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VIPロックマンまとめ
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VIPロックマンまとめ

ロックマンX -8-

最終更新:

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
233 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:21:27.13 ID:KuQRxfiH0
「ゼ………ロ………?」
身体中に痛みが走る。
高密度の爆撃から、どのぐらい経ったのか。あんなにも青かった空は赤みを帯びてきていた。

青いボディの周りには、イレギュラーやハンターであった物が所狭しと転がる。
エックスにもウツボロスであったと云う残骸が乗り掛かっていた。
「起きましたのDEATHか? 愚かな、弱小レプリロイド」

ゆっくりと痛む体を起こすエックスに、痛烈な言葉がかけられる。
「ボスには悪い事しましたのですよ? でも、しょうがないのですよね」
偽りの優しい声色。

声の発生場所に振り向くエックスが見たのは、
「――私の前で、人間を守るなんて言うのだからなぁ!」
耳まで裂けるかと思う程の笑みを浮かべたオクトパルドと、彼女の触手に拘束され吊り上げられるゼロの姿だった。

「………ゼロ!?」
エックスが驚きのあまり、身体の痛みなど忘れて身を乗り出す。しかし、直ぐに甲板に崩れ落ちた。
赤き触手が、ゼロの肢体をまさぐる。爆撃のせいか、少女のせいか、衣類は取り払われていた。
空中で、オクトパルドの『手』が小さな乳房を引き絞り、露になった秘部を無遠慮にかき回した

「あなた達の末路なんて、こんなモノなのですよ。人間に尽くすレプリロイドに、相応しくねぇ!」
「う………く………」
秘芯を擦り上げられ、意識を失いながらも、頬を赤らめ呻くゼロ。

「ゼロを離せ!!」
瞳に殺意をたたえ、倒れ伏すエックスが叫ぶ。
しかし、オクトパルドは陵辱を止めず、目下で無様にもがく青い少年を笑った。

238 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:25:53.54 ID:KuQRxfiH0
「エックス。お前は人間はおろか、一人のレプリロイドですら守れない」
壊れたように笑い続けるベレー帽の少女。
その少女に備えられた‘牙’の三本が、ゼロを辱めるのを止め、エックスに銃口を向ける。

「ふふふふ………私と同じですね――違いは、馬鹿か、そうでないかだ!!」
触手の銃口が瞬き、白色のミサイルが嬉々として飛び出す。

「そろそろ、死ね!!」
煙を上げて急襲する凶器がエックスに迫る。
向かう死と、ゼロを捕らえられたという絶望に、エックスは目を閉じた。

爆発は三度。
どれらも到達される前に、グリーンのエネルギー弾で撃ち抜かれた。

「イレギュラー!!」
生き残っていたのか、エックス等に声をかけた、黒きハンターが膝をつきながら硝煙が漂う銃を持つ。
「貴様……!」
処刑の邪魔にオクトパルドは憤慨し、ゼロをデッキの端へ吹き飛ばす。少女の身体は海へと消えた。
そして、ハンターに全ての銃口を向け、ホーミングトーピードを放つ。
追尾するミサイルはハンター付近を爆撃し、漆黒のボディは海へと投げ出された。

ボディの認識証がエックスの足元に飛ぶ。金色のマーカーには『マック』と表記されていた。

「はっはぁ!! ゴミめ!!」
ゴミと呼ばれたハンター。
しかし、彼女が命がけで作り出した隙は大きい。エックスはそれを有り難く使う。

「オクトパルド!!」
損傷を無視、敵を視認、この戦闘に集中。
エックスは憎悪をバスターにこめた。

240 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:28:33.30 ID:KuQRxfiH0
<プログラム変更>

触手を纏う少女――ランチャー・オクトパルドにチャージショットを放つ。
彼女はコートをはためかせながら跳躍。足元を通過するエネルギーに侮蔑の笑みを送る。

「さぁ、お前の番だ!! 遠慮なく逝け!!」
宙を舞うオクトパルドが、触手を操作。六本から大量のミサイルが放出される。
エックスは落ち着いてバスターを再チャージする。
広がる弾幕。

「愚かなのは、あなたの方だ!!」
右腕から飛び出す、太陽の怒り。
数十発のミサイルを飲み込みながら、オクトパルドに向かう。

――交差する生き残った数発のホーミングトーピードと、チャージショット。

オクトパルドは着地と同時に身体を旋回し、コートの端を焼き切られながら回避。
エックスも連続して射撃して、全て撃墜してみせた。

「どこがだ!? 私のどこが間違っている!? 何故、レプリロイドより弱い人間達を守らねばならない!?」
辺りを爆撃しつつ、その煙幕でエックスに迫るオクトパルド。

「レプリロイドより優先される人間の命――おかしいとは思わないか!!」
メットに衝撃。
少女の拳が、頭部を穿った。――倒れこむ身体が吹き飛ぶ。
オクトパルドはその場で回転し、鋭い蹴りを繰り出していた。

「そう、おかしくはない………!! だから、死ね!!」
今度は完全に倒れたエックスに、ホーミングトーピードが追い討ちする。
爆発に翻弄され、何度も甲板に叩きつけられる青いボディ。

245 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:33:50.51 ID:KuQRxfiH0
――本部と同じく、極地部隊の隊員と同じく、人間だ
――人間だが、私は君の味方だよ

自分より小さな背の少女がそう言った。
人間に絶望しかけた少年に、涙をためながらそう言った。
人間は、全てが悪なのだろうか?

「違う………!! やっぱり、あなたはおかしい!!」
バラバラになりそうな身体を横転させ、ミサイルの地獄から抜け出す。
「――人間は……。人間は、みんながみんな悪い奴じゃないんです!!」
バスターを急速チャージ。
そして、すぐさま放つ。

「馬鹿が!! 夢を見ながら、死ね!!」
オクトパルドは笑いを帯びた罵声を吐き、悠然とそれを避けた。
船自体を揺るがす轟音。
雨のようにデッキに降りそそぐ破片と粉塵。

エックスは驚愕し、オクトパルドは慌てて後方を振り向く。
大きな赤の柱に貫通痕。――バスターは船の巨大な煙突に着弾していた。
「ぐっ………!」
「なっ………!!」
その柱が、自身の巨体を甲板に向け唸りをあげながら降って来た。

もう一度轟音。
それは先ほどのよりも遥かに大きく、そして全てを押し潰す。

「な、何故………なのですよ?」
デッキを縦断する巨体。
二人のレプリロイドは奇跡的に生き残っていた。

248 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:37:52.94 ID:KuQRxfiH0
「エックス……」
赤い破片で腹部を真っ赤に染めた少年に、オクトパルドは問うた。真横には煙突の巨体。
エックスは衝突寸前で走りこみ、オクトパルドを抱え跳んだのだ。

「……人間は、悪い奴ばかりじゃないんです。良い人だって居ます……」
打ち倒れ、傷口を押さえた。吐血しながらエックスは混乱する少女に語りかける。
くだらない話だろうかと鼻を鳴らし、それを耳に入れながら、オクトパルドは自分の損害を確認した。

「……悲しいでしょう?」
損傷を確認する手が止まる。
オクトパルドにとって意外な言葉だった。

「心が温くて、優しい言葉をかけられて、差別をしない人間――そんな人を知らないまま死ぬなんて」
エックスの顔は自分がそうなのかのように悲哀に満ちていた。
オクトパルドの瞳が何かに揺れる。
「僕は人間の嫌な所を知ってます。汚い所も」
悲しい声。アイシー・ペンギーゴは何故あんな目にあったのだろうか。

「――でも、好きなんです人間が。この世界には、必ず良い人間が居るから」
「……………良い……人間………」
重症を負いながらも、決意が篭められた瞳にオクトパルドは吸い込まれた。

「だから守りたい。こんな馬鹿げた事件から。人間を、そしてレプリロイドも――悲しい貴方も」
エックスは見下ろしてくる少女を見つめる。
「……馬鹿………なんでしょうか……? 最終的な結論は、まだ出てないんですが……」
最後に苦く微笑み、エックスはオクトパルドに手を差し出した。

「だから、一緒にそんな人間を一人でも多く探してみませんか?」
震える少女の身体。華奢な手のひらと、自分の手を見比べ、オクトパルドは沈黙する。
上から轟音。

251 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:44:15.04 ID:KuQRxfiH0
「ありがとう、エックス。それは美しい戦略ですね」
オクトパルドは微笑み、手を優しく握る。そして空を仰ぎ、何かに気づいた。
「オクトパルドさん……」
少女は素早く損傷部分を確認。右脚部は完全に破損――回避は出来ない。二人とも。

「だけど、駄目みたいなのですね」
上から轟音。
オクトパルドは再度微笑む。今まで一番、優しい笑顔だった。

「ふふっ。もう少し早く、あなたに会いたかった……」
上から轟音。貫通した煙突がもたらした被害は、大きかったのだ。
――その後ろにあるもう一つの煙突の取り付けを、致命的に揺るがすぐらいに。
「生きて………あなたのすべき事を成し遂げるのです。私はそれにかけますのですよ」
「オクトパルドさん……?」
細い腕がベレー帽にかけられ、それを取る。赤い帽子はエックスに被せられた。

「さよならエックス。途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……?」
涙を溜めながら笑みを送り、そしてミサイルを放つ。

――衝撃と爆発はエックスを船外に吹き飛ばした。

「――オクトパルドさん!?」
海へと叩き出されたエックスはデッキに、もう一つの赤い巨体が落ちようとしてるのを見た。
二度目の落下は甲板の全てを、今度こそ押しつぶす。
「そんな……そんな!! オクトパルドさん!! そんな!!」
真っ赤な夕日に照らされる旅船は衝撃に耐えられず、沈みかけようとする。
腹部の事は気にせず、エックスは船に向かって泳いだ。
とうとう海中にけたたましい音をたてて瓦解し、沈没する船。

沈没の衝撃破によって形成された波が、泳ぐエックスを無情に飲み込んだ。


568 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 22:59:22.91 ID:1kCBjzAl0

暗転、回復、暗転、回復。
叩きつけるような波は、生まれ、崩れるのを繰り返す。

エックスは、旅船の爆発から発せられた波に流された。
海面に出たと思えば、海中に飲み込まれ、意識もそれに合わせて明滅する。

――ここはどこか?
――ゼロはどこだ?
――自分はどうなる?
頭の中で様々な思いが、波と同じように暴れる。
巨大な箱舟は小爆発を繰り返しながら、沈み、そして海面を荒らした。

暗転。




「くぅ………」
次に蒼穹色のボディが現れたのは、真っ白な砂の世界だった。
波の音に、意識を目覚めさせたエックスは、辺りを見回す。どこかの海岸――砂浜だった。
立ち上がりながら、揺れる視界と思考を整える。

「………ここは? ……どこなの……」
そして、呻きの次は、疑問が口から漏れた。
答えは誰からも与えられない。付近には少年以外いないようだ。
「――ゼロは!?」
その場で、答えを探している内に、重大な事に気づいた。



571 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:01:50.80 ID:1kCBjzAl0

赤き少女――ゼロの姿が見当たらない。エックスは、真っ青になった。
彼女は、オクトパルドに嬲り者にされてから、海中に放り出されたはずだ。

「ゼロ!? ゼロ!? どこなの、ゼロ!!」
少女の消失から、顔を青から白に転じ、エックスは彼女を呼びかけながら探す。
ふらつく身体に鞭打ち、砂浜を駆けるがゼロの姿は見当たらない。

焦燥感に口元を歪ませる少年の顔に、蔭り。
まるで野鳥が大量に羽ばたいた様な音を奏でる、回転翼がエックスの頭上に迫る。
「ハンター………」
お馴染みのハチ型ヘリが、高度を落とし、砂浜に着陸する。

「ご無事でしたか」
大量生産される型番のボディを纏ったハンターが、白い大地を踏みしめた。
その一人が、こちらを見るエックスに、片手をあげて挨拶する。

「あなた方が乗船なさった旅船のシグナルをロストしまして、緊急に、我々が救出に向かいました」
青き少年に、タオルと鎮痛剤が混入されたカンフルを渡しながら、説明する。

他のハンターは、てきぱきと極地基地のように、簡易待機所を作ってゆく。
説明するハンターの声と波だけが、この砂浜の静けさの〝異端〟だった。

「ここまで流されるとは………おい、マックの捜索も範囲を広げろ!」
右手に持った端末で位置を確認しながら、後続のハンター達に命を出す。

「あの、ゼロは見てますか? 一緒に……では、ないのだけど、流されてしまったんです」
エックスは自分の憂慮をハンターに手渡す。


572 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:03:28.66 ID:1kCBjzAl0

「あ、はい。彼女なら、先に本部に搬送されています」
「本当ですか!?」
応えは、少年を大変安堵させるものだった。
エックスの顔が喜色に満ち、緊張からの脱却からか、砂浜にへたり込んだ。

「えぇ、ただ損傷の関係で、直ぐにでも治療を受けないと危険な状況らしいですが」
安心は、続けるハンターの言葉で無惨に打ち砕かれる。
自分の意ではなく、顔色がころころと変わるエックス。

「心配でしょう。直ぐにでも本部まで、お送りします。ケイン博士も話があるそうです」
うな垂れる中性的な顔立ちの少年に、ハンターは手を差し伸べ、ヘリを指差す。
地に足をつけるヘリは、再度ローターを回転させた。
散乱する砂。局地的な小さな砂嵐。

迫り来る砂に目を開閉しながら、エックスは頷いた。




「ご苦労だった」
帰還の労いは短い。
いつもは、幹部の画像を映した浮遊ディスプレイが無く、会議室は非常に静かだった。
簡素な部屋で、二人。
Dr.ケインとエックスは、数メートル離れて対峙する。

円卓の真ん中に座るケインは、冷徹な瞳で、前方に立つ少年を見つめた。
イレギュラー事件発生の時とは、大きく違う印象を受ける。

力強さと――憎悪。



574 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:05:52.72 ID:1kCBjzAl0


「私から話そうか、それとも君から話すか。私はどちらでも」
自分の皺の寄った顔を、見つめるではなく、睨む少年に問いかける。声はどこまでも冷たい。
「あなたから」
何かの意思を掴んだ光を宿す瞳を、臆す事なくケインにぶつけるエックスが答える。

老人は頷く。
「最初に話すべきことは、情報部の事。――何故、君達に隠し事をするか。何故、協力しないか」
ケインは一拍置く。
「それは、この事件が〝極めてイレギュラー〟な事にあるのだ」
机の上の指がせわしなく動く、常に冷静な老体は何かに焦っていた。

「ハンター本部が取り扱う事件、この世界で起こる事件で、あってはならない事が一つだけ存在する」
焦りは末端部分だけに、顔には出さない。

「レプリロイドが、バグや事故での暴走ではなく、〝自分の意思で事件を引き起こす〟事だ」

「しかも、今回はハンターの職員とくる」
エックスは沈黙する。

アイシー・ペンギーゴ。
ストーム・イーグリード。
ランチャー・オクトパルド。
彼女達は様々な思惑で、暴走と言う道を選び、エックスの前で朽ちた。

「それは、イレギュラーと戦ってきて解りました――それが、釈明ですか?」
らしくない冷たい言葉の刃が、ケインを突き刺す。


575 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/10/18(水) 23:07:15.80 ID:yWQxajs80




576 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:07:36.38 ID:1kCBjzAl0

「我々は驕っていた。自分等の力で、今回も解決できると」
聞いているのか、いないのか。
ケインは天井を仰ぎ、目を瞑った。何かへと追憶しているようだ。

「第17精鋭部隊隊長――シグマがこの事件の首謀者だ」
そして唐突に、驚愕の事実をエックスに渡す。

「なっ………!? 隊長が!? そんな、馬鹿な!!」
「本当だ。こんなスキャンダルを嘘や冗談では言わない。――もともと、冗談を私は言わないが」
驚く少年に、首を振り、ケインはその事実を肯定する。
エックスはとても信じられなかった。

――焦るな、エックス。お前になら出来る

「暴走した謎のイレギュラーを彼女が、鎮圧したのは知っているか?」
ケインが言葉を続け、新たな質問を作った。
少年は、怪訝な顔をしながら、頷く。自分はその討伐には参加していなかった。

「シグマは、そこからおかしくなった――らしい。原因は不明。三週間前の話だ」
忌まわしき過去を掘り起こし、全てを優しき心を持ったレプリロイドに見せる。
身を切られる思いで、ケインは打ち明け続けた。

「それで情報部は………」
敵として、現れた同僚の言葉を思い出す。
――ある計画が、あるある奴に聞いた
――緑のボディスーツを着たレプリロイド
――ボスの命令だ
――君は強くならなければ、ならないらしい

全ては、自分の上司の残滓だったのだ。



578 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:10:53.95 ID:1kCBjzAl0


「だが、それもお終いだ。本部も暴走したのだから――」
腐敗した事実。

「……………………は?」
腐った現実は、エックスの耳にすんなりと入らなかった。

「君は、聞きたい事があるのだろう。…………本部は、彼女達に何をしたか」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。

「おかしくなった、原因は不明と言っただろう。だが、それを〝どうやって〟調査したと思うかね」
ケインが、初めて感情を顔に出した。

――大きな絶望。

「そんな………まさか……………」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。

――少女のレプリロイドは何故、

「レプリロイドに、多大な不安や、精神的な圧迫をかけ、シグマと同じく〝壊れた〟精神を分析したのだ」

――イレギュラーとなったのだろう。




579 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:12:18.31 ID:1kCBjzAl0

「それを今回の事件に役立たせようとした。――だが結果は、最悪だ!!」
ケインの怒号。
珍しい光景だが、エックスの目には入らない。

「シグマの作戦に便乗した奴も居るが、この事件の半分のイレギュラーは〝私達〟が作り出したのだ!!」

――絶対たる悪が、彼女達をそそのかしたのでは、なかったのか

――そうであれば話が早い。
――そうであれば解りやすかった。
――そうであれば、このバスターを遠慮なく撃てただろう。

「うぉおおおおお!!」
間合いは一瞬にして無に。
獣の咆哮と一緒くたに、ケインの顔に向け、エックスの拳が突き入れられた。

吹き飛ぶ老体。

「許してくれなど………言わない。本部は必死だったのだ。――世界平和という目標に」
憤慨などせず、ケインは唇から血を流しながらも、弁解した。
荒い息を吐くエックス。

「増大するレプリロイドの件で、本部は世界平和と言う単語に過敏になっていた」
世界平和。単語自体は素晴らしい。

「レプリロイドの意思で事件を引き起こす………決して許されない事だったのだろう」
だが、その言葉の中身はどうだろうか。

「シグマで終わらせようとした事が、こんな裏目に出るとは、彼等も思わなかっただろう………」
しかし、事件は起きた。


580 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:15:52.95 ID:1kCBjzAl0


「私は止めた。止めたが、ハンターは〝訓練Σ〟と言うお題目で、調査を開始してしまった」
アイシー・ペンギーゴ。
それ以外は知らないが、他のレプリロイドの心にも、そんな影があるのだろう。

訓練Σでは無く、仲間意識の狭間で狂気を選んでしまった、優しきイーグリードという存在も居た。

「その調査で彼女達はイレギュラーになった。本部も彼女達も止められなかった…………すまない」
後悔。

「チップは………そうか、情報部の隠蔽…………」
少年が気づいた、下らない事実。

「確かに滅びるべきだな、人間は。レプリロイドのための世界――悪くない」
自嘲しながら、絶望の答え。




「ふざけるな」
だが、エックスはそれを一言で砕いた。

本当にそんな世界が望まれるべきなのだろうか。
ペンギーゴの最期の言葉。
ゼロとイーグリードの友情。それを持っていたのは、最初は人間ではなかったのではないのか。

――途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……?

オクトパルドが持った希望。



582 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:18:09.78 ID:1kCBjzAl0


「答えを勝手に出さないで下さい」
純粋な怒り。

「あなた方のやった事は、最低だ。でも、世界中の人間がその罪を背負う必要は無い」
平和を望み続ける心優しいレプリロイドの怒り。

「ハンター本部が、世界平和に焦ったように、隊長もまた〝何か〟に焦ってしまったのでしょう」
俯いていたケインが顔を上げる。

「おそらく、レプリロイドの自由と平和に。その代弁者という重荷に」
二人の瞳がやりきれない思いに、揺れた。

「僕なら解ります。隊長が何故、壊れてしまったのか………」
レプリロイドの述懐。

「僕だって、時々思う――どうして人間はこんなにも傲慢なのか、どうしてレプリロイドを見下すのか」
レプリロイドとして生まれた身の不満。

「でも、人間を守りたいという意思も存在する」
レプリロイドとして生まれた身の思い。
ライト。そして、この世界に必ず存在する優しい人間。


「その二つが、イレギュラー討伐でおかしくなってしまったのでしょう」


「討伐後のシグマは重症だった…………過度の恐怖による〝事故〟………」
調査は無意味だった。


583 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:20:01.25 ID:1kCBjzAl0

「馬鹿だ………私達は………。私達は、何故あんな惨い事を…………」
もう、戻れない。

「報いは、博士自身が考えてください。僕には決める権利が無い」
仲間を殺してしまった自分には、と言葉を続け、かかる多大な疲れに、手で顔を覆った。

――同じくして、二人は、もう戻れない所に立っているのだ。

「殴ってしまって、すいません………」
エックスは、拳に目を落とし、困ったような顔をする。

「僕は、僕の〝報い〟を受けようと思います……」
この事件は終わりにしなければ、ならない。
それが使命。

「すまない………。本当は私も手伝うべきなのだがな」
自分の年季のいった身体を見下ろし、ケインは頭を下げた。

エックスが首を振り、会議室の扉に向かう。
茶色のドアを開き、廊下に出ようとしたところで、声がかかった。



「娘を頼む……………。あの子の悪夢を終わらしてやってくれ」
最後に、ケインが何故自分に打ち明け、こんなにも悲嘆にくれていたのか、やっと解った。

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