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羽根あり道化師
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羽根あり道化師

序章 俺サマとそれから

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vice2rain

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序章 俺サマとそれから


 もう楽しいことは終わりだ。

 これからは、楽しむ役の交代。バトンを渡す相手は、オマエだ。



 精神、魂、肉体。俺の考えるトコでは、この3つが生命体を構築し、維持し、存在させる最大の要素だ。
 精神は、癖、思考回路、生命維持活動における記憶、及びそれに伴う感情そのもの(=不可視の機能)をそれと定義する。
 魂は、精神、肉体を維持し、その生命個体にただ1つのみ宿る。機械に組み込むことは不可能。神がこの世を創造する際に無数に作成した特殊機能をそれと定義する。
 肉体は可視可蝕の物体であり、血と肉と骨(及びそれらを構築する要素)によりなされる精神と魂とをつなぎとめる器をそれと定義する。

 閑話休題。地上で、いや正しくは人間の言う世界とやらに存在する地表面で最上にある場所といえばサガルマータであるが、そこへ到達した記録はただ1つだ。名君、レオン・ミルディアンと魔法少女のプリアラ、そして彼らの愉快な仲間約一名がそれを成し遂げたという。さて、彼らはそこでとある重大な発見をした。「世界の極限はここではない、ここはたんなる中継地点にすぎないのだ」。
 残念ながら、無粋な仲間の一人が彼らを地上に帰るようにさせたためにその先に何があるのかを地上のものが知る機会は永遠に失われてしまった。

しかし、俺はそれについてとてもよく知っているし、ぜひとも記録を残しておきたいと思っている。別に理由はない。むしろ歴史的価値のあるものとしてこの記録が扱われてしまったら、それは俺の生涯最大のミスであり、最大の汚点であり、最大の恥だ。
俺は単に、これを物語として楽しんでもらうことに重きをおいている。そう、エルフや魔法、剣のチャンバラなんかとは無縁の次元にこの記録を置くことで、誰かがドキドキハラハラしながらこれを読んでもらう事が楽しみで仕方ない。歴史っていうのはいつもそんなものではないだろうか?歴史上の人物は、少なくとも名を残したいと思った人は、皆自分のサクセスストーリーに感動してもらいたいはずだからね。

 ちょっと話がそれちまったな。とにかく、サガルマータの先にあるのは天国でも地獄でもなければ冥界でもない。宇宙?そりゃ確かにそうだ。だが、その前に、そこにはもう1つの星がある。龍の惑星、龍の世界。太古の人間との領有権を巡る争いに負け、残り少なくなった龍たちが移住してきた星があるんだ。

好き勝手書きまくってるけど、ここいらで浮かんでくる疑問にそろそろ答えてやるよ。俺様がどうしてこんなことを知っているのか、それにはいくつかの要因が重なっている。

まあその1つは至極簡単だ。わかってるんだろうけど、一応書いておこう。俺サマがレオンとプリアラと旅をしたもう一人の仲間だから。もう1つの要因は龍の世界の情報を引き継いだからとでも言っておこうか。

最初に俺は生命体における三大要素についてを述べた。その中で1つだけ神によってリサイクルされているものがある。精神をリサイクルしてしまうと、姿は違えど性格は全く同じ人間が現れるだけに留まらず、赤ん坊が相対性理論やカオス理論をぺらぺら語りだすことも可能になってしまう。俺の頭の中でそんなイメージが出来ることから、全く不可能な事象でないことだけは確かだが、過去、こんな事象は確認されてこなかったからこれはない。肉体は論外だ。腐るし、なくなる。つまりは長持ちしない。再構築の可能性を考えればきりはないが、俺は完璧な確証をもってリサイクルされていると断言しているので、ここでは除外させてもらう。
まぁ、つまるところ魂。これっきゃないんだけど。

通常魂が受け継がれたところで、前世の記憶や情報どころか、前世が何者かを知る術なんて、ありえない。だが、統計上どんなことにも例外はあるんだ。例えば、100年程度で朽ちるべき器が数千年の時を越えて持続するとか、特定の固体を別の種との亜種に変えるとか、ね。

俺は事実、転生前を知っていれば転生後の予測もついたりする。転生前を知ることについては理論上(あくまでも理論上だが)そう難しいことではない。大きな、生死に関わるほどの衝撃を同時に、精神と肉体にあたえてやればいいだけの話だ。ただ、ここでショック死したり、肉体的な死を迎えてしまったらパァだけど。具体的な例をあげれば、俺の前世はレティスっていう龍だった。好奇心が強く、平和に燃えていて、人間との国交を持とうとして人間界に降り立ち、そこで捕獲されて殺された。そこで遺伝子とか、いろいろ採取されたんだけど、その研究はあんまり進展しなかった。あまりにも、地上の動物たちとかけ離れすぎていた。だが、その180年後、あまりにも大きな発明がなされてしまう。レティスと同じ魂をもつ俺が、遺伝子をヒトに組み込むっていう実験に巻き込まれ、それが成功してしまった。人工マクムート、ドラゴンキメラ、そんな存在ができてしまった。その唯一の例が俺だったということだ。まぁこの際そのことはあまり重要じゃない。とにかくその手術っていうのはこの世にある全ての苦痛を同時に与えるような痛みをともなうものだった。それに加えて前世の遺伝情報が与えられているわけだし、記憶が湧き上がらないはずもないだろう。冒頭に挙げた三要素は密接に関連しているに違いない。

転生後を知ることについては少し特殊なことが必要だ。まずしなければならないのは、サガルマータへ到達すること。そこから龍の世界へ向かい、鏡の回廊へ行く。あぁ、言い忘れてたけど、龍の惑星ってのは全体が建物に覆われている。地下はマントルぎりぎりの深さまで達し、地上は大気圏ギリギリまであるんで、迷子になって窒息死したり、焼死しないように気をつけろ。鏡の回廊に辿り着いたら次に未来の鏡を探す。真実の鏡とか、偽りの鏡とか、夢鏡とか、まぁいろいろ多種多様な取り揃えなんで類似品にもご用心だ。お目当ての鏡を見つけたら、それを覗き込んでやるだけ。来世の情報がバーっと浮かび上がる。まぁ、通常龍の情報を持っていない奴がここまで辿り着くには相当な時間と根気と運が必要だろうね。

で、いよいよ本題に入る。俺は転生後に着いて知る必要があったんだ。理由は、そうだな・・・大魔王をやっつける!ためとでも言えばいいか?正味な話、その大魔王とやらは俺だけじゃあ太刀打ちできないほど強い。俺の仲間を伴っても無理だし、神の力は命を扱うことができなかった。だから大魔王の命も奪えなければ、消滅させることも不可。俺に協力してくれそうで、かつ事の発端と成り行きを真に理解できる「魂のつながり」が必要だ。その上そいつはそこそこ強くなきゃいけないし。まぁ、そんなこと言ってもその魔王ってのは俺が作った結界で今は閉じ込められてるんで、当分は安心なんだけど・・・やがては結界を破っちまう。そうなったとして、俺がまたそいつを閉じ込められるかと聞かれたら、うんとはいえない。だったらさっさと決着をつけるのみ!
強いヤツらをなるべくたくさん呼んで、みんなで大魔王を退治しよう!そう思って、俺は全ての準備をしてきたってわけだ。

残すのは一冊の召喚書。これを見つけるのは未来の俺の転生体。確信している。

長くなったけど、この話の序章と、俺の物語の最終章は終わりだ。
おっと、忘れるところだった。俺の名前はヴァイス、罪の名前を背負って生きた男。
じゃ、そろそろ眠らせてもらうぜ。



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