アットウィキロゴ
羽根あり道化師
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

羽根あり道化師

2時間目

最終更新:

vice2rain

- view
管理者のみ編集可
朝日が差し込む教室に緑色の髪の少女は何かをいじりながらたたずんでいた。今日も快晴、風がさわやかに吹き付ける中、まだ自分以外クラスメイトのいない教室に酔いしれる―

が。

「おっはよ~アリア!」
「うおおッ?!びっくりすんじゃん!サラかよ、もー驚かせんなあ~!」

さっきまでのあの静かな身のこなしとは打って変わって少女はクラスに入ってきたもう一人の少女―金色の髪が風に揺れてなびいている、妖精のようにかわいらしい少女だ―にげはげはと、大きな声で笑いかけた。

「いつも早いよね、こんな早くに来て何やってるの?」
「あー、兄貴の所為なんだよね。勉強するために早く行くーって言うんだから。」
「へー、やっぱりヴァイスはすごいのね。」
「うん、なんやかんやでヴァイスも頭いいんだよね、本当は。悪戯ばっかしてるからセンセーには嫌われてるらしいんだけどね。」

サラはくすっと可憐に笑う。

「うん、でもそういうところがヴァイスはいいんじゃないかしら。おもしろくて好き。」
「アハハ!確かに面白いけどねー。ていうか兄貴のせいであたしはこんなに真面目になっちゃったんじゃねーのって話になってさ。ちゃんと世の中バランスがとれるようになってんの。そだ、サラの兄貴も3-Sにいなかったっけ?」
「いるよ。今日ちょっと遊びに行こうかと思っているの。ついでに害虫駆除もね…」
「害虫駆除ォ?まぁなんか楽しそうだしあたしも行こうかな。」

一方そのころ3-Sではレオンとヴァイスが同時にくしゃみをし、なにかいやな予感を覚えつつ教科書を予習していた。
いや、予習していたのはレオンだけ、ヴァイスはアリア同様なにかに全ての力を出していたのだが。

「君さっきからなにやってんですか…」
「内職。ついでにいうと学校終わったらバイトもある。」
「なんでですか!遊ぶ金ほしさですか!」
「ちげぇよ!生活費が苦しいのッ!俺の家、両親いない割には3人兄弟だからね。自宅がさァ、まだあるから家賃とか気にしなくても大丈夫なんだけどね…食費がね~…」

ここでレオンの表情が暗くなる。ヴァイスは特に気にする様子もなく手を動かし続けていた。クラスに重い雰囲気がながれかったその瞬間、クラスのドアが開いた。かばんを持つことすらせず、財布と定期だけ持った好青年―にみえるカンジの人、エルネストが入ってきたのだ。

「おはよーごぜーます、っと。おうヴァイス今度は何の内職だよ。」
「造花ー。やべーよ、ヴァイス君第二話にして花背負って登場だよ。少女マンガかってんだ。」
「お前に花は似あわねーよそれこっちに寄越しな。俺のほうが花似合うって。」
「わ、手伝ってくれんの♪さんきゅー!」

そんなエルネストとヴァイスの様子を見たレオンは教科書を置き、二人を手伝うために席を立った。未完成の造花に手を伸ばしたそのときである。

「おはよう、なんで全員で花いじってるの?キモキャラのつもり?」
「あ、プリアラ!お前も漢なら手伝えッ!」

ドアが開いて現れた少女にヴァイスが叫んだ。エルネストも一度手を止め、そうだそだー、と声を張り上げる。が、なぜかレオンにはいやな予感がするのだ―
いやな予感はあたった。プリアラは黒板消しを手に取り目にもとまらぬ速さでそれをヴァイスの顔面めがけて投げた。が、ヴァイスもそうやすやすとそれを喰らったりはしない。それどころか、完成品の造花のダンボールを肩に担いで後ろへ跳び、一つ目の黒板消しを避け(一つ目の黒板消しはレオンの顔面にクリティカルヒットしたようだ)、チョークの乱舞を机を盾にしのぎ、二つ目の黒板消しはうまくキャッチして黒板に戻した。プリアラは舌打ちをする―が、次の瞬間くす、っと笑った。

「んだってんだ…って……プリアラ…さん~?」

そう、さっきまですぐ前にいたはずのプリアラがヴァイスの背後にはにこにこと笑って仁王立ちしていたのだ。心なしか地獄の業火を背に背負っているようにすら見える。さすがのヴァイスの額にもいやな脂汗が流れた。やはりというか、そのまま殴り倒されたヴァイスは午前中の内職を終了せざるをえなくなったようだった…。

「いてて…プリアラ~、おもいっきりやることねーだろ、おもいっきりテレビですかってんだ、みのもんたかお前は!」
「訳わかんないわよっていうかね、あなたデリカシーがなさすぎるのよ。」
「うーっす、おはよー!」
「はい、おはよー…っておいおいアリア!お前なに調子のってんの?なんで3年の階来てんの?絞め殺されんじゃね?」
「絞め殺される前に絞め殺すから大丈夫じゃね?いや、あたしはサラについてきただけなんだけどね。」

アリアとサラが3-Sの教室へ現れた。二人に5人の視線が集中する。
それにしても、全く二人の印象は正反対だ―
アリアはヴァイスに似て、やんちゃそうな表情、短めの髪、いかにも元気いっぱいの少女であるが、サラは長いゆるやかなカーブを描いた金髪に穏やかな物腰と上品な表情といった、いかにもお嬢様のような少女である。

「サラ?」
「レオンくーん、昨日焼いたクッキーもってきちゃった~♪」

サラは手に提げていた袋を目の前に突き出し、上品に笑う。唯一残念なのは兄の呼び名が「お兄様」ではなく「レオン君」だということだけか。
クッキーのにおいをかぎつけたのか、まっさきにヴァイスが彼女の元へ駆け寄ってきた。そして期待いっぱいの目で彼女を見て、「何!?俺らの分もあんの?!」と大声ではしゃぎまわると、やはりサラは上品そうな笑みをうかべて「もちろん」というのだ。

「いや~、いいねぇ、こーゆー家庭的な妹vおいアリアもなんか作ってよ。」
「無理!あたしの技術うんぬんより家計の問題デス!」
「そりゃそうデス!」
「…どーしてこの二人が言うと暗い話題でも大した事なさそうに聞こえるのかしらね…?」

遠くに座っていたプリアラがため息をつきながら、彼らを一瞥した。と、サラは彼女の元へ歩み寄り、袋を手渡す―

「はい、プリアラさんには特別のv」
「あら?ありがと―」

プリアラは包みを開ける。その間ほかの者たちは嬉々としてクッキーに喰らいついていたのだが。周りを見ている限り、クッキーは美味しいようだ。無論教室中においしそうな甘い香りが充満している―が、プリアラの包みの中からは腐ったキノコととぐろを巻いたクリームシチューを混ぜ、その中に納豆を放り込んだようなにおいを放つ、紫色のクッキー?が入っていた。おまけに、メッセージ付きである。それにはこう書かれていた。「レオン君を取る泥棒猫はトムに振り回されて死んじゃえコノヤロゥv」

何かがプリアラの中で切れる音がした。サラはあいかわらず笑っている。が、黒いオーラを彼女へ発し、なにか火花のようなものが両者の間で散ったような気がした。

おもむろにプリアラは席をたつとヴァイスと話し込んでいるレオンに話しかける。突然の行動に困惑するサラを尻目に。

「レオン~、サラちゃんって本当に料理上手なのね!せっかくの特別製をいただいちゃったことだし、あなたにも分けてあげるわ。だからそれを寄越しなさい。」

満面の笑みでプリアラはサラから受け取ったクッキーを持ち、レオンに話しかけ、いや脅迫をしかける。ヴァイスとエルネストは何か危険な空気を察したのだろうか、一歩引いてしまった。
アリアはなにやら生暖かい目線を彼らに送っていた。

「え?ぷ、プリアラ?!」
「私が食べさせてさえあげるわ。食べるわよね?あなたの妹の特別製。全部。食べるわよね?っていうか食べろ。」
「もも、もちろんー!?」

「…漢だぜ……まごうことなき漢だよ、レオンのヤツ…」
「ヴァイス、お前泣いてる…?」
「そりゃ泣くよ…いろんな意味で。」
「サラの言っていた害虫駆除ってコレか…」
「おいおい知ってたなら止めろよ?」
「いやぁ~…無理。」

幸いなことに、レオンが特別製クッキーを喰らうことはなかった。全てを解決し、ゼロに戻してくれる唯一無二の存在、学校のチャイムが鳴り響き、レインが教室に入ってきたのだ。

「オイこら席に着きなさいお前らー。今日は英音ありますからねー昨日死ぬ気で練習したレッチリが炸裂しますからねー。アレなんか生徒増えていませんか。」
「俺とレオンの妹だよ、センセー。ホラホラ、アリア、帰れ…ッ」
「先生ー、プリアラさんとサラさんが後ろでメンチ切りあってまーす。」
「ほっときなさい、怖すぎますからね。HRはとくに連絡することなし。後ろでメンチ切ってる青春少女たち以外は着替えてグランド集合。以上!」

結局その日からプリアラとサラとの恐ろしい戦いが始まるのであった。レオンの胃腸薬の量は日に日に増していったことは言うまでもない…


記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー