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羽根あり道化師
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羽根あり道化師

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ayu

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ティアドロップ





ある所に小さな姉弟がありました。
姉のティアはあまり笑いませんでした。
弟のドロップは歩くことが出来ませんでした。

「ねぇお姉ちゃん」
「なぁにドロップ」
車椅子を押してもらいながら、ドロップはふと顔を上げました。
「サクラが咲いているよ」
「そうね」
ティアも足を止め、サクラを見上げました。
「キレイだね」
「でもソメイヨシノよ。徒花だわ」
ティアは無感動に言って、また歩を進めます。
「『あだばな』って?」
「実を結ばない花のことよ」
ドロップはふぅん、とつまらなさそうに呟きました。
「サクラ、キレイだよ」
「でも弱い花よ」
ドロップは退屈そうに俯きました。
「徒花は、キレイじゃない?」
「キレイよ。好きじゃないけど」
ティアは呟いて、ドロップの頭をくしゃくしゃと撫でました。
「どうして好きじゃないの?」
「弱いからよ」
ドロップは首を傾げます。
「それでも、サクラはキレイだよ」
「そうね」
そう言って、二人は家に帰りました。

サクラは、弱い花だ。
けれど、美しい花だ。
儚さと、寂しさと、悲しさと、憂いと、喜びを集めて創った花だ。
サクラは咲きました。
けれど、散りました。
まるで、全ては終わるためにあるのだとでも言うように。
ちらちらと、ちらちらと、まるで涙のように散っていきます。
精一杯の美しさを身にまとい、人々の心に憂いを残し、ひらひらと、ひらひらとまるで涙のように散っていきます。

「キレイだね」
ドロップは言いました。
「寂しいわ」
ティアは言いました。
「散る姿すらキレイだと思える花は、きっとサクラだけだね」
「散る姿がこんなに寂しく感じる花は、きっとサクラだけね」
ティアとドロップは顔を見合わせました。
「だけど、キレイよ」
「でも、寂しいよ」

サクラの木には、きっと魔法が掛かっているんだ。
儚さと、寂しさと、悲しさと、憂いと、喜びの魔法。
むかーしむかしのそのまた昔、きっとどこかの妖精が魔法を掛けたんだ。

『キレイなキレイな花よ咲け、儚い儚い花よ咲け、寂しい寂しい花よ咲け、悲しい悲しい花よ咲け、憂いを帯びた花よ咲け、喜びに満ちた花よ咲け』

そして最後に、こんな魔法も掛けただろう。

『優しい優しい花よ咲け』

サクラは優しい花だ。
だから、人々はサクラに思いを馳せる。
ふと立ち止まり、微かに笑う。
そして、散らないで欲しいと願う。
けれど、散る様を見てキレイだと思う。

『優しい優しい花よ咲け』

きっと、妖精は一滴の涙を流しただろう。
ティアとドロップはそう思って、ちょっとだけ、笑ったのでした。
ちょっとだけ、幸せになれたのでした。




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