1日目
キール「あ、ねえねえ、レスト君。」
キール「最近、仲良しのおまじないが流行ってるんだけど、知ってる?」
レスト「おまじない?」
キール「塔の右足に名前を書いた人たちは幸せな家族になれるんだって。」
キール「あ、塔って町の高台じゃなくて、レオン・カルナクの方ね!」
レスト「ふうん……。」
キール「おまじないの元になってるのは、古い言い伝えでね。」
キール「聞きたい?」
聞きたい ・ ううん、別に
▼ううん、別に
キール「そっかぁ……。」
キール「………。」
(会話終了)
▼聞きたい
キール「じゃあ、教えてあげるね♪」
キール「ええと……。」
キール「その昔、いつか家族になろうって約束した男女がいたんだって。」
キール「その二人は、決して結ばれることのない運命だったんだけど、」
キール「その約束を忘れないように、お互いの名前を並べて書くことで、」
キール「その運命を乗り越えて、幸せな家庭を築けたんだってさ。」
キール「だから、その二人の約束が、幸せな家族のおまじないとして、」
キール「今の時代まで残ってるって話だよ。」
レスト「キール、くわしいんだね。」
キール「ちょっと前に、おんなじおまじないが流行ってね。」
キール「そのときに調べたんだ。」
キール「あの時は塔じゃなくて、どうくつに名前を書いてたんだけどね。」
レスト「へぇ……。」
キール「でも、実はこの塔に書かれてたのが、最初だって話だよ。」
キール「だから、効果はバツグンなだってさ!」
レスト「そ、そういうものなのかな……。」
キール「レストくんも、ドルチェさんと行ってみたら?」
レスト「えっと、それは……。」
キール「ほら、そこの看板にも応援されてるし。」
レスト「かんばん?」
「ドルチェちゃんと二人きり……」
「けしからん!でもがんばって!!」
レスト「………。」
キール「あの動く看板、何だったんだろうね?」
レスト「うん……。」
レスト(またピコの仕業かなあ……。)
2日目
セルフィア:竜の湖
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェ。何してるの?」
ドルチェ「花飾りを作ってるのよ。」
ピコ『もうちょっとハデな方が、私は好みですけど』
ドルチェ「あんたはだまってて。」
レスト「ドルチェは器用だよね。」
ピコ『私の服も、いつもルーちゃんが用意してくれてますものね』
ドルチェ「仕方なくね。ほっとくとうるさいから。」
ピコ『それでも作ってくれちゃうのが、ルーちゃんですのよねー』
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェとピコって、本当に仲がいいよね。」
ピコ『当然ですわ』
ドルチェ「勘違いよ。」
ピコ『即否定!?』
レスト「あはは……。」
ピコ『笑いごとじゃありませんの!!』
ピコ『私はルーちゃんのこと、大切な家族だと思ってますのに!』
レスト「家族かあ……。」
レスト「そういえば、キールからおまじないの話って聞いた?」
ドルチェ「おまじない?」
ピコ『一緒に名前を書いた人たちは、幸せな家族になれるっていうアレですの?』
レスト「うん。」
ドルチェ「……いつの時代にも、似たようなものがあるのね。」
ピコ『場所もおんなじで、あの塔の入り口みたいですわよ』
レスト「え?どういうこと?」
ドルチェ「私の時代にも、似たようなウワサ話があったのよ。」
ピコ『塔の片足に名前を書いた二人は、永遠に結ばれるんでしたっけ?』
ドルチェ「そう。」
ピコ『だから、私とルーちゃんも……。……ぐふふ』
ドルチェ「単なる背比べよ。身長の上に名前を書いただけ。」
レスト「だろうね。」
レスト「でも、おまじないの内容が、今とちょっと違ったけど……。」
ドルチェ「恋人になれるっていうのを大げさに解釈したら、」
ドルチェ「まあ、家族になれるってことになるかもしれないけど。」
レスト「なるほどね。」
ピコ『あのー、なんだかお二人とも、私の扱いが適当じゃありません?』
ドルチェ「別にいいじゃない。元から適当なんだから。」
ピコ『そんな……!』
ピコ『ルーちゃんとは長い付き合いだと思ってましたのに……』
ピコ『あーあー、新しい恋人ができたら、昔の女なんてポイですのねー』
ドルチェ「う……っ。」
ドルチェ「……からかわないでよ、バカ。」
ドルチェ「あの塔には、何度か出かけたことがあるわね。」
ピコ『なつかしいですわね。家族みんなでピクニック』
ドルチェ「……もう、ずっと前の話なのね。」
ピコ『うふ、うふふ……小さくてかわいいルーちゃんが見える……』
ドルチェ「目をつぶそう。」
ピコ『ぐぎゃんっ!』
レスト「………。」
レスト「そういえば、ピコ。また看板でいたずらしてたでしょ?」
ピコ『はて。何のことですの?』
レスト「キールと話してたとき。後ろを看板が歩いていったじゃない。」
レスト「「ドルチェちゃんと二人きり……」」
レスト「「けしからん!でもがんばって!!」って。」
ドルチェ「あんた、また勝手にそんなことを……。」
ピコ『し、知りませんわ!?誰かのインボウですの!!』
3日目
ドルチェ「ああ、レスト。」
ドルチェ「おまじないのウワサ、よく耳にするようになったわね。」
レスト「キールがウワサを広めてるみたいだから……。」
ピコ『もしかしたら、私たちの名前も残ってるかもしれませんわよ!』
ドルチェ「何の話よ?」
ピコ『おまじないですわ!一緒に名前を書いたでしょう?』
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……まあ、期待するだけムダだと思うけどね。」
そうだよね ・ 一緒に見に行こうか?
▼そうだよね
ドルチェ「………。」
(会話終了)
▼一緒に見に行こうか?
ドルチェ「え……?」
レスト「その、良かったら僕たちの名前も書いておきたいなって……。」
ドルチェ「……!」
ドルチェ「…………。」
ドルチェ「……まあ、あんたがどうしてもって言うなら。」
ピコ『そう言いながらも、うれしそうにほおをひきつらせて……』
ピコ『笑顔を!はにかみ笑顔を!!こらえてるんですのねうぐっ!?』
ドルチェ「……い、行くなら早く行くわよ。」
レスト「う、うん」
(ドルチェが同行)
ドルチェ「目的地はレオン・カルナクよ。」
ドルチェ「その……せっかくだから城門の方から行きましょうよ。」
ドルチェ「遠回りした方が……長い時間、一緒にいられるし……。」
ドルチェ「歩いて行きましょうよ。……そういう気分なの。」
セルフィア城門
ナンシー「あら、ルーちゃん。レストくんとお出かけ?」
ドルチェ「うん。ちょっと塔まで。」
ナンシー「塔!?そんな遠くまで……。」
ピコ『平気ですわよ。私も一緒ですし』
ナンシー「でも……。」
レスト「僕も一緒ですから。」
ナンシー「そうね……それなら大丈夫よね!」
ナンシー「あ、じゃあ、ハンカチは持った?ティッシュは?あと薬とか!」
ドルチェ「あんまり気をつかわないで。」
ナンシー「ごめんなさい。でも、そうは言っても心配だから――」
ドルチェ「……子供じゃないんだから。」
ナンシー「あ……。」
ナンシー「うん。そうよね。お節介だったわよね。」
ドルチェ「…………。」
ナンシー「じゃあ、よろしくお願いね。レストくん。
レスト「あ、はい。」
ピコ『ルーちゃん』
ドルチェ「分かってる。」
ドルチェ「……悪気はないのよ、お互いにね。」
ドルチェ「だから余計にどうすればいいのか分からないのよ。」
レスト「ドルチェ……。」
ドルチェ「さ、行きましょ。」
ドルチェ「さ、行きましょ。」
ピコ『レオン・カルナクに行って、名前を確かめてきますわよ。』
レオン・カルナク
(塔の右足を調べる)
レスト「たくさんの名前が刻んである……。」
ドルチェ「たしか、ここに書いたのよね。」
ドルチェ「わたしたちの名前。」
ピコ『はい』
ドルチェ「知らない間に、ずいぶんたくさんの人が足を運んだみたいね。」
ピコ『そのようですわね』
ドルチェ「……やっぱり、わたしたちの名前は残ってないか。」
ピコ『…………』
ピコ『ルーちゃん!』
ピコ『ここ、見て下さいまし』
ピコ『その花、覚えてます?』
ドルチェ「ムーンドロップ草……。」
ピコ『そうですわ』
ドルチェ「あんたにプレゼントしたのよね。あのとき。」
ピコ『ええ』
ピコ『あんまりうれしかったから、毎日のようにながめてました』
ピコ『この花が、私の見ていない間に枯れてしまわないようにって』
ドルチェ「本当は、枯れると悲しむからって、ママが花を入れ替えてたんだけどね。」
ピコ『……もちろん、存じておりましたわ』
ピコ『でも、それが余計にうれしかったんですの』
ドルチェ「……だと思ってた。」
ピコ『そんな毎日こそ』
ピコ『枯れ果てずに、ずっと続いてほしかったんですの』
ドルチェ「…………。」
ドルチェ「あの時の花、どうなったのかしらね。」
ピコ『え……?』
ドルチェ「私たちが居なくなってから、」
ドルチェ「ママはそれでも、あの花を替えてたのかしら。」
ピコ『…………』
ピコ『ねえ、ルーちゃん』
ドルチェ「なによ?」
ピコ『レストさんが、話に置いてけぼりですけど』
ドルチェ「……そうね。」
ドルチェ「ごめんなさい。なんだか、感傷的になってたみたい。」
レスト「ドルチェ……。」
ピコ『何にせよ、レストさんには感謝しませんとね』
レスト「え……?」
ピコ『あなたがルーちゃんを起こしてくれなければ』
ピコ『ルーちゃんと、こんな話はできなかったですもの』
レスト「そんなこと……。」
ドルチェ「ええ、そうね。」
ドルチェ「またピコと話せて、うれしいとは思ってるし、」
ドルチェ「レストと居ると、……まあ、楽しいし。」
ドルチェ「その、ときどきすごく寂しくもなるけど、でも……その全部が本当で……。」
ドルチェ「……ごめん。」
ドルチェ「どう伝えたらいいのか、うまくまとまらないわ……。」
レスト「うん。何となくだけど、分かったよ。」
ドルチェ「え……?」
ピコ『あら、驚くほどのことではありませんわよ?』
ピコ『伝えようとする気持ちと、受け取ろうとする気持ちがあれば』
ピコ『自然と気持ちは伝わりますの』
レスト「うん、そうだね。」
ドルチェ「…………。」
ドルチェ「なんであんたがえらそうに語ってるのよ。」
ピコ『ふふ。たまには真面目なところも見せていきませんとねー』
ピコ『さて、と』
ピコ『そろそろ帰りましょうか。お二人さん』
ピコ『あんまり遅くなると、また心配されてしまいますしね』
ドルチェ「……うん。」
ピコ『というワケで、レストさん』
ピコ『ここからちゃんと、ルーちゃんを部屋までエスコートすること』
ピコ『よろしいですわね?』
レスト「かしこまりました。」
レスト「ではお嬢様、手をこちらに。」
ドルチェ「……なに言ってるのよ、バカ。」
ドルチェ「ほら、帰るわよ。」
ピコ『ルーちゃんの部屋まで、きちんとエスコートして下さいましね』
はい ・ 心得ております
▼はい
ドルチェ「……よろしく。」
▼心得ております
レスト「ではお嬢様、手をこちらに。」
ドルチェ「……それはもういいから。」
病院『ちいさな包帯』2階
ドルチェ「…………。」
レスト「ドルチェ?さっきから何つくってるの?」
ピコ『見ての通りですわよ』
レスト「ああ、花飾りだね。またピコのために?」
ピコ『ええ。今度こそ私のためですわね』
レスト「え?」
ナンシー「ルーちゃん♪」
ナンシー「あら、またピコちゃんに何かつくってるの?」
ナンシー「それなら、何か必要なものとかない?買ってきてあげるわよ?」
ドルチェ「……別にないわ。」
ナンシー「そう……。」
ナンシー「あ、じゃあ、何か食べたいものとかは?おなか減るんじゃない?」
ドルチェ「大丈夫よ。それくらいガマンできるから。」
ドルチェ「子供じゃないし。」
ナンシー「あ……。」
ドルチェ「わたしのことはいいから……その、部屋で休んでて。」
ナンシー「……うん、そうね。邪魔しちゃってごめんなさい。」
レスト「ドルチェ。よかったの?」
ドルチェ「ええ。」
レスト「でも……。」
ピコ『ナンシーさん、顔色が悪かったですわね』
レスト「え?」
ピコ『ルーちゃんは気づいてましたわよね?』
ドルチェ「………。」
ピコ『そんな人に、無理はさせられませんものねー』
レスト「そっか。だから『部屋で休んでて』って……。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……何よ。」
レスト「優しいんだね。」
ドルチェ「……っ。」
ドルチェ「……別に、これくらい普通だから……。」
ピコ『ルーちゃんは普通に優しいですわよね』
レスト「うん。そうだね。」
ドルチェ「………っ。」
レスト「さてと。それじゃあ、僕はそろそろ帰るね。」
ピコ『ええ。またいらして下さいな』
ドルチェ「あ……。」
レスト「ん?」
ドルチェ「その……。」
ドルチェ「……今日は、ありがとね。」
レスト「うん、またね。」
ドルチェ「……うん。」
ドルチェ「……今日はありがとね。」
ピコ『ルーちゃんってば、こう見えて意外と気がつく人ですの』
ピコ『例えば私の存在とか』
レスト(気が利くって意味じゃないんだ……。)
- 再度レオン・カルナク右足を調べる(10日目に塔に行くまで確認可能)
レスト「たくさんの名前が刻まれてる。」
レスト「ドルチェたちの名前はない……。」
4日目
病院『ちいさな包帯』1階
レスト「これは……。」
ジョーンズ「ああ、レストくん。おどろかせてすみません。」
レスト「その、誰かのおみまいですか?」
ナンシー「違うの。」
ナンシー「ルーちゃんが花びんをプレゼントしてくれたからなのよ!」
レスト「ドルチェが?」
ナンシー「うん♪」
ナンシー「あと、ほら。この花飾りなんて手作りなんだから!」
レスト「それ、この前ドルチェが作ってた……。」
レスト「……ナンシーさんのためだったんだ。」
ナンシー「え?」
レスト「あ、いえ。」
ナンシー「それでね、ジョーンズに、カビンに飾る花をたのんだんだけど。」
ジョーンズ「すみません。つい買いすぎてしまいました……。」
レスト「ついって……。」
レスト「この量をですか?」
ナンシー「仕方ないわよね。私だって同じことしちゃったと思うし。」
レスト「え……?」
ナンシー「残った花は、みんなにプレゼントしちゃいましょ♪」
ジョーンズ「そうですね。」
レスト「…………。」
ナンシー「でも、花びんにさす花はどれにしたらいいかしら?」
なんでもいいと思います ・ ムーンドロップ草がいいと思います
▼なんでもいいと思います
ジョーンズ「では、ムーンドロップ草はどうでしょうか?」
▼ムーンドロップ草がいいと思います
ナンシー「そうね……。素ぼくでいい花だわ。」
ジョーンズ「そうですね。」
ナンシー「じゃあ早速。」
ナンシー「あ、レストくん。ほしい花があったら持って行ってね。」
レスト「え?でも……。」
ナンシー「いいのよ。」
ジョーンズ「ええ。持っていって下さい。」
ナンシー「ながめる人のいない花なんて、寂しすぎるもの。」
レスト「…………。」
レスト「あの、ナンシーさん。」
ナンシー「なあに?」
レスト「今、町で流行ってるおまじない、知ってますか?」
ナンシー「え?」
ジョーンズ「ああ、レオン・カルナクの。」
ジョーンズ「塔の右足に名前を書いた人たちは幸せな家族になれる、でしたか。」
ナンシー「あれ?そのおまじないって……。」
ジョーンズ「ええ。」
ジョーンズ「昔、あなたと一緒に行った、あのどうくつのものと同じです。」
ナンシー「なつかしいわね。また流行ってたんだ。」
レスト「はい。」
レスト「今度、ドルチェを誘ってあげて下さい。」
ナンシー「え?」
レスト「きっと、喜ぶと思いますから。」
ナンシー「でも……。」
ジョーンズ「行ってみましょうか。ナンシー。」
ナンシー「ジョーンズ……。」
ナンシー「……そうね。そうしてみるわ、」
ナンシー「ありがとう。レストくん。」
レスト「どういたしまして。」
ナンシー「あの子のこと、これからもヨロシクね!」
レスト「もちろんです。」
ナンシー「うん、いい返事ね。」
ナンシー「うふふ♪」
ナンシー「ルーちゃんのこと、これからもヨロシクね。」
ナンシー「あの子、ああ見えて、けっこうなさびしがり屋さんだから。」
ジョーンズ「今度、レオン・カルナクに行ってみることにします。」
ジョーンズ「私と、ナンシーと、それからドルチェたちで。」
ドルチェ「病院の景色が、ちょっとさみしかったから、」
ドルチェ「ついでに、いつものお礼代わりにプレゼントでもしようと思って……。」
ドルチェ「花飾りはナンシーさんに、花びんはジョーンズさんに。」
ドルチェ「……ただ、それだけよ。」
ピコ『どっちが建て前で、どっちが本音なんでしょうねー』
ドルチェ「……う、うるさいわね。」
※1階に散乱しているムーンドロップ草・チャームブルー・ピンクキャットは持ち帰って良い。
5日目
レスト「ドルチェ――」
ピコ『ルーちゃん!』
レスト「わあ!?って、ピコもいたんだね。」
ピコ『ちょっと!聞いてますの、ルーちゃん!?』
レスト「えっと……どうしたの?」
ピコ『レオン・カルナクのおまじないの話ですの』
ピコ『ナンシーさんが一緒に行こうと誘ってくださったんですけど』
レスト「うん」
ピコ『ルーちゃんったら、行かないと一言でバッサリ』
レスト「え……?」
ドルチェ「別にいいじゃない。あんなの単なる迷信よ。」
ピコ『そ・う・い・う・こ・と・じゃ、あ・り・ま・せ・ん・の!』
ドルチェ「………。」
ピコ『まーったく……』
ピコ『家族としての距離感を、測りかねてるのは分かりますけど』
ピコ『照れ隠しも、いきすぎるとかわいくありませんわよ?』
ドルチェ「……分かってるわよ、それくらい。」
ピコ『へ?』
ドルチェ「なんでもないわ。」
レスト「ドルチェ……?」
ドルチェ「………。」
ピコ『ルーちゃん』
ピコ『照れ隠しも、いきすぎるとかわいくありませんわよ?』
ドルチェ「………。」
レスト(ドルチェ……?)
6日目
病院『ちいさな包帯』2階
レスト「ナンシーさん!?」
ドルチェ「あ、レスト……。」
レスト「な、何があったの!?」
ドルチェ「あの……。」
ドルチェ「その、ナンシーさんが、ご飯を作ってて、」
ドルチェ「顔色が悪いから休んでって言ったけど……、」
ドルチェ「料理は、自分の、仕事だからって……。」
レスト「ドルチェ――」
ドルチェ「で、でも、急に倒れちゃって……。」
ドルチェ「ピコもいなくて、だから……あれ?」
レスト「落ち着いて、ドルチェ。」
ドルチェ「あ……。」
レスト「とにかく、ナンシーさんをベッドに運ぼう。」
ドルチェ「う、うん……。」
レスト「とりあえず、これで大丈夫だと思うけど……。」
レスト「ジョーンズさんは?」
ドルチェ「……まだ、出かけてる。」
レスト「じゃあ、僕はジョーンズさんを探してくるから、ドルチェは――」
ドルチェ「……わたしが探してくる。」
レスト「え?」
ドルチェ「いいから。」
ドルチェ「レストはここにいて。」
レスト「あ――」
ナンシー「ん……。」
ナンシー「ん……。」
ナンシー「………。」
ナンシー「あれ……?」
レスト「気がつきましたか、ナンシーさん。」
ナンシー「レストくん……。」
ナンシー「ああ、そっか。私、倒れちゃったのね……。」
ナンシー「あ、そうだ。ルーちゃんは……?」
レスト「ジョーンズさんを呼びに行きました。」
レスト「あんなに動揺してるドルチェ、はじめて見ましたよ。」
ナンシー「そう……。」
ナンシー「………。」
ナンシー「……よかったあ。」
レスト「え?」
ナンシー「それだけ心配されてるなら、きらわれてないってことよね。」
ナンシー「なんだか、さけられてる気がしてたから。」
ナンシー「ここ最近、特にね……。」
レスト「………。」
ナンシー「カワイイ娘ができたからって、はしゃぎすぎちゃったのかしら……。」
ナンシー「それくらいの方が、変なエンリョとかしなくていいかなと思ったんだけど。」
レスト「え……?」
ナンシー「あ、なによその顔……。」
ナンシー「これでもね、色々と考えてたのよ?」
レスト「……はい。」
ナンシー「でも、ね……。」
ナンシー「正直、こたえるわ……。」
ナンシー「子供にきらわれるのって……。」
レスト「ナンシーさん……。」
ナンシー「こんなこと言ったら、また怒られちゃうかしら……。」
ナンシー「『子供じゃない』って……。」
レスト「………。」
ナンシー「ダメ、ね……。なんだか、弱気になっちゃって……。」
ナンシー「……ごめんなさい。」
ナンシー「すこし、眠るわ……。」
ナンシー「………。」
レスト(ナンシーさん、そんなことずっと考えてたんだ……。)
レスト(でも、きっとドルチェだってナンシーさんのこと……。)
ジョーンズ「ナンシー!」
ジョーンズ「ああ、レストくん!ナンシーは……!」
レスト「大丈夫です。いま眠ったところですから。」
ジョーンズ「そう、ですか……。」
ナンシー「………。」
レスト「よく眠ってる……。」
ジョーンズ「ありがとう、レストくん。お世話になりましたね。」
ジョーンズ「ナンシーなら、何日か休めば良くなるでしょう。」
ジョーンズ「このところ、色々考えていて疲れがたまっていたようでしたから。」
レスト「ドルチェ。」
ドルチェ「なに?」
レスト「その……」
なにか悩んでる? ・ ナンシーさんをみてなくていいの?
▼なにか悩んでる?
ドルチェ「………。」
ドルチェ「家族って、なんだと思う?」
レスト「え……?」
ドルチェ「……ううん、ゴメン。やっぱり何でもないわ。」
▼ナンシーさんをみてなくていいの?
ドルチェ「……そんなの、わたしの勝手でしょ。」
レスト「あ、うん……。」
ドルチェ「………って……。」
レスト「え?」
ドルチェ「………。……なんでもない。」
7日目
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェ?」
ピコ『昨日からずっとこの調子ですの』
ピコ『ナンシーさんのことも、何も話してくれませんし……』
ピコ『一体、どうしましたの?』
ジョーンズ「ナンシーなら、自室で安静にさせていますよ。」
ジョーンズ「良かったら、顔を見にいってあげてください。」
ジョーンズ「そろそろ、退屈してきてるころでしょうから。」
病院『ちいさな包帯』2階
レスト「ナンシーさん、体調はどうですか?」
ナンシー「うん。だいぶ良くなってきたわ。」
ナンシー「ルーちゃんなら、出かけてるわよ?」
レスト「あ……。」
ナンシー「あんなかわいい子に看病してもらうのが夢だったのに。」
ナンシー「逃げられちゃったわねー。まったく!」
レスト「あはは……。」
ナンシー「うふふ。」
ナンシー「ホント、……なかなかうまくいかないわね。」
レスト「ナンシーさん……?」
ナンシー「そういえば、前に話したことがあったかしら?」
レスト「え?」
ナンシー「私がジョーンズの患者さんだったって話。」
はい、覚えてます ・ えっと……?
▼はい、覚えてます
(改行後に飛ぶ)
▼えっと……?
ナンシー「忘れちゃった?」
ナンシー「私はあの人に、命を助けてもらったことがあるの。」
ナンシー「私がまだ看護士を目指していたころの話ね。」
ナンシー「そのときの私は、看護師になるのをあきらめようとしてたの。」
レスト「え……?」
ナンシー「命には必ず終わりがある。」
ナンシー「だから、助けられない人もいる。」
ナンシー「分かってるから大丈夫だって。頭では理解してるつもりだった。」
ナンシー「でも、それを目の当たりにすることがあって、」
ナンシー「……やっぱり、怖くなっちゃったのね。」
レスト「………。」
ナンシー「助けたい人をみとるしかないのは、ツライことよ。」
ナンシー「ふがいなくて、なさけなくて、どうしようもなくて……、」
ナンシー「そのまま、フラリと旅に出たの。」
レスト「………。」
ナンシー「でも、その先で土砂くずれに巻き込まれちゃって。」
ナンシー「次に目を覚ましたら、誰かが私の手を握ってた。」
レスト「それが、ジョーンズさんだった?」
ナンシー「そう。」
ナンシー「目覚めた私に彼は聞いたわ。」
ナンシー「『大丈夫かい?』って。」
ナンシー「そうしたら、なんだか涙があふれてきたの。」
レスト「………。」
ナンシー「ねえ、レストくん。」
ナンシー「手をつなぐって、簡単だけど特別なことなのよ。」
レスト「え……?」
ナンシー「それだけで、相手に心を許してるってことだもの。」
ナンシー「ジョーンズの言葉が、あの時、するりと心に入ってきたのも、」
ナンシー「きっと、あの人が、私の手をにぎっててくれたからだわ。」
レスト「手を……。」
ナンシー「そう。」
ナンシー「あのときの温もりは、今でも忘れない。」
ナンシー「『大丈夫なんかじゃない』って。」
ナンシー「本当は、たった一言、誰かに聞いてほしかったのよ。」
ナンシー「それだけで、十分だったの。」
レスト「………。」
ナンシー「人の死とどう向き合うのか、その答えはまだ出てないわ。」
ナンシー「でも、それでいいんだって、あのとき思ったのよ。」
ナンシー「彼のおかげで、そう思えたの。」
レスト「………。」
ナンシー「ルーちゃんを見てると、あのころの自分を思い出すわ。」
ナンシー「ずっと一人で、何かをかかえこんでるみたいな。」
ナンシー「そんなのを見てたら、何とかしてあげたくなるじゃない?」
ナンシー「だって……。」
ナンシー「家族なんだもの。」
レスト「ナンシーさん……。」
ナンシー「だからね。」
ナンシー「あのときのジョーンズみたいに、今度は私が何とかしてあげたいって、」
ナンシー「そう思ってるの。」
レスト「………。」
ナンシー「あ、今のこと、ルーちゃんには内緒だからね?」
ナンシー「あの子、こういうの、イヤがると思うから。」
ナンシー「……私も、ちょっぴり恥ずかしいしね。」
レスト「……はい。」
ナンシー「あーあ、でも、本当に難しいわね。」
ナンシー「ただ、家族になりたいって、それだけなのに。」
ナンシー「……難しいわ、本当に。」
レスト「………。」
ナンシー「ただ、家族になりたいって、それだけなのにね。」
ナンシー「……難しいわ、本当に。」
レスト「………。」
セルフィア:広場
ドルチェ「………。」
ドルチェ「ナンシーさんの様子、どうだった?」
レスト「え?」
ドルチェ「……見に行ってないなら、別にいいわ。」
ピコ『そんなに気になるんだったら、確かめに行ったらどうですの?』
ピコ『ご自分の家なんですから』
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェ。」
レスト「一緒に行こう。ナンシーさんのところに。」
ドルチェ「え……?」
レスト「きっと、ナンシーさんも待ってるから。」
レスト「……ね?」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……うん。」
(ドルチェが同行)
ドルチェ「………。」
レスト「ナンシーさんのところに行こう。」
ドルチェ「……うん。」
病院『ちいさな包帯』2階
ナンシー「あら、ルーちゃん。おかえり。」
ナンシー「レストくんも一緒だったのね。」
レスト「何やってるんですか!?ナンシーさん!!」
ナンシー「何って……見ての通りよ。」
ナンシー「そろそろご飯ができるから。ちょっと待っててね。」
レスト「そんなこと――」
ドルチェ「バカ!」
ピコ『ルーちゃん……』
ドルチェ「……顔、真っ青じゃない。そんな状態でなに言ってるの……?」
ナンシー「やだ、こんなの平気よ。心配しないで。」
ドルチェ「そんなわけないでしょ!?」
ナンシー「ルーちゃんったら、意外と心配性ね……。」
ピコ『とにかく、料理はいいですから、すぐベッドに戻って下さいまし』
ナンシー「でも……。」
ジョーンズ「どうしました?」
ナンシー「あら、ジョーンズも……。」
ジョーンズ「ナンシー!?何をやってるんですか!」
ナンシー「ちょっと待ってね。いま……。」
ナンシー「あ……れ……?」
ドルチェ「……気分はどう?」
ナンシー「ええ。もう大丈夫よ……。」
ピコ『よかったですわね。大事にならなくて』
ナンシー「……ごめんなさい。」
ナンシー「なんだか、色々考えすぎちゃって。」
ナンシー「ちょっと、どうかしてたみたい……。」
レスト「ナンシーさん……。」
ジョーンズ「………。」
ジョーンズ「ナンシー。」
ジョーンズ「はい。どうぞ。」
ナンシー「これ……。」
ジョーンズ「……チャーハン?」
ジョーンズ「はい。」
ジョーンズ「病人に優しいように、色々と工夫してありますが。」
ジョーンズ「あなたが最初に、私に作ってくれた料理ですよ。」
ナンシー「……覚えててくれたのね?」
ジョーンズ「当たり前です。」
ジョーンズ「ほら、食べてみてください。」
ナンシー「………。」
ナンシー「……おいしい。」
ジョーンズ「ナンシー。」
ナンシー「なに?」
ジョーンズ「手をつないでも、いいですか?」
ナンシー「え……?」
ナンシー「……う、うん。」
ジョーンズ「………。」
ジョーンズ「ちょっと昔話をしましょう。」
ナンシー「……?」
ジョーンズ「もうずいぶんと前の話です。」
ジョーンズ「医者として未熟だった私は、とある名医に弟子入りしていました。」
ジョーンズ「そこで、魔法医療について、しばらく学んでいたんです。」
ジョーンズ「そんなある日、近くで土砂くずれが起こりました。」
ナンシー「それって……。」
ジョーンズ「その事故でケガを負った女性が、私の前に運ばれてきました。」
ジョーンズ「でも、まだ未熟だった私には、応急処置がせいいっぱいでした。」
ジョーンズ「私はすっかり自信を失ってしまいましてね。」
ジョーンズ「本気で医者を辞めようかと悩んでたんですよ。」
ナンシー「ウソ……。」
ジョーンズ「でも、その人が目を覚まして、」
ジョーンズ「私の手を取り、こう言ってくれたんです。」
ジョーンズ「『ありがとう』と。」
ナンシー「………。」
ジョーンズ「あの一言に、私は救われました。」
ジョーンズ「ですから……。」
ジョーンズ「あまり無茶はしないでくださいね。」
ジョーンズ「……私の大事な人。」
ナンシー「………。」
ナンシー「……はい。」
ピコ『……では、私たちは席を外しましょうか』
レスト「そうだね。」
ピコ『それでは、ゆっくり休んでくださいまし』
ピコ『……ほら、ルーちゃんも』
ドルチェ「………。」
レスト「とりあえず、一件落着かな。」
ドルチェ「………。」
ピコ『ですが……』
ピコ『ナンシーさんったら、どうしてあんな無茶を?』
レスト「それは……。」
レスト(たぶん、ドルチェのために何かしたかったんだと思うけど……。)
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……どうでもいいじゃない。」
レスト「え……?」
ドルチェ「わたしたちには、関係ないわ。」
ピコ『ルーちゃん!』
ドルチェ「……だって、そうじゃないと……。」
ドルチェ「………。」
ピコ『ルーちゃん!どういうことですの!?』
ドルチェ「なにが?」
ピコ『ナンシーさんたちのこと。自分たちには関係ないって……』
ドルチェ「そのままの意味よ。」
ピコ『本気で言ってますの……?』
ドルチェ「………。」
レスト「じゃあ、ドルチェはどう思ってるの?」
ドルチェ「え……?」
レスト「ナンシーさんやジョーンズさんのこと。」
ドルチェ「それは……。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「どう思えば、正解なのかしらね……。」
レスト「え……?」
ピコ『ルーちゃん……?』
ドルチェ「………。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「ナンシーさんの様子、どう?」
ピコ『そんなに心配なら、自分で確かめたらどうですの?』
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェ……。」
ナンシー「ルーちゃん、どうしたら心を開いてくれるかしら……。」
レスト「ナンシーさん……。」
ナンシー「どうにかして……。」
ナンシー「心を開いたルーちゃんが、私に甘えてくるの図……。」
ナンシー「……いいっ!……これはいいわっ!!」
レスト「ナンシーさん……。」
ジョーンズ「ナンシーは、ドルチェのためにがんばっているようですね。」
ジョーンズ「見事にから回っていますが。」
ジョーンズ「でも、ソレも合わせて、彼女のいいところですよ。」
8日目
病院『ちいさな包帯』2階
ドルチェ「あの……。」
レスト「どうしたの?」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「なんでもないわ。」
ドルチェ「……ごめん。」
レスト「え……?」
ピコ『ああ、レストさん』
レスト「ピコ。」
ピコ『少しお話をよろしいですか?』
レスト「あ、うん。」
ピコ『二人っきりでゆっくり話すのは初めてかもしれませんわね』
レスト「そう言われてみれば……。」
ピコ『ふふ』
ピコ『ルーちゃんにねたまれちゃうかもですわ』
ピコ『――むしろそんなルーちゃんが見られるなら本望ですけども!!』
レスト「なんというか、いつも通り全開だね……。」
ピコ『……なーんて、冗談はさておき』
ピコ『この前のこと、覚えてます?』
レスト「え?」
ピコ『ナンシーさんやジョーンズさんのことをどう思っているのか』
ピコ『そう聞いた時の、ルーちゃんの反応ですわ』
レスト「たしか……。」
レスト「どう思えば正解なのかって、言ってたよね。」
ピコ『ええ』
ピコ『あの言葉にどんな意味があったのか』
ピコ『レストさんはどう思われました?』
レスト「それは……。」
今の家族との接し方に困っている ・ 正解なんてないという皮肉 ・ わからない
(どの選択肢を選んでもセリフは同じ)
ピコ『そうですの……』
レスト「ピコはどう思ったの?」
ピコ『ここにいるのが、場違いだと思っている』
レスト「え……?」
ピコ『本当に、ここにいていいのかと悩んでいるんでしょうね』
ピコ『私たちは、もともとあの人たちと何の関係もありませんから』
レスト「………。」
レスト「ナンシーさんは、ドルチェの事を本当に家族だと思ってるよ。」
ピコ『え?』
レスト「ナンシーさんがあんな無茶をしたのは、」
レスト「きっと、ドルチェのために、何かしたかったからじゃないかな。」
ピコ『……どういうことですの?』
レスト「この前、ナンシーさんが言ってたんだ。」
レスト「ドルチェには内緒にしてって言われてるんだけど――」
ピコ『……そうでしたか』
ピコ『ナンシーさんの行動は。全部ルーちゃんのためでしたのね』
レスト「うん」
ピコ『子は子で悩んでいるように、親は親で悩んでいる、と……』
ピコ『まあ、一番の問題は、ルーちゃんの心ですけど』
レスト「そうだね……。」
レスト「でも、ドルチェなら、きっと大丈夫だと思うよ。」
ピコ『あーら、やけに自信まんまんですわね』
ピコ『もうルーちゃんのことなら何でも知ってるってことですの?』
レスト「あ、いや、そういうわけじゃあ……。」
ピコ『……チッ』
ピコ『ぽっと出の馬の骨が、なまいき言うんじゃねーですの……』
レスト「えーっと……。」
ピコ『というのは、半分くらいジョウダンですわ』
ピコ『まあ、でも、あなたには感謝してますの』
レスト「え……?」
ピコ『ジョーンズさん、ナンシーさんの手をにぎっていましたわよね』
ピコ『それを見ていたら、ちょっと思い出したんですの』
ピコ『ルーちゃんが、長い間、眠っていたときのこと』
レスト「それは……守り人として、あの洋館にいた時のこと?」
ピコ『ええ』
ピコ『私も、ルーちゃんが眠ってる間、ずっと手をつないでましたの』
ピコ『ただ、いつかあの子が目覚めてくれると信じて』
レスト「………。」
ピコ『そして、あなたのおかげで、その願いはかなった』
ピコ『だから、ありがとうございます』
ピコ『あの子をたたき起こしてくれたこと』
ピコ『それだけは、本当に、心から感謝していますわ』
レスト「……うん。」
ピコ『で・も!』
ピコ『ルーちゃんの一番は私ですから!そこだけはゆずりませんわよ!!』
レスト「……はいはい。」
ピコ『ま、それはともかく』
ピコ『問題はルーちゃんをどう納得させるかですわね』
レスト「うん。」
ピコ『ルーちゃんだって、ナンシーさんを心配してましたから』
ピコ『どうでもいいというのが、本心だとは思いませんわ』
ピコ『問題はただ一つ。心の在り方次第ですの』
ピコ『家族だと思われてるということを、どう素直に受け入れさせるか……』
ピコ『そのキッカケさえあれば、うまくいくと思うんですけど……』
レスト「きっかけか……。」
ピコ『問題はルーちゃんをどう納得させるかですわね』
ピコ『家族だと思われてるってことを、どう素直に受け入れさせるか……』
ピコ『そのキッカケさえあれば、うまくいくと思うんですけど……』
レスト「きっかけか……。」
ドルチェ「……悪いけど、今は1人になりたいの。」
ドルチェ「……ごめん。」
9日目
ドルチェ「あ、レスト。」
ドルチェ「ねえ、ちょっと相談にのってくれる?」
いいよ ・ ちょっといそがしい
▼ちょっといそがしい
ドルチェ「そう……。」
ドルチェ「じゃあ、また時間のあるときにね。」
(会話終了)
▼いいよ
ドルチェ「次に作るピコの服なんだけど、どんなのがいいかしら?」
レスト「それは、仲直りのキッカケに?」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……まあ、そんなところね。」
レスト「ドルチェの作るものなら、なんでも喜ぶと思うけど。」
ドルチェ「……そう。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「………。もう一つ、聞きたいんだけど。」
レスト「ん?」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……やっぱり、何でもない。」
レスト「ドルチェ………?」
どうしたの? ・ 調子が悪いの? ・ ナンシーさんたちのこと?
▼どうしたの?
ドルチェ「……別に。」
レスト「そう……?」
レスト(そうは見えないけど……。)
(選択肢に戻る)
▼調子が悪いの?
ドルチェ「……ううん、大丈夫。」
レスト「そっか……。」
レスト(何かちがう悩みだったかな……?)
(選択肢に戻る)
▼ナンシーさんたちのこと?
ドルチェ「………。」
レスト(やっぱりそうか……。)
ドルチェ「あのさ、レスト。」
レスト「ん?」
ドルチェ「私、あの人たちと、うまくやっていけると思う?」
レスト「え……?」
ドルチェ「……ううん、ゴメン。」
ドルチェ「そうしようとしてないのは、私の方だって、分かってる。」
ドルチェ「でも……。」
ドルチェ「……自分の中でも、まだ、うまく整理できてないの。」
ドルチェ「だから……。」
ドルチェ「………。」
レスト「ねえ、ドルチェ。」
レスト「言葉に困ったら、形にしてみたらどうかな?」
ドルチェ「え……?」
レスト「ピコに服を作ってあげるのと同じようにさ。」
レスト「見えない気持ちを、何かにたくしたらいいよ。」
レスト「そうすれば、きっと、その気持ちは形になるから。」
ドルチェ「気持ちを形に……。」
レスト「そう。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「ナンシーさんと、ジョーンズさんは……。」
ドルチェ「どんなものをあげたら、喜ぶと思う……?」
レスト「ドルチェの選んだものなら、何でも喜ぶと思う。」
ドルチェ「……そっか。」
ドルチェ「うん。そうよね。」
レスト「うん。」
レスト「うまくいくといいね。」
ドルチェ「……うん。」
ドルチェ「すぐには思いつかないけど、がんばってみるわ。」
ドルチェ「ありがとね。レスト。」
ドルチェ「2人が喜びそうなもの……。」
ドルチェ「すぐには思いつかないけど、がんばってみるわ。」
ドルチェ「ありがとね。レスト。」
10日目
ナンシー「もうすっかり元気になったわ。ありがとう。レストくん。」
ジョーンズ「ナンシーもすっかり元気になりました。」
ジョーンズ「お世話になりましたね、レストくん。」
病院『ちいさな包帯』2階
※ナンシー・ジョーンズが2階にいない場合にイベント発生
ピコ『まあ、かわいい髪飾りですわね。もしかして私のために?』
ドルチェ「布が余ってもったいなかったから、ついでにね。」
ピコ『その素っ気ない態度も、実は照れ隠しですのよね?』
ドルチェ「………。」
レスト(よかった。うまく仲直りできたみたいだ。)
ナンシー「ルーちゃん♪」
ナンシー「あら、ステキな髪飾りね!どこで買ったの?」
ピコ『買ったんじゃなくて、ルーちゃんが作ってくれたんですのよ』
ナンシー「そうなの!?へえ、すごいわねー。」
ドルチェ「……ナンシーさんとジョーンズさんにもあるんだけど。」
ナンシー「え!?」
ピコ『ジョーンズさんに髪飾り!?』
ドルチェ「そんなわけないじゃない。この変態。」
ナンシー「そ、そうよね……。」
ドルチェ「……なんでナンシーさんまで動揺してるの?」
ナンシー「あはは……。」
ナンシー「ああ、でも……。」
ナンシー「うれしいわ。こんなものがもらえるだなんて……。」
ドルチェ「……大げさね。」
ナンシー「ううん。そんなことない。」
ナンシー「……大切にするわ。ありがとう。」
ドルチェ「……こちらこそ。」
ナンシー「え?」
ドルチェ「……ううん。なんでもない。」
ナンシー「そう?」
ナンシー「ああ、そうそう。それとね。」
ドルチェ「なに?」
ナンシー「今日はこれを伝えにきたんだけど。」
ナンシー「――コホン。」
ナンシー「なにか悩み事があったら、いつでも相談してね。」
ドルチェ「え?」
ナンシー「気のせいかもしれないけど……ずっと、何か気にしてるように見えたから。」
ドルチェ「………。」
ナンシー「だから、エンリョしないでって言いたかったの。」
ナンシー「悩みがあったら、どんどん相談してちょうだい!」
ナンシー「ルーちゃんもピコちゃんも、もう私たちの家族なんだから!」
ドルチェ「……ちがうわ。」
ナンシー「え?」
ドルチェ「わたしは、あなたたちの子供じゃない。」
レスト「ドルチェ……?」
ナンシー「あ……。」
ピコ『ルーちゃん!』
ドルチェ「……っ。」
ナンシー「そう、よね……。」
ナンシー「……ごめんなさい。」
レスト「ナンシーさん……。」
ナンシー「わたしが悪いだけだから。」
ナンシー「いいのよ、気にしないで。」
レスト「ナンシーさん……。」
レスト(ドルチェ、どうしてあんなことを……?)
ジョーンズ「ケガの処置のことを手当てといいますよね。」
ジョーンズ「それだけ、特別なことなんでしょうね。相手に手を触れるという行為は。」
ジョーンズ「難しいことではないのに、特別なことなんです。」
病院『ちいさな包帯』1階
レスト「ドルチェ。」
ドルチェ「………。」
レスト「どうしてあんなこと……。」
ピコ『ルーちゃん!』
ピコ『さっきの言葉は何ですの!?』
ドルチェ「……別に。」
ドルチェ「思ったことを、言っただけよ……。」
ピコ『ナンシーさんの顔、見ましたか?』
ドルチェ「……知らない。」
ピコ『きちんとこっちを向いて答えなさいな!』
ドルチェ「なんなのよ!あんたには関係ないじゃない!」
ピコ『関係なくなんてありませんわ!家族でしょう!?』
ドルチェ「あの人たちと私は、家族じゃない!」
ドルチェ「血がつながってないのよ!赤の他人と一緒じゃない!!」
ピコ『な……っ!』
レスト「二人とも、ちょっと落ち着いて……。」
ピコ『もう一度いってごらんなさいな!』
ドルチェ「なによ!本当のことじゃない!!」
ピコ『この……っ!』
ドルチェ「ぶつならぶちなさいよ!」
ドルチェ「あんたの薄っぺらい手のひらなんか、痛くもかゆくもないわ!」
レスト「ドルチェ……。」
ドルチェ「結局、あんたには分かんないのよ!」
ドルチェ「わたしがどんな気持ちであの人たちと接してきたか……。」
ドルチェ「ユウレイのあんたなんかに……。」
ドルチェ「わたしの家族でもないあんたにこの痛みが分かるわけない!!」
レスト「ドルチェ!!」
ドルチェ「あ……。」
ピコ『そう、ですわよね……』
ドルチェ「ピコ……。」
ピコ『……しょせんは幽霊』
ピコ『いるかどうかも分からない、中途半端な存在ですもの』
ピコ『そんな人間のこと、家族だなんて思えませんわよね』
ドルチェ「ちがうの、今のは……。」
ピコ『でも、あのお二人は違いますわ』
ピコ『ルーちゃんのことを、本当の家族だと思っています』
ピコ『そんな二人のことを、どうしてそんな風に否定しますの?』
ドルチェ「……やめてよ。」
ピコ『血がつながっていなければ、家族と言えませんの?』
ピコ『それじゃあ、やっぱり私とルーちゃんも――』
ピコ『……家族じゃありませんの?』
ドルチェ「やめてって言ってるでしょ!」
ドルチェ「………。」
(ここからムービー)
ドルチェ「……私だって、そうなりたいと思ってるわよ!」
(ムービーここまで)
ドルチェ「……わたしだって、うれしかった。」
ドルチェ「知らない場所で目覚めて、周りには知らない人ばかりで……。」
ドルチェ「でも、そんな私のことも、昔からの家族みたいに扱ってくれて。」
ドルチェ「……家族になりたくないかって?」
ドルチェ「そんなわけない……っ。」
ドルチェ「そんなわけないじゃないっ!」
ドルチェ「でも……っ!」
ドルチェ「わたしには、家族がいたのよ……っ。」
ドルチェ「やさしくて、あったかくて。いつも帰る場所が……。」
ドルチェ「帰りたいって、思える場所が、あったのよ……。」
ドルチェ「けど……、」
ドルチェ「そんな場所があったことさえ、もう
思い出の中にしか……。」
ピコ『あ……』
ドルチェ「……怖いのよ。」
ドルチェ「あの人たちを家族と認めたら、パパとママはどこにいくの?」
ドルチェ「誰もパパやママのことを覚えてないのに……。」
ドルチェ「わたしが認めちゃったら、他の誰が証明できるっていうの!?」
ドルチェ「パパやママが、本当にここにいたんだってこと……。」
ドルチェ「ここにはもう……。」
ドルチェ「パパやママがいたっていう証拠はなにも残ってないのに!!」
ピコ『ルーちゃん……』
ドルチェ「……何も消えやしないって、頭では分かってる。」
ドルチェ「でも……。」
ドルチェ「私は、あの世界に生きてたのよ……。」
ドルチェ「私は――」
ドルチェ「あの場所に、いつか帰りたいって、ずっと……。」
ドルチェ「思ってた、はずなのに……。」
ドルチェ「……っ!」
ピコ『ルーちゃん!』
ピコ『………』
ピコ『……まいりましたわね』
ピコ『ルーちゃんのことなら、何でも分かってると思ってましたのに』
レスト「ピコ……。」
ピコ『私、ルーちゃんが、こーんなに小さな頃から知ってますのよ』
ピコ『あの子が生まれてくるずっと前から幽霊をやってましたから』
レスト「……うん。」
ピコ『もう何百年前になるのかしら……』
ピコ『町には知らない顔ばかり』
ピコ『自分が幽霊になった理由も、すっかり忘れてしまって』
ピコ『でも、私が見える人間はいても、触れる人間なんていなかった』
ピコ『知っています?』
ピコ『体温を失うと、人は心まで凍っていくんですの』
レスト「………。」
ピコ『あの頃の私は、ちょうどそんな感じでしたわ』
ピコ『見えるばかりで触れもしない。ただながめているだけの毎日』
ピコ『……ツライものですわよ。人の最期をみとるだけというのは』
レスト「ピコ……。」
ピコ『もう、すっかり心も凍りついてしまって』
ピコ『いつ消えてしまおうかと、町をさまよっていた時のことです』
ピコ『私のことを指さして笑う、赤ん坊を見つけたんですの』
ピコ『すぐに、そういうものが見える人間だとわかりましたわ』
ピコ『でも、結局はそれだけ』
ピコ『話ができても別れが待っている』
ピコ『もうウンザリだと思って、通り過ぎようとしましたの』
ピコ『けれど……その子があんまり楽しそうに笑ってるものだから』
ピコ『つい、手を伸ばしてしまいました』
ピコ『……すぐに後悔しましたわ』
ピコ『私に触れられるものなんて、この世界には存在しない』
ピコ『傷つくことは、分かりきってましたから』
ピコ『でも、手を引っ込めようとしたとき』
ピコ『その指を、小さな体温が、きゅっと包み込んだんですの』
ピコ『……驚きましたわ』
ピコ『真っ暗で寒い部屋に、温かい光が差し込んで』
ピコ『それから、何かが溶けていくのを感じたんですの』
レスト「……うん。」
ピコ『気がつくと、涙がほほを伝っていました』
ピコ『だから私は、ずっとルーちゃんのそばにいましたの』
ピコ『あの子が私の氷を溶かしてくれたように』
ピコ『私がいつか、あの子の氷を溶かしてあげられたらいいと』
ピコ『そう、思っていたんですけどね……』
レスト「………。」
ピコ『昔のご両親との思い出。それにつながる何か……』
ピコ『それが一つでも見つかれば、きっと、ルーちゃんも……』
レスト「思い出につながる何か……。」
ピコ『昔のご両親との思い出。それにつながる何か……』
ピコ『一つでもそれが見つかれば、きっと、ルーちゃんも……』
セルフィア:竜の湖
ドルチェ「………。」
ドルチェ「みっともないとこ見せちゃったわね。」
レスト「そんなこと……。」
ドルチェ「本当はね……。」
ドルチェ「あの塔で探してたのは、わたしの名前じゃないの。」
レスト「え……?」
ドルチェ「みんなで書いたのよ。」
ドルチェ「家族みんなで、あそこに名前を書いたの。」
ドルチェ「一番最初に、あの塔に行ったときにね。」
レスト「でもピコは……。」
ドルチェ「あの子には内緒にしてたのよ。」
ドルチェ「背比べのフリして、名前を書かせて、……あとからコッソリね。」
ドルチェ「なんだか『自分は家族じゃない』って、エンリョしてるみたいだったから。」
レスト「………。」
ドルチェ「それでピコに、ムーンドロップ草をプレゼントしたのよね。」
ドルチェ「私たちの家族になって下さいって言って……。」
レスト「……そうだったんだ。」
ドルチェ「でも、結局わたしたちは……。」
ドルチェ「………。」
レスト「ドルチェ。」
手をつなごう
ドルチェ「……え?」
レスト「ほら。手を出して?」
ドルチェ「う、うん……。」
レスト「………。」
レスト「ドルチェは、ドルチェの家族のことを――」
レスト「大切な人のことを忘れるのが、怖いんだよね?」
ドルチェ「……うん。」
レスト「じゃあ、」
レスト「その人たちのこと、僕にも教えてよ。」
ドルチェ「え……?」
レスト「知りたいんだ」
レスト「今のドルチェを育ててくれた人たちのこと。」
レスト「ドルチェのことを、もっと知りたい。」
ドルチェ「レスト……。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……ありがとう。」
ドルチェ「……覚えてるのは、このくらいかな。」
レスト「そっか……。」
レスト「話してくれて、ありがとう。」
ドルチェ「ううん。」
ドルチェ「聞いてくれて、ありがとう」
レスト「それで、どうするの?これから。」
ドルチェ「そうね………。」
ドルチェ「とりあえず、謝りに行きたいわ。」
ドルチェ「ナンシーさんにも。……それに、ピコにも。」
レスト「うん。」
ドルチェ「………。付いてきてくれる?」
レスト「うん、もちろん!」
(ドルチェが同行)
ドルチェ「とりあえず、謝りに行きたいわ。」
ドルチェ「ナンシーさんにも、ピコにも。」
レスト「……うん。」
病院『ちいさな包帯』2階
ナンシー「あ……。」
ドルチェ「えっと………。」
ナンシー「……その、さっきは……。」
ドルチェ「ごめんなさい。」
ナンシー「え?」
ドルチェ「わたし、あなたに、ひどいこと言っちゃって……。」
ドルチェ「その……。」
ドルチェ「あなたたちを家族だと認めたら、」
ドルチェ「本当の家族はどうなるんだろうって。」
ドルチェ「私の中からも、いつか、消えちゃうんじゃないかって……。」
ドルチェ「ずっと……そんなこと、思ってて……。」
ナンシー「そんな……。」
ナンシー「………。……ううん、そうよね。」
ドルチェ「え……?」
ナンシー「私の方こそ、ごめんなさい。」
ナンシー「あなたが、そんなに悩んでたのに、気付いてあげられなくて。」
ナンシー「……当たり前よね。家族の心配をするのは。」
ドルチェ「ナンシーさん……。」
ナンシー「……ずっと、つらかったわね。」
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……うん。」
ナンシー「でもね、これだけは忘れないで。」
ドルチェ「……?」
ナンシー「私たちは、あなたのこと、もう家族だと思ってるから。」
ナンシー「ウチの娘になりたくなったらいつでも準備オッケーよ!」
ナンシー「いつでも!どんな場合でも!!24時間シフトで受け付けてるわ!!」
レスト「ナンシーさん、ピコに似てきましたね……。」
ナンシー「……ふふ。そうかもね。」
ナンシー「ところで、ピコちゃんは?一緒じゃないの?」
ドルチェ「え?」
ナンシー「たしか、ルーちゃんをさがすって出て行ったと思うんだけど……。」
ナンシー「ピコちゃんは一緒じゃなかったの?」
ナンシー「たしか、ルーちゃんをさがすって出て行ったと思うんだけど……。」
ドルチェ「ピコが……?」
レスト「ナンシーさんと仲直りできて、良かったね。」
ドルチェ「……うん。」
ドルチェ「あとは、ピコにも謝らないとね。」
ドルチェ「でも、わたしを探して出ていったって……。」
ドルチェ「………。まさか町の外にいないでしょうね。」
セルフィア:城門
ドルチェ「ピコ……、どこ行ったのかしら……。」
フォルテ「ああ、ドルチェさん。」
フォルテ「ピコさんと一緒ではなかったのですか?」
ドルチェ「え?」
フォルテ「いや、ドルチェさんのためだと外に出て行かれたものですから。」
レスト「外に……!?」
レスト「たしかピコってドルチェと一緒じゃないと……。」
ドルチェ「消える……わ。町からは洋館までがギリギリの範囲……。」
レスト「……急いで見つけないと!」
レスト「フォルテさん!ピコがどこに行ったかわかる!?」
フォルテ「え!?い、いえ、そこまでは……。」
レスト「看板……!」
ドルチェ「ピコ!」
レスト「……よかった、心配したよ……。」
レスト「……ピコ?」
ドルチェ「これ、ピコじゃない……。」
レスト「え……!?」
「急いで」
「あの子は、あなたたちの思い出の場所にいるわ」
レスト「これって……。」
ドルチェ「……レオン・カルナク!」
レスト「あそこにピコが……!」
ドルチェ「レスト!」
レスト「うん、早く行こう!」
フォルテ「看板が動いた……!?まさか……いや……。」
ドルチェ「ピコのバカ、どうして一人でレオン・カルナクになんて……!」
ドルチェ「急がないと!あの子が消えちゃうわ!!」
「急いで」
「あの子は、あなたたちの思い出の場所に」
ドルチェ「歩いて行きましょうよ。……そういう気分なの。」
レオン・カルナク
ドルチェ「ピコ!!」
ドルチェ「なに考えてるの!?消えるつもり!?」
ピコ『そんなこと……ありませんわ』
ドルチェ「じゃあ何で……!」
ピコ『もしかしたらと、思いましたの……』
ドルチェ「え?」
ピコ『ここに名前を書いたのは、私たちだけじゃ……なかったんですの……』
ピコ『ルーちゃんに隠れて、こっそりみんなで……』
ドルチェ「それって……。」
ピコ『だから、お二人の名前が、もしかしたら……と思いまして』
ピコ『……でも、ごめんなさい。結果は変わりませんでした』
ピコ『だからせめて、あの花を……、摘んで帰ろうと、思いましたのに』
ピコ『……やっぱり、一人ではなんにもできませんの』
レスト「ピコ……。」
ピコ『私にできるのは、こんなことくらいですのにね……』
ピコ『……この体では、そんなことも満足にできませんでしたわ……』
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……あんた、なに考えてるのよ?」
ドルチェ「わたしのためにって何?そんなこと、いつたのんだのよ?」
ピコ『それは……』
ドルチェ「……花がなによ。」
ドルチェ「血のつながりがなによ!思い出がなんだっていうのよ!!」
ピコ『ルーちゃん……?』
ドルチェ「なんの役にも立たない……!そんなことのために……っ。」
ピコ『……泣いて、ますの……?』
ドルチェ「泣いてなんかないっ!」
ドルチェ「ただ、アンタがいなくなったら……!」
ドルチェ「アンタまでいなくなったら……っ!」
ピコ『ルー……ちゃん?』
ドルチェ「何もできなくなんかない。一緒にいてくれるだけでいいの……。」
ドルチェ「この温度があったから、わたしはずっと一人じゃなかったの。」
ドルチェ「だから、お願い……。」
ドルチェ「お願いだから、勝手に消えたりなんかしないでよ……。」
ドルチェ「ずっと隣で……。」
ドルチェ「……わたしの手を、ずっとにぎっててよ……。」
ピコ『………』
ピコ『……はい』
レスト「………。」
ピコ『それじゃあ、そろそろ帰りましょうか』
ピコ『レストさんにも迷惑をおかけしましたわね』
レスト「いや、そんなことは……。」
ピコ『でも……。』
ピコ『残念でしたわね!ルーちゃんの一番は私のものですわ!』
ドルチェ「いや、それとこれとは話が別だから。」
ピコ『な……!?』
ピコ『で、では、本気でこのような男と……!?』
ドルチェ「………。」
ピコ『な、なな、な……!』
レスト「えーと……。」
レスト「と、ところで!看板で場所を伝えてくれたのって――」
ピコ『またその話ですの?だから私は知りませんの』
ドルチェ「……確かにアレは、ピコじゃなかったわ。」
ピコ『そういえば前にも似たようなこと言ってましたけど』
レスト「もしかして、アレは本当にピコじゃなかったの?」
ピコ『だから知らないと言っていますでしょうに』
レスト「それじゃあ、あの文字は……。」
ピコ『どうかしましたの?』
レスト「いや、これ……。」
ドルチェ「なに?」
「ありがとう。レストさん」
「それから……」
「いつまでも仲良くね。私たちのかわいい子供たち」
レスト「これって……。」
ピコ『………』
ピコ『ずっと待ってるって、おっしゃってましたものね……』
レスト「……神様が、願いをかなえてくれたのかもね。」
レスト「家族みんなが、幸せになれますように。」
ピコ『……想いだけが、ここに……』
ドルチェ「………。」
ドルチェ「……そっか。」
ドルチェ「……ここに……居てくれたんだ……。」
ドルチェ「……パパ……ママ……。」
セルフィア:城門
ナンシー「ルーちゃん!」
ドルチェ「あ……。」
ドルチェ「え……?」
ナンシー「もう、心配したのよ!一人で町の外に走っていったって!」
ドルチェ「あ……うん。」
ジョーンズ「フォルテさんから聞いたんですよ。」
ジョーンズ「一応、レストくんも一緒だとは聞いていたんですが。」
ジョーンズ「ともあれ、無事でよかったです。」
ナンシー「良くありません!」
レスト「え?」
ナンシー「ルーちゃん!ちょっとそこに直りなさい!」
ドルチェ「は……はい。」
ナンシー「いい?外は危ないところなの!危険なの!」
ナンシー「女の子一人で行って、もしものことがあったら……。」
ピコ『うんうん。まったくですわ』
ナンシー「ピコちゃん!あなたもです!」
ピコ『え!?でも、私は幽霊で……』
ナンシー「幽霊でも、女の子は女の子でしょ!?」
ピコ『ええー……』
レスト「………。」
ジョーンズ「それだけ心配していたんですよ。」
ジョーンズ「正直、私も気が気ではありませんでした。」
レスト「ジョーンズさん……。」
ジョーンズ「さて……。」
ジョーンズ「お説教はそのくらいにして、そろそろ家に帰るとしましょうか。」
ナンシー「そうね。今日はこのくらいで許してあげるわ」
ナンシー「それじゃあ二人とも、今日は何が食べたい?」
ピコ『いえ、私は食べられませんから』
ナンシー「それじゃあ、ルーちゃんは?」
ドルチェ「………。」
ナンシー「あ……ごめんなさい。また子供あつかいして……。」
ドルチェ「別にいいわよ。」
ナンシー「え……?」
ドルチェ「だってわたしは…… ……あなたたちの家の子供なんだから。」
ナンシー「……!」
レスト「ドルチェ……。」
ドルチェ「そ、その……。」
ドルチェ「……あなたたちが良ければ、だけど……。」
ナンシー「いいに決まってるじゃない!!!!!」
レスト「うわあ!?」
ナンシー「じゃあ、今日はルーちゃんの大好きな、プリンパーティーね!!!」
ピコ『いや、それはさすがに……』
ジョーンズ「なんなら、明日からもそれにしましょう。」
ピコ『こっちも親バカですの!?』
レスト「………。」
ドルチェ「……レストも一緒にね。」
レスト「ん?」
ドルチェ「家族に……なるかもしれないから……。」
レスト「え……!?」
ピコ『なっ!?』
ドルチェ「だ、だから!」
ドルチェ「その……とりあえず……。」
ドルチェ「……手、つないで帰ろっか?」
レスト「……う、うん」
ドルチェ「………。」
ピコ『……く……っ。……今日、今日だけは……ガマン……』
ドルチェ「その……。」
ドルチェ「……色々、ありがと。」
レスト「うん。」
ピコ『うぐぐ……。か、感謝は……してますが……ぬああああ!?』
ナンシー「家族……。ルーちゃんが私たちの娘……。」
ナンシー「……うふふふふふ。」
レスト「ナンシーさん。ピコみたいになってますよ……。」
ナンシー「あら、いけない。」
ジョーンズ「レストくん」
ジョーンズ「これからも、ドルチェのこと、よろしくお願いします。」
ジョーンズ「……でも。」
ジョーンズ「あの子を泣かせたりしたら、承知しませんからね?」
最終更新:2020年09月17日 13:04