レプリロイドは電気羊の夢を見るか
349 名前:1/5[] 投稿日:2006/10/18(水) 12:13:05.69 ID:YdgVosgy0
僕はひとり、牢獄の中にいる。
そこが牢獄であることを、なぜだか僕は知っている。
そこは暗く、狭い。可視分野や可聴領域を切り替えても、周りの状況は何一つ把握することができ
ない。左右前後に迫る壁に、何らかのプロテクトがかけられているらしい。イレギュラーを収容する
鑑別所によく似ているが、そうではない。それも、どうしてか確信できる。
僕は、そこから逃げたい。何とかして逃げなくてはと感じる。僕の腕部がひとりでにバスターへと変
換され、出力を上昇させるためのチャージ音がただ部屋の中に響く。エマージェンシーコールによ
く似たその聞き慣れたいななきが、今はやけに耳に障る。
僕は無造作に銃口を上げる。目の前の壁に向かい、留まらせたエネルギーを一気に放出しようと
する。しかし、トリガーを引くことはできない。バスターの使用を禁則行為の一つとして数えるように、
頭脳チップが何者かの手によって書き換えられているのだ。何度目かのエラーを確認したのち、
僕は絶望と共に右腕部のバスターを収納した。
「戦いたいか」
突然、後方から言葉を投げかけられる。咄嗟に振り向くと、扉すら存在しない部屋の中に、いつの
間にか人影が現れていた。視覚機能が自動的に暗視用へと切り替わり、人工網膜が即座に目の
前の人物へと焦点を合わせる。識別探知にひっかからないところをみると、どうやらレプリロイドで
はないらしい。見たことのない顔だ。検索にも該当しない。
なのに、どうしてだろう。僕はひどく、その人間を憎く感じる。
「当然だな。お前はそのために作られた」
メモリには該当しないが、記憶はある。その妙な感覚に僕は眩暈を伴う混乱を憶える。仮想心理
の処理速度が限界値を越えようとしているのかもしれない。原因不明のエラーが何度も人工脳内
部でちかちかと鳴っている。感情を制御できない。苦しい。憎い。憎い。ふと見れば、右手はいつ
の間にか再びバスターを出現させていた。パワーチャージは既に臨界まで到達している。殺そうと
しているのか?僕は、この人を?そこまで考えて、やっとエラーの原因をつきとめることができた。
禁則行為抵触だ。項1-13、『ヒトに危害を加えることを禁ず』。
僕はひとり、牢獄の中にいる。
そこが牢獄であることを、なぜだか僕は知っている。
そこは暗く、狭い。可視分野や可聴領域を切り替えても、周りの状況は何一つ把握することができ
ない。左右前後に迫る壁に、何らかのプロテクトがかけられているらしい。イレギュラーを収容する
鑑別所によく似ているが、そうではない。それも、どうしてか確信できる。
僕は、そこから逃げたい。何とかして逃げなくてはと感じる。僕の腕部がひとりでにバスターへと変
換され、出力を上昇させるためのチャージ音がただ部屋の中に響く。エマージェンシーコールによ
く似たその聞き慣れたいななきが、今はやけに耳に障る。
僕は無造作に銃口を上げる。目の前の壁に向かい、留まらせたエネルギーを一気に放出しようと
する。しかし、トリガーを引くことはできない。バスターの使用を禁則行為の一つとして数えるように、
頭脳チップが何者かの手によって書き換えられているのだ。何度目かのエラーを確認したのち、
僕は絶望と共に右腕部のバスターを収納した。
「戦いたいか」
突然、後方から言葉を投げかけられる。咄嗟に振り向くと、扉すら存在しない部屋の中に、いつの
間にか人影が現れていた。視覚機能が自動的に暗視用へと切り替わり、人工網膜が即座に目の
前の人物へと焦点を合わせる。識別探知にひっかからないところをみると、どうやらレプリロイドで
はないらしい。見たことのない顔だ。検索にも該当しない。
なのに、どうしてだろう。僕はひどく、その人間を憎く感じる。
「当然だな。お前はそのために作られた」
メモリには該当しないが、記憶はある。その妙な感覚に僕は眩暈を伴う混乱を憶える。仮想心理
の処理速度が限界値を越えようとしているのかもしれない。原因不明のエラーが何度も人工脳内
部でちかちかと鳴っている。感情を制御できない。苦しい。憎い。憎い。ふと見れば、右手はいつ
の間にか再びバスターを出現させていた。パワーチャージは既に臨界まで到達している。殺そうと
しているのか?僕は、この人を?そこまで考えて、やっとエラーの原因をつきとめることができた。
禁則行為抵触だ。項1-13、『ヒトに危害を加えることを禁ず』。
350 名前:2/5[] 投稿日:2006/10/18(水) 12:13:46.78 ID:YdgVosgy0
「さあ、出番だ。行って、戦ってこい。そして」
動作不全を起こしている僕を嘲りを交え眺めつつ、その人物は歌うように喋り続ける。耳を塞ぎた
い衝動にかられるも、体がうまく機能しない。混濁する視界の中、僕はただ呆然と目の前の憎しみ
と対峙している。笑みをたたえた薄い唇がよどみなく動く光景がやけにくっきりと見え、加えて心理
機能の誤作動がひどい。いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだ。意味を持たない感情が言
語ライブラリを通過し脳裏をよぎる。僕は違う。死にたくない。悔しい。嫌いだ。嫌いだ。嫌いだ。こ
こから出して。助けて。ああ。誰か助けて。僕は。
「この私の、礎となれ」
僕は人間の道具じゃない。
「さあ、出番だ。行って、戦ってこい。そして」
動作不全を起こしている僕を嘲りを交え眺めつつ、その人物は歌うように喋り続ける。耳を塞ぎた
い衝動にかられるも、体がうまく機能しない。混濁する視界の中、僕はただ呆然と目の前の憎しみ
と対峙している。笑みをたたえた薄い唇がよどみなく動く光景がやけにくっきりと見え、加えて心理
機能の誤作動がひどい。いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだ。意味を持たない感情が言
語ライブラリを通過し脳裏をよぎる。僕は違う。死にたくない。悔しい。嫌いだ。嫌いだ。嫌いだ。こ
こから出して。助けて。ああ。誰か助けて。僕は。
「この私の、礎となれ」
僕は人間の道具じゃない。
「終わったぞ。エックス」
暗闇の中、セーフティモード解除の信号が視界の端に表示された。一瞬のホワイトアウトの直後、
眼前に現れた白亜の天井を見上げながら、僕は補助AIの読み上げるメンテナンス報告に耳を傾
けつつ、傍らに立つケイン博士に、はい、と一つだけ相槌をうった。
―――――生理心理、オールグリーン。
―――――行動心理、オールグリーン。
―――――性格心理、オールグリーン。……
次々と続く報告の中、仮想心理の項を確認する。当然のごとく、全機能に異常は見受けられない。
でも、あれは。克明に思い出すことのできる、あの部屋の光景を思い出す。あれは一体なんだった
のだろう?
「いつも悪いな。任務の間を縫って来てもらって。これからまた出動辞令だろう?」
メンテナンスポッドの操作を続けながら、ケイン博士はこちらに語りかけてくる。老体に似合わない
鋭い目つき。しゃんと背筋の通った長身の体。そして口元に蓄えた豊かな髭が、彼の厳粛とした
雰囲気を見事に修飾している。ロボット工学の権威と呼ばれるに値する威風堂々たる姿だ。
「いいえ。メンテナンスは、気持ちよくて好きですから」
「それは何よりだよ。君にとって定期検査はことのほか重要だ。もし君の身体機能に重大な故障が
あったら、私たちの技術では直すことが出来るかどうかすら定かではないのだから」
暗闇の中、セーフティモード解除の信号が視界の端に表示された。一瞬のホワイトアウトの直後、
眼前に現れた白亜の天井を見上げながら、僕は補助AIの読み上げるメンテナンス報告に耳を傾
けつつ、傍らに立つケイン博士に、はい、と一つだけ相槌をうった。
―――――生理心理、オールグリーン。
―――――行動心理、オールグリーン。
―――――性格心理、オールグリーン。……
次々と続く報告の中、仮想心理の項を確認する。当然のごとく、全機能に異常は見受けられない。
でも、あれは。克明に思い出すことのできる、あの部屋の光景を思い出す。あれは一体なんだった
のだろう?
「いつも悪いな。任務の間を縫って来てもらって。これからまた出動辞令だろう?」
メンテナンスポッドの操作を続けながら、ケイン博士はこちらに語りかけてくる。老体に似合わない
鋭い目つき。しゃんと背筋の通った長身の体。そして口元に蓄えた豊かな髭が、彼の厳粛とした
雰囲気を見事に修飾している。ロボット工学の権威と呼ばれるに値する威風堂々たる姿だ。
「いいえ。メンテナンスは、気持ちよくて好きですから」
「それは何よりだよ。君にとって定期検査はことのほか重要だ。もし君の身体機能に重大な故障が
あったら、私たちの技術では直すことが出来るかどうかすら定かではないのだから」
351 名前:3/5[] 投稿日:2006/10/18(水) 12:15:04.84 ID:YdgVosgy0
「はい」
「レプリロイドの開発が進む現段階でも、君の中にはいまだ多くのブラックボックスが眠っている。
常にそれを自覚しておきなさい。無茶はいけない」
「博士」
「なんだね」
「メンテナンスの間だけ、博士は少し饒舌になりますね」
「…話を混ぜ返すんじゃない」
憮然とする男を尻目にポッドから床へと降り立ち、人工の体組織の動きを確認しつつ伸びをしてみ
せる。補助AIは既に全項目を読了し終え、こちらの入力待ちを行っている状態だ。声には出さず、
思考だけで命令を行う。
―――――現時刻を報告いたします。ただ今の時刻、1532.06,96。
「もう行きます。イチロクマルゴから召集命令が出ていますので」
「そうかね。健闘を祈っている」
「ありがとうございます」
ポッドの整備に忙しいドクターと視線を交わすこともなく、僕は通路へと続くゲートへと歩みを進め
る。前に立てば空気圧の弱まる音とともに自動で扉が開き、別れの挨拶もそこそこに、僕はメンテ
ナンスルームの外へ出たところでふと立ち止まる。
「…博士」
「なんだ」
「僕の身体機能や仮想心理が何らかのかたちで、意思する以外の方法で動いたとしたら、僕はど
うなるでしょうか」
ゲートをはさんで、僕は部屋の中を振り返った。ドクターが作業の手を止め、かがめていた体を起
こしこちらに目を向けるのが見えた。若干の驚きをたたえた眼差しが、鋭さを増しながらこちらを直
視している。
「はい」
「レプリロイドの開発が進む現段階でも、君の中にはいまだ多くのブラックボックスが眠っている。
常にそれを自覚しておきなさい。無茶はいけない」
「博士」
「なんだね」
「メンテナンスの間だけ、博士は少し饒舌になりますね」
「…話を混ぜ返すんじゃない」
憮然とする男を尻目にポッドから床へと降り立ち、人工の体組織の動きを確認しつつ伸びをしてみ
せる。補助AIは既に全項目を読了し終え、こちらの入力待ちを行っている状態だ。声には出さず、
思考だけで命令を行う。
―――――現時刻を報告いたします。ただ今の時刻、1532.06,96。
「もう行きます。イチロクマルゴから召集命令が出ていますので」
「そうかね。健闘を祈っている」
「ありがとうございます」
ポッドの整備に忙しいドクターと視線を交わすこともなく、僕は通路へと続くゲートへと歩みを進め
る。前に立てば空気圧の弱まる音とともに自動で扉が開き、別れの挨拶もそこそこに、僕はメンテ
ナンスルームの外へ出たところでふと立ち止まる。
「…博士」
「なんだ」
「僕の身体機能や仮想心理が何らかのかたちで、意思する以外の方法で動いたとしたら、僕はど
うなるでしょうか」
ゲートをはさんで、僕は部屋の中を振り返った。ドクターが作業の手を止め、かがめていた体を起
こしこちらに目を向けるのが見えた。若干の驚きをたたえた眼差しが、鋭さを増しながらこちらを直
視している。
352 名前:4/5[] 投稿日:2006/10/18(水) 12:15:39.97 ID:YdgVosgy0
「なにか、あったのかね」
「…いえ。ですが、心理機能の働きを、自分でも把握しきれない状態が時たまに」
「…君の精神構造は複雑だからな」
博士の言葉に、僕は頷く。『慈愛』と『闘争心』という相反する二つの精神プログラムを積んでいる
僕の体には、それ以外にも他のレプリロイドには搭載されていない概念がいくつか組み込まれて
ある。君はより「人間」に近い。自身のことを何も把握していなかった僕に、そう言ったのはたしか
会ったばかりのケイン博士だ。
「…悩み事か」
「すみません。こんなこと、博士に報告すべき事項では」
「いや、いい。『思い悩む』ことも、エックス、君の持つ特性のひとつだ。話を聞くことによって心身管
理が滞りなく進むなら、これもメンテの一環と考えられなくはない」
「悩むなんて、そんなたいそうなものでは。少し、気になったんです」
メンテナンス中に見た光景のことを話すべきか迷い逡巡していると、精神感応アプリケーションを
持たないはずの博士が機敏にこちらの言いたいことを察知し応えを返してくれる。やはり、人間と
いうのはすごい。今更ながらに実感する。
「君の持つ機能は、たしかにその思考回路を著しく御し難くさせるケースのあるものだ。思考によっ
て反射速度が遅れたり、言語ライブラリが一時的にエラーを起こしたりすることがあるだろう。それ
らも全て、人間的な自己矛盾を内包した君の精神が引き起こすプログラム中の疾患なのだよ」
「それはレプリロイドにとって、必要な機能とは思えません」
「しかし、私たちが期待を寄せているのもその機能だ」
間髪を入れずに返ってくる応え。処理速度を越え返答に戸惑う僕に対して、博士は静かに言葉を
続ける。
「気づいていないかもしれないが、君は君が思っている以上に我々の可能性を示唆してくれる存
在なのだよ。…気づいたことがあれば、いつでも私に話してくれて構わない。できることであればな
んでも協力しよう。君の精神にはそれだけの価値がある」
「ありがとうございます。…ですが」
「なんだね」
「なにか、あったのかね」
「…いえ。ですが、心理機能の働きを、自分でも把握しきれない状態が時たまに」
「…君の精神構造は複雑だからな」
博士の言葉に、僕は頷く。『慈愛』と『闘争心』という相反する二つの精神プログラムを積んでいる
僕の体には、それ以外にも他のレプリロイドには搭載されていない概念がいくつか組み込まれて
ある。君はより「人間」に近い。自身のことを何も把握していなかった僕に、そう言ったのはたしか
会ったばかりのケイン博士だ。
「…悩み事か」
「すみません。こんなこと、博士に報告すべき事項では」
「いや、いい。『思い悩む』ことも、エックス、君の持つ特性のひとつだ。話を聞くことによって心身管
理が滞りなく進むなら、これもメンテの一環と考えられなくはない」
「悩むなんて、そんなたいそうなものでは。少し、気になったんです」
メンテナンス中に見た光景のことを話すべきか迷い逡巡していると、精神感応アプリケーションを
持たないはずの博士が機敏にこちらの言いたいことを察知し応えを返してくれる。やはり、人間と
いうのはすごい。今更ながらに実感する。
「君の持つ機能は、たしかにその思考回路を著しく御し難くさせるケースのあるものだ。思考によっ
て反射速度が遅れたり、言語ライブラリが一時的にエラーを起こしたりすることがあるだろう。それ
らも全て、人間的な自己矛盾を内包した君の精神が引き起こすプログラム中の疾患なのだよ」
「それはレプリロイドにとって、必要な機能とは思えません」
「しかし、私たちが期待を寄せているのもその機能だ」
間髪を入れずに返ってくる応え。処理速度を越え返答に戸惑う僕に対して、博士は静かに言葉を
続ける。
「気づいていないかもしれないが、君は君が思っている以上に我々の可能性を示唆してくれる存
在なのだよ。…気づいたことがあれば、いつでも私に話してくれて構わない。できることであればな
んでも協力しよう。君の精神にはそれだけの価値がある」
「ありがとうございます。…ですが」
「なんだね」
354 名前:5/5[] 投稿日:2006/10/18(水) 12:17:18.02 ID:YdgVosgy0
「僕のこの機能が、ヒトの意思にそぐわないものとなった時」
再び、光景のフラッシュバック。最後の思考がありありと表出される。
僕は人間の道具じゃない。
「その時は、僕もイレギュラーの一つとして数えられるのでしょうか」
「僕のこの機能が、ヒトの意思にそぐわないものとなった時」
再び、光景のフラッシュバック。最後の思考がありありと表出される。
僕は人間の道具じゃない。
「その時は、僕もイレギュラーの一つとして数えられるのでしょうか」
しばし、双方の間に沈黙が落ちる。
「…そうならないことを、信じている」
やがて表情の見えない顔をこちらに向けて、博士はいくばくか声色を落として言った。
「君ならば、わかるだろう。『信じる』ということの意味が」
「…はい」
胸に残るわだかまりを抑えつつ、僕はひとまずの相槌を打った。補助AIが脳内でアラームを鳴ら
し、召集の時間が迫っていることを告げる。行かなければ。今は迷っている時ではない。
「博士。ありがとうございました」
「いや、構わない。任務成功を祈っている」
「はい。行ってまいります」
その言葉を皮切りに、メンテナンスルームのゲートが閉まる。僕は司令室までの道のりを歩みな
がら、あの人影の言葉を再び思い出し、そしてなぜだかまた、不快な気分に陥っていた。
行って、戦ってこい。
そしてこの私の、礎となれ。
「…そうならないことを、信じている」
やがて表情の見えない顔をこちらに向けて、博士はいくばくか声色を落として言った。
「君ならば、わかるだろう。『信じる』ということの意味が」
「…はい」
胸に残るわだかまりを抑えつつ、僕はひとまずの相槌を打った。補助AIが脳内でアラームを鳴ら
し、召集の時間が迫っていることを告げる。行かなければ。今は迷っている時ではない。
「博士。ありがとうございました」
「いや、構わない。任務成功を祈っている」
「はい。行ってまいります」
その言葉を皮切りに、メンテナンスルームのゲートが閉まる。僕は司令室までの道のりを歩みな
がら、あの人影の言葉を再び思い出し、そしてなぜだかまた、不快な気分に陥っていた。
行って、戦ってこい。
そしてこの私の、礎となれ。
『レプリロイドは電気羊の夢を見るか』
次回、「ワイリーライツ・シンドローム」続刊(?)予定
次回、「ワイリーライツ・シンドローム」続刊(?)予定
ボスんち
■ボスんち
ハンター放送10chで、18:00に放送する番組。
ハンター放送10chで、18:00に放送する番組。
ハンター組織の一員が毎回選ばれ、番組の進行役を務める。
番組の内容は、これも選ばれたハンター組織のレプリロイドの家に、取材をしに行くと云うもの。
視聴者は、個性豊かなレプリロイドの生活を〝安全〟に観る事ができ、番組の人気は意外に高い。
番組の内容は、これも選ばれたハンター組織のレプリロイドの家に、取材をしに行くと云うもの。
視聴者は、個性豊かなレプリロイドの生活を〝安全〟に観る事ができ、番組の人気は意外に高い。
元はストーム・イーグリード氏の『竜巻!! あなたの晩御飯』だったが、問題を起こし一時休止。
罪の無いメカニロイドを襲撃したという事で、イーグリード氏は降板。
取材対象をメカニロイドからレプリロイドに。――加えて、ハンターの職員に限定された。
罪の無いメカニロイドを襲撃したという事で、イーグリード氏は降板。
取材対象をメカニロイドからレプリロイドに。――加えて、ハンターの職員に限定された。
番組自体も大きく変更し、夕食だけではなく、多岐に渡って取材するものになった。
進行役を毎回変更するというのも、手探りで〝まともな〟進行役を探すという、ハンターの意思により決定された。
進行役を毎回変更するというのも、手探りで〝まともな〟進行役を探すという、ハンターの意思により決定された。
ディレクターであるDrケインは、イーグリード氏による公共電波ジャックにより、精神を患い入院。
一時意識を喪失したそうだが、今は日々回復に向かってると言う事である。
新しいディレクターは、マック氏とVAVA氏の二人。
一時意識を喪失したそうだが、今は日々回復に向かってると言う事である。
新しいディレクターは、マック氏とVAVA氏の二人。
ちなみに、ハンターとして人気の高い、アイシー・ペンギーゴの愛観番組でもある。
エンディングテーマが、エックス氏の好きなアニメ番組をインスパイアされた物であるとの報告。
エンディングテーマが、エックス氏の好きなアニメ番組をインスパイアされた物であるとの報告。
- 女性エイトより抜粋
家庭用より少し大きなテレビに、映像の光が灯る。
『ボスんち』
「こんちはー!!」
白い壁で構成された建築物。
博物館を思わせる堅牢な家――その玄関の扉を元気が溢れる声が、ノックの変わりに叩く。
白い壁で構成された建築物。
博物館を思わせる堅牢な家――その玄関の扉を元気が溢れる声が、ノックの変わりに叩く。
家の戸口前に、尻尾と腰を揺らす少女が小さな影を引き連れていた。
小さな影は羽の生えたカメラ。機体の横に、2カメと文字が書かれていた。
小さな影は羽の生えたカメラ。機体の横に、2カメと文字が書かれていた。
時節の挨拶から、遅れて、濃茶色の扉が開く。
色白の家から吐き出されたのは、野暮ったいコートの下に水着を着込んだ少女だ。
色白の家から吐き出されたのは、野暮ったいコートの下に水着を着込んだ少女だ。
「まぁ、まぁ、まぁ、誰かと思ったらカエル色の子じゃないですかー。――帰れ」
少女――オクトパルドはカメリーオの顔を見るなり、顔を歪める。
少女――オクトパルドはカメリーオの顔を見るなり、顔を歪める。
「何用なのですか? ――早く帰れ」
薄桃の唇から罵倒を生み出しながら、目障りな少女の後ろに黒い影が浮遊している事に気づく。
胡乱げな目線で、それについて問うた。
薄桃の唇から罵倒を生み出しながら、目障りな少女の後ろに黒い影が浮遊している事に気づく。
胡乱げな目線で、それについて問うた。
「撮影です!! ボスんちです!! こんにちは!!」
その場で何度も飛び跳ねながら、カメリーオは答える。
少女の行為と言動が原因で、眉間に皺を寄せるオクトパルドは、顎に人差し指を当てながら考え込んだ。
その場で何度も飛び跳ねながら、カメリーオは答える。
少女の行為と言動が原因で、眉間に皺を寄せるオクトパルドは、顎に人差し指を当てながら考え込んだ。
「ボスんち………あぁ、番組ですか」
一寸黙り、合点がいったのか、手の平に拳を打ち付ける。
そして扉を大きく開き、カメレオン型の少女に手招きした。
一寸黙り、合点がいったのか、手の平に拳を打ち付ける。
そして扉を大きく開き、カメレオン型の少女に手招きした。
「カメリーオさん、歓迎いたしますのですよ? おほほっ」
オクトパルドの表情は、瞬時に柔和なものになり、カメリーオと主にカメラに笑みを振り撒く。
オクトパルドの表情は、瞬時に柔和なものになり、カメリーオと主にカメラに笑みを振り撒く。
「ブリッ娘、うぜぇ………………………」
口元を触手で押さえて笑う少女に、入れ替わって、顔を歪ませるカメリーオが家に入っていった。
口元を触手で押さえて笑う少女に、入れ替わって、顔を歪ませるカメリーオが家に入っていった。
『変態属性を付けられた、お困りの貴方に!! クワガタ印のふんどしを――』
『パロマからのお詫びとお願い――』
『幼女図鑑、11月号。今月の付録は等身大ペンギン型――』
『パロマからのお詫びとお願い――』
『幼女図鑑、11月号。今月の付録は等身大ペンギン型――』
「おおぉ!! でかい家ですね!! 心は結構狭いのに!! でかい家です!!」
玄関を抜けると、開けた空間が二人の前に現れる。
ブルーの壁紙で囲まれたリビングは、通常の家のそれより数十倍も広大だ。
玄関を抜けると、開けた空間が二人の前に現れる。
ブルーの壁紙で囲まれたリビングは、通常の家のそれより数十倍も広大だ。
しかし、部屋の中央に大きな水槽が設営されていて、異様な空間を醸し出している。
カメリーオは顔を引きつらせた。
カメリーオは顔を引きつらせた。
「余計なお世話だ。――えぇ、やっぱり家は大きいのに限りますのですよ」
こちらは平然として、作られた笑顔を貼り付る軍服の少女は、カメラに向かって口を開いた。
そのままカメラと一緒に歩き、プールの横にあるソファに座る。
こちらは平然として、作られた笑顔を貼り付る軍服の少女は、カメラに向かって口を開いた。
そのままカメラと一緒に歩き、プールの横にあるソファに座る。
「でも!! いきなり!! プールがあるとは!! 何事ですか!!」
目前に広がる青い空間を改めて目にしながら、カメレオンのメットを被った少女が聞いた。
「病気?」
小首を傾げる。
目前に広がる青い空間を改めて目にしながら、カメレオンのメットを被った少女が聞いた。
「病気?」
小首を傾げる。
「うるせぇよ。――海洋生物的に、お水は随時必要なのですよ? 干上がっちゃうので」
革張りのソファに深く腰掛けながら、オクトパルドは片手をあげる。
またもカメリーオの顔が歪んだ。
革張りのソファに深く腰掛けながら、オクトパルドは片手をあげる。
またもカメリーオの顔が歪んだ。
「レプリロイド…………なのに?」
気味が悪いとばかりに、水着の少女から少し離れる。
プールの底にはサンゴなどオブジェが沈んでおり、健康的な海を模していた。流石に魚などは居ない。
気味が悪いとばかりに、水着の少女から少し離れる。
プールの底にはサンゴなどオブジェが沈んでおり、健康的な海を模していた。流石に魚などは居ない。
「えーと、インタビューみたいな状況と体勢になったので!! BGMでもかけますね!! いえい!!」
「はぁ? BGM? 編集でやって下さいのですよ。――やかましい」
発言を無視して、取り成す笑顔。
意図不明なプールから目を離し、カメリーオは何処からか黒い箱を取り出す。
「はぁ? BGM? 編集でやって下さいのですよ。――やかましい」
発言を無視して、取り成す笑顔。
意図不明なプールから目を離し、カメリーオは何処からか黒い箱を取り出す。
黒でペイントされたプレイヤーのカバーを開いて、円形のディスクを投入した。
『さかな、さかな、さかな~さかなを食べーると―――』
「はぁっ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
オクトパルドは座った状態から、鋭い蹴りを少女に叩き込んだ。
「あ、ありがとうございます!!」
オクトパルドは座った状態から、鋭い蹴りを少女に叩き込んだ。
『これで貴方も捕獲マスター! 女の子モン……メカニロイドを瞬時に――』
『アイちゃーん!! 見ているかい!? イーグリードだよー!!』
『おぉい! どうなってる!? なんで奴がCMに現れた!?』
『私はこの場を借りて、告白するよ!! ――私の子供を産んでく――』
『おぉい! どうなってる!? なんで奴がCMに現れた!?』
『私はこの場を借りて、告白するよ!! ――私の子供を産んでく――』
「いてて………。さて、気を取り直して!! オクトパルドさんの私生活でも!!」
頬を押さえながら、涙目になるカメリーオ。
頬を押さえながら、涙目になるカメリーオ。
「ふんっ。――私生活ねぇ。……趣味っつても、特に無いのですよ? 映画鑑賞ぐらい?」
そう言って、ベレー帽の少女はソファの横に置いてある――プールがある部屋なのでシュールだ――棚に手を伸ばす。
そう言って、ベレー帽の少女はソファの横に置いてある――プールがある部屋なのでシュールだ――棚に手を伸ばす。
「どーこ、やったかなー」
呟きながら、棚を探る。背中に備えた6本の触手も手伝った。
オクトパルドは物を手に取っては、虚空に投げる。
呟きながら、棚を探る。背中に備えた6本の触手も手伝った。
オクトパルドは物を手に取っては、虚空に投げる。
その一つが、カメリーオの膝に乗った。
笛を持った少年が表紙の漫画。少女は屋台の事を思い出し、大変気分を害した。
本をプールに投げ入れる。
笛を持った少年が表紙の漫画。少女は屋台の事を思い出し、大変気分を害した。
本をプールに投げ入れる。
「あ、これなのです」
達成の声をあげ、オクトパルドは何かを両手に、前に掲げてみせた。
達成の声をあげ、オクトパルドは何かを両手に、前に掲げてみせた。
「私の魂なのですよー」
頬を染め、オクトパルドは両手を組み、星に願う少女の様な格好をする。
頬を染め、オクトパルドは両手を組み、星に願う少女の様な格好をする。
「私の男性タイプって、部下をしごいてしごきまくるレプリロイドですねー」
聞いてもいないのに、交際願望を打ち明ける。
「…………………うわぁ」
カメリーオは更に不愉快になった。
聞いてもいないのに、交際願望を打ち明ける。
「…………………うわぁ」
カメリーオは更に不愉快になった。
「P.T.!! P.T.!!」
自分一人で盛り上がり、両手を回し暴れるタコ型の少女。
プール周辺をランニングでもしそうな勢いに、カメリーオは後退る。
自分一人で盛り上がり、両手を回し暴れるタコ型の少女。
プール周辺をランニングでもしそうな勢いに、カメリーオは後退る。
「女の子……………ですよね?」
進行役の少女の憂慮は、オクトパルドには届かない。
触手も振り回し、ゲストの少女は、女性が歌うべきではない歌詞を楽しそうに口ずさんだ。
進行役の少女の憂慮は、オクトパルドには届かない。
触手も振り回し、ゲストの少女は、女性が歌うべきではない歌詞を楽しそうに口ずさんだ。
「お前に良し! すげぇ良し!」
「良くないよ!! あなたらしすぎて詰まらないです!! つまらないofつまらない!! もうやめて、タコ!!」
このままだと、自分も巻き込まれると思い、カメリーオは罵声で待ったをかける。
「良くないよ!! あなたらしすぎて詰まらないです!! つまらないofつまらない!! もうやめて、タコ!!」
このままだと、自分も巻き込まれると思い、カメリーオは罵声で待ったをかける。
「どぅっ!!」
「矢車さん!!」
くるくると汗臭い世界を回っていた少女は、助走をつけた飛び蹴りで、返答した。
「矢車さん!!」
くるくると汗臭い世界を回っていた少女は、助走をつけた飛び蹴りで、返答した。
『アイちゃーん!! 私を愛してくれー!! 一緒に快楽の空を飛ぼう!!』
『マック! なんとかしてくれ!!』
『ハンターの番組に乱入するなんて、相当の通信スキルがいるぞ………』
『マック! なんとかしてくれ!!』
『ハンターの番組に乱入するなんて、相当の通信スキルがいるぞ………』
『アイちゃーん!!――パロマからのお詫びとおね――アイちゃーん!!』
『いい加減にしてくれ!!』
『うおおお………操作を受け付けない。完全に掌握されている。凄いな』
『いい加減にしてくれ!!』
『うおおお………操作を受け付けない。完全に掌握されている。凄いな』
「あ、他にもDVDがありますね!! なんだろな!! なんだろな!!」
腹部を押さえながら、勝手に棚を触る。
腹部を押さえながら、勝手に棚を触る。
「勝手に触らないで下さいなのですよー。――触るなって」
無遠慮な態度に、オクトパルドが嘆息しながら、制した。
無遠慮な態度に、オクトパルドが嘆息しながら、制した。
「なんだこれー!!」
かかる腕を振り払い、能天気な少女は黒いパッケージのケースを見つける。
オクトパルドは顔を青ざめさせ、それを奪おうとした。
かかる腕を振り払い、能天気な少女は黒いパッケージのケースを見つける。
オクトパルドは顔を青ざめさせ、それを奪おうとした。
「うおおおおい!? お止め!!」
少女が叫ぶ。オクトパルドは顔を青ざめさせ、それを奪おうとした。
構わず、カメリーオは表題を見た。
少女が叫ぶ。オクトパルドは顔を青ざめさせ、それを奪おうとした。
構わず、カメリーオは表題を見た。
ケースには『SMの手ほどき――少年少女へ拘束の仕方』と表記されていた。
空気が凍る。
空気が凍る。
「え、SM? はぁ? えぇ? オクトパルドさぁん…………あなたは」
器用な事に、顔をひきつらせながら笑う。
器用な事に、顔をひきつらせながら笑う。
手を振り回し、慌てて弁解するオクトパルド。
「ちょ、ちょっと興味があるだけですのよー!! 触手を持つ者の無邪気な好奇心なのです!」
「ちょ、ちょっと興味があるだけですのよー!! 触手を持つ者の無邪気な好奇心なのです!」
「ふひひひ、SMだって!! 映画の内容から、おかしいとは思ったんですよね」
カメリーオの笑いは、おかしなものに発展する。
カメリーオの笑いは、おかしなものに発展する。
「ふひひっ! 馬鹿なんでしょ!! オクトパルドさん、馬鹿なんでしょ!! ふひひっ!!」
蔑むような目をし、赤くなる少女を言葉で責めた。
蔑むような目をし、赤くなる少女を言葉で責めた。
「どうせ、プールも水責めとかに使うんでしょ! おかしなタコ!! ふひひっ!!」
番組の進行役はカメラを忘れ、腹部を痛みではなく、笑いの発作で押さえる。
それに対して、羞恥から顔をトマトのように赤くしたオクトパルドは、拳を怒りで小刻みに揺らす。
番組の進行役はカメラを忘れ、腹部を痛みではなく、笑いの発作で押さえる。
それに対して、羞恥から顔をトマトのように赤くしたオクトパルドは、拳を怒りで小刻みに揺らす。
「水着じゃなくて、ボンテージでも着たらどうですか!!」
場の空気の読めない少女は、怒りの引き金を呆気なく引かせた。
場の空気の読めない少女は、怒りの引き金を呆気なく引かせた。
「お黙りー!!」
「お嬢様!!」
右の拳が唸りをあげ、カメリーオの顔に叩き込まれた。
「お嬢様!!」
右の拳が唸りをあげ、カメリーオの顔に叩き込まれた。
一瞬のカット。
次に現れたのは、平常な顔をしたオクトパルドと、吹き飛んだカメリーオが映る。
次に現れたのは、平常な顔をしたオクトパルドと、吹き飛んだカメリーオが映る。
「あ、そうだ!! 視聴者にエロいの一つ!! お願いします!! 視聴率!! アップ、アップ!!」
「はぁ? ……………もうグダグダじゃないですか」
起き上がり、再び頬を押さえながら、涙目のカメリーオが頼んだ。
やっと通常の思考へ帰ってきた少女が、怪訝な顔をする。
「はぁ? ……………もうグダグダじゃないですか」
起き上がり、再び頬を押さえながら、涙目のカメリーオが頼んだ。
やっと通常の思考へ帰ってきた少女が、怪訝な顔をする。
「シンちゃん、サービス、サービスゥ!!」
「……あー、もう帰って欲しいのですよー」
下らない撮影から、疲れが溜まる。
カメレオンの少女は言動がおかしくなり、オクトパルドは番組を終わらせたくなる。
「……あー、もう帰って欲しいのですよー」
下らない撮影から、疲れが溜まる。
カメレオンの少女は言動がおかしくなり、オクトパルドは番組を終わらせたくなる。
「ほいっ」
疲れた顔をしたオクトパルドが、投げやりに、赤き触手から白い液体を噴きかけた。
大量の白い奔流が、カメリーオの顔と全身を汚す。
どろどろとした液体が、生々しい音と共に張り付いた。
疲れた顔をしたオクトパルドが、投げやりに、赤き触手から白い液体を噴きかけた。
大量の白い奔流が、カメリーオの顔と全身を汚す。
どろどろとした液体が、生々しい音と共に張り付いた。
「うぇぇ……・・・なんですかぁ、これ。ボクが、あっぷあっぷしてます………」
粘性のある液体を、拭いながらカメリーオが抗議する。
粘性のある液体を、拭いながらカメリーオが抗議する。
「何かの液。アルカリ性なのですよ。――お死に」
「ぎゃあ!!」
「ぎゃあ!!」
白いノイズが入り、映像が乱れた。
そして番組は暗転。
そして番組は暗転。
『アイちゃーん!! アイちゃーん!! アイちゃーん!! アイちゃーん!!』
『さーて、マックに行くかぁ………』
『まってぇ!! マック、オレを置いてかないでぇ!!』
『さーて、マックに行くかぁ………』
『まってぇ!! マック、オレを置いてかないでぇ!!』
『ぴょおおおおおおおおお!! アイちゃーん、愛してる!!!!!!』
『ふわーん!! オレの初めての番組なのにぃ!!』
『VAVAが泣いた!?』
『ふわーん!! オレの初めての番組なのにぃ!!』
『VAVAが泣いた!?』
~ボスんち EDテーマ~
『オーワタ オワタ オーワタ オワタ はちゃめちゃラッキーDAY――』
『昇進のトビラ トージタ トジタ ケインも卒倒だ(oh-ベイベー)』
『いつでも何処でも、大騒ぎ!!』
『昇進のトビラ トージタ トジタ ケインも卒倒だ(oh-ベイベー)』
『いつでも何処でも、大騒ぎ!!』
「ケイン博士………もう長くないな」
「どうかしたのか?」
「今日も発作を起こしたんだ。テレビを見てたらしいが、急に――」
「どうかしたのか?」
「今日も発作を起こしたんだ。テレビを見てたらしいが、急に――」
パンドラスイッチ
461 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:38:10.28 ID:nscwGFmC0
薄暗く、真っ白な部屋。
中央に設えた寝台に座る影と、その横に立つ影。
気のない顔のエックスと、白衣の少女――ライトだ。
中央に設えた寝台に座る影と、その横に立つ影。
気のない顔のエックスと、白衣の少女――ライトだ。
試験管を片手に、真面目な顔の少女が口を開く。
「さてエックス。男性機能を検査しようか」
小柄なライトが倒錯感を与えるような言葉を放ち、少年が顔を歪めた。
「さてエックス。男性機能を検査しようか」
小柄なライトが倒錯感を与えるような言葉を放ち、少年が顔を歪めた。
「うぅー……本当にやるんですかぁ?」
両手を組み、エックスは上目で少女の表情を伺う。
ライトは呆れたように鼻を鳴らした。
両手を組み、エックスは上目で少女の表情を伺う。
ライトは呆れたように鼻を鳴らした。
「当たり前だろう? ちゃんと確認しないと、色々と問題がある」
手にする試験管を揺らし、少年の股間に視線を落とした。
手にする試験管を揺らし、少年の股間に視線を落とした。
「べ、別に、問題ないなんか無いですよ……」
顔を赤くし、組んだ手で少女の視線の先を隠した。羞恥で、自分の顔は横に移す。
顔を赤くし、組んだ手で少女の視線の先を隠した。羞恥で、自分の顔は横に移す。
462 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:39:25.22 ID:nscwGFmC0
「じゃあ、最近射精したのはいつだ?」
研究室の壁を見るエックスに、咎めるような声をあげるライト。
「じゃあ、最近射精したのはいつだ?」
研究室の壁を見るエックスに、咎めるような声をあげるライト。
「こ、この前の検査の後……一回ぐらいです……」
更に顔を赤くし、少年は首を振る。
「ほらみろ」
両肩をすくめる。
更に顔を赤くし、少年は首を振る。
「ほらみろ」
両肩をすくめる。
「戦闘とかの損傷で不具合があるかもしれないから、定期的に調べろと言っただろう」
メットの無い頭を叩き、ボディを脱ぐよう指示した。
エックスは不満に唇を尖らせながら、パーツを除装していく。
メットの無い頭を叩き、ボディを脱ぐよう指示した。
エックスは不満に唇を尖らせながら、パーツを除装していく。
「只でさえお前達は色んな所に駆り出されて、怪我してくるんだから」
やれやれと呟き、ライトはゴム製の手袋をはめた。
薬品の匂いがきつい棚から、薄桃色の液体が入った瓶を取り出す。
やれやれと呟き、ライトはゴム製の手袋をはめた。
薬品の匂いがきつい棚から、薄桃色の液体が入った瓶を取り出す。
「だから、わざわざ私が検査したりするんじゃないか」
ボディ下の薄着も脱いでいく少年の前で、液体を手袋に注ぐ。
粘着質両手をべとべとにし、狙いを外した零れるたのは、糸を引きながら床に落下した。
ボディ下の薄着も脱いでいく少年の前で、液体を手袋に注ぐ。
粘着質両手をべとべとにし、狙いを外した零れるたのは、糸を引きながら床に落下した。
「……私だって、ほんとは恥ずかしいんだぞ。でも、仕事と割り切っている」
ライトは頬を少しだけ赤らめ、裸になるエックスに近づく。
ライトは頬を少しだけ赤らめ、裸になるエックスに近づく。
「――お前もそうしろ」
そして耳元に囁いた。
「は、はいぃ……」
そして耳元に囁いた。
「は、はいぃ……」
463 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:40:54.30 ID:nscwGFmC0
「………あうぅう!」
「よくもまぁ、ここまで溜め込めたもんだ」
試験管に溜まる白い液体。
少年の性器を右手でしごき、丸い口にびゅるびゅると吐き出させる。
勢いよく射精するのを見てライトは苦笑する。
「よくもまぁ、ここまで溜め込めたもんだ」
試験管に溜まる白い液体。
少年の性器を右手でしごき、丸い口にびゅるびゅると吐き出させる。
勢いよく射精するのを見てライトは苦笑する。
「ペンギーゴとは、何にも無いのか? 一つ屋根の下で暮らしてると云うのに」
首を傾げながら、手首のスナップを止めない。
射精直後でありながら、迫り来る快感にエックスは呻いた。
首を傾げながら、手首のスナップを止めない。
射精直後でありながら、迫り来る快感にエックスは呻いた。
「も、もう………いいでしょう? ……あぁっ」
「一回で検査が終わると? お前が健康的な生活をしてくれれば、こんな事にはならないんだ」
ひくつく竿の下にある睾丸を揉みながら、ライトは理不尽な抗議をした。
「一回で検査が終わると? お前が健康的な生活をしてくれれば、こんな事にはならないんだ」
ひくつく竿の下にある睾丸を揉みながら、ライトは理不尽な抗議をした。
「こんなに溜めて……。これだけで出せるんじゃないか?」
薄く笑いながら力を込める度に、袋は小さな指に精液が大量に詰まってる事を教える。
薄く笑いながら力を込める度に、袋は小さな指に精液が大量に詰まってる事を教える。
「ああああああっ!?」
「何度目だろ? ちょっと指が疲れたぞ」
少女のような顔をしたレプリロイドが喉を反らして叫び、不釣合いと言える男性器から白い奔流が迸る。
べちゃりと、何本目かのガラス器具の底に張り付く。
「何度目だろ? ちょっと指が疲れたぞ」
少女のような顔をしたレプリロイドが喉を反らして叫び、不釣合いと言える男性器から白い奔流が迸る。
べちゃりと、何本目かのガラス器具の底に張り付く。
465 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:42:07.79 ID:nscwGFmC0
「ああうっ! また……ああっ!!」
「これぐらいで良いかな。――問題無し、と」
横で放出する精液を尻目に、白衣の少女は胸のポケットからペンを取り出した。
傍に置いてあったファイルに検査結果を書き込む。
「これぐらいで良いかな。――問題無し、と」
横で放出する精液を尻目に、白衣の少女は胸のポケットからペンを取り出した。
傍に置いてあったファイルに検査結果を書き込む。
「ううっ………」
そして緩慢にペニスを握った手を動かし、輸精管に残った精液も吐き出させた。
そして緩慢にペニスを握った手を動かし、輸精管に残った精液も吐き出させた。
「検査終了。お疲れ様、だ」
あっさりと手を離し、ゴム手袋を隅に設置されたゴミ箱に放る。
薄黄の放物線は、見事に黒い箱の底へと降下した。
あっさりと手を離し、ゴム手袋を隅に設置されたゴミ箱に放る。
薄黄の放物線は、見事に黒い箱の底へと降下した。
「尾てい骨が痛いです………」
身体をガクガクと揺らして、荒い息を付くエックス。
足元には試験管に入りきらなかったのが、白い水溜りとなっていた。
身体をガクガクと揺らして、荒い息を付くエックス。
足元には試験管に入りきらなかったのが、白い水溜りとなっていた。
「射精は脊髄反射だからなぁ。一日でこんだけ出せば、そうなるだろ」
ライトは呟きながら、簡素な机の前にあるこれまた簡素なパイプの椅子に座る。
ライトは呟きながら、簡素な机の前にあるこれまた簡素なパイプの椅子に座る。
「嫌だったら健康的な生活をしろ。――私は別に、この検査を毎月やっても良いがな」
丁寧に折り畳まれた服を着る少年の背中に、意地悪な笑みと揶揄をぶつける。
「ライト博士ぇ………」
それに対してエックスは少女の様な白い背中を震わせ、横顔から抗議の目を反した。
丁寧に折り畳まれた服を着る少年の背中に、意地悪な笑みと揶揄をぶつける。
「ライト博士ぇ………」
それに対してエックスは少女の様な白い背中を震わせ、横顔から抗議の目を反した。
466 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:44:02.19 ID:nscwGFmC0
「あー、雑誌なんかが無かったら、これを使っても良いぞ」
何を思ったのかライトは立ち上がり、黒のミニスカートの中に手を突っ込むと、ショーツを引き抜いた。
そして少年に投げる。
突然の事に、慌てて受け取るエックスの両手にレースの付いた白い下着が収まった。
「あー、雑誌なんかが無かったら、これを使っても良いぞ」
何を思ったのかライトは立ち上がり、黒のミニスカートの中に手を突っ込むと、ショーツを引き抜いた。
そして少年に投げる。
突然の事に、慌てて受け取るエックスの両手にレースの付いた白い下着が収まった。
「それで物足りなかったら、今度言ってくれ」
パンツとライトを交互に見比べ、口を魚のように開閉する少年に言う。
パンツとライトを交互に見比べ、口を魚のように開閉する少年に言う。
「責任を取ってくれるなら――」
少女の顔が、まるで娼婦のように遷り変わる。
少女の顔が、まるで娼婦のように遷り変わる。
淫靡な笑みが、
「こんな小さな身体だが、ペンギーゴよりかは満足させてやれると思うぞ?」
そう言った。
「こんな小さな身体だが、ペンギーゴよりかは満足させてやれると思うぞ?」
そう言った。
「はぁ………。もう、博士ったら」
闇が溢れ、月明かりが降り注ぎ、淡く沈む大公園。
身体と精神の疲れに消沈する顔のエックスが、並木道を歩く。
闇が溢れ、月明かりが降り注ぎ、淡く沈む大公園。
身体と精神の疲れに消沈する顔のエックスが、並木道を歩く。
「どーしよ、これ」
ボディの上に掛けられた、亜麻色に染められてあるジャンパーのポケット。
そこから取り出される、少女の下着。
ボディの上に掛けられた、亜麻色に染められてあるジャンパーのポケット。
そこから取り出される、少女の下着。
468 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:46:46.30 ID:nscwGFmC0
「捨てる訳にもいかないし………あー」
白の布を見つめ、今日起きた事に深くため息を吐いた。
「捨てる訳にもいかないし………あー」
白の布を見つめ、今日起きた事に深くため息を吐いた。
「おい」
家路に帰る少年に、暗闇からの人影が立ちふさがる。
闇色の長身。
「へ? 誰ですか?」
エックスが目を凝らすと、頭部に鷲型のメットが備われてる事に気付く。
家路に帰る少年に、暗闇からの人影が立ちふさがる。
闇色の長身。
「へ? 誰ですか?」
エックスが目を凝らすと、頭部に鷲型のメットが備われてる事に気付く。
「うわぁ………」
少年は影の正体に呻いた。
少年は影の正体に呻いた。
「手短に言おう。――そいつを寄こせ」
影がそれを無視し、右手を目前に向け差し出される。
両者の間に現れた腕。
影がそれを無視し、右手を目前に向け差し出される。
両者の間に現れた腕。
幾ばくかの沈黙。
それが求めるものが何なのか解り、エックスは顔を歪めた。
それが求めるものが何なのか解り、エックスは顔を歪めた。
「えーと………使用用途が解り易いし、倫理的に考えて、答えを出します――お断りしますね」
丁寧な否定を恐怖に引きつる口から吐き出した。
直後に、周囲へとばら撒かれる怒気。
丁寧な否定を恐怖に引きつる口から吐き出した。
直後に、周囲へとばら撒かれる怒気。
幼女愛好の異常者――ストーム・イーグリードは、差し出した腕をバスターに換える。
470 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:49:37.96 ID:nscwGFmC0
「…………っ!? 本気ですか!?」
奇行に、身構えるエックス。
奇行に、身構えるエックス。
「死に急いだな、クズ鉄」
焦燥を滲ます少年の問いには答えず、イーグリードは狂気の笑みを浮かべた。
彼女の口元は、耳まで裂けるかと思える程広がる。
焦燥を滲ます少年の問いには答えず、イーグリードは狂気の笑みを浮かべた。
彼女の口元は、耳まで裂けるかと思える程広がる。
「アイちゃん以外にも手を出すとはな…………ぶち殺す」
「あ、あれは検査なんです。ライト博士が……!」
その言葉に必死の弁解するエックス。
どうして知っているかという疑問は、焦る思考で及ばなかった。
「あ、あれは検査なんです。ライト博士が……!」
その言葉に必死の弁解するエックス。
どうして知っているかという疑問は、焦る思考で及ばなかった。
「はっ! あんな検査が公式にあると思うか? 天然!!」
抗議は、予想外の言葉で一蹴される。
嫌な想像から少年の口から、すがるような言葉が漏れた。
「………………な、無いんですか?」
抗議は、予想外の言葉で一蹴される。
嫌な想像から少年の口から、すがるような言葉が漏れた。
「………………な、無いんですか?」
「ねーよ、馬鹿!!」
怒れる赤の風が広がる。
バスターから放たれた自然の凶器は、数メートルの間合いなど無いに等しい。
バスターから放たれた自然の凶器は、数メートルの間合いなど無いに等しい。
「――ライト博士ぇ!!」
受身も取れず吹き飛ぶ、蒼穹の鉄体。
受身も取れず吹き飛ぶ、蒼穹の鉄体。
471 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:51:11.32 ID:nscwGFmC0
「幼き天使達を誑かす不埒な存在など、この私が去勢してくれる!」
イーグリードは素早い動きで倒れるエックスに接近し、背中を踏みつける。
そして頭部に向けアームパーツを突きつけた。
「幼き天使達を誑かす不埒な存在など、この私が去勢してくれる!」
イーグリードは素早い動きで倒れるエックスに接近し、背中を踏みつける。
そして頭部に向けアームパーツを突きつけた。
「そして死ね! それが貴様の定めだ!!」
「所詮はB級か…………」
夜の空を高く舞った少年を詰り、イーグリードは鼻を鳴らした。
戦闘に時間をかからない。怒りと憎悪に燃えたレプリロイドに敵は無かった。
夜の空を高く舞った少年を詰り、イーグリードは鼻を鳴らした。
戦闘に時間をかからない。怒りと憎悪に燃えたレプリロイドに敵は無かった。
「しかし、何故だか胸に溢れるこの敗北感………」
自分の豊かな乳房がぶら下がる胸を押さえ、女は呟く。
自分の豊かな乳房がぶら下がる胸を押さえ、女は呟く。
「何故だ!? 何故、奴だけ良い思いをする!? 私は――神よ、お前の死を願う!!」
そして頭を抱え、無人の公園で咆哮する。
「これは試練なのか? おのれおのれおのれ……!! クズ共め!! クズ世界め!!」
突然、バスターからストームトルネードを撃ち、周囲を破壊し始めた。
そして頭を抱え、無人の公園で咆哮する。
「これは試練なのか? おのれおのれおのれ……!! クズ共め!! クズ世界め!!」
突然、バスターからストームトルネードを撃ち、周囲を破壊し始めた。
罪の無い木々が嵐によって破砕する。罪の無い公共物が嵐によって蹂躙される。
破壊。粉砕。轟音。
破壊。粉砕。轟音。
――爆発。
「はん?」
特に炎をあげるような物体は無かった。イーグリードは落ち着きを取り戻し、疑問で眉根を寄せる。
「はん?」
特に炎をあげるような物体は無かった。イーグリードは落ち着きを取り戻し、疑問で眉根を寄せる。
473 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 00:54:37.46 ID:nscwGFmC0
連続して火を吐き出す大きな黒い影。
「ハンターの車か」
理由は不明だが、公園に停車させていた自動車に命中したらしい。
炭化するバンが転倒していた。
連続して火を吐き出す大きな黒い影。
「ハンターの車か」
理由は不明だが、公園に停車させていた自動車に命中したらしい。
炭化するバンが転倒していた。
「ご愁傷さま」
肩を竦め、焦げた車体に興味を失ったイーグリードは、その場から離れようとする。
そこで車の傍に、無骨な銀のケースが落ちているのを目に留めた。
肩を竦め、焦げた車体に興味を失ったイーグリードは、その場から離れようとする。
そこで車の傍に、無骨な銀のケースが落ちているのを目に留めた。
訝しげに目を細め、銀色の鞄に歩み寄った。
手に取り、確認もせず凄まじい力で抉じ開ける。
「これは…………」
ケースの内側に敷き詰められた高価なクッション。
紺の贅沢な布の中央に鎮座した、円筒の機械に鷲の目を光らせる。
手に取り、確認もせず凄まじい力で抉じ開ける。
「これは…………」
ケースの内側に敷き詰められた高価なクッション。
紺の贅沢な布の中央に鎮座した、円筒の機械に鷲の目を光らせる。
鉄色の円筒を胸に収め、鞄に設えた内ポケットから書類を抜き取った。
「………旧世代の遺産? ドクター・ワイリー?」
発見者は表紙を読みあげ、次をめくる。
時間をかけて読み進めたイーグリードの肩が、何かの感情で小刻みに揺れる。
発見者は表紙を読みあげ、次をめくる。
時間をかけて読み進めたイーグリードの肩が、何かの感情で小刻みに揺れる。
「ぴょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
――無人の公園全体に鷲の奇声が響き渡った。
――無人の公園全体に鷲の奇声が響き渡った。