168 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:36:30.80 ID:VyNGFb7Y0
公共電波障害
公共電波障害
「目覚めなさい、マック」
声が聞こえる。
漆黒のレプリロイド――マックはその声に意識を覚醒させた。
突然の事象に驚く顔を回すと、自分は監獄のような薄暗い部屋に居るようだ
声が聞こえる。
漆黒のレプリロイド――マックはその声に意識を覚醒させた。
突然の事象に驚く顔を回すと、自分は監獄のような薄暗い部屋に居るようだ
目前には宙に浮かぶロープ。
「お、お前はいったい!? ここは何処だ……!!」
マックはその光景に再度驚愕し、身をよじった。
空中でゆらゆらと揺れる茶色の縄に、戦闘の構えをする。
「お、お前はいったい!? ここは何処だ……!!」
マックはその光景に再度驚愕し、身をよじった。
空中でゆらゆらと揺れる茶色の縄に、戦闘の構えをする。
「私はロープの神。――マックよ、よくぞ最初の〝151匹のメカニロイド〟を捕らえました」
その言葉に、ほう、とマックは感嘆の呟きをあげる。
どこから発声させてるのか気にせず、漆黒の少女は礼儀よく、ロープに向かって礼をする。
その言葉に、ほう、とマックは感嘆の呟きをあげる。
どこから発声させてるのか気にせず、漆黒の少女は礼儀よく、ロープに向かって礼をする。
「困難な事だったでしょう」
「ふふん。オレには造作も無い事だ! オレの背中にはケイン博士とハンターがついている!!」
軽く笑い、マックは拳を力強く掲げ、猛々しく吼えた。
ロープの先が上下に揺れる。頷いたのであろう。
「ふふん。オレには造作も無い事だ! オレの背中にはケイン博士とハンターがついている!!」
軽く笑い、マックは拳を力強く掲げ、猛々しく吼えた。
ロープの先が上下に揺れる。頷いたのであろう。
「それは頼もしい。しかし、まだまだです。イレギュラーとなったメカニロイドは今だ増えているのですよ」
「その通りだな」
悲嘆を感じさせる言葉に、少女も険しい顔をして首肯した。
「その通りだな」
悲嘆を感じさせる言葉に、少女も険しい顔をして首肯した。
「行きなさい、マック。鬼畜王の道は険しいですよ。――では、ハッピーセット!」
「あぁ、勿論だ! 全てのメカニロイドはオレの手に! ――ハッピーセット!」
「あぁ、勿論だ! 全てのメカニロイドはオレの手に! ――ハッピーセット!」
意味不明な、人生の指標、挨拶と共に――世界は暗転。
169 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:37:53.62 ID:VyNGFb7Y0
「よぉ、鬼畜王。元気かよ?」
ハンターが運営する隊員用のアパートから出る少女の姿に、馴れなれしい声がかかる。
「よぉ、鬼畜王。元気かよ?」
ハンターが運営する隊員用のアパートから出る少女の姿に、馴れなれしい声がかかる。
マックが振り向くと、紫のボディが立っていた。
常に挑戦的な笑みを浮かべる少女――ヴァヴァが片手を挙げて、挨拶する。
常に挑戦的な笑みを浮かべる少女――ヴァヴァが片手を挙げて、挨拶する。
「あぁ、すこぶる快調だ。良い夢をみたしな」
頷きながら、こちらも片手を挙げた。
「そうか」
ヴァヴァはマックの言葉に特に気にせず、短く感想を述べた。
頷きながら、こちらも片手を挙げた。
「そうか」
ヴァヴァはマックの言葉に特に気にせず、短く感想を述べた。
「こんな朝早く出勤って事は、ケイン博士から呼ばれたんだろ? オレもなんだよ」
二人は揃って、ハンター本社に向かう道を歩く。
秋の早朝は、少し肌寒い。
二人は揃って、ハンター本社に向かう道を歩く。
秋の早朝は、少し肌寒い。
「お前もか。ハンターが作成する番組の事らしいな」
マックが意外そうな声を出した。冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
「あぁ。でも、オレらなんだよ?」
風に、身体を少し震わせながらヴァヴァが疑問を顔に映した。
マックが意外そうな声を出した。冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
「あぁ。でも、オレらなんだよ?」
風に、身体を少し震わせながらヴァヴァが疑問を顔に映した。
「大体解る。――他が異常だからだろ」
「あぁ、なるほど。気の毒にな――」
「あぁ、なるほど。気の毒にな――」
――時計が午前8時を指す。
「おはよう諸君」
ハンター組織の施設の一つ、会議室。
そこで、三人の人物が円卓に座り、顔を合わせていた。
ハンター組織の施設の一つ、会議室。
そこで、三人の人物が円卓に座り、顔を合わせていた。
171 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:38:59.79 ID:VyNGFb7Y0
「ういー」
「おはようございます、ケイン博士」
初老の男――ケインに、二人の少女が各々の挨拶をする。
「おはようございます、ケイン博士」
初老の男――ケインに、二人の少女が各々の挨拶をする。
「君達を呼んだのは他でも無い。――今後のハンター運営についての重大な会議だ」
部下に恵まれないという、不幸な星に生まれたケインが厳かに告げる。
部下に恵まれないという、不幸な星に生まれたケインが厳かに告げる。
「財政の人間に、死ねって言われたのは本当かよ?」
頬杖をつきながらヴァヴァ。
頬杖をつきながらヴァヴァ。
「いい加減にしろって電子文書が何百件も来るのは、真実ですか。博士」
甘いコーヒーを飲みながら、マックが問う。カップの横には大量の砂糖の紙包みが置いてある。
甘いコーヒーを飲みながら、マックが問う。カップの横には大量の砂糖の紙包みが置いてある。
「いかにも」
「うわぁ………」
身を切り裂かれたような顔をして肯定する上司に、二人の部下が呻いた。
「うわぁ………」
身を切り裂かれたような顔をして肯定する上司に、二人の部下が呻いた。
「このままでは、とんでも無い事になるのは必至であり、早急な打開策を取らなければならない」
ハンター本部からも国からも圧力をかけられている老体が、凛々しく立ち上がる。
ハンター本部からも国からも圧力をかけられている老体が、凛々しく立ち上がる。
「その策と言うのが、ハンターの番組ですか」
マックが、なるほどと呟きながら、頷く。
マックが、なるほどと呟きながら、頷く。
「オレたちは、その番組の選考か。ようは、独りでやるのが怖いんだな――気を落とすなよ」
ヴァヴァは、らしくもなく労いの言葉をかけた。
ヴァヴァは、らしくもなく労いの言葉をかけた。
「然り」
「気の毒に――」
身を切り裂かれたような顔をして肯定する上司に、二人の部下がため息を吐いた。
「気の毒に――」
身を切り裂かれたような顔をして肯定する上司に、二人の部下がため息を吐いた。
172 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:40:32.07 ID:VyNGFb7Y0
――午前9時。
――午前9時。
「で、選考って言うからには、いくつか番組があるんだな」
椅子にもたれかかりながら、ヴァヴァが呟いた。その言葉にケインが首肯する。
「その通り。最初は、これだ」
円卓に設置された端末を操作し、卓上の中央に大きな映像を流す。
椅子にもたれかかりながら、ヴァヴァが呟いた。その言葉にケインが首肯する。
「その通り。最初は、これだ」
円卓に設置された端末を操作し、卓上の中央に大きな映像を流す。
一瞬のノイズ。
魔法少女イーグリードちゃんと、タイトルが球形の画像に現れた。
魔法少女イーグリードちゃんと、タイトルが球形の画像に現れた。
「なぁ、マック。――もう、帰りたい」
「奇遇だな。――ポテト食いに行くか」
「奇遇だな。――ポテト食いに行くか」
二人が、その文字列に恐怖し、ケインが頭を抱える。
『おっはーよう、諸君!!』
「しかも録画じゃなくて、リアルタイムかよ………」
映像はまだ出ず、甲高い声が先に会議室に流れた。ヴァヴァが顔を歪める。
「しかも録画じゃなくて、リアルタイムかよ………」
映像はまだ出ず、甲高い声が先に会議室に流れた。ヴァヴァが顔を歪める。
『なんだか困っているみ見たいだからな。出演量が多い、この私が力を貸そう!!』
そして次に現れたのは、ピンク色の影の人物だった。
そして次に現れたのは、ピンク色の影の人物だった。
白と桃の色で構成されたフリルに、下着が見えそうな短いスカート。
頭に大きなリボンを付けた――ストーム・イーグリードが画面に出現する。
「神よ………」
ケインが呟いた。
頭に大きなリボンを付けた――ストーム・イーグリードが画面に出現する。
「神よ………」
ケインが呟いた。
『どうだ? 可愛いもの好き、ではあったが自分で着るのは、ちょっと憚っていたんだがな』
頬を染めながら、細いステッキを振り回す女。
三人は、朝から非常に気分を害した。
頬を染めながら、細いステッキを振り回す女。
三人は、朝から非常に気分を害した。
173 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:42:43.80 ID:VyNGFb7Y0
「夢にでそうだ」
「ひでぇ」
『ふんっ、凡人には解るまいて』
ポニーテールを揺らしながら、ステッキが縦横無尽に振り回される。魔法ではなく、撲殺でもするのだろうか。
「夢にでそうだ」
「ひでぇ」
『ふんっ、凡人には解るまいて』
ポニーテールを揺らしながら、ステッキが縦横無尽に振り回される。魔法ではなく、撲殺でもするのだろうか。
「で、その魔法少女の番組のコンセプトは?」
ヴァヴァが真面目に仕事をこなした。
ヴァヴァが真面目に仕事をこなした。
『幼女好きな魔法少女が、これまた幼女の国で竜巻を操り戦う。敵も味方も、ちっちゃい子だ』
鼻息荒くイーグリードが答える。
予想通りではあったが、三人は脱力した。
鼻息荒くイーグリードが答える。
予想通りではあったが、三人は脱力した。
「魔法〝少女〟じゃないだろ」
ヴァヴァが鋭く言った。
『幼馴染にゼロ。そして妖精ポジションはアイちゃん………はははっ! 憎きエックスを殺せ!!』
それを無視し、自分の世界に入る魔法少女。会議室に狂気が放映されている。
ヴァヴァが鋭く言った。
『幼馴染にゼロ。そして妖精ポジションはアイちゃん………はははっ! 憎きエックスを殺せ!!』
それを無視し、自分の世界に入る魔法少女。会議室に狂気が放映されている。
『毎回毎回、幼女と戦い、愛のあるお仕置きをする。そのシーンが肝心だ。大きなお友達が垂涎ものだよ』
狂気は止まらない。
狂気は止まらない。
「博士、聞くに耐えん」
マックが疲れた声で、ケインに進言した。
「――却下」
上司は部下の思いを汲み取り、狂気を未然に切り捨てる。
マックが疲れた声で、ケインに進言した。
「――却下」
上司は部下の思いを汲み取り、狂気を未然に切り捨てる。
174 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:43:55.27 ID:VyNGFb7Y0
『何故だぁああああああああ!? こんなにも、貴様等の為に粉骨砕身していると言うのに!!」
「ふざけるな。完全に、番組を私物化してるじゃねぇかよ――死ね、馬鹿ドリ」
ヴァヴァの至極真っ当な言葉で、魔法少女は一蹴された。
『何故だぁああああああああ!? こんなにも、貴様等の為に粉骨砕身していると言うのに!!」
「ふざけるな。完全に、番組を私物化してるじゃねぇかよ――死ね、馬鹿ドリ」
ヴァヴァの至極真っ当な言葉で、魔法少女は一蹴された。
『お前らが死ね!! 解らずや共!! 正義の魔法を食らえ―――〝みんな豚になれー!!〟』
画面が切れる前に、三人に呪いをかけるイーグリード。
画面が切れる前に、三人に呪いをかけるイーグリード。
本当になりそうなので、会議室の面々は不愉快になった。
「いきなり疲れた」
「あぁ」
「あぁ」
――午前10時。
「あれが最初で良かったな」
「確かに一理ある。まぁ、終わったから良いだろう」
楽観的になり、笑いあう少女達。だが、疲労は隠せない。
「確かに一理ある。まぁ、終わったから良いだろう」
楽観的になり、笑いあう少女達。だが、疲労は隠せない。
「次だ」
『やっほー!! カメリーオでーす!!』
ケインが操作。
画面いっぱいに、笑顔の少女が現れる。
『やっほー!! カメリーオでーす!!』
ケインが操作。
画面いっぱいに、笑顔の少女が現れる。
『カメリーオは!! 魚釣りの特番を!! 組んだほうが!! 良いと思います!!』
空気の読めない子が提案したのは、カメリーオとは思えない番組だった。
空気の読めない子が提案したのは、カメリーオとは思えない番組だった。
『皆あんまりしなくなった魚釣り!! この番組を境に!! 趣味が増えるレプリロイドが出て、みんなハッピー!!』
「至極まともだ」
「意外にな」
番組もまともなので、会議室の感想もまともになる。
「至極まともだ」
「意外にな」
番組もまともなので、会議室の感想もまともになる。
176 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:45:14.20 ID:VyNGFb7Y0
「待て――」
やるな、と話していた二人にケインが待ったをかける。
「…………今、なんと言った?」
喋っていたので、他の二人は続けるカメリーオの声を聞き取れなかった。
「待て――」
やるな、と話していた二人にケインが待ったをかける。
「…………今、なんと言った?」
喋っていたので、他の二人は続けるカメリーオの声を聞き取れなかった。
『へー? だから、ボクは口ベタだから!! 他の人に番組を進行して!! もらいます!!』
「誰に――?」
6つの目に注目されるなか、少女が口を開く。
「誰に――?」
6つの目に注目されるなか、少女が口を開く。
『オクトパルドさん!! フィーッシュ!! ひゃっほい!!』
「馬鹿か、お前は!?」
三人が異口同音に、言い放った。
三人が異口同音に、言い放った。
――正午の12時。
三人は、心労のため少し休憩を挟んだ。
「ポテト美味いな」
「食べた事なかったのか? 人生半分ぐらい損してるぞ。これもやる」
二人は仲睦まじく、昼食を摂っている。
「食べた事なかったのか? 人生半分ぐらい損してるぞ。これもやる」
二人は仲睦まじく、昼食を摂っている。
「次だ――メールのようだな」
ケインが操作。
画像に文章が表れる。
ケインが操作。
画像に文章が表れる。
[歌番組。アルマージちゃんが、紹介してくれた曲をオデが歌うぞぉ]
178 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:46:35.26 ID:VyNGFb7Y0
「はぁ」
二人の気の抜けた返事。
ケインも意味が解らず、眉を顰める。言葉通りの意味だろうか。
二人の気の抜けた返事。
ケインも意味が解らず、眉を顰める。言葉通りの意味だろうか。
「…………添付ファイルがあるな」
ケインが操作。
ケインが操作。
『光る風を追い越したら――』
――午後2時を時計が指す。
胃に痛みが走る三人はまた休憩していた。
回転椅子に寄りかかる、ヴァヴァの額には、白い布状の吸熱するシートが載せられていた。
まだマックの方が平気そうであった。机に向かい、ペンを動かしている。
楽しげに、白いキャンパスに、縄を持った人物を書く。
楽しげに、白いキャンパスに、縄を持った人物を書く。
「――さぁ、いこうか」
ケインが操作。
ケインが操作。
『おはようなのですよ』
軍服を着込んだ少女――オクトパルドが現れた。
軍服を着込んだ少女――オクトパルドが現れた。
『私が考えた番組は、軍経験を生かした――ずばり金融番組』
「何故にホワイ」
少女の言葉に、困惑する二人。ケインも頭を抱えて、唸る。
「何故にホワイ」
少女の言葉に、困惑する二人。ケインも頭を抱えて、唸る。
179 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:47:44.29 ID:VyNGFb7Y0
『Fuck you』
来た答えは、侮蔑。
『金はお前達の命よりも重い――』
長々と続く説明。
『Fuck you』
来た答えは、侮蔑。
『金はお前達の命よりも重い――』
長々と続く説明。
そして轟音。
全て言い終わる前に、ヴァヴァの右肩の砲台が映写機を破壊した。
全て言い終わる前に、ヴァヴァの右肩の砲台が映写機を破壊した。
親指を立てる、マックとケイン。
――午後4時。
映写機が粉砕したので、今日の選考は中断となった。
やれやれ、と嘆息する二人のレプリロイド。ケインは、鎮痛剤を多用していた。
やれやれ、と嘆息する二人のレプリロイド。ケインは、鎮痛剤を多用していた。
「今日はお疲れ様だ。解散してくれていい」
錠剤を更に手の平に取り出しながら、ケインが頭を下げる。
錠剤を更に手の平に取り出しながら、ケインが頭を下げる。
「うーい」
「お疲れ様でした、博士」
「お疲れ様でした、博士」
「結局、決まらなかったな」
「あれじゃ、な」
不満を漏らしながら、二人は家路を歩く。
秋は何とやら――日は短くなっており、空には一筋の赤みが注していた。
「あれじゃ、な」
不満を漏らしながら、二人は家路を歩く。
秋は何とやら――日は短くなっており、空には一筋の赤みが注していた。
「あ、オレは捕獲マスターの道という冒険があるから、こっちだ」
途中の道で、マックが声をあげ、立ち止まる。
途中の道で、マックが声をあげ、立ち止まる。
184 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:49:19.06 ID:VyNGFb7Y0
「そうか、お疲れ。今度、他にも美味いモン教えてくれよな」
ヴァヴァは頷き、片手をあげた。
「そうか、お疲れ。今度、他にも美味いモン教えてくれよな」
ヴァヴァは頷き、片手をあげた。
「あぁ、またな。――ハッピーセット!」
「へ? ………あ、あぁ、じゃあな」
嬉しそうに頷き、マックは背を向けた。
「へ? ………あ、あぁ、じゃあな」
嬉しそうに頷き、マックは背を向けた。
「はっぴー………なんだって?」
意味不明の挨拶に首を傾げながら、こちらも足を進めた。
意味不明の挨拶に首を傾げながら、こちらも足を進めた。
『ばびゅーん!! 正義の魔法を食らえ!!』
聞き覚えがある声が、ヴァヴァの帰宅の足を止めた。
「はん?」
声の発生場所に頭を向けると、電気店の前に置かれたテレビ。
聞き覚えがある声が、ヴァヴァの帰宅の足を止めた。
「はん?」
声の発生場所に頭を向けると、電気店の前に置かれたテレビ。
『魔法少女イーグリードちゃんの登場だ!!』
ぽかん、とヴァヴァが大きく口を開けた。
ぽかん、とヴァヴァが大きく口を開けた。
「えぇぇぇぇ!? なんでだよ!! 却下になっただろう!?」
ピンクの異形が画面内で暴れまわる。
185 :公共電波障害:2006/10/17(火) 23:50:29.72 ID:VyNGFb7Y0
『おい、イーグリード! これ、本当にハンターがやれって言ったんだな!?』
その隅に、女学生用の制服を着たゼロが、顔を赤くして映っていた。
頭にカチューシャを付け、右手には何故かビデオカメラが持たされいた。
『おい、イーグリード! これ、本当にハンターがやれって言ったんだな!?』
その隅に、女学生用の制服を着たゼロが、顔を赤くして映っていた。
頭にカチューシャを付け、右手には何故かビデオカメラが持たされいた。
『ありえない………なんで………わたしまで』
その横に、現れる小柄な影。
黄色い着ぐるみが歩んでくる。着ぐるみに空いた、顔の部分からは、不機嫌なペンギーゴの顔。
着ぐるみには何故か羽が付いていた。
その横に、現れる小柄な影。
黄色い着ぐるみが歩んでくる。着ぐるみに空いた、顔の部分からは、不機嫌なペンギーゴの顔。
着ぐるみには何故か羽が付いていた。
『きゃー!! 君達いいよ!! とっても輝いているよ!!』
放送中であるはずなのに、奇声をあげるイーグリード。
ステッキが竜巻を起こし、ゼロとペンギーゴが慌てて逃げる。
放送中であるはずなのに、奇声をあげるイーグリード。
ステッキが竜巻を起こし、ゼロとペンギーゴが慌てて逃げる。
現場は最悪な状況になっていた。
「ケイン博士!! 応答してくれ、緊急事態だ!!」
おそらく全国に、この番組は放映されているのだろう。
ヴァヴァは慌てて、無線を使い本部に連絡した。
おそらく全国に、この番組は放映されているのだろう。
ヴァヴァは慌てて、無線を使い本部に連絡した。
『こちら、オペレーティングAI』
「ケイン博士を出せ!!」
「ケイン博士を出せ!!」
『――ケイン博士は、緊急入院なさいました』
竜巻のお見舞い
18 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 17:57:23.63 ID:VyNGFb7Y0
竜巻のお見舞い
竜巻のお見舞い
「えぇー? 貫き手でボディが壊れるなんて………一応、僕ロックマンなんですけど………」
包帯が巻かれた胸を見ながら、青いレプリロイド――エックスが嘆息した。
白一色の部屋。目に付くような装飾品はなく、病人のためか資金のためか本当に簡素に作られている。
包帯が巻かれた胸を見ながら、青いレプリロイド――エックスが嘆息した。
白一色の部屋。目に付くような装飾品はなく、病人のためか資金のためか本当に簡素に作られている。
『あー、ネコニャン、ネコニャン――』
前に置かれたテレビを見ながら、エックスはベッドの背に立てた枕にもたれ掛かっていた。
プラズマの粒子で構成された映像を流す画面には、赤い少女が強制的に踊らされていた。
番組の下のテロップに、美少女ハンターの一日と表記されている。
プラズマの粒子で構成された映像を流す画面には、赤い少女が強制的に踊らされていた。
番組の下のテロップに、美少女ハンターの一日と表記されている。
どこかで聞いたが、本部の人間があまりに施設や公共物を破壊するので、ハンターがテレビ番組を作成しているらしい。
当然、それで得られた収入は街の修繕費に当てられる。
番組作成自体にも資金がかかるので、様々な種類の番組を平行して放送しているのだ。
当然、それで得られた収入は街の修繕費に当てられる。
番組作成自体にも資金がかかるので、様々な種類の番組を平行して放送しているのだ。
エックスは、泣く泣く容赦ない資金作りをしなければならないハンターと、それに巻き込まれるゼロに涙した。
『こうやって彼女は毎朝ラジオ体操に代わり、この奇怪な――失礼。踊りを日課としているのです』
『ネコニャン、ネコニャン』
喪服のようなスーツを着た老人がゼロの横に立ち、カメラに向かって真面目に説明していた。
顔には多大な疲労。
『ネコニャン、ネコニャン』
喪服のようなスーツを着た老人がゼロの横に立ち、カメラに向かって真面目に説明していた。
顔には多大な疲労。
「特Aをクビにした方が良いですよ………ケイン博士」
エックスはシーツで、更に溢れる涙を拭く。
エックスはシーツで、更に溢れる涙を拭く。
21 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 17:58:46.75 ID:VyNGFb7Y0
「おはよう、守備範囲外のような、そうでないような少年!!」
「おはようございます!! お元気!! ですか!! カメリーオは!! 元気です!!」
涙を流す少年の病室に、二人の闖入者が現れた。
結われた長い髪を揺らす女性――ストーム・イーグリードだ。
「おはよう、守備範囲外のような、そうでないような少年!!」
「おはようございます!! お元気!! ですか!! カメリーオは!! 元気です!!」
涙を流す少年の病室に、二人の闖入者が現れた。
結われた長い髪を揺らす女性――ストーム・イーグリードだ。
エックスは奇妙だが関係者が見ると、非常に感動的な番組が映るテレビを消した。
「お土産だ。初めて作ったんだが、口に合うかは解らない。良かったらどうぞ」
「お気遣いありがとうございます」
イーグリードはベッドの横の椅子に座りながら、エックスに茶色のバスケットを手渡す。
尻と腰を揺らす少女――カメリーオもその横に座った。
「お気遣いありがとうございます」
イーグリードはベッドの横の椅子に座りながら、エックスに茶色のバスケットを手渡す。
尻と腰を揺らす少女――カメリーオもその横に座った。
バスケットの中を覗くと、黄色いスポンジケーキがいくつか入っていた。
「綺麗ですねー。ほんと、イーグリードさんはお菓子作りが得意ですね。それじゃあ、いただきます」
言いながら、エックスはケーキの一つを口に入れる。
「綺麗ですねー。ほんと、イーグリードさんはお菓子作りが得意ですね。それじゃあ、いただきます」
言いながら、エックスはケーキの一つを口に入れる。
「一応、私も女なので」
少年の賛美に、ポニーテールのレプリロイドは何とも取れない反し方をした。
「とっても、おいしいです」
「そうかい」
イーグリードは、横のカメリーオに窓のブラインドを開けるように、手で合図する。
頷いた元気の良い少女が、窓に取り付けた紐を引き、病室は朝日に照らされた。
少年の賛美に、ポニーテールのレプリロイドは何とも取れない反し方をした。
「とっても、おいしいです」
「そうかい」
イーグリードは、横のカメリーオに窓のブラインドを開けるように、手で合図する。
頷いた元気の良い少女が、窓に取り付けた紐を引き、病室は朝日に照らされた。
「アイちゃんは、来てないんだな」
長い髪を揺らしながら、意外そうな顔をして病室を見回す。
当然ながら個人病室の狭い空間には、小柄な少女の姿は無い。
長い髪を揺らしながら、意外そうな顔をして病室を見回す。
当然ながら個人病室の狭い空間には、小柄な少女の姿は無い。
「〝ちゃん〟……? あ、はい。来てくれたんですけど、なんか他の病棟に行きました。用事があるとか」
「用事とな。どこか、悪いんだろうか………おい、いらない子のランクに爆進してる奴! 探して来い」
意外そうな顔を、少女の身を心配した顔に変えて、イーグリードはカメリーオに命ずる。
「用事とな。どこか、悪いんだろうか………おい、いらない子のランクに爆進してる奴! 探して来い」
意外そうな顔を、少女の身を心配した顔に変えて、イーグリードはカメリーオに命ずる。
23 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 18:00:11.10 ID:VyNGFb7Y0
「カメリーオは、いらなくないもん!! でも、怖いから行きます!! 探してきちゃいます!!」
女の言葉に憤慨するが、どこか可愛い少女は渋々席を立つ。
「カメリーオは、いらなくないもん!! でも、怖いから行きます!! 探してきちゃいます!!」
女の言葉に憤慨するが、どこか可愛い少女は渋々席を立つ。
「悔しい……こんな奴に……! ワタシの特殊兵器が弱点なのに!! では、クリムゾン!!」
そして意味不明な事を言いながら、カメリーオが病室を出た。
そして意味不明な事を言いながら、カメリーオが病室を出た。
元気の塊である少女は直ぐに帰ってきた。
「いましたー!! 偉いカメリーオは探してきました!! ペンギンはいたよ!!」
大声を発しながら、カメリーオは帰還する。満足そうに頷くイーグリード。
「でかした。で、愛しきアイちゃんはどこに?」
「いましたー!! 偉いカメリーオは探してきました!! ペンギンはいたよ!!」
大声を発しながら、カメリーオは帰還する。満足そうに頷くイーグリード。
「でかした。で、愛しきアイちゃんはどこに?」
「産婦人科に!!」
「――ぴゃあああああああああ!!」
鳥の鳴き声――奇声に近い悲鳴。鷲は鷹のように鳴くのだろうか。
エックスは、病室に置かれた水差しから水を飲んでいたが、全て空中に噴出す。
鳥の鳴き声――奇声に近い悲鳴。鷲は鷹のように鳴くのだろうか。
エックスは、病室に置かれた水差しから水を飲んでいたが、全て空中に噴出す。
「貴様ぁ!! 貴様!! 貴様!! 貴様!! きさまぁああああああああああああああ!!」
「知らないです!! 本当に知らないです!! 絶対、絶対しらないです!! 知らないの!!」
二人が病室で叫ぶ。
片方は怨嗟の声を。もう片方は弁解の声を。
「知らないです!! 本当に知らないです!! 絶対、絶対しらないです!! 知らないの!!」
二人が病室で叫ぶ。
片方は怨嗟の声を。もう片方は弁解の声を。
「殺してやる!! 私のアイちゃんを孕ませるとは!! お腹、ぽっこりにさせるとは!!」
「誤解だと思いますよ!! 何かの勘違いだと思いますよ!! 絶対に!!」
エックスは訳が解らず青ざめる。
「誤解だと思いますよ!! 何かの勘違いだと思いますよ!! 絶対に!!」
エックスは訳が解らず青ざめる。
24 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 18:01:12.65 ID:VyNGFb7Y0
「ぶち殺してやる!! ゼロが妊娠する前に、貴様という存在を!! 私が『仲間』を守るのだ!!」
「かっこいい事を言うと、僕が悪いみたいになるじゃないですか!?」
鼻先にアームパーツを突きつける。銃口から出るのは怒りの竜巻だろう。
冷や汗を垂らしながらエックスは更に抗議する。
「ぶち殺してやる!! ゼロが妊娠する前に、貴様という存在を!! 私が『仲間』を守るのだ!!」
「かっこいい事を言うと、僕が悪いみたいになるじゃないですか!?」
鼻先にアームパーツを突きつける。銃口から出るのは怒りの竜巻だろう。
冷や汗を垂らしながらエックスは更に抗議する。
「そのとおり、お前は悪だ!! ――死ね!!」
イーグリードは聞く耳を持たない。
最近このパターンばかりの様な気がすると思いながら、エックスはまた死を覚悟した。
イーグリードは聞く耳を持たない。
最近このパターンばかりの様な気がすると思いながら、エックスはまた死を覚悟した。
「何……………してる……の?」
意外にも、救いの手が出た。
新たな訪問者――ペンギーゴが哀れな少年を救済する。
意外にも、救いの手が出た。
新たな訪問者――ペンギーゴが哀れな少年を救済する。
「アイちゃーん!! 待っててね、今からこいつを殺すから!! ひゃっはぁ!!」
イーグリードが狂気の声を出しながら、バスターに力を込めた。
イーグリードが狂気の声を出しながら、バスターに力を込めた。
「ふざけるな………馬鹿……鳥……。エックス……何事なの……これは?」
狂った思想に囚われている女を少年から剥がしながら、ペンギーゴが問う。
「ア、アイちゃんが、産婦人科に行ったってカメリーオが言ったら…………」
狂った思想に囚われている女を少年から剥がしながら、ペンギーゴが問う。
「ア、アイちゃんが、産婦人科に行ったってカメリーオが言ったら…………」
「見られた…………」
エックスの言葉に、ペンギーゴは顔をトマトの様に真っ赤にした。
それを見てまたイーグリードが奇声を発する。
「ぴゃああああああああああああ!!」
エックスの言葉に、ペンギーゴは顔をトマトの様に真っ赤にした。
それを見てまたイーグリードが奇声を発する。
「ぴゃああああああああああああ!!」
「あの、アイちゃん……その、子供………出来たの? 失礼かもしれないけど、誰の子?」
「お前の子だよ、クズ!! 神が許しても、この私の正義の心が許さない!! 一秒でも早く地獄に逝け!!」
しどろもどろなエックスの質問に、狂女の怒声が重なり、病室は混沌と化した。
「お前の子だよ、クズ!! 神が許しても、この私の正義の心が許さない!! 一秒でも早く地獄に逝け!!」
しどろもどろなエックスの質問に、狂女の怒声が重なり、病室は混沌と化した。
正義の心を持つ者の言葉には、あまりに過激なものだ。
27 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 18:02:44.70 ID:VyNGFb7Y0
「――は? …………子供? いったい…………何のこと?」
本人の言葉はあまりに軽かった。
混乱する他の二人。カメリーオは病室の隅で、すやすやと眠っていた。
「――は? …………子供? いったい…………何のこと?」
本人の言葉はあまりに軽かった。
混乱する他の二人。カメリーオは病室の隅で、すやすやと眠っていた。
「え? だって、アイちゃん、産婦人科に行ったんでしょ?」
こんがらがる思考をそのまま疑問に、エックスは赤くなる少女に問いかけた。
こんがらがる思考をそのまま疑問に、エックスは赤くなる少女に問いかけた。
「あれは…………その………えと…………あれが……きたの……」
「へ? 何が?」
「生理………」
それを言ったきり、ペンギーゴはますます赤くなり押し黙る。
「へ? 何が?」
「生理………」
それを言ったきり、ペンギーゴはますます赤くなり押し黙る。
――沈黙。
「ちょっと……初潮の時期は……きても……良かったんだけど……遅くて……」
その時期は個人差があり、かなり時間がかかる可能性もある。
エックスは己の愚問に顔を赤くし、イーグリードは目を何故かキラキラさせ、頬を赤くした。
「それで………やっときて……。対処の仕方………わかんなかったから………たまたま非常勤のライトに……」
「も、もういいよアイちゃん。ごめんなさい」
その時期は個人差があり、かなり時間がかかる可能性もある。
エックスは己の愚問に顔を赤くし、イーグリードは目を何故かキラキラさせ、頬を赤くした。
「それで………やっときて……。対処の仕方………わかんなかったから………たまたま非常勤のライトに……」
「も、もういいよアイちゃん。ごめんなさい」
「レプリロイドに、生理が何で来るんですか………」
気まずい雰囲気に、いつのまにか起きたカメリーオの空気が読めない発言。
気まずい雰囲気に、いつのまにか起きたカメリーオの空気が読めない発言。
「――カメリーオ君、ちょっと」
イーグリードがそんな少女に手招きした。
面白い事でもあるのか、とカメレオン型レプリロイドは喜んで向かう。
イーグリードがそんな少女に手招きした。
面白い事でもあるのか、とカメレオン型レプリロイドは喜んで向かう。
「はぁっ!!」
「ありがとうございます!!」
前に立った少女に、イーグリードは回し蹴りを喰らわした。
「ありがとうございます!!」
前に立った少女に、イーグリードは回し蹴りを喰らわした。
30 名前:竜巻のお見舞い[] 投稿日:2006/10/17(火) 18:04:19.78 ID:VyNGFb7Y0
「な、なんか欲しいものある? ほら、おめでたい事だし。お赤飯でも作ろうか」
エックスは、赤くなりながら少女に優しく微笑みかけた。
「欲しい………もの…………」
ペンギーゴが、少年の言葉を反芻する。
「な、なんか欲しいものある? ほら、おめでたい事だし。お赤飯でも作ろうか」
エックスは、赤くなりながら少女に優しく微笑みかけた。
「欲しい………もの…………」
ペンギーゴが、少年の言葉を反芻する。
――そして、微笑しながら言った。
「エックスの………赤ちゃん……かな。………えへへ」
「エックスの………赤ちゃん……かな。………えへへ」
「ぴゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「やっぱり、こうなるか……」
奇声と嘆息。
「やっぱり、こうなるか……」
奇声と嘆息。
「ありえない………」
会議室の机の上にケインが立つ。
右手には、病院が破壊されたという報告書。
会議室の机の上にケインが立つ。
右手には、病院が破壊されたという報告書。
――左手にはロープ。
「博士ー、こんちはー。捕まえ切ったんで、新しいメカニロイドの図鑑下さいよー」
入室したマックは、上司のとんでもない姿をみた。
入室したマックは、上司のとんでもない姿をみた。
「離してくれ!! 私は死ぬんだ!!」
「らめぇぇ!! 自殺なんか、らめぇええ!! ロープは捕まえるものなの!! 自殺に使っちゃ、らめぇ!!」
「らめぇぇ!! 自殺なんか、らめぇええ!! ロープは捕まえるものなの!! 自殺に使っちゃ、らめぇ!!」
正しい空気の読み方
26 名前:先ほどの短編「竜巻のお見舞い」とコラボレートしてみました。[] 投稿日:2006/10/17(火) 21:14:53.10 ID:qYuNdU8i0
【正しい空気の読み方】
【正しい空気の読み方】
「はい、カット! お疲れ様でしたー!」
「………………ィェァ」
「………………ィェァ」
威勢のいいプロデューサーの声に、特A級ハンターは、力無く拳をあげた。
指先は綺麗に丸められており、猫のようになっている。
指先は綺麗に丸められており、猫のようになっている。
「……それじゃ……帰ります……お先に……」
「はーい、来週もよろしくねー!」
「はーい、来週もよろしくねー!」
ゼロは疲れきっていた。始まりは、冗談で踊っていたダンスをクワンガーに見られたこと。
それがあちこちで言いふらされ、気が付いたら芸人の真似事をさせられていた。
それがあちこちで言いふらされ、気が付いたら芸人の真似事をさせられていた。
「……ハンター……やめようかな……」
予算の確保だか知らないが、なぜ生き恥を晒さねばならない。
身の振り方を考えるときかも知れなかった。
身の振り方を考えるときかも知れなかった。
「いかんぞ……オレ……これじゃ……腹黒と……キャラかぶる……」
――それは、それで……
「ん? 何か言ったか?」
「ふふふ、お疲れ様って言ったのさ」
「ふふふ、お疲れ様って言ったのさ」
ゼロがしょぼくれた顔を上げると、そこには友人のイーグリードが居た。
別段、驚かない。彼女も悩み相談室の収録があり、終わったら落ち合おうと話してあったのだ。
別段、驚かない。彼女も悩み相談室の収録があり、終わったら落ち合おうと話してあったのだ。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/17(火) 21:16:51.21 ID:qYuNdU8i0
「お前、よくやるよなぁ」
「なにが?」
「相談室だよ。テレビなんて、もう真っ平だ」
「お前、よくやるよなぁ」
「なにが?」
「相談室だよ。テレビなんて、もう真っ平だ」
大袈裟に肩をすくめるゼロ。その髪を、イーグリードはそっと撫でる。
「時として――地位を捨ててでも――ピエロになる。それがテレビに出るってことさ」
「それがお前の流儀か?」
「今回は、たまたまゼロに向かないスタイルだったかも知れない。
けれど、いつかきっと自分とカメラの距離を把握できるさ」
「そんなもんかな……ありがとう、イーグリード」
「気にしないで。こう見えて、テレビで相談室とかやってるんだよ?」
「それがお前の流儀か?」
「今回は、たまたまゼロに向かないスタイルだったかも知れない。
けれど、いつかきっと自分とカメラの距離を把握できるさ」
「そんなもんかな……ありがとう、イーグリード」
「気にしないで。こう見えて、テレビで相談室とかやってるんだよ?」
微笑む友人を見て、ゼロは張っていた気を緩めた。
子猫のように目を細め、彼女の胸元に鼻先を埋める。
タートルネックの茶色いセーターからは、ほのかにハーブの匂いがした。
子猫のように目を細め、彼女の胸元に鼻先を埋める。
タートルネックの茶色いセーターからは、ほのかにハーブの匂いがした。
エックスのいる病院に入ったとき、ゼロの携帯が鳴った。……相手はハンター協会。
「すみません、病院は携帯を切ってください」
「ああ、悪い。イーグリード、先に行っててくれ」
「ああ、悪い。イーグリード、先に行っててくれ」
メカニロイドの看護士に謝り、ゼロは病院の外へ出た。
用件は、単純な仕事の話だった。スケジュールの微調整……どうでもいい。
適当に切り上げたのに、五分近くかかってしまった。
ゼロは今度こそ携帯を切り、大好きな少年の待つ病室へと、大股で歩き出した……そのとき。
用件は、単純な仕事の話だった。スケジュールの微調整……どうでもいい。
適当に切り上げたのに、五分近くかかってしまった。
ゼロは今度こそ携帯を切り、大好きな少年の待つ病室へと、大股で歩き出した……そのとき。
「こんにちは!! 蹴られたけど元気いっぱい!! カメリーオです!!」
「……」
「……」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/17(火) 21:17:56.15 ID:qYuNdU8i0
何事も無かったかのように通り過ぎるゼロ。なおもカメリーオは、尻尾をふりふり着いてくる。
何事も無かったかのように通り過ぎるゼロ。なおもカメリーオは、尻尾をふりふり着いてくる。
「ねえねえ!! ねえってば!! えーと……」
「?」
「?」
うるさいカメリーオが黙り込んだので、思わずゼロも足を止めた。
ややあって、彼女は怖ろしい言葉を口にする。
ややあって、彼女は怖ろしい言葉を口にする。
「思い出した!! 『がちれず』のゼロさん!!」
刹那、宙を舞う緑のニット帽。カメリーオの眼前に灼熱の刃が迫る。
それが顔に刺さる寸前、彼女はゼロの腕を掴んで食い止めた。
それが顔に刺さる寸前、彼女はゼロの腕を掴んで食い止めた。
「とわったあ!? ゼロさん!! 何するの!?」
「……くっ……ぬうっ!!」
「……くっ……ぬうっ!!」
無言で力を込めるゼロ。そこに在るは、純粋な闘志。
さすがのカメリーオが、必死で言い訳する。
さすがのカメリーオが、必死で言い訳する。
「待って!! 違うの!! クワンガーの旦那が、ね!?」
「そうか……安心しろ、ヤツにもすぐ後を追わせてやる」
「やめて!! 三つ編みが!! ……焦げる!! …………焦げちゃう、っ!!」
「そうか……安心しろ、ヤツにもすぐ後を追わせてやる」
「やめて!! 三つ編みが!! ……焦げる!! …………焦げちゃう、っ!!」
限界まで体をしならせ、カメリーオはセイバーを振り払った。
観葉植物の鉢が割れ、土が飛び散る。
カメリーオはお構いなしと、人間離れした跳躍で、天井に貼りついた。
観葉植物の鉢が割れ、土が飛び散る。
カメリーオはお構いなしと、人間離れした跳躍で、天井に貼りついた。
「ハァ、ハァ、ハァ……私の!! 特技は!! 防災用スプリンクラーに掴まること!!」
「ぜっ、ぜっ、ぜえっ……そりゃあ……スゴイな……」
「ぜっ、ぜっ、ぜえっ……そりゃあ……スゴイな……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/17(火) 21:19:04.21 ID:qYuNdU8i0
ミニスカートからフンドシを覗かせつつ、得意げに呟くカメリーオ。
だがゼロの闘志は収まらない。セイバーをしまうと、今度はバスターを溜め始めた。
ミニスカートからフンドシを覗かせつつ、得意げに呟くカメリーオ。
だがゼロの闘志は収まらない。セイバーをしまうと、今度はバスターを溜め始めた。
「なんで!? 『がちれず』って、大事な友達を言うんでしょ!?
ゼロさん、イーグリードの旦那が好きなんでしょ!? …………だよね?」
「黙れ」
ゼロさん、イーグリードの旦那が好きなんでしょ!? …………だよね?」
「黙れ」
バスターから一条の光が漏れる。それは次第に束となり、力を伴って溢れ始める。
カメリーオは必死で叫んだ。
カメリーオは必死で叫んだ。
「真面目なヤツだって!! 支えて!! やるんだって!! そうでしょ!?」
「黙れと言って――……!?」
「――……ゼロ」
「黙れと言って――……!?」
「――……ゼロ」
膨れ上がった光弾は、放たれる直前に霧散した。
ゼロの華奢な体を、誰かが背中から抱きしめている。
ゼロの華奢な体を、誰かが背中から抱きしめている。
「そんな風に言ってくれるなんて……ありがとう、ゼロ……」
「いい、いっ、イーグリード!! いつからそこに?」
「いい、いっ、イーグリード!! いつからそこに?」
いつの間にか、そこには鷲型のレプリロイドがいた。
なぜか鼻息が首筋にかかって、くすぐったい。
なぜか鼻息が首筋にかかって、くすぐったい。
ゼロは、この状況を前向きに検討した結果
『イーグリードは、発砲しようとする友人を止めているのだ』
と解釈した。それを踏まえて交渉に入る。
『イーグリードは、発砲しようとする友人を止めているのだ』
と解釈した。それを踏まえて交渉に入る。
「あの、放してくれ。バスター撃たないからさ、うん」
「ゼロ……わかってる。君は一番の友達だよ」
「ゼロ……わかってる。君は一番の友達だよ」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/17(火) 21:20:04.21 ID:qYuNdU8i0
ゼロはピコピコと耳を動し、なんとか抜け出す隙を探ろうとする。
なのに、イーグリードが押し付ける豊かな胸は、まったく離れることがない。
ゼロの顔を伝う汗が、どんどん冷たくなっていく。
ゼロはピコピコと耳を動し、なんとか抜け出す隙を探ろうとする。
なのに、イーグリードが押し付ける豊かな胸は、まったく離れることがない。
ゼロの顔を伝う汗が、どんどん冷たくなっていく。
「ホラ、えっと、オレとお前は友達……なんだよな?」
「もちろん友達だよ……性的な意味で」
「もちろん友達だよ……性的な意味で」
無慈悲な宣告に、ゼロは声にならない絶叫を上げた。
「ううっ、アイちゃんが……ゼロォォォォォ!!!
ゼロは、ゼロはお嫁になんか行っちゃダメだよううぅぅぅ!!」
「なにワケわかんねーこと言ってやがぁ……きゃあっ!?」
「はむはむ……くすん」
「ちょ、耳をかじるな……ゃあっ……だ、ダメっ、やめて……っ!?
誰か、誰か助けてぇぇぇぇ!!」
ゼロは、ゼロはお嫁になんか行っちゃダメだよううぅぅぅ!!」
「なにワケわかんねーこと言ってやがぁ……きゃあっ!?」
「はむはむ……くすん」
「ちょ、耳をかじるな……ゃあっ……だ、ダメっ、やめて……っ!?
誰か、誰か助けてぇぇぇぇ!!」
天井から柱の影へ移動していたカメリーオは、こっそりと立ち去った。
触らぬ鷲に祟り無し。
触らぬ鷲に祟り無し。
病院の玄関を出るとき、黒づくめのハンターたちとすれ違った。おそらく騒ぎを聞きつけてきたのだろう。
礼儀正しいカメリーオは、きちんと彼らに挨拶し――なぜか不幸にも、ロープで捕獲されたのだった。
礼儀正しいカメリーオは、きちんと彼らに挨拶し――なぜか不幸にも、ロープで捕獲されたのだった。
【完】