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羽根あり道化師
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羽根あり道化師

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vice2rain

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校長室に3人が呼ばれてから一週間後、今度はヴァイスだけが呼び出された。
3人まとめて呼べば叱責などままならない。
自分の怒りが収まらないことと、彼らの今後が気になる気持ちとで校長は胃潰瘍になったのであるが、まだ教育をあきらめていないようである。立派だ。

「しつれいしまーっす」

そんな校長の心境など考えてすらいないヴァイスが呑気に片手をあげ、ノックもせずに校長室にずかずかと入り込んできたとき、やはり校長はがっくりとうなだれたのであった。

今校長の手元にはレインから借りた生徒の生活状況の資料がある。
ヴァイスのページを開いて、とりあえず彼の日頃の生活態度について叱るための材料を探し始めた。

学業―さすがSクラスに選抜されただけあって、非の打ちどころがない。ここでは悔しいが、しかることはできないと見た。いや、叱るべき個所はあるのだ。授業中起きていることはほとんどなく、起きていたとしてもエルネストと悪戯の下準備をしているか、内職にいそしんでいるかのどちらかだという。だが、与えられた質問にはすべて模範解答してしまうので、授業についていけなくなるぞという叱責は意味をなさない。よって怒ることもできない。ああ、たちが悪い―校長はため息をついた。

「…?」

何も言葉をかけられず、ただ溜息をついた校長の様子にヴァイスは首をかしげた。今日は手始めにどう出てくるだろう―少しわくわくしながら来たのであったが、予想以上に元気のない校長に期待を裏切られ困惑している。

「こーうちょーー?」
「…」

校長からまだ返事はない。校長は次に、出席状況を見てみた。
今のところ皆勤賞である。意外なことに遅刻もない。これは怒ることができない。
では、自分はなぜこの生徒を呼んだんだろう、一瞬校長が思考を誤る。いやいや、この生徒は成績こそいいが、素行が悪すぎる。でもその記録もない。なんと巧妙に悪いことをしているのか。

「あ!」
「?!」

ついに見つけた。ヴァイスの欠点を。
校長はフッと勝ち誇った笑みを浮かべ、後頭部に光を照らしつつゆっくりと立ち上がったのだった。唐突にあげられた声に一瞬肩を揺らしたヴァイスだったが、始まるか、と身構える。

「ヴァイス君!キミねぇ!ちょっと忘れ物が多いんじゃないの!先月なんてほとんど毎日忘れ物してるでしょ!どうしてこんなに忘れ物をするんだね!」

校長がすごい剣幕でまくしたてる。これは忘れ物をしたことに対して叱責をするというよりは、ようやくみつけた欠点を叩きたいというような印象を受けた。
しかし、こんなことではヴァイスは言葉に詰まったりもしない。なんだ、と軽く笑いながらこう返した。

「いやぁ、記憶からすっぽり抜けるから忘れ物じゃないですか。わざと持ってこなかったら忘れ物じゃないですって。忘れるから忘れるんです。忘れることに理由なんてない。」
「…」

やられた。校長はがっくりと肩を落とした。非の打ちどころのない回答だった。どうにかして反撃をしようと口を開きかけたとき、ヴァイスから追撃を食らう。

「まぁでも。今後気をつけるようにします。それくらいしか対処できませんね。ほかは?」
「…わかったよ。私の負けだ。ヴァイス君…もう帰りたまえ。」

涙目になっている校長をみてヴァイスはすこし良心が痛んだのだろう。ポケットからガムを一枚取り出して、校長のテーブルに置いた。そして未だ夕日を背負う校長の後頭部に背を向けてその場を去ったのだった。

「ちょっと悪いことしたかな~?」

ま、いっかと考えつつヴァイスは帰宅する。
だが、校長は完全に敗北したのではなく一時撤退しただけであったと気づくのはまだ先のことであった…



半分実話です。僕の。
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