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VIPロックマンまとめ

ロックマンX -10-

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だれでも歓迎! 編集
448 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:10:26.48 ID:EVsBXzyI0

「――同じ部屋で良い」
高級感を漂わせる装飾と、機能美を感じる設計をされた広い空間。
中央に女性の裸婦像が置かれたホール。

赤い絨毯を敷き詰めたロビー――森林を抜け、近隣に存在した街のホテルに二人は居た。

カウンターに笑顔で立つ従業員のレプリロイドに、マンドリラーが当然とばかりに言い放った。
時刻は深夜。
訪ねるには非常識な時間だが、宿泊場所は別である。

バレッタで髪を纏めた少女のレプリロイドが、かしこまりましたと答え、端末を操作する。

「同じ部屋って……」
腕を組むマンドリラーの後ろに立つエックスが、彼女の背中に困惑した顔と声を投げた。

「何か問題があるのか?」
横目で少年の顔を受け止める。
マンドリル型の巨大なボディは、玄関付近で鉄色のカーゴに乗せられていた。
丸型な数体の運搬用メカニロイドによって移動されている。

「いや、一応、僕は男なんですけど……。そんでもって、お姉さんは女だし……」
胡乱な瞳を真正面からは受けれず、視線を逸らすエックス。
次に映ったのは、全裸の女性の彫像。
頬を赤らめ視線を引き剥がし、最終的に少年の視界は、真紅の引き物に落ち着いた。


451 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:11:59.47 ID:EVsBXzyI0
「意味が解らん。お前は節約という言葉を知らないようだな」
エックスの言葉に片眉を曲げ、マンドリラーが呆れる。

そこでカウンターの少女が、後ろの棚から鍵を取り出し、客である彼女に手渡した。
「どうも」
「ごっゆくり」
軽い応対を終え、釈然としない顔をするエックスを促し、与えられた部屋に向かった。


「はー、やれやれ」
小さなボストンバックを寝台に投げ、マンドリラーが溜め息をつく。
果物の入ったボウルが置かれた机が居間の窓際に。
その両端に配置される椅子に、どっかりと座り込んだ。

「――何をやってるんだ」
空色をした長袖の首元を緩めながら、玄関でそわそわする少年に声をかける。
「いや……良いのかなぁ、って」
エックスは躊躇しながらも、しかたなく部屋の奥へと足を進める。

「もう2時か……」
マンドリラーは、壁にかけられる時計の針に辟易した。

そして自分のシャツに手をかけると、突然、少年の前で脱ぎだす。
当然、ぎょっとするエックス。


454 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:14:24.29 ID:EVsBXzyI0

酸欠したかのように口を開閉するのを尻目に、腰からベルトを引き抜く。

「疲れたなぁ、もう」
ジーンズのズボンを脱ぎ捨て、ピンクのショーツも引き下ろした。
下半身には何も纏わなくなった。
淡く生えるピンクの恥毛から、エックスは慌てて顔を抑える。

豊かな乳房を覆う下着も剥ぎ取り、一糸纏わぬ女性が居間で完成した。

「シャワー浴びてくる。――何やってんだ、さっきから」
「こ、こ、こっちのセリフです……!」
両目を手で覆い右往左往する少年。
マンドリラーは珍獣でも見たかのような顔をし、風呂場に向かった。

白い足が脱衣所を横切り、浴室のタイルを踏む。
シャワーのノズルを捻って、お湯の奔流を精練された身体に浴びせた。

蛇口から吹き出るシャワーが床を叩く音は、リビングにまで届く。
居間に突っ立つ青き少年は、今度は耳を押さえ、煩悩を制御するよう努めた。

「ありえない」
常識の無い女性に対する呟きを漏らし、彼女の帰還までテレビを観賞している事に決めた。

シャワーは、深夜のバラエティ番組の音で聞こえなくなる。


456 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:15:52.28 ID:EVsBXzyI0

バナナを口にしながら、エックスは椅子に座り、机に肘を突いてくつろいだ。

湯浴みは意外に早く、数十分もしない内に全身に湯気を漂わせるマンドリラーが戻ってきた。

「予想はしてましたけど、ね」
嘆息するエックス。
マンドリラーは肢体にバスタオルこそ巻けど、衣服を着ないまま現れたのだ。

「何だ」
「いえ、なんでも」
疲れに目頭を押さえ、両手を挙げる。降参のようなポーズで出迎えた。

半裸の女は首を傾げながら、髪をもう一つのタオルで乾かす。

「お姉さん……」
急にトーンを落とし、真面目な顔をしたエックスの瞳が、まともにマンドリラーへと向けられた。

「――解ってるよ。私の事だろ」
巻かれたバスタオルを剥がし、髪と同じ色の乳首が載った乳房が零れる。
生まれたままの姿のままベッドに向かい、シーツを纏って寝転んだ。

「私は本をよく読むんだ。――意外かもしれないがな」
少しだけ頬を染め、恥ずかしそうに呟いた。
粗雑な性格と、非常識極まる行動からは、とても想像できない趣味だ。


458 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:17:48.65 ID:EVsBXzyI0
「今の電子化されたのじゃなくて、紙媒体の本が好きだ」
ベッドに投げられたバッグから、大判の本を取り出す。
可愛い絵の載る表紙から察するに、絵本のようだった。

「私の力は大きすぎて、制圧や捕縛向けじゃない。ハンターの頃は、だいたい待機任務だったよ」
絵本をめくり、マンドリラーは苦笑する。
エックスは、彼女とあまり任務をこなしていなかった事を思い出した。

「それで、暇を持て余すのに読書をしてた」
絵本を閉じてバッグに戻す。

「イレギュラーが今回の事件に蜂起した時も、絵本なんか読んでたね」
桃色の長い髪をかき上げ、マンドリラーは過去への光景に目を細める。
エックスは事件という単語に、幻痛を胸の奥で感じた。

「――数日前にアルマージが、採掘場からかなり古びた本を持ってきた」
再び鞄をまさぐり、白い腕は本を掴み取る。
先ほどのそう古くない絵本とは違い、えらく年季の入った本がエックスの視界に現れる。

「内容は、現実にはありえない物でな。――まぁ、ファンタジーに分類される〝小説〟だと……思ってた」
時の流れに沿り、黄ばむ表紙を撫で上げる。
埃や虫ですら出そうな本を、思案顔で見つめるマンドリラー。

その彼女の言葉に、少年は違和感を覚えた。


461 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:20:52.04 ID:EVsBXzyI0
「思ってた?」
「これは小説じゃなくて、日記……いや、調査記録なんだよ」
シーツを抱き寄せ、マンドリラーが視線を窓に移動する。
カーテンを引いてないガラスの戸からは、漆黒の空と、この街の煌びやかな生活光が見える。

「青いレプリロイドが世界を何度も救う……何かの伝説、もしくは誰かの妄想としか考えられないな」
自分の言葉に苦笑しながら、彼女はこの本の見解を述べた。
青いレプリロイド。
話の人物と同じ色であるエックスの顔は、怪訝なものだった。

「事実、そんな世界的な事件は聞いたことも無いし、本部のデータベースにも存在していなかったしな」
マンドリラーは事も無げに言って、話を一旦切る。
寝台の背もたれに寄り掛かり、両手を下腹部の辺りで組んだ。

「隊長は間違っていない」
再開した時には、マンドリラーの話は本の考察から離れ、内容が変わる。

「人間の汚い部分は良く知っている。本を読むだけにな」
またも、胸に痛みが走るエックス。
軍服を着込んだ少女の事を思い出した。

「レプリロイドだけの世界に、私は惹かれた」
「お姉さん……」
――イレギュラー達の目標。
異端と化した同僚たちの顔が思い浮かび、自分を罵倒する。


462 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:23:54.64 ID:EVsBXzyI0
俯くエックスは、泣き出しそうな顔をした。
膝に置かれ両手に力を込め、涙するのを必死に堪えた。

「安心しろ。敵ではない、そう言ったろ」
マンドリラーは少年に笑いかける。
その言葉で、エックスは幾分安堵した。ほっとした顔を床から上げる。

「私は騙されていた。――クワンガーにな」
笑みが消え、忌々しげな表情。

「採掘場。あそこで、人間と離別した形のレプリロイドの世界を〝建設〟する。――そう聞いていた」
「…………え?」
「オクトパルドが死んで、やっと隊長に〝久しぶりに〟会えた」
聞き覚えの無い話。
少年は困惑し、マンドリラーは話を続ける。

「世界中の人間を虐殺して作り上げる……私はそんな事は聞いていない」
彼女の怒りをたたえた双眸が、虚空を睨む。
合点がいく。確かに彼女は騙されていたのだろう。
エックスはマンドリラーの心情を考えると、居たたまれなくなった。

「それ……で」
「――問い詰めた。結果が、あのワン公がキレて、森で追いかけっこだ」
自嘲する。
結局、彼女の求めた答えは得られなかったのだろう。
寝転ぶ女の態度が、エックスをそう結論付けた。


463 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:25:35.44 ID:EVsBXzyI0
「隊長は……隊長なんだろうか……」

―――徐々に壊れている。
ライトの言葉が真実味を帯びてくる。
無意識に、隊長、とエックスは心の中で呟いていた。

「話を本に戻そう」
握られた本を揺らす。本当に埃が舞った。

「確かに、隊長の思惑と私のが食い違ったのが、一番の理由だが――」
思慮深げなマンドリラーの瞳が、一世代を超えていそうな本の表紙に移る。
「それを後押ししたのは、この本なんだ」

彼女はいったん躊躇い、そして言葉を吐く。
「これに書かれているのは、事実なんじゃないか……」
「……? どういう、ことでしょう?」
少年は首を傾げる。

「青いレプリロイドが世界を救う」
夢物語の一節を紡ぐ、マンドリラーのピンクの唇。
世界を救う――エックスには願ってもない事だ。

「最後のページだ」
マンドリラーが、触れば分解してしまいそうな本を放り投げる。
エックスは慌てて椅子から立ち上がり、放物線の先を受け取った。


464 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:28:02.19 ID:EVsBXzyI0
彼女に従い、本の最終ページを開いた。

<調査対象DRN.001ロックマン>

「……馬鹿な」
頭をハンマーで殴打された感覚。
少年の口から漏れたのは、事実否定の声。

「お前が普通のレプリロイドでない事は、入隊時から薄々感じてはいた」

自分の名が書かれた本。
空想である筈の、青いレプリロイドが世界を救う物語。

――自分は一体何者だろうか。
そう考えた所で答えは出ない。
音を立てて回る思考による頭痛だけが、少年に返ってきた。

「妙にハンター本部からの待遇がいい。何故か、隊長やクワンガーが固執する」

完成には程遠いパズルのピースが少しだけはまる。

「そして、特Aだったイレギュラーを三人屠った――その力」

――その力は、自分が求めたものではない。
愛情を感じていた同僚を破壊し、救えた者は誰一人として居ない。


466 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:30:51.11 ID:EVsBXzyI0
「確信……とはいかないが、伝説のレプリロイドがお前であるとは思っている」
「僕は――」

「――ただの、下らん悪戯かもしれないがな」
マンドリラーの珍しい茶化したような物言い。
沈痛な顔が掻き消え、思わず鼻白むエックス。

「だが、本当にそうなのであれば、この混沌とした世界を救えるだろうな」
彼女は天井を仰ぎ見、何かに希望を見出していた。

「人間はそこまで好きじゃない……しかし、隊長の作戦は間違っている」
決意を宿した顔が、まともにエックスにぶつかる。
本を手にしたまま立つエックス。
その首が縦に振られた。

「私はそれを止める。それが〝部下〟であった私の使命だ」
片手を拳にし、マンドリラーは自分の力を誇示するように、天に力強く向ける。

「お前が伝説のレプリロイドじゃなくても良い」
屈強な態度とは反対に、とても優しげな笑みを浮かべるマンドリラー。

「間違いを正す……ハンターの初歩的な任務――どうする? 受けるか?」
姉のような存在。
差し伸べられた選択肢は、自分が何であるかなどの疑問を二の次にする。

マンドリラーの問いに、エックスは彼女に負けないぐらいの笑顔で応えた。



535 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:09:42.91 ID:kIjG+1N10


与えらた一室。
寝台がある居間など、一般的には狭いイメージがあるが、この部屋はその例から漏れる。
ダンスでも踊れそうな広さを持つリビングが、窓から射し込む朝日に照らされる。

「うわぁー」
目覚めたエックスの最初の言葉は、時節の挨拶ではなく、部屋に対する驚愕だった。
気づくのが遅いが、裸になるマンドリラーや驚くべき事実などで、そこまで及ばなかったのだ。

「おはよう……」
「うわぁー!!」
驚愕の次は悲鳴。
理由は隣のベッドから抜け出てくる。
両腕を挙げ背筋を伸ばす裸の女が起床。豊かな乳房が風船の様に揺れた。

腕でシーツを煩わしそうに打ち払い、シミの無い白い肢体がエックスに挨拶する。

「お前は朝からうるさいな」
「――お姉さんが、朝からおかしいんですよ」
ぼりぼりと髪を掻きながら、不愉快げな表情をするマンドリラー。
エックスも気分を害する。

彼女は立ち上がると、その足で部屋の備え付け冷蔵庫に向かい、牛乳が入った瓶を取り出した。

536 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:12:22.39 ID:kIjG+1N10
「これも料金の内だよな。――飲むか?」
「いえ」
片手で誘いを断る。
マンドリラーは肩を竦め、乳白色の液体を飲みながら椅子に座った。

「服着てくださいよ」
「何で?」
とても、昨夜に元気付けてくれたレプリロイドと、目の前の非常識の塊が同一人物とは思えない。
朝から痛む頭を振り、エックスはシーツを再び被ると、夢の世界へと旅立った。


「歩いては帰れないものな」
二度寝の終着点は、時計が12を指す昼時。
机に地図を広げ、思案顔をしたマンドリラーが最初に視界に入った。

さすがに服を着ており、黒いシャツに男物のジャケットを羽織っていた。
自分より様になる彼女の服装に、エックスの心情は軽い鬱となった。

「どうにかして足を探さなければ。当てはあるか?」
横に振られる少年の首。
逃走したヘリは何処へやら、どうしたものかとエックスも倣って悩やむ。

顎に手を当て、考え込むマンドリラー。
力強さも、知性も感じるその姿に、エックスは尊敬の意を再認識させられる。

537 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:16:26.11 ID:kIjG+1N10
「参ったな。あまり公共の機関を使用したくない」
断続的に地図を指で叩きながら、口を開く彼女は本当に困っているようだ。
昨日の犬型が口にした、処刑部隊というのが気になるのだろう。

自分の危険よりも、大量の人が居る場所で戦いたくない、そんな思いを彼女の横顔から感じ取った。

唐突の来訪者を知らせる音。
部屋の扉が、穏やかにノックされた。

「はい? あ、僕が行きますね」
立ち上がろうとするマンドリラーを手で制し、エックスがベッドから降りて、玄関に向かう。

ニスを塗られた木で出来た、鮮やかな扉に魚眼は無い。
だが、敵が自分の存在を知らせる行動を取るだろうか。

「はーい」
エックスは自分の問いを否定し、とりわけ警戒もせずドアを開けた。

「こ、こんにちは」
入り口の向こうには、腰の低いレプリロイドが揉み手をしながら立つ。
自分の記憶に無く、エックスは訝しげな目で、前に立つ人物の身体を上から下まで眺める。

だが、ガスマスクのようなメットで彼の存在を思い出した。

538 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:20:25.85 ID:kIjG+1N10
「――あ。パイロットさんか」
「そ、そうです……! パイロットさんです」
彼は、エックスが追われる身のマンドリラーと出会った際に、搭乗していたヘリの操縦士だった。

置いてきぼりにした、というのでバツが悪いのだろう。操縦士は顔を床に、チラチラとこちらを見てきた。

「どうかしたんですか?」
あの状況では仕方ない――エックスは特に怒りをぶつける積もりも無く、操縦士に疑問を投げた。
怒っていないと気づいたパイロットは、少年に聞こえるぐらい安堵の息をつく。

「いえ、その、エックス様はどうしてるのかなぁ、と逃げ出した手前……気になりまして」
その態度に微笑する少年に、操縦士はここを訪ねた理由を話し出す。

「そしたら、近くのホテルでエックス様のカードが使われてるって、本部から連絡が来たものですから……」
「なるほど。――どうぞ」
自分の居場所が知れた理由に合点がいったエックスは、扉を全開にし、他の話を聞くため部屋に入るよう招く。
操縦士は頭を下げて礼をし、居間へ進む。

「誰だそいつは」
彼を出迎えるもう一人のレプリロイド。
リンゴを齧るマンドリラーが、エックスに尋ねる。

「イ、イレギュラー!?」
彼女の姿を目にしたパイロットの悲鳴は、少年の説明よりも速い。
驚きに飛び上がりながら、腰から無骨な自動拳銃を引き抜いた。
隙無く銃口をマンドリラーの頭部に向ける流れは、腐っても彼がハンターの一人であるのが解った。

539 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:22:25.26 ID:kIjG+1N10

「待って下さい! お姉さんは違うんです!」
自分のボディを射線に挟み、エックスは声を張り上げて抗議する。
青の装甲越しに銃を向けらている当のマンドリラーは、緊張感に欠けた欠伸をした。

「ち、違う? スパーク・マンドリラーは、イレギュラーに認定されて……」
エックスの言葉に、操縦士はあたふたと面白いように慌てる。
それに合わせて拳銃の銃口が、海を漂うクラゲのように揺れた。

「違うんです!!」
拳銃を叩き落し、エックスは必死の形相で彼の行動を阻害する。

結局二人のもみ合いは、説明せんと、マンドリラーが口を開くまで続けられた。



「そう、だったのですか……」
穏便に収まる場。
イレギュラーの説明を真に受けるのは、ハンターとしての力量を問われるが、この状況では歓迎すべき事だ。
古書からエックスの名が出たという所だけ省き、マンドリラーは操縦士に全てを打ち明けた。

「混乱させて、すまなかったな」
「いえ、こちらこそ銃なんか向けまして……」
お互いの非を詫びあう二人。それを胸を撫で下ろし、見つめるエックス。


541 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:24:58.47 ID:kIjG+1N10

「君はヘリのパイロットらしいな。ここにはヘリで来たか?」
「勿論ですよ。一度他のところで給油してから来ました」
マンドリラーがリンゴを再び齧り、和解したパイロットに尋ねる。
彼は頷き、窓に向け指をさす。

黒い手袋に覆われた人差し指の先に、彼の回転翼機が見える訳ではないが、とりあえず二人は納得する。

「そりゃ良かった。生憎と、本部までの交通機関で悩んでいたんだ」
得心顔のマンドリラー。
用が無くなった地図をたたんで、ジャケットの内ポケットに入れる。

「あぁ、なるほど。お安い御用です。直ぐに、本部へお送りいたしますよ」
彼女の説明を受けたパイロットが、処刑部隊の事を加味し、本部への送迎を快く引き受けた。

お任せくださいと力強く頷くパイロットに、エックスとマンドリラーは顔を見合わせ笑う。

「なら、急ぎましょうか」
パン、と手を打ち合わせ、ヘリの操縦士はいそいそと部屋を後にしようとする。

「昼飯……どうするかな」
その背中で、マンドリラーは己の満たされない腹をさすりながら、ぼそっと呟いた。
それを聞きとがめたエックスが微笑し、彼女の肩を叩く。


544 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/02(佐賀県教育委員会) 03:30:18.32 ID:kIjG+1N10

「何処かで買って、機内で食べましょうよ」
「ジャンクフードは嫌だからな」
エックスはますます笑みを広げた。

操縦士の腕が扉のノブにかかる。
廊下へと出るドアは押し開かれる前に――部屋へと吹き飛んだ。

蝶番がもぎ取られ、茶色の扉と一緒に宙へ投げ出されるパイロット。
マンドリラーが舌打ちし、エックスが姿勢を低くしながら右腕をバスターに変える。

「な、何だ……お前等……」
圧し掛かる扉をどけながら、ガスマスクのレプリロイドが呻く。
マスクの楕円形の視界に、蹴りを放った体勢の人影が入る。

人影は紫色をしていた。
その後ろに、対極な背丈を持つ二人。

「よぉ、こんな所に隠れてたのかぁ……。えぇ!? ――エックス!!」
「ヴァヴァ……!」
パープルカラーのレプリロイド――VAVAが残忍な笑みを浮かべて、部屋へと踏み出した。

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