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髪を洗っていたら
すごく近くからギターの音が聞こえたんですよ。
はじめは「ギターの幻聴が…。俺も末期だな…フッ。」とか悦に浸ってたんですよ。
だけどそのギタープレイは繊細かつ大胆で、とても魅力的でした。
「幻聴にしてはリアルな音だな」と思い。
頭を上げると、すぐ横におっさんが立ってギターを弾いているではないか。
家にいるのは母と父だけだ。
しかもここは風呂場。
アンプなどどこにもない。
しかもこのおっさん、故人となった有名なギタリストでもなんでもないらしい。
そこらへんにいる50代前半のおっさんと何ら変わりない風貌だ。
思考を巡らせる俺をよそに、そのおっさんはボロボロになったエレキギター一本でイカしたフレーズを弾きまくる。
俺は考えるのをやめた。
このおっさんが誰であろうと関係ない。
このおっさんが誰であるかなど、このギタープレイの前では何の意味も持たないのだ。
俺はただただおっさんの魂のサウンドに圧倒されるばかりだった。
気付けばおっさんの演奏は終わっていた。
俺はおっさんに向かって言った。
「こんな感動的なギターは初めてだ。」



おっさんはただ「ありがとう」とだけ言うとすーっと消えていった。



次の日風呂に入っていると、またおっさんが現れた。
そして前回同様、いやそれ以上のギターを聴かせてくれた。
俺はすぐにおっさんのサウンドの波に飲まれていった。
涙が流れた。
「おっさん…。本当にありがとう…。こんな綺麗な涙を流せたのはいつ以来だろうか…。おっさんのおかげだよ…。」
俺がそう言うと、おっさんは照れくさそうにしながら何も言わず消えていった。



おっさんは次の日もその次の日も風呂に現れては日々進化するギタープレイを聴かせてくれた。
だけどいい加減もう飽たので明日除霊してもらおうと思います。

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最終更新:2008年06月07日 00:40