233 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:21:27.13 ID:KuQRxfiH0
「ゼ………ロ………?」
身体中に痛みが走る。
高密度の爆撃から、どのぐらい経ったのか。あんなにも青かった空は赤みを帯びてきていた。
「ゼ………ロ………?」
身体中に痛みが走る。
高密度の爆撃から、どのぐらい経ったのか。あんなにも青かった空は赤みを帯びてきていた。
青いボディの周りには、イレギュラーやハンターであった物が所狭しと転がる。
エックスにもウツボロスであったと云う残骸が乗り掛かっていた。
「起きましたのDEATHか? 愚かな、弱小レプリロイド」
エックスにもウツボロスであったと云う残骸が乗り掛かっていた。
「起きましたのDEATHか? 愚かな、弱小レプリロイド」
ゆっくりと痛む体を起こすエックスに、痛烈な言葉がかけられる。
「ボスには悪い事しましたのですよ? でも、しょうがないのですよね」
偽りの優しい声色。
「ボスには悪い事しましたのですよ? でも、しょうがないのですよね」
偽りの優しい声色。
声の発生場所に振り向くエックスが見たのは、
「――私の前で、人間を守るなんて言うのだからなぁ!」
耳まで裂けるかと思う程の笑みを浮かべたオクトパルドと、彼女の触手に拘束され吊り上げられるゼロの姿だった。
「――私の前で、人間を守るなんて言うのだからなぁ!」
耳まで裂けるかと思う程の笑みを浮かべたオクトパルドと、彼女の触手に拘束され吊り上げられるゼロの姿だった。
「………ゼロ!?」
エックスが驚きのあまり、身体の痛みなど忘れて身を乗り出す。しかし、直ぐに甲板に崩れ落ちた。
赤き触手が、ゼロの肢体をまさぐる。爆撃のせいか、少女のせいか、衣類は取り払われていた。
空中で、オクトパルドの『手』が小さな乳房を引き絞り、露になった秘部を無遠慮にかき回した
エックスが驚きのあまり、身体の痛みなど忘れて身を乗り出す。しかし、直ぐに甲板に崩れ落ちた。
赤き触手が、ゼロの肢体をまさぐる。爆撃のせいか、少女のせいか、衣類は取り払われていた。
空中で、オクトパルドの『手』が小さな乳房を引き絞り、露になった秘部を無遠慮にかき回した
「あなた達の末路なんて、こんなモノなのですよ。人間に尽くすレプリロイドに、相応しくねぇ!」
「う………く………」
秘芯を擦り上げられ、意識を失いながらも、頬を赤らめ呻くゼロ。
「う………く………」
秘芯を擦り上げられ、意識を失いながらも、頬を赤らめ呻くゼロ。
「ゼロを離せ!!」
瞳に殺意をたたえ、倒れ伏すエックスが叫ぶ。
しかし、オクトパルドは陵辱を止めず、目下で無様にもがく青い少年を笑った。
瞳に殺意をたたえ、倒れ伏すエックスが叫ぶ。
しかし、オクトパルドは陵辱を止めず、目下で無様にもがく青い少年を笑った。
238 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:25:53.54 ID:KuQRxfiH0
「エックス。お前は人間はおろか、一人のレプリロイドですら守れない」
壊れたように笑い続けるベレー帽の少女。
その少女に備えられた‘牙’の三本が、ゼロを辱めるのを止め、エックスに銃口を向ける。
「エックス。お前は人間はおろか、一人のレプリロイドですら守れない」
壊れたように笑い続けるベレー帽の少女。
その少女に備えられた‘牙’の三本が、ゼロを辱めるのを止め、エックスに銃口を向ける。
「ふふふふ………私と同じですね――違いは、馬鹿か、そうでないかだ!!」
触手の銃口が瞬き、白色のミサイルが嬉々として飛び出す。
触手の銃口が瞬き、白色のミサイルが嬉々として飛び出す。
「そろそろ、死ね!!」
煙を上げて急襲する凶器がエックスに迫る。
向かう死と、ゼロを捕らえられたという絶望に、エックスは目を閉じた。
煙を上げて急襲する凶器がエックスに迫る。
向かう死と、ゼロを捕らえられたという絶望に、エックスは目を閉じた。
爆発は三度。
どれらも到達される前に、グリーンのエネルギー弾で撃ち抜かれた。
どれらも到達される前に、グリーンのエネルギー弾で撃ち抜かれた。
「イレギュラー!!」
生き残っていたのか、エックス等に声をかけた、黒きハンターが膝をつきながら硝煙が漂う銃を持つ。
「貴様……!」
処刑の邪魔にオクトパルドは憤慨し、ゼロをデッキの端へ吹き飛ばす。少女の身体は海へと消えた。
そして、ハンターに全ての銃口を向け、ホーミングトーピードを放つ。
追尾するミサイルはハンター付近を爆撃し、漆黒のボディは海へと投げ出された。
生き残っていたのか、エックス等に声をかけた、黒きハンターが膝をつきながら硝煙が漂う銃を持つ。
「貴様……!」
処刑の邪魔にオクトパルドは憤慨し、ゼロをデッキの端へ吹き飛ばす。少女の身体は海へと消えた。
そして、ハンターに全ての銃口を向け、ホーミングトーピードを放つ。
追尾するミサイルはハンター付近を爆撃し、漆黒のボディは海へと投げ出された。
ボディの認識証がエックスの足元に飛ぶ。金色のマーカーには『マック』と表記されていた。
「はっはぁ!! ゴミめ!!」
ゴミと呼ばれたハンター。
しかし、彼女が命がけで作り出した隙は大きい。エックスはそれを有り難く使う。
ゴミと呼ばれたハンター。
しかし、彼女が命がけで作り出した隙は大きい。エックスはそれを有り難く使う。
「オクトパルド!!」
損傷を無視、敵を視認、この戦闘に集中。
エックスは憎悪をバスターにこめた。
損傷を無視、敵を視認、この戦闘に集中。
エックスは憎悪をバスターにこめた。
240 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:28:33.30 ID:KuQRxfiH0
<プログラム変更>
<プログラム変更>
触手を纏う少女――ランチャー・オクトパルドにチャージショットを放つ。
彼女はコートをはためかせながら跳躍。足元を通過するエネルギーに侮蔑の笑みを送る。
彼女はコートをはためかせながら跳躍。足元を通過するエネルギーに侮蔑の笑みを送る。
「さぁ、お前の番だ!! 遠慮なく逝け!!」
宙を舞うオクトパルドが、触手を操作。六本から大量のミサイルが放出される。
エックスは落ち着いてバスターを再チャージする。
広がる弾幕。
宙を舞うオクトパルドが、触手を操作。六本から大量のミサイルが放出される。
エックスは落ち着いてバスターを再チャージする。
広がる弾幕。
「愚かなのは、あなたの方だ!!」
右腕から飛び出す、太陽の怒り。
数十発のミサイルを飲み込みながら、オクトパルドに向かう。
右腕から飛び出す、太陽の怒り。
数十発のミサイルを飲み込みながら、オクトパルドに向かう。
――交差する生き残った数発のホーミングトーピードと、チャージショット。
オクトパルドは着地と同時に身体を旋回し、コートの端を焼き切られながら回避。
エックスも連続して射撃して、全て撃墜してみせた。
エックスも連続して射撃して、全て撃墜してみせた。
「どこがだ!? 私のどこが間違っている!? 何故、レプリロイドより弱い人間達を守らねばならない!?」
辺りを爆撃しつつ、その煙幕でエックスに迫るオクトパルド。
辺りを爆撃しつつ、その煙幕でエックスに迫るオクトパルド。
「レプリロイドより優先される人間の命――おかしいとは思わないか!!」
メットに衝撃。
少女の拳が、頭部を穿った。――倒れこむ身体が吹き飛ぶ。
オクトパルドはその場で回転し、鋭い蹴りを繰り出していた。
メットに衝撃。
少女の拳が、頭部を穿った。――倒れこむ身体が吹き飛ぶ。
オクトパルドはその場で回転し、鋭い蹴りを繰り出していた。
「そう、おかしくはない………!! だから、死ね!!」
今度は完全に倒れたエックスに、ホーミングトーピードが追い討ちする。
爆発に翻弄され、何度も甲板に叩きつけられる青いボディ。
今度は完全に倒れたエックスに、ホーミングトーピードが追い討ちする。
爆発に翻弄され、何度も甲板に叩きつけられる青いボディ。
245 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:33:50.51 ID:KuQRxfiH0
――本部と同じく、極地部隊の隊員と同じく、人間だ
――人間だが、私は君の味方だよ
――本部と同じく、極地部隊の隊員と同じく、人間だ
――人間だが、私は君の味方だよ
自分より小さな背の少女がそう言った。
人間に絶望しかけた少年に、涙をためながらそう言った。
人間は、全てが悪なのだろうか?
人間に絶望しかけた少年に、涙をためながらそう言った。
人間は、全てが悪なのだろうか?
「違う………!! やっぱり、あなたはおかしい!!」
バラバラになりそうな身体を横転させ、ミサイルの地獄から抜け出す。
「――人間は……。人間は、みんながみんな悪い奴じゃないんです!!」
バスターを急速チャージ。
そして、すぐさま放つ。
バラバラになりそうな身体を横転させ、ミサイルの地獄から抜け出す。
「――人間は……。人間は、みんながみんな悪い奴じゃないんです!!」
バスターを急速チャージ。
そして、すぐさま放つ。
「馬鹿が!! 夢を見ながら、死ね!!」
オクトパルドは笑いを帯びた罵声を吐き、悠然とそれを避けた。
船自体を揺るがす轟音。
雨のようにデッキに降りそそぐ破片と粉塵。
オクトパルドは笑いを帯びた罵声を吐き、悠然とそれを避けた。
船自体を揺るがす轟音。
雨のようにデッキに降りそそぐ破片と粉塵。
エックスは驚愕し、オクトパルドは慌てて後方を振り向く。
大きな赤の柱に貫通痕。――バスターは船の巨大な煙突に着弾していた。
「ぐっ………!」
「なっ………!!」
その柱が、自身の巨体を甲板に向け唸りをあげながら降って来た。
大きな赤の柱に貫通痕。――バスターは船の巨大な煙突に着弾していた。
「ぐっ………!」
「なっ………!!」
その柱が、自身の巨体を甲板に向け唸りをあげながら降って来た。
もう一度轟音。
それは先ほどのよりも遥かに大きく、そして全てを押し潰す。
それは先ほどのよりも遥かに大きく、そして全てを押し潰す。
「な、何故………なのですよ?」
デッキを縦断する巨体。
二人のレプリロイドは奇跡的に生き残っていた。
デッキを縦断する巨体。
二人のレプリロイドは奇跡的に生き残っていた。
248 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:37:52.94 ID:KuQRxfiH0
「エックス……」
赤い破片で腹部を真っ赤に染めた少年に、オクトパルドは問うた。真横には煙突の巨体。
エックスは衝突寸前で走りこみ、オクトパルドを抱え跳んだのだ。
「エックス……」
赤い破片で腹部を真っ赤に染めた少年に、オクトパルドは問うた。真横には煙突の巨体。
エックスは衝突寸前で走りこみ、オクトパルドを抱え跳んだのだ。
「……人間は、悪い奴ばかりじゃないんです。良い人だって居ます……」
打ち倒れ、傷口を押さえた。吐血しながらエックスは混乱する少女に語りかける。
くだらない話だろうかと鼻を鳴らし、それを耳に入れながら、オクトパルドは自分の損害を確認した。
打ち倒れ、傷口を押さえた。吐血しながらエックスは混乱する少女に語りかける。
くだらない話だろうかと鼻を鳴らし、それを耳に入れながら、オクトパルドは自分の損害を確認した。
「……悲しいでしょう?」
損傷を確認する手が止まる。
オクトパルドにとって意外な言葉だった。
損傷を確認する手が止まる。
オクトパルドにとって意外な言葉だった。
「心が温くて、優しい言葉をかけられて、差別をしない人間――そんな人を知らないまま死ぬなんて」
エックスの顔は自分がそうなのかのように悲哀に満ちていた。
オクトパルドの瞳が何かに揺れる。
「僕は人間の嫌な所を知ってます。汚い所も」
悲しい声。アイシー・ペンギーゴは何故あんな目にあったのだろうか。
エックスの顔は自分がそうなのかのように悲哀に満ちていた。
オクトパルドの瞳が何かに揺れる。
「僕は人間の嫌な所を知ってます。汚い所も」
悲しい声。アイシー・ペンギーゴは何故あんな目にあったのだろうか。
「――でも、好きなんです人間が。この世界には、必ず良い人間が居るから」
「……………良い……人間………」
重症を負いながらも、決意が篭められた瞳にオクトパルドは吸い込まれた。
「……………良い……人間………」
重症を負いながらも、決意が篭められた瞳にオクトパルドは吸い込まれた。
「だから守りたい。こんな馬鹿げた事件から。人間を、そしてレプリロイドも――悲しい貴方も」
エックスは見下ろしてくる少女を見つめる。
「……馬鹿………なんでしょうか……? 最終的な結論は、まだ出てないんですが……」
最後に苦く微笑み、エックスはオクトパルドに手を差し出した。
エックスは見下ろしてくる少女を見つめる。
「……馬鹿………なんでしょうか……? 最終的な結論は、まだ出てないんですが……」
最後に苦く微笑み、エックスはオクトパルドに手を差し出した。
「だから、一緒にそんな人間を一人でも多く探してみませんか?」
震える少女の身体。華奢な手のひらと、自分の手を見比べ、オクトパルドは沈黙する。
上から轟音。
震える少女の身体。華奢な手のひらと、自分の手を見比べ、オクトパルドは沈黙する。
上から轟音。
251 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01:44:15.04 ID:KuQRxfiH0
「ありがとう、エックス。それは美しい戦略ですね」
オクトパルドは微笑み、手を優しく握る。そして空を仰ぎ、何かに気づいた。
「オクトパルドさん……」
少女は素早く損傷部分を確認。右脚部は完全に破損――回避は出来ない。二人とも。
「ありがとう、エックス。それは美しい戦略ですね」
オクトパルドは微笑み、手を優しく握る。そして空を仰ぎ、何かに気づいた。
「オクトパルドさん……」
少女は素早く損傷部分を確認。右脚部は完全に破損――回避は出来ない。二人とも。
「だけど、駄目みたいなのですね」
上から轟音。
オクトパルドは再度微笑む。今まで一番、優しい笑顔だった。
上から轟音。
オクトパルドは再度微笑む。今まで一番、優しい笑顔だった。
「ふふっ。もう少し早く、あなたに会いたかった……」
上から轟音。貫通した煙突がもたらした被害は、大きかったのだ。
――その後ろにあるもう一つの煙突の取り付けを、致命的に揺るがすぐらいに。
「生きて………あなたのすべき事を成し遂げるのです。私はそれにかけますのですよ」
「オクトパルドさん……?」
細い腕がベレー帽にかけられ、それを取る。赤い帽子はエックスに被せられた。
上から轟音。貫通した煙突がもたらした被害は、大きかったのだ。
――その後ろにあるもう一つの煙突の取り付けを、致命的に揺るがすぐらいに。
「生きて………あなたのすべき事を成し遂げるのです。私はそれにかけますのですよ」
「オクトパルドさん……?」
細い腕がベレー帽にかけられ、それを取る。赤い帽子はエックスに被せられた。
「さよならエックス。途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……?」
涙を溜めながら笑みを送り、そしてミサイルを放つ。
涙を溜めながら笑みを送り、そしてミサイルを放つ。
――衝撃と爆発はエックスを船外に吹き飛ばした。
「――オクトパルドさん!?」
海へと叩き出されたエックスはデッキに、もう一つの赤い巨体が落ちようとしてるのを見た。
二度目の落下は甲板の全てを、今度こそ押しつぶす。
「そんな……そんな!! オクトパルドさん!! そんな!!」
真っ赤な夕日に照らされる旅船は衝撃に耐えられず、沈みかけようとする。
腹部の事は気にせず、エックスは船に向かって泳いだ。
とうとう海中にけたたましい音をたてて瓦解し、沈没する船。
海へと叩き出されたエックスはデッキに、もう一つの赤い巨体が落ちようとしてるのを見た。
二度目の落下は甲板の全てを、今度こそ押しつぶす。
「そんな……そんな!! オクトパルドさん!! そんな!!」
真っ赤な夕日に照らされる旅船は衝撃に耐えられず、沈みかけようとする。
腹部の事は気にせず、エックスは船に向かって泳いだ。
とうとう海中にけたたましい音をたてて瓦解し、沈没する船。
沈没の衝撃破によって形成された波が、泳ぐエックスを無情に飲み込んだ。
568 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 22:59:22.91 ID:1kCBjzAl0
暗転、回復、暗転、回復。
叩きつけるような波は、生まれ、崩れるのを繰り返す。
叩きつけるような波は、生まれ、崩れるのを繰り返す。
エックスは、旅船の爆発から発せられた波に流された。
海面に出たと思えば、海中に飲み込まれ、意識もそれに合わせて明滅する。
海面に出たと思えば、海中に飲み込まれ、意識もそれに合わせて明滅する。
――ここはどこか?
――ゼロはどこだ?
――自分はどうなる?
頭の中で様々な思いが、波と同じように暴れる。
巨大な箱舟は小爆発を繰り返しながら、沈み、そして海面を荒らした。
――ゼロはどこだ?
――自分はどうなる?
頭の中で様々な思いが、波と同じように暴れる。
巨大な箱舟は小爆発を繰り返しながら、沈み、そして海面を荒らした。
暗転。
「くぅ………」
次に蒼穹色のボディが現れたのは、真っ白な砂の世界だった。
波の音に、意識を目覚めさせたエックスは、辺りを見回す。どこかの海岸――砂浜だった。
立ち上がりながら、揺れる視界と思考を整える。
次に蒼穹色のボディが現れたのは、真っ白な砂の世界だった。
波の音に、意識を目覚めさせたエックスは、辺りを見回す。どこかの海岸――砂浜だった。
立ち上がりながら、揺れる視界と思考を整える。
「………ここは? ……どこなの……」
そして、呻きの次は、疑問が口から漏れた。
答えは誰からも与えられない。付近には少年以外いないようだ。
「――ゼロは!?」
その場で、答えを探している内に、重大な事に気づいた。
そして、呻きの次は、疑問が口から漏れた。
答えは誰からも与えられない。付近には少年以外いないようだ。
「――ゼロは!?」
その場で、答えを探している内に、重大な事に気づいた。
571 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:01:50.80 ID:1kCBjzAl0
赤き少女――ゼロの姿が見当たらない。エックスは、真っ青になった。
彼女は、オクトパルドに嬲り者にされてから、海中に放り出されたはずだ。
彼女は、オクトパルドに嬲り者にされてから、海中に放り出されたはずだ。
「ゼロ!? ゼロ!? どこなの、ゼロ!!」
少女の消失から、顔を青から白に転じ、エックスは彼女を呼びかけながら探す。
ふらつく身体に鞭打ち、砂浜を駆けるがゼロの姿は見当たらない。
少女の消失から、顔を青から白に転じ、エックスは彼女を呼びかけながら探す。
ふらつく身体に鞭打ち、砂浜を駆けるがゼロの姿は見当たらない。
焦燥感に口元を歪ませる少年の顔に、蔭り。
まるで野鳥が大量に羽ばたいた様な音を奏でる、回転翼がエックスの頭上に迫る。
「ハンター………」
お馴染みのハチ型ヘリが、高度を落とし、砂浜に着陸する。
まるで野鳥が大量に羽ばたいた様な音を奏でる、回転翼がエックスの頭上に迫る。
「ハンター………」
お馴染みのハチ型ヘリが、高度を落とし、砂浜に着陸する。
「ご無事でしたか」
大量生産される型番のボディを纏ったハンターが、白い大地を踏みしめた。
その一人が、こちらを見るエックスに、片手をあげて挨拶する。
大量生産される型番のボディを纏ったハンターが、白い大地を踏みしめた。
その一人が、こちらを見るエックスに、片手をあげて挨拶する。
「あなた方が乗船なさった旅船のシグナルをロストしまして、緊急に、我々が救出に向かいました」
青き少年に、タオルと鎮痛剤が混入されたカンフルを渡しながら、説明する。
青き少年に、タオルと鎮痛剤が混入されたカンフルを渡しながら、説明する。
他のハンターは、てきぱきと極地基地のように、簡易待機所を作ってゆく。
説明するハンターの声と波だけが、この砂浜の静けさの〝異端〟だった。
説明するハンターの声と波だけが、この砂浜の静けさの〝異端〟だった。
「ここまで流されるとは………おい、マックの捜索も範囲を広げろ!」
右手に持った端末で位置を確認しながら、後続のハンター達に命を出す。
右手に持った端末で位置を確認しながら、後続のハンター達に命を出す。
「あの、ゼロは見てますか? 一緒に……では、ないのだけど、流されてしまったんです」
エックスは自分の憂慮をハンターに手渡す。
エックスは自分の憂慮をハンターに手渡す。
572 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:03:28.66 ID:1kCBjzAl0
「あ、はい。彼女なら、先に本部に搬送されています」
「本当ですか!?」
応えは、少年を大変安堵させるものだった。
エックスの顔が喜色に満ち、緊張からの脱却からか、砂浜にへたり込んだ。
「本当ですか!?」
応えは、少年を大変安堵させるものだった。
エックスの顔が喜色に満ち、緊張からの脱却からか、砂浜にへたり込んだ。
「えぇ、ただ損傷の関係で、直ぐにでも治療を受けないと危険な状況らしいですが」
安心は、続けるハンターの言葉で無惨に打ち砕かれる。
自分の意ではなく、顔色がころころと変わるエックス。
安心は、続けるハンターの言葉で無惨に打ち砕かれる。
自分の意ではなく、顔色がころころと変わるエックス。
「心配でしょう。直ぐにでも本部まで、お送りします。ケイン博士も話があるそうです」
うな垂れる中性的な顔立ちの少年に、ハンターは手を差し伸べ、ヘリを指差す。
地に足をつけるヘリは、再度ローターを回転させた。
散乱する砂。局地的な小さな砂嵐。
うな垂れる中性的な顔立ちの少年に、ハンターは手を差し伸べ、ヘリを指差す。
地に足をつけるヘリは、再度ローターを回転させた。
散乱する砂。局地的な小さな砂嵐。
迫り来る砂に目を開閉しながら、エックスは頷いた。
「ご苦労だった」
帰還の労いは短い。
いつもは、幹部の画像を映した浮遊ディスプレイが無く、会議室は非常に静かだった。
簡素な部屋で、二人。
Dr.ケインとエックスは、数メートル離れて対峙する。
帰還の労いは短い。
いつもは、幹部の画像を映した浮遊ディスプレイが無く、会議室は非常に静かだった。
簡素な部屋で、二人。
Dr.ケインとエックスは、数メートル離れて対峙する。
円卓の真ん中に座るケインは、冷徹な瞳で、前方に立つ少年を見つめた。
イレギュラー事件発生の時とは、大きく違う印象を受ける。
イレギュラー事件発生の時とは、大きく違う印象を受ける。
力強さと――憎悪。
574 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:05:52.72 ID:1kCBjzAl0
「私から話そうか、それとも君から話すか。私はどちらでも」
自分の皺の寄った顔を、見つめるではなく、睨む少年に問いかける。声はどこまでも冷たい。
「あなたから」
何かの意思を掴んだ光を宿す瞳を、臆す事なくケインにぶつけるエックスが答える。
自分の皺の寄った顔を、見つめるではなく、睨む少年に問いかける。声はどこまでも冷たい。
「あなたから」
何かの意思を掴んだ光を宿す瞳を、臆す事なくケインにぶつけるエックスが答える。
老人は頷く。
「最初に話すべきことは、情報部の事。――何故、君達に隠し事をするか。何故、協力しないか」
ケインは一拍置く。
「それは、この事件が〝極めてイレギュラー〟な事にあるのだ」
机の上の指がせわしなく動く、常に冷静な老体は何かに焦っていた。
「最初に話すべきことは、情報部の事。――何故、君達に隠し事をするか。何故、協力しないか」
ケインは一拍置く。
「それは、この事件が〝極めてイレギュラー〟な事にあるのだ」
机の上の指がせわしなく動く、常に冷静な老体は何かに焦っていた。
「ハンター本部が取り扱う事件、この世界で起こる事件で、あってはならない事が一つだけ存在する」
焦りは末端部分だけに、顔には出さない。
焦りは末端部分だけに、顔には出さない。
「レプリロイドが、バグや事故での暴走ではなく、〝自分の意思で事件を引き起こす〟事だ」
「しかも、今回はハンターの職員とくる」
エックスは沈黙する。
エックスは沈黙する。
アイシー・ペンギーゴ。
ストーム・イーグリード。
ランチャー・オクトパルド。
彼女達は様々な思惑で、暴走と言う道を選び、エックスの前で朽ちた。
ストーム・イーグリード。
ランチャー・オクトパルド。
彼女達は様々な思惑で、暴走と言う道を選び、エックスの前で朽ちた。
「それは、イレギュラーと戦ってきて解りました――それが、釈明ですか?」
らしくない冷たい言葉の刃が、ケインを突き刺す。
らしくない冷たい言葉の刃が、ケインを突き刺す。
575 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/10/18(水) 23:07:15.80 ID:yWQxajs80
576 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:07:36.38 ID:1kCBjzAl0
「我々は驕っていた。自分等の力で、今回も解決できると」
聞いているのか、いないのか。
ケインは天井を仰ぎ、目を瞑った。何かへと追憶しているようだ。
聞いているのか、いないのか。
ケインは天井を仰ぎ、目を瞑った。何かへと追憶しているようだ。
「第17精鋭部隊隊長――シグマがこの事件の首謀者だ」
そして唐突に、驚愕の事実をエックスに渡す。
そして唐突に、驚愕の事実をエックスに渡す。
「なっ………!? 隊長が!? そんな、馬鹿な!!」
「本当だ。こんなスキャンダルを嘘や冗談では言わない。――もともと、冗談を私は言わないが」
驚く少年に、首を振り、ケインはその事実を肯定する。
エックスはとても信じられなかった。
「本当だ。こんなスキャンダルを嘘や冗談では言わない。――もともと、冗談を私は言わないが」
驚く少年に、首を振り、ケインはその事実を肯定する。
エックスはとても信じられなかった。
――焦るな、エックス。お前になら出来る
「暴走した謎のイレギュラーを彼女が、鎮圧したのは知っているか?」
ケインが言葉を続け、新たな質問を作った。
少年は、怪訝な顔をしながら、頷く。自分はその討伐には参加していなかった。
ケインが言葉を続け、新たな質問を作った。
少年は、怪訝な顔をしながら、頷く。自分はその討伐には参加していなかった。
「シグマは、そこからおかしくなった――らしい。原因は不明。三週間前の話だ」
忌まわしき過去を掘り起こし、全てを優しき心を持ったレプリロイドに見せる。
身を切られる思いで、ケインは打ち明け続けた。
忌まわしき過去を掘り起こし、全てを優しき心を持ったレプリロイドに見せる。
身を切られる思いで、ケインは打ち明け続けた。
「それで情報部は………」
敵として、現れた同僚の言葉を思い出す。
――ある計画が、あるある奴に聞いた
――緑のボディスーツを着たレプリロイド
――ボスの命令だ
――君は強くならなければ、ならないらしい
敵として、現れた同僚の言葉を思い出す。
――ある計画が、あるある奴に聞いた
――緑のボディスーツを着たレプリロイド
――ボスの命令だ
――君は強くならなければ、ならないらしい
全ては、自分の上司の残滓だったのだ。
578 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:10:53.95 ID:1kCBjzAl0
「だが、それもお終いだ。本部も暴走したのだから――」
腐敗した事実。
腐敗した事実。
「……………………は?」
腐った現実は、エックスの耳にすんなりと入らなかった。
腐った現実は、エックスの耳にすんなりと入らなかった。
「君は、聞きたい事があるのだろう。…………本部は、彼女達に何をしたか」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
「おかしくなった、原因は不明と言っただろう。だが、それを〝どうやって〟調査したと思うかね」
ケインが、初めて感情を顔に出した。
ケインが、初めて感情を顔に出した。
――大きな絶望。
「そんな………まさか……………」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
――少女のレプリロイドは何故、
「レプリロイドに、多大な不安や、精神的な圧迫をかけ、シグマと同じく〝壊れた〟精神を分析したのだ」
――イレギュラーとなったのだろう。
579 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:12:18.31 ID:1kCBjzAl0
「それを今回の事件に役立たせようとした。――だが結果は、最悪だ!!」
ケインの怒号。
珍しい光景だが、エックスの目には入らない。
ケインの怒号。
珍しい光景だが、エックスの目には入らない。
「シグマの作戦に便乗した奴も居るが、この事件の半分のイレギュラーは〝私達〟が作り出したのだ!!」
――絶対たる悪が、彼女達をそそのかしたのでは、なかったのか
――そうであれば話が早い。
――そうであれば解りやすかった。
――そうであれば、このバスターを遠慮なく撃てただろう。
――そうであれば解りやすかった。
――そうであれば、このバスターを遠慮なく撃てただろう。
「うぉおおおおお!!」
間合いは一瞬にして無に。
獣の咆哮と一緒くたに、ケインの顔に向け、エックスの拳が突き入れられた。
間合いは一瞬にして無に。
獣の咆哮と一緒くたに、ケインの顔に向け、エックスの拳が突き入れられた。
吹き飛ぶ老体。
「許してくれなど………言わない。本部は必死だったのだ。――世界平和という目標に」
憤慨などせず、ケインは唇から血を流しながらも、弁解した。
荒い息を吐くエックス。
憤慨などせず、ケインは唇から血を流しながらも、弁解した。
荒い息を吐くエックス。
「増大するレプリロイドの件で、本部は世界平和と言う単語に過敏になっていた」
世界平和。単語自体は素晴らしい。
世界平和。単語自体は素晴らしい。
「レプリロイドの意思で事件を引き起こす………決して許されない事だったのだろう」
だが、その言葉の中身はどうだろうか。
だが、その言葉の中身はどうだろうか。
「シグマで終わらせようとした事が、こんな裏目に出るとは、彼等も思わなかっただろう………」
しかし、事件は起きた。
しかし、事件は起きた。
580 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:15:52.95 ID:1kCBjzAl0
「私は止めた。止めたが、ハンターは〝訓練Σ〟と言うお題目で、調査を開始してしまった」
アイシー・ペンギーゴ。
それ以外は知らないが、他のレプリロイドの心にも、そんな影があるのだろう。
アイシー・ペンギーゴ。
それ以外は知らないが、他のレプリロイドの心にも、そんな影があるのだろう。
訓練Σでは無く、仲間意識の狭間で狂気を選んでしまった、優しきイーグリードという存在も居た。
「その調査で彼女達はイレギュラーになった。本部も彼女達も止められなかった…………すまない」
後悔。
後悔。
「チップは………そうか、情報部の隠蔽…………」
少年が気づいた、下らない事実。
少年が気づいた、下らない事実。
「確かに滅びるべきだな、人間は。レプリロイドのための世界――悪くない」
自嘲しながら、絶望の答え。
自嘲しながら、絶望の答え。
「ふざけるな」
だが、エックスはそれを一言で砕いた。
だが、エックスはそれを一言で砕いた。
本当にそんな世界が望まれるべきなのだろうか。
ペンギーゴの最期の言葉。
ゼロとイーグリードの友情。それを持っていたのは、最初は人間ではなかったのではないのか。
ペンギーゴの最期の言葉。
ゼロとイーグリードの友情。それを持っていたのは、最初は人間ではなかったのではないのか。
――途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……?
オクトパルドが持った希望。
582 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:18:09.78 ID:1kCBjzAl0
「答えを勝手に出さないで下さい」
純粋な怒り。
純粋な怒り。
「あなた方のやった事は、最低だ。でも、世界中の人間がその罪を背負う必要は無い」
平和を望み続ける心優しいレプリロイドの怒り。
平和を望み続ける心優しいレプリロイドの怒り。
「ハンター本部が、世界平和に焦ったように、隊長もまた〝何か〟に焦ってしまったのでしょう」
俯いていたケインが顔を上げる。
俯いていたケインが顔を上げる。
「おそらく、レプリロイドの自由と平和に。その代弁者という重荷に」
二人の瞳がやりきれない思いに、揺れた。
二人の瞳がやりきれない思いに、揺れた。
「僕なら解ります。隊長が何故、壊れてしまったのか………」
レプリロイドの述懐。
レプリロイドの述懐。
「僕だって、時々思う――どうして人間はこんなにも傲慢なのか、どうしてレプリロイドを見下すのか」
レプリロイドとして生まれた身の不満。
レプリロイドとして生まれた身の不満。
「でも、人間を守りたいという意思も存在する」
レプリロイドとして生まれた身の思い。
ライト。そして、この世界に必ず存在する優しい人間。
レプリロイドとして生まれた身の思い。
ライト。そして、この世界に必ず存在する優しい人間。
「その二つが、イレギュラー討伐でおかしくなってしまったのでしょう」
「討伐後のシグマは重症だった…………過度の恐怖による〝事故〟………」
調査は無意味だった。
調査は無意味だった。
583 名前: Irregular's Elegy 2006/10/18(水) 23:20:01.25 ID:1kCBjzAl0
「馬鹿だ………私達は………。私達は、何故あんな惨い事を…………」
もう、戻れない。
もう、戻れない。
「報いは、博士自身が考えてください。僕には決める権利が無い」
仲間を殺してしまった自分には、と言葉を続け、かかる多大な疲れに、手で顔を覆った。
仲間を殺してしまった自分には、と言葉を続け、かかる多大な疲れに、手で顔を覆った。
――同じくして、二人は、もう戻れない所に立っているのだ。
「殴ってしまって、すいません………」
エックスは、拳に目を落とし、困ったような顔をする。
エックスは、拳に目を落とし、困ったような顔をする。
「僕は、僕の〝報い〟を受けようと思います……」
この事件は終わりにしなければ、ならない。
それが使命。
この事件は終わりにしなければ、ならない。
それが使命。
「すまない………。本当は私も手伝うべきなのだがな」
自分の年季のいった身体を見下ろし、ケインは頭を下げた。
自分の年季のいった身体を見下ろし、ケインは頭を下げた。
エックスが首を振り、会議室の扉に向かう。
茶色のドアを開き、廊下に出ようとしたところで、声がかかった。
茶色のドアを開き、廊下に出ようとしたところで、声がかかった。
「娘を頼む……………。あの子の悪夢を終わらしてやってくれ」
最後に、ケインが何故自分に打ち明け、こんなにも悲嘆にくれていたのか、やっと解った。
最後に、ケインが何故自分に打ち明け、こんなにも悲嘆にくれていたのか、やっと解った。