン「よし。」
レオン「じゃあ、まずはキールのところに行こう。」
レオン「まだ訳してない文章が、残ってたはずだからな。」

  • 他の人がいると追加
レオン「だが、その前に。」
レオン「後ろにいるやつとの用事を片付けてやってくれ。」
レオン「さすがに、これだけの人数の前で、この話をする気にはなれないからな。」

レオン「マリアの残した本の続きを探さないとな。」
一緒に行きましょう ・ がんばって
▼一緒に行きましょう
レオン「手伝ってくれるのか?」
フレイ「はい。」
レオン「そうか。……じゃあ、よろしく頼む。」
▼がんばって
レオン「ああ。」

 レオン「じゃあ、まずはキールのとこに行こう。」
 レオン「まだ訳してない文章が、残ってたはずだからな。」

 シャオパイ「がんばっているようだな、フレイ。」
 シャオパイ「よし!こっちも負けてられないが!」

キール「どうしたの?二人そろって。」
レオン「ああ。まだホンヤクの途中だっただろ?」
キール「え?」
キール「でも、アレは訳せないって……。」
レオン「さっきまではな。」
レオン「でも、今の俺ならできそうなんだ。」
キール「……そっか。」
キール「よく分かんないけど、フレイさんのおかげだね!」
レオン「……!?」
フレイ「え……!?」
レオン「……いや。……まあ、そうだな。」
フレイ「……!?」
キール「よかったね♪」
レオン「……ああ。」
フレイ「…………。」
キール「あれ?2人とも顔が真っ赤だけど大丈夫!?」
フレイ・レオン「…………。」
レオン「あー、いいから、早く2枚目をかしてくれないか?」
キール「あ、うん♪はい!」

男の子と約束をしてから、女の子は泣かなくなりました。
そして、二人が大人になったころ。
彼が町の危機を救うために、旅に出ることになりました。
それは、長い長い旅になると、彼も彼女も分かっていました。
彼女が生きている間に、彼が戻ってくることはないことも。
旅立ちの日。彼女も彼を見送りました。
みんなが長い別れに涙する中、彼女だけは涙を流しませんでした。
彼女は、彼との約束を守ったのです。
いつか、彼が帰ってくると信じて。
                    (△)
キール「これって……。」
キール「1枚目の続きだよね!?」
レオン「……ああ。」
フレイ(やっぱり、レオンさんから聞いた話と同じだ……。)
レオン「たぶん、コイツはもともと、本だったんだろう。」
キール「本?」
レオン「ああ。」
レオン「それを1ページずつに分けてうめてあったんだ。」
キール「なんのために?」
レオン「さあな……。」
レオン「だが、とにかく、これだけだと物語は完結してない。」
レオン「まだきっと、どこかに続きが埋まってるはずだ。」
キール「それならきっと、紙の裏のメモを見たら分かるよ!」
キール「この2枚目も、そこで見つけたんだ!」
キール「1枚目の裏に書かれた場所でね!」
レオン「じゃあ……。」

洋館の南。秋への変わり目を超えてさらに南。四角形の中央。

レオン「この場所に行けば、続きがあるワケか……。」
キール「うん♪」
フレイ「とりあえず、探しに行ってみましょうか。」
レオン「そうだな。」
レオン「ありがとう、キール。助かった。」
キール「ううん。どういたしまして♪」
キール「あ!よかったら、その2ページも持っていっていいよ。」
フレイ「え?いいの?」
キール「うん。もう何枚か書きうつしてあるしね!」
レオン「そうか。じゃあ借りていくぞ。」
キール「ボクもまだ探してみるつもりだから、見つかったらまた教えるね!」
キール「その代わり、すぐに続きを教えてほしいんだけど……。」
レオン「ああ。約束する。」
キール「やったあ♪」
キール「じゃあ、よろしくね!」
レオン「こっちこそ、よろしく頼む。」

  • キール
世間話をする ・ 本のページが見つかった場所を聞く

▼世間話をする
キール「この本のページさ、表と裏で書いた人が一緒なら、」
キール「2つの文字が使えたってことだよね。」
キール「でもさ、何でわざわざ2つの文字を使ったんだろうね?」
▼本のページが見つかった場所を聞く
キール「最初に見つけたのは、切りかぶが2つ生えてる間に、
次に見つけたのは、3つの切り株に囲まれたところだよ!」

  • レオンと会話
レオン「どうした?」
紙の裏のメモを見る ・ 本を読み返す ・ 他の話をする
▼紙の裏のメモを見る
メモ1(─) ・ メモ2(△)
▼メモ1(─)
東の森。谷にはさまれた場所。三角形の重心。
▼メモ2(△)
洋館の南。秋への変わり目を超えてさらに南。四角形の中央。

▼本を読み返す
メモ1(─) ・ メモ2(△)
▼メモ1(─)
あるところに、幼なじみの男の子と女の子がいました。
女の子は泣き虫で、いつも男の子に慰められてばかり。
ある日、男の子が言いました。
「泣き虫じゃなくなったら、一つだけ、お願いきいてあげる」
彼の言葉を聞いて、女の子はこう答えました。
「じゃあ、しょうらい私のおヨメさんになってくれる?」
男の子はうなづきました。
そして、そのちかいを忘れないように、
覚えたばかりの古い言葉で、二人の名前を残しました。
二人だけのひみつの暗号のつもりでした。
                              (-)
▼メモ2(△)
男の子と約束をしてから、女の子は泣かなくなりました。
そして、二人が大人になったころ。
彼が町の危機を救うために、旅に出ることになりました。
それは、長い長い旅になると、彼も彼女も分かっていました。
彼女が生きている間に、彼が戻ってくることはないことも。
旅立ちの日。彼女も彼を見送りました。
みんなが長い別れに涙する中、彼女だけは涙を流しませんでした。
彼女は、彼との約束を守ったのです。
いつか、彼が帰ってくると信じて。
                    (△)
▼他の話をする
レオン「つかれてないか?」
フレイ「え?」
レオン「オレのワガママに付き合ってさ。」
フレイ「そんなこと……。」
レオン「つらくなったらいつでも言えよ。」
レオン「何ならおぶってやろうか?」
フレイ「だ、大丈夫です!子供じゃないんだから……。」
レオン「ハハ。まだまだ元気そうだな。」

  • 紅葉古道
フレイ「メモにあった場所って、ここですよね……?」
レオン「ああ。おそらく間違いないだろう。」
フレイ「じゃあ、ここを掘り返せば……。」
レオン「ためしてみよう。」

フレイ「レオンさん!箱が……。」
レオン「ああ……。」
レオン「中には紙が1枚か。あの本の続きだろうな……。」
フレイ「痛まないように、しっかり保管してあったんですね。」
レオン「ひとまず、読んでみるぞ。」

彼が旅立ってからも、彼女が泣くことはありませんでした。
父が亡くなったときも。
母が亡くなったときも。
それでも、彼女は約束を守り続けました。
ただ、悲しいことがあるたびに、彼女は約束の場所に足を運びました。
何も知らない町の人たちは、彼女を冷たい人間だと思いました。
気が付くと、彼女は独りぼっちになっていました。
(□)

レオン「……独りぼっち、か。」
レオン「…………。」
フレイ「…………。」
レオン「裏のメモも読んでおくか。」

春の湖の近く。西の端の行き止まり。
星の中心。

フレイ「…………。」
レオン「なあ、前にも言ったよな。」
フレイ「え?」
レオン「アイツとは、いろいろな場所に行ったって。」
フレイ「はい……。」
レオン「本が埋められてる場所は、方角が全てバラバラだ。」
レオン「どうしてアイツはこんなことをしたのか、ずっと考えてた。」
レオン「でも……。」
レオン「こいつを探してると、あの頃に戻った気分になる。」
レオン「俺がアイツを振り回してた、あの頃にな。」
フレイ「…………。」
レオン「アイツは、どんな気持ちで、これを埋めていったんだろうな。」
レオン「俺のことを、思い出してくれてたのか。」
レオン「それとも……。」

レオン「……残りを探そう。」

  • レオンと会話
レオン「どうした?」
紙の裏のメモを見る ・ 本を読み返す ・ 他の話をする
▼紙の裏のメモを見る
メモ1(─) ・ メモ2(△) ・ メモ3(□)
▼メモ1(─)
東の森。谷にはさまれた場所。三角形の重心。
▼メモ2(△)
洋館の南。秋への変わり目を超えてさらに南。四角形の中央。
▼メモ3(□)
春の湖の近く。西の端の行き止まり。星の中心。

▼本を読み返す
メモ1(─) ・ メモ2(△) ・ メモ3(□)

▼メモ1(─)
あるところに、幼なじみの男の子と女の子がいました。
女の子は泣き虫で、いつも男の子に慰められてばかり。
ある日、男の子が言いました。
「泣き虫じゃなくなったら、一つだけ、お願いきいてあげる」
彼の言葉を聞いて、女の子はこう答えました。
「じゃあ、しょうらい私のおヨメさんになってくれる?」
男の子はうなづきました。
そして、そのちかいを忘れないように、
覚えたばかりの古い言葉で、二人の名前を残しました。
二人だけのひみつの暗号のつもりでした。
                              (-)
▼メモ2(△)
男の子と約束をしてから、女の子は泣かなくなりました。
そして、二人が大人になったころ。
彼が町の危機を救うために、旅に出ることになりました。
それは、長い長い旅になると、彼も彼女も分かっていました。
彼女が生きている間に、彼が戻ってくることはないことも。
旅立ちの日。彼女も彼を見送りました。
みんなが長い別れに涙する中、彼女だけは涙を流しませんでした。
彼女は、彼との約束を守ったのです。
いつか、彼が帰ってくると信じて。
                    (△)

▼メモ3(□)
彼が旅立ってからも、彼女が泣くことはありませんでした。
父が亡くなったときも。
母が亡くなったときも。
それでも、彼女は約束を守り続けました。
ただ、悲しいことがあるたびに、彼女は約束の場所に足を運びました。
何も知らない町の人たちは、彼女を冷たい人間だと思いました。
気が付くと、彼女は独りぼっちになっていました。
(□)

レオン「よし、次は(□)と書かれたメモに書かれている場所を目指そう。」

フレイ「レオンさん!」
レオン「どうした?」
フレイ「コレ、何でしょう?」
レオン「……これは昔、俺の国で使われていた硬貨だな。」
フレイ「じゃあ、もしかしたらココに……。」
レオン「……掘りおこしてみよう。」

フレイ「…………。」
フレイ「……見つかりましたね。」
レオン「ああ。」
レオン「この箱の中に、きっと……。」
レオン「…………開けるぞ。」

フレイ「あった……。」
レオン「…………。」
レオン「フレイ。……拾ってくれないか?」
フレイ「え……?」
レオン「……手がふるえて、うまくつかめないんだ。」
フレイ「あ……。」
フレイ「……わかりました。」

フレイ「どうぞ。」
レオン「……ああ、ありがとう。」
レオン「…………読むぞ。」
フレイ「……はい。」

そんなある日、一人の男が、彼女に声をかけてきました。
それから二人は、よく話しをするようになりました。
あるとき、男が彼女にたずねました。
「君はどうすれば幸せになれるの?」
もちろん彼女は、彼が帰ってくればと答えました。
「帰ってくるだけで幸せなの?」
彼女はうなずきました。
彼が私と結婚してくれるはずだからと。
「結婚すると、どうして幸せになれるの?」
一緒の道を歩いて、一緒に歳をとることができるから。
彼女が答えると、男は鏡を差し出しました。
そこには、年老いた女性の姿が映っていました。
彼が居なくなってから、もう、何十年もの月日が流れていました。
そのとき、彼女はようやく気が付いたのです。
自分にはもう、彼と同じ道は歩けないと。
数日後、彼女は塔に向かいました。
塔にはまだ、彼と彼女の名前が残っていました。
けれども、彼女の周りには、なにも残っていませんでした。
彼女の両親も、彼女の友人も、彼の姿も。
あのころ、自分の周りにあった全てのものがなくなっていました。
彼がもどってくることはない。
彼女も、本当は分かっていたのです。
彼にとっては、自分は妹のような存在でしかなかったことも。
それでも、あきらめられなかったのに。
気が付くと、彼女のほおには涙が伝っていました。
そして、あふれ出した涙は、もう止めることができませんでした。
「……約束、守れなかったね……」
こうして、彼女は消えました。
いつかは『彼』も、自分と同じように、消えてくれることを願いながら。
(☆)

レオン「…………。」
レオン「ページの裏には、何もなしか……。」
レオン「つまり、」
レオン「物語は、ここでおしまいってことだ。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「はは。」
レオン「……見事なまでのバッドエンドだな。」
レオン「消えてくれ、か。」
レオン「だが、そう思うのも無理はない。……思って当然だ。」
フレイ「…………。」

レオン「…………。」
レオン「アイツは、ずっと俺のことを待ってたんだな。」
レオン「守られるはずのない約束を信じて、ずっと。」
レオン「あげくの果てに、この結末か。」
フレイ「…………。」
レオン「………… …………くそっ。」
レオン「アイツが冷たい人間だったと?」
レオン「何も知らないで、笑わせるなよ!?」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「アイツは悲しくなかったんじゃない……!」
レオン「悲しむことができなかったんだ!!」
レオン「守れもしない約束で、心をしばりつけて、」
レオン「アイツから涙を奪ったのは、俺なんだよっ!!」
レオン「約束を守らなかったのはアイツじゃない……っ!」
レオン「俺の方なんだっ!!」
レオン「それなのに……っ!!」
フレイ「レオンさん!」
レオン「分かれよ!?なあ!!おい!?」
レオン「何で誰も、アイツのことを守ってやらなかったんだ!?」
レオン「何で誰も、アイツのことを理解してやらなかったんだっ!!」
レオン「何で……。」
レオン「何で俺は、アイツのそばに、居てやれなかったんだ……っ。」
フレイ「…………。」
レオン「……俺はアイツに、笑っていてほしかったんだ。」
レオン「それだけでよかったんだよ……。」
レオン「それなのに……。」
レオン「…………。」
レオン「俺は、どうすれば良かったんだ……。」
レオン「……どうすればいいんだよ。」
フレイ「…………。」
フレイ「レオンさん……。」

レオン「……悪い。……取り乱したな。」
フレイ「あ……。」
レオン「行こう。フレイ。」
レオン「この本を訳して、キールに届けてやらないとな。」
フレイ「そんなの、今じゃなくても──」
レオン「今じゃないとダメなんだ!」
フレイ「え……?」
レオン「あ……。」
レオン「……悪い。」
レオン「けど、見つけたらすぐに教えるって約束だったからな。」
フレイ「でも──」
レオン「……もう二度と、約束は破りたくないんだ。」
フレイ「…………。」

レオン「じゃあ、これをキールに届けてくるよ。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「大丈夫だ。心配しないでくれ。」
フレイ「…………。」

 レオン「ああ、アンタか……。」
 レオン「キールには、訳した本を届けてきたよ。」
 レオン「……これでもう、決着は付いた。」
 フレイ「…………。」

キール「あ、フレイさん。」
キール「レオンさんが見つけた本の続き、読んだよ。」
キール「悲しいお話だったんだね……。」
フレイ「……うん。」
キール「でも、ちょっと引っかからない?」
フレイ「え?」
キール「それぞれのページの最後、紙の右下にあった記号──」
キール「「─」「△」「□」「☆」」
キール「これ、何か意味があると思うんだけど……。」
キール「うーん……。」

4日目

フレイ(レオンさん、本当にもう大丈夫なのかな?)
フレイ(……そんなわけないよね。)
シャオパイ「やあ、フレイ。」
フレイ「あ、シャオさん……。」
シャオパイ「……ふむ。」
シャオパイ「レオンさんと、また何かあったのか?」
フレイ「え?」
シャオパイ「いや、レオンさんの様子が少しおかしかったからな。」
フレイ「……どんな風だった?」
シャオパイ「一言で表現するなら……。」
シャオパイ「うん。気持ち悪かったな。」
フレイ「へ?」
シャオパイ「妙に優しいというか、大人しいというか……。」
シャオパイ「無意味に人をからかう、いつもの態度ではなかったようだ。」
フレイ「無意味じゃない……とは思うんだけど……。」
シャオパイ「そうなのか?」
フレイ「…………。」
フレイ「……いや、そうとも言い切れないかも……。」
シャオパイ「うむ。」
シャオパイ「しかし、マーマも心配してたぞ。」
フレイ「え?」
シャオパイ「はたから見てると、元気がない。」

シャオパイ「レオンさんも、キミもな。」
フレイ「え……?」
シャオパイ「なんだか今にも、消えてしまいそうだが。」
フレイ「…………。」
フレイ「ねえ、シャオさん。」
シャオパイ「なんだ?」
フレイ「なんとかなるって信じて、いっしょうけんめいがんばって、」
フレイ「それでもダメな時って、どうすればいいのかな?」
シャオパイ「そうだな……。」

シャオパイ「どうしようもないな。」
フレイ「え?」
シャオパイ「がんばれば何でも成功するなら、誰も文句なんていわないが。」
シャオパイ「でも、どんなにがんばっても、うまくいかないときはある。」
シャオパイ「だからみんな、少しでもうまくいくように、」
シャオパイ「色々なやりかたを考えるし、色々な努力をする。」
シャオパイ「ただ、がんばればいいんじゃない。」
シャオパイ「何のために、どうやってがんばるのか。」
シャオパイ「それを自分で決めるから、その結果を受け止められるんだ。」
シャオパイ「だから、うまくいったとき、誰よりも喜べるんだ。」
フレイ「…………。」
シャオパイ「フレイ。キミは、どうしたいんだ?」
フレイ「え?」
シャオパイ「キミは何を手に入れたいのか。」
シャオパイ「そのために、どんな努力ができると思うのか。」
シャオパイ「考えてみたらいいんじゃないか?」
フレイ「私は……。」
レオンさんに元気になってほしい ・ レオンさんにずっと笑っていてほしい
シャオパイ「キミの願いは、ワタシには分からないが……。」
シャオパイ「努力したいと思える内は、まだ未来はある。」
シャオパイ「叶えたいのぞみがある内は、前に進みたいということだ。」
シャオパイ「少なくとも、ワタシはそう思ってやってきた。」
シャオパイ「キミはどうする?あきらめるか?」
シャオパイ「あきらめられるか?」
フレイ「…………。」
いいえ ・ あきらめません!
シャオパイ「……そうか。」
シャオパイ「じゃあ、がんばれ。」
シャオパイ「少しでもうまくいくように、」
シャオパイ「自分の信じるやり方で、やってみるといい!」
フレイ「私にできること……。」
シャオパイ「ああ!」

フレイ(私はレオンさんじゃない。)
フレイ(だから、レオンさんの気持ちにはなれない……。)
フレイ(マリアさんとのことに、決着を付けることもできない……。)
フレイ(……じゃあ、……私にできることは……。)
笑顔でいること ・ ずっとそばにいること ・ あきらめないこと
フレイ「……そうだ。」
フレイ「レオンさんのとなりで。」
フレイ「それはきっと、私にしかできないことだ!」
シャオパイ「うん。そうか。」
シャオパイ「じゃあ、よく分からないが、がんばれ!」
フレイ「はい!」

 シャオパイ「がんばれ!フレイ!」
 シャオパイ「よくわからないが、応援してるぞ!」

 リンファ「なんだかレオンさん、元気がないみたいですね。」
 リンファ「うーん……。」
 リンファ「元気が出るように、焼き魚でも用意しましょうか。」

レオン「…ああ、フレイか。」
レオン「どうかしたのか?」
フレイ「レオンさん……。」

フレイ「あの……。」
レオン「……そうか。」
レオン「フレイとも、約束してたっけな。」
フレイ「そうじゃなくて……!」
マリアさんの本の話です ・ ……やっぱり、なんでもありません
▼……やっぱり、なんでもありません
レオン「そうか。」
レオン「約束の話は、きちんと覚えてるよ。」
レオン「今度こそ、俺の気持ちを伝えるって……。」
フレイ「…………。」
レオン「また、時間のあるときにでも、一緒に行こう。」
レオン「その時までには……、きっと、あきらめもついてるだろう。」
フレイ「…………。」
フレイ「そうじゃなくて……!」
《無限ループ》
▼マリアさんの本の話です
レオン「…………。」
レオン「アイツの話は、もういい。」
フレイ「でも……。」
レオン「もういいんだ!」
フレイ「あ……。」

レオン「……悪い。少し、取り乱した……。」
レオン「だが、もういいんだ。アイツのことは……。」
レオン「俺が背負っていけば……、……それでいい。」
フレイ「レオンさん……。」
はげます ・ 抱きしめる ・ ただ見守る
▼はげます
フレイ「大丈夫です。」
レオン「え……?」
フレイ「レオンさんには、私がついてますから。」
レオン「…………。」
レオン「アンタはどうしたらいいと思う……?」
フレイ「え……?」
レオン「俺は……、アイツのために、どうしたらいい?」
フレイ「…………。」
フレイ「分かりませんよ、そんなこと。」
▼抱きしめる
特になし
▼ただ見守る
フレイ「…………。」
レオン「……なんだ?」
フレイ「なんでもありません。」
フレイ「ただ、レオンさんを見ていたいだけですから。」

レオン「え……。」
フレイ「どうしたらいいのかは、私にもよく分かりません。」
フレイ「だから、いま私がしたいことを、レオンさんにしてます。」
レオン「なんで……。」
フレイ「…………。」
フレイ「この前、シャオさんに言われて考えたんです。」
フレイ「『すべてを抱え込むには、世界は広すぎる』」
フレイ「じゃあ、私には何ができるんだろうって。」
レオン「それで、こうしたのか?」
フレイ「はい。」
フレイ「でも、これで良かったと思ってます。」
フレイ「これはきっと、」
フレイ「生きてる私にしかできないことだから。」
レオン「…………。」
フレイ「私はレオンさんのことが好きです。」
フレイ「きっと、マリアさんも同じだったんだと思います。」
フレイ「だったら……。」
フレイ「好きな人の幸せを、祈らないわけがありません。」
フレイ「同じくらい、その人が自分を置いて幸せになるのを……。」
フレイ「呪ってしまうかもしれません。」
レオン「…………。」
フレイ「矛盾してますけど……。」
フレイ「でも、人を好きになるって、そういうことなんじゃないですか?」
フレイ「その人だけの幸せを祈りたくて、でも、祈りきれなくて……、」
フレイ「そういう全部を受け入れて、愛してるってことなんじゃないかって。」
フレイ「ヤキモチも焼きますよ。応援だってできないかもしれないです。」
フレイ「自分だけを見ててほしいし、あなたを誰にも渡したくない。」
フレイ「でも……。」
フレイ「同じくらい、心からあなたに幸せになってほしい。」
フレイ「でたらめな気持ちだけど、」
フレイ「でも、全部が本当の気持ちなんです。」
レオン「フレイ……。」
フレイ「だから、忘れないであげてください。」
フレイ「お願いですから、思い出してあげてください。」
フレイ「あなたを、それだけ好きだった人のことを。」
フレイ「……忘れないで欲しいです。」
レオン「…………。」
レオン「アンタは、それでいいのか?」
フレイ「……よく分かりません。」
フレイ「でも……。しょうがないじゃないですか。」
フレイ「私はまだ、生きてるんですから。」
フレイ「これからもまだ、ずっとあなたを好きでいられるんだから。」
レオン「…………。」
レオン「……だが、俺は……。」
キール「フレイさん!レオンさん!!」

キール「これ!この本のナゾが分かったんだ!」
フレイ「ナゾってなんのこと?」
キール「ほら、ココ!ページの右下にあるこの記号!」
フレイ「「―」「△」「□」「☆」――」
キール「この記号の意味をね、ずーっと考えてたんだ!」
キール「そうしたら、わかったんだよ!!」
レオン「……なにがだ?」
キール「ほら、この図形の頂点だけを残すと――」
キール「紙が埋めてあった場所の、切りかぶの位置と重なるんだ!」
フレイ「ホントだ……。」
レオン「それにどんな意味があるんだ?」
キール「ふふ。意味はあるよ?」
レオン「なに?」
キール「さて、フレイさんに質問です。」
フレイ「へ?あ、はい。」
キール「本の中に書かれてる文字で、文の外にあるモノって、なーんだ?」
ふりがな ・ ページ数 ・ わからない
▼ふりがな
キール「ふりがなは行間におくものだから 外とは言わないんじゃないかなあ。」
キール「ほら、ページのはしっこに、もっとそれっぽいのがあるじゃない!」
《無限ループ》
▼わからない
キール「フレイさん。……ちゃんと考えた?」
キール「ほら、よく考えてみて!」
《無限ループ》
▼ページ数
キール「そう!」
キール「これはきっとページ数なんだよ!」
キール「それぞれの記号に必要な切りかぶの数が、それぞれの文章のページ数なんだ!」
フレイ「切りかぶの数が、ページ数……?」
キール「1枚目の記号は「―」だから、2本の切りかぶの下に埋まってた。」
キール「次に見つけたのは「△」の紙で切りかぶの中央に。」
キール「だからこれは、2ページと3ページ目なんだ!」
キール「その後に見つかった紙は4本、5本の切りかぶの下にうまってたよね?」
フレイ「うん……。」
キール「だから、4ページ目と5ページ目。」
キール「じゃあ、ボクたちが1ページ目だと思ってたページは――」
フレイ「――本当は2ページ目だった!」
キール「そういうこと♪」
キール「物語は、まだ終わってなかったんだよ!
キール「いや、ちがうな……。」
キール「まだ始まってすらなかったんだ!」
レオン「……!」
フレイ「レオンさん……!」
レオン「あの話が……、まだ終わっていない……?」
フレイ「はい!」
キール「あ!アーサーさんにも、このことを伝えてあげないと!」
キール「なにか分かったら、教えてほしいって言ってたから。」
キール「それじゃ、またね!」

レオン「マリアの話はまだ終わってない……。」
レオン「……いや、だが、足りないのは最初の1ページだけだ。」
レオン「結末は変わらない……。」
フレイ「…………。」

レオン「なあ。フレイ。」
レオン「仮に残りの1ページを見つけたとして、」
レオン「それでアイツは、救われると思うか?」
フレイ「……分かりません。」
レオン「え?」
フレイ「私はマリアさんじゃありませんから。」
フレイ「でも……。」
フレイ「覚えていてほしいなって思います。」
レオン「……?」
レオン「好きな人には、覚えていてほしいです。
フレイ「どんなことがあっても、自分のことを、ずっと。」
フレイ「忘れないでいてほしいなって、そう思います。」
レオン「……そうだな。」
レオン「行こうか」
フレイ「……え?」
レオン「1ページ目の場所には心当たりがある。」
レオン「他のページと同じなら1ページ目があるのは1本の目印だ。」
フレイ「つまり、1本の切りかぶの下ですか。」
フレイ「でも、そんな場所いくらでも――」
レオン「別に切り株じゃなくてもよかったんだ。」
フレイ「え?」
レオン「ずっと考えてた。」
レオン「どうしてアイツがこんな形で文章を残したのか」
レオン「俺との時間を思い出すためか、それとも、思い出させたかったのか。
レオン「答えは――――」
レオン「――――思い出させたかったんだ。」
レオン「じゃなければ、ヒントのメモなんて残さない。」
フレイ「…………。」
レオン「そうなると、最初の一枚は、自力で見つけてもらわないと困る。」
レオン「ヒントなんてなくても、」
レオン「目印なんてなくても、その人間が自然と向かうところ。」
レオン「アイツはそこにソレをうめたハズだ。」
レオン「空高くのびる、一本の目印の下に。」
フレイ「それって……。」
レオン「ああ。レオン・カルナクだ。」
レオン「そこにきっと物語の始まりがある。」
レオン「全てはあそこの約束から始まったんだから」
フレイ「…………。」
レオン「……行こう。レオン・カルナクに。」
レオン「かなわない約束を探しに」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「……それから、アンタとの約束を果たすためにな。」
フレイ「え……?」
レオン「言っただろ?」
レオン「マリアの件が終わったら、二人で塔に行こうって。」
フレイ「あ……。」
レオン「だから、付いてきてくれ。」
レオン「今度こそ、俺の気持ちをアンタに伝えさせてほしい。」
フレイ「…………。」
フレイ「……はい。」
  • 誰かを連れていると追加
レオン「だが、その前に。」
レオン「後ろにいるやつとの用事を片付けてやってくれ。」
レオン「さすがに、これだけの人数の前で、この話をする気にはなれないからな。」

 レオン「レオン・カルナクに行こう。」
 レオン「かなわない約束を探しに。」
 レオン「アンタとの約束を果たすために。」

 アーサー「キール君から聞きました。」
 アーサー「詳しいことは分かりませんが、とにかく待たせてもらいますよ。」
 アーサー「あなたたちが探している、その物語が終わるのを。」

 キール「切りかぶの数が、この本のページ数だったんだ。」
 キール「だから、この物語はまだ終わってない。」
 キール「ううん。まだ始まってなかったんだよ!」

  • レオン・カルナク
レオン「埋めるなら、おそらくここら辺だろう。」
「一緒に探してくれるか?」
フレイ「はい。」

レオン「あった……。」

レオン「…………。」
レオン「……くそ。手がふるえて、うまくつかめない……。」
フレイ「私がとりましょうか?」
レオン「……いや、大丈夫だ。」
レオン「……俺の手で、きちんと終わらせてやりたいんだ。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「…………。」
レオン「……よし。」
レオン「……読むぞ。」
フレイ「……はい。」

塔に眠る『あなた』へ。
アナタとの約束を破った『彼女』は、
優しい夫と新しい名前を得て、今の『私』へと生まれ変わりました。
だから---
ここから『あなた』と『彼女』の物語に幕を降ろそうと思います。
いつか、夢から覚めたあなたに、全てを伝えるために。
そして、
優しすぎるあなたが、あの約束に縛られることのないように。
この物語を送ります。
約束、守れなくてごめんなさい。
……さようなら。
追伸。
今度、友人のすすめで、本を出すことになりました。
タイトルは、『幸福のレシピ』
いつかあなたの目に触れることを信じて、
あの時の言葉で、物語をつづろうと思っています。
楽しみにしていて下さいね。
何十、何百、何千年後のあなたへ
……1つの願いを星に変えて
(・)』

レオン「…………。」
フレイ「『幸福のレシピ』って……。」
レオン「この前、俺がホンヤクした本だ。」
レオン「わざわざ古い言葉で、幸せな夫婦の日常を描いた--」
レオン「……これでもかってくらい、作者の幸せが伝わってくる本だったよ。」
フレイ「それじゃあ……!」
レオン「『彼女』は--」
レオン「アイツは確かに、ココで消えた。」
レオン「あのバカは……っ。」
レオン「俺との約束を破って、誰かと幸せになっていた。」
レオン「……幸せになって……くれてたんだ……。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「1つの願いを星に変えて、か……。」
レオン「あの記号は、そのためのおまじないだったんだな。」
フレイ「え?」
レオン「1つの願いを星に届けるためのおまじない。」
レオン「1つの点からはじまり、」
レオン「最後に星へと変わる手紙。」
レオン「……思い出したよ。」
レオン「これは、願いをかなえるためのおまじないだ。」
フレイ「…………。」
レオン「この文章も、あの記号も、なにもかも、」
レオン「この物語も、それを探すためにオレがたどったこの道も……。」
レオン「そいつを俺につかみ取らせるためにアイツが用意したモノで。」
レオン「その全部が、」
レオン「アイツとオレが、幸せになるための軌跡だった。」
レオン「アイツが、オレのために用意した、」
レオン「……奇跡だったんだ……。」
フレイ「……ええ。」
レオン「…………。」
レオン「……まぎらわしいことしやがって……。」
レオン「『ごめんなさい』だと?」
レオン「謝るのはこっちの方だ、バカ……。」
フレイ「…………。」
レオン「……約束するよ、マリア。」
レオン「絶対に幸せになる。」

フレイ「……レオンさん。」
レオン「ああ。」
レオン「ようやく、またアンタと向き合えるな。」
レオン「……いや、違うか。」
フレイ「え?」
レオン「アンタが、俺に付き合いたいと言った日から。」
レオン「俺はずっと、自分をごまかしてたんだ。」
レオン「そんな自分を知るのが怖くて、」
レオン「あんたと、正面から向き合えなくなってた。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「一緒にいるはずなのに。」
レオン「たぶん、ずっと違うところに居た。」
フレイ「…………。」
フレイ「私も一緒です。」
レオン「え……?」
フレイ「付き合い始めたあの時から。」
フレイ「レオンさんに、本当の気持ちを隠してた気がする。」
フレイ「あのままで満足なはずないのに。」
フレイ「結婚するとかしないとか、そういうことじゃなくって、」
フレイ「レオンさんの気持ちがしばられたままで、いいハズなんてないのに……。」
レオン「…………。」
フレイ「今の今まで、向き合うことができなかった。」
フレイ「そんな自分を知ることが怖くって、」
フレイ「自分の気持ちから、ずっと目をそらしてたんです。」
フレイ「だから――」
フレイ「もう一度、ここから始めませんか?」
フレイ「二人で一緒に。」
レオン「フレイ……。」
フレイ「ああ、そうだな。」
フレイ「俺はようやく、アンタの前に戻ってこれた気がする。」
フレイ「私もです。」
レオン「……そういえば、これも約束してたっけな。」
  • 3日目の選択肢 おかえり
フレイ「あ……。」
レオン「覚えてるのか?」
フレイ「……もちろん。」
ただいま、レオンさん。
レオン「おかえり。フレイ。」
  • 3日目の選択肢 ただいま
フレイ「え……?」
レオン「ただいま、フレイ。」
おかえり、レオンさん。

フレイ「約束、守ってくれましたね。」
レオン「当然だ。」

レオン「なあ、覚えてるか?」
フレイ「え……?」
レオン「付き合ってくれって言われたとき、アンタに言ったよな。」
レオン「アンタとは一緒にはなれないって。それでもいいかって。」
フレイ「……はい。」
レオン「俺はもう、二度と約束は破りたくない。」
レオン「だから、アンタとも一緒にはならない。」
フレイ「…………。」
レオン「そんなわけで――」
レオン「俺と結婚しよう。」
フレイ「へ……!?」
レオン「俺はあんたと一緒になれない。」
レオン「そんなの、元々ちがう人間なんだから、当たり前だろ?」
フレイ「ええ!?そ、そんなのアリなんですか……?」
レオン「ナシか?」
フレイ「それは……。」
レオン「俺はアンタが好きだ。」
フレイ「……!」
レオン「だから、俺と結婚しよう。フレイ。」
レオン「……結婚してくれ。」
フレイ「…………。」
はい ・ ……考えさせて下さい
▼……考えさせて下さい
レオン「そうか……。」
フレイ「……ごめんなさい。」
レオン「謝るなよ。アンタが悪いわけじゃない。」
レオン「アンタが答えを出すまで、俺は待ってる。」
フレイ「…………。」
レオン「じゃあ、そろそろ戻るか。」
フレイ「あ……はい。」

レオン「じゃあ、ここらでお別れだ。」
レオン「……いつまででも、待ってるからな。」


▼はい
レオン「よし。いい答えだ。」
フレイ「レオンさん……。」
レオン「ほうびに、いいことを教えてやろう。」
レオン「俺はアンタを、誰よりも愛してる。」
レオン「今までも。」
レオン「それに、これからもだ。」
私もです ・ もういちど言ってもらえますか?
▼私もです
レオン「ああ、知ってる。」
レオン「でも……ありがとう。」
フレイ「……はい。」
フレイ「その代わり……じゃないですけど、お願いしてもいいですか?」
レオン「なんだ?」
フレイ「もう一度、言ってほしいです。誰よりも愛してるって、」

▼もういちど言ってもらえますか?
レオン「何をだ?」
フレイ「誰よりも愛してるって。」

レオン「ああ。」
レオン「じゃあ、また来年くらいにな。」
フレイ「1年に1回だけなんですか?」
レオン「ごほうびだからな。」
フレイ「もう……。」
レオン「だから、一緒にいろ。」
レオン「来年も、そのまた次もずっと。」
フレイ「はい。」
フレイ「約束ですよ?」
レオン「ああ、約束だ。」
レオン「……今度こそ守るよ。」

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最終更新:2024年09月21日 22:58
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