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羽根あり道化師
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7章 俺サマと愉快な仲間たちとカミングアウト

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vice2rain

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うつむくな、諦めるな、考えつづける事

かつて親父はそういった。

だから俺は考える事をやめない、なるべくうつむかない。

―だけど、諦めなかっただろうか?俺は―――――


7章 俺サマと愉快な仲間たちとカミングアウト


「…ククッ、そんなに俺サマが必要だっつーなら…」

俺が不適に笑い、カッコつけながらゆっくりと言おうとした(それだけ俺にも余裕が出てきてたんだろう、今思えばかなり危ない冗談をやってのけたもんだけど)その時だった。かなり遠くのほうで爆発音が聞こえた気がした。その直後には魔物たちの雄叫びと悲鳴、そしてまた爆発音…とだんだんこちらに近づいてくるような気配がする。音も近づいてきた。老紳士はというといかにも気に食わないという顔をしてやれやれ、と呟いている。その様子にすっかり気を良くした俺はさらに悪い冗談を続けてみた。

「近づいてくるな。超ウケるぜ、その不快満面な顔。」
「えぇ不快ですとも。しかし…いかなる時も窮地を覆し自分が優位にたつ…これが出来なければワタクシはワタクシではありませんから。貴方助けが来た或いはチャンスが来たとでもお思いのようですが、果たして本当にそうだと思いますか?」
「思うな。すくなくとも爆発に乗じて破壊された拘束器具じゃあ俺のことをここにとどめるには至らない。そして乗り込んできた奴らが―………」

レオンやプリアラじゃなかったとしても、と続くはずだったが俺は口をつぐんだ。あいつらが来るはずはなかったんだ。俺はレオンを拒絶したし、パーティから誰かが抜けた時そいつを追わないのも鉄則。あいつらは俺がいなくなったことを知っても旅を続けるはずだろう…つれさらわれたとは思わないからだ。だから俺のこの仮定は意味をなさない。一度ひっこめた論理を修正し、俺は再び口を開いた。

「乗り込んできた奴らが俺を助けたいと思っていようが思ってなかろうが、お前に荒っぽい用事があることは確かだろう。その隙に逃げてしまえばお前は俺を探すのにまた一苦労するだろうな。ククッ…今度はもっとうまく隠れてやるよ。」
「貴方のお考えの事はそう間違ってもいませんでしょうな。ですがね…ワタクシが言いたいのはそのようなことではないのですよ。」
「…?」

爆発音がさらに近くなった。だけど、どうしてなのか時が流れるのがいやに遅く感じられた。脂汗が額を伝うのを感じながら俺は老紳士の言葉を待った。老紳士は、いやみったらしい笑みを浮かべ、死刑宣告でもするかのように言い放つ。その言葉に俺は目を見開いた。

「ッ―やめろッ!それは…それはダメだ…!」
「やめろですとかダメですとかいう言葉は肯定と見なす事にしているのですよ、ワタクシは…ほっほっほ…」
「このドSジジィィィイ!テメーは小学生かッ!ここで『じゃあやっぱやってもいいよ』って言ったら『だっていいっていったから』とか言いながらやるんだろ!許さねーぞそんなことオォォ!」
「お見事です。怒りで我を忘れているのかと思いきやしっかりとギャグを交えようとするその姿勢…ですが、あんまりさえていませんよ…焦っておられますね?さあ…近づいてきましたよ。」
「ハッ…!テメェの計画なんて成功しな…」

最後の大きな爆発音が響いた。壁はもろく崩れ去り小さな石を含め元は頑丈な岩の壁だった破片もあちらこちらに飛び散っていく。動けないから顔をたくさんの小石が掠めて痛い痛い。それだけならまだ良しとするがここで予想外の出来事が起こってしまった―

「うわッ?!」

爆風が強すぎたのか、俺は両手足動けないまま吹っ飛ばされ、大きな岩の下敷きにされてしまった。声を出そうにも口が岩に当たっている所為で出す事も出来ない。視界も開けないからどんな様子なのかすら把握できない。

「そこまでだッ!」

この間抜けたのんびり風味の声は…

(レオンかッ!)

「彼は目撃していたのよ、貴方がウチの貴重な戦力連れ出すとこをね…!さあ!ヴァイスを返してもらおうじゃない、ヴォローザ!」

ヴォローザ…中央魔術師(セントラルウィザード)か…。四方魔術師の他にもう1人新しく加わった「場所」にとどまる魔術師の話は聞いていたが、中央はたいした事無いって感じだったはず。そのヴォローザが俺サマをここまで追い詰めただと?おかしいな。そう…実際ヴォローザはマルラに比べても全然魔力が無かったといえる。この大体魔力の及ぶ範囲だってかなり限られていたはず。それがどうして南に限りなく近づいていた俺に及んだんだ…?

「ふふ…威勢がいいですね、北の魔女の使い魔さん。ワタクシのことを侮っていらっしゃるようですが?」
「そうね…前の貴方ならナメてる…っていうか5秒で即死させてやったわ。」

プリアラの言い方に俺は何か引っかかった。ヴォローザの言葉にも。たしかにこいつは以前たいした実力を持っていなかったと考えていいらしい。

「だけど、闇の力の真骨頂は…膨張する事にあるのよね。」
「膨張…?」
「ご名答!そうです…闇の力はそれ自体たいしたものではありません。ですが、それを行使する数を増す事により…限りない力を発揮するもの。そう、限りない力を秘めた力…。だからワタクシは闇のある場所、中央に契約をしたのですよ。」
「レオン、気をつけて…」

プリアラは少し震えた声で言った。このジジィの恐ろしさがわかるからこそだろう。

「…この外道魔術師…サイッテーな趣味があるの…。子供を嬲り殺す…趣味が。」

…ん?プリアラさん。確かにそりゃ最低っていうかもう人間ですらないような趣味であることはそーなんだけどっ、議題ずれてない?

「!ぷ、プリアラ…ヴァイス見当たらないんですけどどどど…」

レオン君~?ボケるのは普段の旅の時だけにしろよ~?こんな重大な場面でボケるとかまさかないよな~?

「……ありえるわね。」

じゃねーよプリアラ!お前が吹っ飛ばした岩の下敷きになってるのがわからないのかーーーッ!

「…あなたがたのお仲間はワタクシを存分に楽しませてくれましたよ。」

確かになぁ!SMプレイを勝手に楽しまれたよ!なんだってんだこの意地悪ジーさんは!

「やっぱり焼いて煮て食べたのね!何味よ!ヴァイスは何味だったのよオォォォ!」
「なんかヴァイスって黒いじゃん!黒いもの食べたら癌になるって父上がおっしゃって」

なぜに発想が飛躍するかなぁ!食われてねーよ!っていうかレオン!食べたら癌になる黒いものはコゲだ!俺は焦げてるんじゃねー!

「ご想像のとおり香ばしく、それでいてしつこくない・・・」
「だあああああああああ!いい加減にしろお前らぁ!」
「ちっ・・・」
「ヴァイス!」
「プリアラ・・・さん?今舌打ち・・・」
「気のせいよ、ヴァイス!無事だったのね!」

うっわあ・・・すげぇ白々しいよ。
だけど なぜか心の中があったまっていくみたいな感覚がたしかにあった。さっき、ジジィと話していたときの凍ったみたいな心が少しずつ解けるような、安心感を感じた。

「ヴァイス!僕は確かに・・・君の言うとおり甘い人間なんです。だけど、こんなふうに、誰かを信じ続けて生きることって本当はきっと難しいんじゃないかな?!僕はそうやって生きていこうと思っているんだ!もちろん・・・君の考えを変えるつもりはないけどね?」

レオンが俺に叫ぶ。岩に押しつぶされたまま俺はこいつの言葉を聞き、小さく笑う。そして、レオンのいるであろう場所に向かって負けずに大声を張り上げた。

「バーーカ!相変わらず甘いやつ。甘口すぎだぜ。仕方ねぇから辛口な俺様が一緒に旅して中辛にしてやるよ。」
「ヴァイス・・・」
「そういうことよ。さぁ、ヴォローザ!覚悟なさい!」

プリアラが威勢よく叫んだ。ヴォローザが小さくしたうちをする音が聞こえたが、少しすると笑い声が聞こえてきた。あきらめの声ではなく、楽しんでいるかのような忍び笑いだ。まさか、あいつ・・・さっき言ったことを本当に?!

「これでもこの男はあなたたちの仲間だというのですかな?」

指をはじく音、爆風、体が焼けるような熱に激しい光。俺を押しつぶしていた岩は砕け、両手足を固定していた金具も砕け散ってしまった。どんなに頑丈な物質でもこの結果は否めないのだろう、相手が悪すぎる。ダイヤモンドよりも硬い皮膚を持っているんだから。
背の低い俺の視界がだんだん上へと登っていく。当然だ、頭の位置が上がっているんだから。光が消えると俺の目には唖然としたレオンとプリアラとの姿が映った。

知られたくなかったのに 誰にも 誰にも・・・

龍は人間にとって恐怖の代名詞。だからこそだ。

「あなたたちはこんな怪物と旅をしていたのですよ。」

追い討ちをかけるようにヴォローザは言う。それはとても愉快そうな声。だけど俺に悪態をつくような余裕は残されていなかった。魔力をできるだけ使ってもとの姿に戻ると力が入らなくなってしまってその場にしゃがみこんでしまった。レオンもプリアラも俺を見つめている。

ヴォローザは今にも大声で笑い出しそうな表情をしていたのだが、俺はこいつの思惑通りに行かないという自信がわいてきた。この二人の目は、畏怖の念や恐怖を抱いているものじゃないと確信したから。

予想通り、レオンはヴォローザに斬りかかる。プリアラもそれを援護するように魔法の攻撃を仕掛け始めた。しばし呆然としていたがやっと俺は我に返って――――

「レイ!」
「っ・・・・・・」

魔法を唱えるとヴォローザに直撃した。闇属性魔術師なら光に弱くて当然だ。これはかなりこたえたに違いない。

「レオン、プリアラ!今のうちに逃げんぞ!」
「何でよ!」
「バカっ!今の俺たちが適うわけねえんだよ!今俺だって懇親の一撃だったんだからな!」
「そ、そうだったんですかっ!なら急ぎ」
「お待ちなさい。」

ヴォローザはゾンビのごとく、プリアラとレオンがぶっ壊してきた壁の前に立ちはだかっていた。もうだめじゃん俺ら!―そう思ったのだが、意外にもヴォローザは攻撃をしかけてはこない。

「ふふ…面白そうです。至極面白そうです。旅を続ける若き賢者の為に餞別を差し上げましょう。」

ヴォローザは俺に向かって何かを投げた。小さな水晶玉で、中には七色の光がこめられている。まさか、これは―

「星界の封印・・・本物かしら?」

プリアラが挑発的に問いかけた。レオンは俺の持つ水晶を眺めている。

「信じる信じないはあなたたちしだい。ですが、ワタクシは偽者を渡していないと明言しておきましょう。」
「・・・つまりぃ?俺たちを泳がせてサガルマータに到達したときに俺を回収に来るから今連れてかなくてもいいってわけね。」

俺の皮肉たっぷりの言葉に異常なほどの笑みを浮かべたヴォローザは何も言わずに闇に消えてしまった。
闇の静寂があたりを包む中、レオンは転がってる死体を引きずり、外へ持っていく。埋葬しようと考えているのだろうか、やっぱりこいつはお人よしだ。王子なのに、誰のものかもわからない遺体をしっかり埋葬しようと考えるなんて、やさしすぎるにも程がある。俺も手伝おうと、作業にとりかかろうとしたそのとき後ろでプリアラはこっそりつぶやいた。

「ヴォローザのジジィ、マジ胸糞悪いわ。」

女の子なんだから言葉遣いくらいお上品にしてください、プリアラさん。

あ、なんかこのノリ久々だ。
俺はこの仲間の元に還ることができたんだ。
プリアラの毒舌もレオンのお人よしも、今日は身にしみて迷惑だった。月はだんだん姿を消そうとしていた。


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