教室の朝は今日もすがすがしかった。
どちらかといえば都会にあるとはいえ、やや都心から外れた郊外の、小高い丘の上から見えるビルや遠くにある海がきらきら朝日に輝いているし、風は今日も歌うことをやめはしなかった。
どちらかといえば都会にあるとはいえ、やや都心から外れた郊外の、小高い丘の上から見えるビルや遠くにある海がきらきら朝日に輝いているし、風は今日も歌うことをやめはしなかった。
そんな朝日を眺めながら教室で、二人の男が一仕事終えた表情で腕を組んで外を見ていた。
ほのかに潮の香り漂う風に舞う青い長髪と黒い長髪。言うまでもなくエルネストとヴァイスだ。その両腕にはハンマーや釘、板や鋸がブラブラと揺れている。たった5つしかない机の上には無造作に糸やねじがばら撒かれ、二人が書いたのだろうか、何かの図面のようなものと、小難しい理論の書かれたメモなどが散らばっていた。
「ククッ、今回のはさすがにレインもひっかかんだろ。」
「そーですねー、楽しみです。後が怖いけど。」
「猛ダッシュで逃げりゃいーだろ。」
「そーですねー、楽しみです。後が怖いけど。」
「猛ダッシュで逃げりゃいーだろ。」
そう、彼らは早朝から悪戯の計画を実行していたのである。
まずはドアを開けた者は何の変化もない教室に何の疑いもなく入るだろう。ドアを開けるためには人は、かならず一度立ち止まり、引き戸を横へずらす。そして、次に踏み出される足が踏む位置は、必ずタイル2枚目から4枚目までの3枚四方のスペースであることは彼らの頭脳をもってすればたやすく計算できることだ。無論、その2枚目から4枚目までのタイルに細工をした。それら9つのタイルを一度切り取り、下の階の天上を割れやすいベニヤ板に変えてペンキを塗ってカモフラージュした後、切り取ったタイルを全て接着剤で厳重に接着する―そして、中央にあるタイルの真横から小さな穴を開け、ピアノ線を通す。通したピアノ線をタイルを取った場所につけておいた金具に取り付け、タイルをのせて仕掛けは完了。この仕掛けをつけたタイルを踏んだものは言うまでもなく、ニュートンの発見した重力という、地球が物体をひっぱる力により下の階層へ落ちる―もちろんベニヤなど大人の人間が落下してきた場合、しかもこの場合重力加速度の加速も手伝って―簡単に割れる。つまり、この仕掛けに引っかかったものは、下の階層へまっさかさま、というわけである。
だが、このような仕掛けごときだけでは、レインがひっかかるわけもあるまい。彼らはまだ先を読んでいた。
まずはドアを開けた者は何の変化もない教室に何の疑いもなく入るだろう。ドアを開けるためには人は、かならず一度立ち止まり、引き戸を横へずらす。そして、次に踏み出される足が踏む位置は、必ずタイル2枚目から4枚目までの3枚四方のスペースであることは彼らの頭脳をもってすればたやすく計算できることだ。無論、その2枚目から4枚目までのタイルに細工をした。それら9つのタイルを一度切り取り、下の階の天上を割れやすいベニヤ板に変えてペンキを塗ってカモフラージュした後、切り取ったタイルを全て接着剤で厳重に接着する―そして、中央にあるタイルの真横から小さな穴を開け、ピアノ線を通す。通したピアノ線をタイルを取った場所につけておいた金具に取り付け、タイルをのせて仕掛けは完了。この仕掛けをつけたタイルを踏んだものは言うまでもなく、ニュートンの発見した重力という、地球が物体をひっぱる力により下の階層へ落ちる―もちろんベニヤなど大人の人間が落下してきた場合、しかもこの場合重力加速度の加速も手伝って―簡単に割れる。つまり、この仕掛けに引っかかったものは、下の階層へまっさかさま、というわけである。
だが、このような仕掛けごときだけでは、レインがひっかかるわけもあるまい。彼らはまだ先を読んでいた。
仮に、彼がこの仕掛けタイルを踏んだとしても、鋭い直感のために気づくであろうからだ。そのときのために彼らは次の仕掛けを用意した。9枚タイルに片足を乗せたと想定した場合、次に重心が傾けられるのはスライド式のドアをまたぐ直前になっていた後ろ足である。レインの利き足は左。よって右足が後ろにあると予測される。また、レインの体重はおよそ64kgとされているので、重心を右足に向けた場合、力の比を1:9として計算して、かかる力の大きさは5760Nである。そこで彼らは5000N以上の力が4秒以上そこにとどまった場合頭上からタライが落下してくる仕掛けを作った。なんてことはない、重さに耐え切れずにつぶれていく、廊下のタイルの下にしかけられたゼリー状の物質が入った袋にとりつけたカッターが、廊下の柱の中に埋め込んだ糸を切り、天井の仕掛けを開いてタライを落としてくれるということだけだ。
まだ仕掛けはあるのだが、全てを語るにはあまりにも長すぎる。
というよりも、いい加減にしろという声すら聞こえてきそうである。とにかく、彼らはそのほかにもたくさんの仕掛けを用意して、ほくそ笑んでいた。
というよりも、いい加減にしろという声すら聞こえてきそうである。とにかく、彼らはそのほかにもたくさんの仕掛けを用意して、ほくそ笑んでいた。
―そのときだった。
廊下の遠くからなにやら騒がしい声が聞こえる。ガシャンというガラスの割れる音、金属を引きずるような音、そして感じの悪い言葉遣いの野次―
「この学校にこんな朝早くに暴れまわるやんちゃっこなんていたっけ?」
ヴァイスは首をかしげた。確かに、この学校にはそれなりに不良とされるものも多い。だが、その多くは大手を振って遅刻してくるために、こんな明朝に現れることは考えづらいのだ。
エルネストも不振がる。だが、けたたましい音はだんだんと、そしてまっすぐと3-Sの教室へと向かってくるのであった。
エルネストも不振がる。だが、けたたましい音はだんだんと、そしてまっすぐと3-Sの教室へと向かってくるのであった。
「…なー、ヴァイス。これってもしかしてこないだの…」
「あー…もしかしたら。」
「あー…もしかしたら。」
ヴァイスとエルネストは意味ありげに笑った。
「ジャマすんぞゴラアァ!」
「おーう、こんな朝早くから悪いね~、極悪高校のボス!」
「わざわざ俺たち以外いない時間に来てくれたのかィ?律儀な子ですねぇ。」
「テメェらボコんのにはちょうどいいからなァアア!」
「おーう、こんな朝早くから悪いね~、極悪高校のボス!」
「わざわざ俺たち以外いない時間に来てくれたのかィ?律儀な子ですねぇ。」
「テメェらボコんのにはちょうどいいからなァアア!」
鉄パイプを持った男たちが教室のドアを開き、二人へ近づこうとした。今にも殴りかかってきそうな雰囲気であるのだが、エルネストもヴァイスもまったく身構えてはいない。痺れを切らした男たちは鉄パイプを高く掲げて走りだす。が、あえなく罠にかかり、下の階層へと落ちていった。罠にかからなかった半分ほどの男たちはそれにさらに怒り、罵声を浴びせながら二人へかかっていこうとしたのだが、頭上から落ちてくるたらいにあっけなく強打されてしまっていた。
「て、テメェら卑怯だぞ!このタライの中に砂はいってんじゃねーか!下手したら死ぬじゃねーか!」
「うっせぇ!ケンカに卑怯なんてあるかっつーの。ていうかお前らもそーじゃねぇか。金属ぷらぷら振り回してんじゃねーよ、危ないだろーが。それになぁ、この罠だってお前らごときに使うもんじゃなかったんだよ。それは俺らの先公に食らわすはずだったの。弁償しやがれコノヤロー」
「お前いつか無自覚で殺人するぞ、オイィィィ!くそッ、覚えてろよてめぇら!いつかボコってやっからな!おい、帰んぞ!」
「ちくしょー!」
「うっせぇ!ケンカに卑怯なんてあるかっつーの。ていうかお前らもそーじゃねぇか。金属ぷらぷら振り回してんじゃねーよ、危ないだろーが。それになぁ、この罠だってお前らごときに使うもんじゃなかったんだよ。それは俺らの先公に食らわすはずだったの。弁償しやがれコノヤロー」
「お前いつか無自覚で殺人するぞ、オイィィィ!くそッ、覚えてろよてめぇら!いつかボコってやっからな!おい、帰んぞ!」
「ちくしょー!」
かくて、鉄パイプをもった男たちはすごすごと退散していったのだが、事態は非常に困ったことになる。当初の予定が狂い、罠が全て台無しになってしまったからだ。
「これじゃー、レインをひっかけるのは無理だよなー…」
「まぁ仕方ないって。てゆーか、極悪高校なんなわけ?なんでオレらのこと目の敵にするかねぇ~」
「乗り込むまでしなくてもいいよな、うん。かかってこいっていったの俺たちだった気もするけど違うような気もする。」
「仲間になれって言われたけどうっせぇよお前らが子分だろーがって言ったような気がするけど違うような気もする。」
「ふーん、やっぱりお前たちかアァァァァァ!」
「げッ!?レイン!?ちょ、なんで今日こんな早いの!」
「ハァー、3-Sでケンカ騒ぎを起こしたウジ虫野郎がいると聞いて仕事が増えたんですよ。ごくせん気取りか?お前らには無理さ。所詮赤西と亀梨にはなれねーんだよ。お前らには青虫とカメムシがお似合いさ。そんなわけでお前たち、今日一日いっぱいバツ掃除していやがれ、です。塵ひとつでも残したら次の日も掃除だかんな。」
「ハァァァ!?虐待ですかソレはぁぁ!」
「まぁ仕方ないって。てゆーか、極悪高校なんなわけ?なんでオレらのこと目の敵にするかねぇ~」
「乗り込むまでしなくてもいいよな、うん。かかってこいっていったの俺たちだった気もするけど違うような気もする。」
「仲間になれって言われたけどうっせぇよお前らが子分だろーがって言ったような気がするけど違うような気もする。」
「ふーん、やっぱりお前たちかアァァァァァ!」
「げッ!?レイン!?ちょ、なんで今日こんな早いの!」
「ハァー、3-Sでケンカ騒ぎを起こしたウジ虫野郎がいると聞いて仕事が増えたんですよ。ごくせん気取りか?お前らには無理さ。所詮赤西と亀梨にはなれねーんだよ。お前らには青虫とカメムシがお似合いさ。そんなわけでお前たち、今日一日いっぱいバツ掃除していやがれ、です。塵ひとつでも残したら次の日も掃除だかんな。」
「ハァァァ!?虐待ですかソレはぁぁ!」
かくて、朝のケンカ事件は一方的に二人が損をする形で幕を閉じたのであるが、彼らをボコボコにするべく乗り込んできた極悪高校の不良たちが一体何者であるのか、なぜ彼らをボコボコにしたいのかは、また次の話としよう…