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VIPロックマンまとめ

ロックマンX -11-

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だれでも歓迎! 編集
49 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:50:49.81 ID:Uv2z/sXo0

「約束を果たしに来たぜ、エックス。ついでに、クズの処刑もな!!」
「くっ……!」
ヴァヴァのブーツが床を踏みしめる。
突き刺すように出された指先が、マンドリラーの死を求めた。
悔しさに、口元を歪めるエックス。

「隊長のお遣いか? ご苦労な事だ」
死の宣告の先にいる彼女は、両手に桃色に光る電流を溜める。

――マンドリル型のボディを着込んでいない状態。
装着時よりかは脆弱な感じを覚えるが、それでも紫電は拳に集まった。

「裏切り以前に、お前のそのしたり顔が気に入らねぇ。死ぬには、充分過ぎる理由だよなぁ……!」
マンドリラーの戦闘の構えに、嬉しそうな顔をしてヴァヴァは両手を広げる。
ジャラジャラと弾丸の帯が鳴り響き、天を向いていた右肩の銃口が向けられた。

そこで廊下側にいた二人も、部屋に踏み込んでくる。
先に入室する一人の頭の位置は、そう高くない背のヴァヴァの腰あたりしかない。

「や、やだな……お、お仕事なんて。ヴァ、ヴァーちゃん……あ、あたしね、観たいアニメがあったんだ……」
か細い声の主――丸びを帯びた装甲に身を包んだ少女が現れる。

肉厚の装甲が全身に宛がわれる、その中身には半裸に近い肢体。

50 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:52:42.01 ID:Uv2z/sXo0
胸元に、全身と同じく滑らかな装甲を貼り付けているが、それ以外は幼い肌が露出していた。
下半身は、湿布のようなテープだけが股間部分を隠す。

布状の物など、頭髪をお団子状に纏めた布きれ以外は、皆無の装いだ。

「だ、だからね……その、か、帰りたいなぁ……って」
おどおど、と足元で不審に動く少女を、ヴァヴァは一睨みで黙らせる。

「ご、ごめんね?」
射る視線に竦みあがるレプリロイド――アーマー・アルマージ。

その様を眺めるエックスは、とても彼女がイレギュラーとは思えなかった。

壁が破砕され、石塊が飛び込んでくる。
巨大な石の礫が、玄関周りの壁や床に突き刺さり、玄関それ自体も完全に破壊された。

アルマージの後に、巨大な質量が突入。
玄関口の許容量を超えた体格のレプリロイドが、頭を天井で擦りながら進み出る。
その姿は象を模していた。

「ナ、ナーちゃん。……あ、あたし、お仕事なんて……や、やだな」
巨体によって作られる蔭りに、顔を曇らせるアルマージが蚊の鳴く声で、不満も漏らす。

象型のレプリロイドは、小柄な少女とは反対に、全く肌を露出していない。
戦車の如き厚みを持つ装甲。
アルマージは装甲自体が円形だったが、こちらは体格自体が丸を形成していた。


52 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:54:33.81 ID:Uv2z/sXo0

エックスは妙な違和感を、象のイレギュラーに覚えた。
しかし、直ぐに非生産的な思考を中止し、彼女等の行動に注意を払う。

闘いは、いつ起きてもおかしくない。

肥満体と言える体に載る象の頭部――取り付けられた狐目のカメラが、上目遣いの少女を睨み付けた。

「ご、ごめんね? も、もう言わないから……もう言わないよぉ……」
謝罪をし、小さな体に恐怖の電流が走るアルマージ。

「こ、怖いよぉ……。ク、クーお姉ちゃんと待機してれば、良かった……」
仲間の二人を見、敵であるエックスとマンドリラーの二人を見て、アルマージは目尻に涙を浮かべる。

「ヴァヴァ……どうするんだな?」
同僚の悲哀を尻目に、機械仕掛けの象――ナウマンダーがしわがれた声で、ヴァヴァに尋ねた。

ヴァヴァは頷き、エックスを指差し、そのまま爪の先をナウマンダーへ。
そして自分に親指を向け、最後にマンドリラーを顎で指し示す。

ナウマンダーは首の無い頭を揺らして、了解の意を表した。

「くっくっくっ……処刑される理由は自分でも解ってるだろ? 遊んで、嬲って、殺してやるよ、マンドリラー」
愉悦の笑いを口角から溢れさせながら、ヴァッヴァが残酷な死刑執行の台詞を言い放つ。
いよいよ、部屋の空気が緊張に張り詰め、エックスとマンドリラーの顔を渋いものに変えた。


54 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:56:50.33 ID:Uv2z/sXo0

「裏切りなんか興味は無いんだなぁ! だが、特Aと戦えるのは願ってもないぞぉお!!」
壁を震わす音量が、象のメットから腹部まで垂れる鼻から発せられる。
ナウマンダーも隣のイレギュラーと同じく、闘いの時に心を躍らせているようだった。

「特に、エックス!! ペンギーゴを倒したお前も、丸焼きにしてみたいんだなぁ!!」
戦闘願望を内包する巨大なボディは、爆発寸前の炉心を思わせた。

「あの馬鹿ペンギンは、チビのくせに強かったんだな! まぐれで勝つのは無理なんだぞぉ!!」
「…………アイちゃん」
闘いたくてしょうがないナウマンダーの心情に合わせ、太い鼻が波立つ。

喜悦を重ねたバーニン・ナウマンダーのプレッシャーが、部屋全体を震動させた。
対するエックスは、思い出させられるアイシー・ペンギーゴへの想いに、心を部屋のように震わせる。

「楽しい一日しようぜぇ、お二人さん。心に残る思い出を作って――あの世に旅立ちな!!」
そして、とうとう落とされる乱戦の火蓋。

ヴァヴァが吼え、右肩から銃弾を撒き散らしながら突進。
拡散する火線が進行方向上の物、全てを貫く。

「やれやれ、昼飯は遅くなりそうだな」
何処かに出かけるような、マンドリラーの軽い言葉。
ヴァヴァとの対立からチャージしていた電撃を、イレギュラーである三人に向かって放つ。

銃弾型のエネルギーの嵐は、扇状に放出された電流によって相殺される。


56 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:59:38.44 ID:Uv2z/sXo0
リビングの中央で爆裂音が、そして衝撃波。
マンドリラーが横に跳び、爆風と煙から突き出るヴァヴァの貫き手を避ける。

「手早く決着をつけよう。忙しい身なんでな」
挑発的に、マンドリラーは手招きした。

「ヒャーッハァッハァ!! 寝酒のバーボンって奴を教えてやるよ!!」
床に指を埋めながら、ヴァヴァは狂声をあげての旋回。
紫色の身体に振り回された蹴りが、綺麗な弧を描く。

首元を狙う回し蹴りを肘で受け、マンドリラーが肩からの体当たりを敢行。

二人はもつれ合い、床に落下――する前にお互いのボディを左右に弾く。
マンドリラーは窓へと身投げ出して、ガラス割りながら外へと飛び出る。

「良いねぇ、マンドリラー。良いねぇ! エックスよりかは楽しめそうだ!!」
本当に楽しそうに顔を緩ませたヴァヴァが、破砕した窓枠に跳躍し、獲物の後を追った。

攻防を眺めていたエックスは、彼女等を追おうと考えたが、目前のイレギュラーがそれを許さない。

「し、仕事じゃ……しょ、しょうがないよね……! ご、ごめんね……お兄ちゃん!!」
背中に挿してあった片刃の剣――刀を引き抜きアルマージが構える。

下段の構えが疾走。
性格に似合わず、エックスの懐へ走りこむ速さは、目も見張るものがあった。

57 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:01:35.38 ID:Uv2z/sXo0

「つ、通信販売で買った日本刀と……つ、通信教育の成果……い、いきます!」
高速で振り下げられる刃が、エックスの青い頭部に迫る。
限界まで体を捻り、切断をもたらす鋼を回避したエックス。

バスターの銃口を、刀を下げた状態のアルマージの頭に向けるが、俊敏に放たれた横薙ぎの斬撃の方が速い。

剣術に心得のある太刀筋で、少年に肉薄する全身装甲の少女。
後ろに飛ぶブルーの脇腹を薄く撫で切り、反す刃がエックスに追い討ちをかけた。

アルマージの袈裟斬りは、太陽のエネルギーに弾かれる。
火を噴くバスター。
闘いに対する嫌悪感に顔を歪めたエックスが、自分の命の為に連続して射撃する。

至近距離の連射は、蜂の巣という死を進呈する攻撃。
――だが、相手は特A級のハンターだ。
鼻先で発射された光弾を、幼い体をよじりながらの、振り回される刀によって全て弾いてみせた。

「こ、怖いよぉ……!」
言葉とは裏腹に、銃口とエックスの動きに合わせ刃を振った。
アルマージの顔面に喰らいつかんとするエネルギーも、翻る刃によって軌道を変えられる。
跳弾した銃弾が椅子に着弾し、背もたれを消失させた。

連撃で畳みかけながら前進するアルマージと、銃撃しながら後退するエックス。
銀光が、オレンジの軌跡を弾く。
銃撃の間隔を縫って、アルマージは刺突を繰り出した。


61 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:05:58.49 ID:Uv2z/sXo0

煌めきがエックスの頬を撫で、オイルがしぶく。
突きを戻し、再び刺突。

一撃は空を刺す。かろうじて、肩から身を投げたエックスが回避した。

少年の回る視界が背のない椅子を見つけ、それを掴む。
立ち上がながら投擲。
勢いある家具が、アルマージに迫る。が、それも薙がれた刃によって両断された。

刀を振り切る少女は、エックスのバスターが光を収束させている事に気づく。
勝機を見出したエックスが、溜められたエネルギーを解き放った。

全てを貫く必殺の一撃。

「え、えい!!」
――アルマージの身体に当たると思いきや、意外なものに阻まれた。
激突したのは、頭部の装甲から吐き出される、空色をしたエネルギーの球体だ。

布によって団子にされた髪とメットの間に、大きな銃口が存在していた。

「バスターまで持ってるのか……!」
隠されていた武装に、頬を赤で濡らすエックスの顔が驚きを滲ませる。
性格こそイレギュラーの中で一番子供らしく、度胸もないものだが、戦闘に関しては特Aの名に恥じないものだ。

62 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:08:59.07 ID:Uv2z/sXo0
「狭い所は嫌いなんだなぁ!!」
どう戦うか、悩む少年の横から迸るのは、紅蓮の炎。

静観――というよりもエックスの出方を観ていた、ナウマンダーが繰り広げられる戦闘に加わった。
床を舐め、絨毯を灰燼にしながら、炎の蛇が突き進む。

ナウマンダーの右腕から放射された業火は、近くのアルマージを気にかけていない。
宙を跳ね、慌てて逃げる少年と少女。

「ひ、ひどいよぉ……! ナーちゃぁん……あ、あたし、死んじゃう所だったよぉ……!」
部屋の隅に着地したアルマージが、涙交じりに声を張り上げた。

少女の反対方向に舞いあがるエックスの足は、寝台の上に落ち着く。
乱入する巨体に、少年はバスターを向けた。

「お前の力ぁ!! オデに見せてみるんだなぁ!!」
その姿はナウマンダーを喜ばせる。
感謝の気持ちとして、自分の特殊兵器であるファイヤーウェーブの洗礼を少年に送った。

「ひっ……!」
爆発するように捻り出る火炎は、倒れ伏していたパイロットを焼殺し、ベッドにぶち当たる。
シーツが一瞬にして灰となり、木材で出来た就寝用の家具は、常識を超えた高温に耐え切れず破裂した。

「なんて事を……! ナウマンダー……あなたは!!」
火が付く木片と一緒に、天井すれすれを飛ぶエックスが、同僚の死に怒る。
空中でバスターをチャージし、一拍遅れて発射。

63 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:12:24.96 ID:Uv2z/sXo0

怒気が練られたチャージショットが、投擲された槍のように部屋を横断する。

「うはははは、弱い奴はオデの前から消えろ!!」
亜音速で進むエネルギーに向け、ナウマンダーは哄笑しながら爆炎を振りまく。
銃器の形をした火炎放射器の、数倍の火力を誇るファイヤーウェーブが、エックスの怒りの攻撃を霧散させた。

「エックス、頑張るんだぞぉ!! ――じゃなきゃ、燃え尽きるんだなぁ!!」
銃撃を光の霧に変えたに止まらず、紅蓮は落下するエックスに、その身を差し出す。

少年の肩が嫌な音を立て焼けた。
岩のような頑丈さ持つ筈のボディは高温に負け、黒ずむ。

かわしきれぬナウマンダーの特殊武器に、顎に冷や汗を垂らすエックスは、背中から地面に激突。
反動を利用して、横転すると即座に立ち上がる。

胸を掠める鋼。
隅から疾走したアルマージが、一気に間合いを詰め、刀を振り下ろしたのだ。

「えぇい!!」
「くぅ……!」
少女の掛け声と共に、跳ね上がる刃をガラス製のボウルが弾く。
机に置いてあったのを、エックスが機転を利かし、手にしたものだ。

使用できるのは一度のみ。
刀に砕かれ、残っていた果物とガラスが、花火のように散る。

64 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:15:34.52 ID:Uv2z/sXo0

「うはははははははははは!!」
爆炎。
巨体に秘められた燃料が、主の意思に従い銃口から放流――そして死神となる。

またもアルマージの存在を無視した炎の帯が、周囲を焦がしながらエックスを襲った。

エックスとアルマージよりも先に悲鳴をあげたのは、宿泊所の方だった。

「んあ? ――うおおおおおおお!?」
――床から鳴り響く轟音。
数トンの質量。そして焼け焦げ、銃撃にさらされた床。

それらが合わさり、この部屋――ナウマンダーの付近の床板が滑落する。

急な落下に銃口がぶれ、エックス等から逸れた迸る炎。
天井を焼きながら巨体は落下した。

消える放火するイレギュラー。
だが、二人は助かった訳ではない。

65 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:20:14.31 ID:Uv2z/sXo0

「うわっ……!」
「……ふ、ふえ? ふぎゃあう!?」
床下から吹き荒れるファイヤーウェーブが、部屋で爆発を引き起こす。

「クソがぁ!! 死ねぇええええええええ!! 丸焼きになれぇぇぇぇ!!」
一階下の部屋から、怒り狂ったナウマンダーが業火を繰り出し続ける。
ボイラーなどが火を噴き、紅蓮自体も炎の破片を拡散させ、凄まじい衝撃波を作り出した。

「ナ、ナーちゃん止めて……! 止めてよぉ……!」
幼き悲鳴。
床を突き破り噴出する火柱が、天まで焦がす。

「うわわ……うわぁ!?」
部屋を駆け回り、エックスは逃げ惑う。
世界は真っ赤となった。

そして、今までで一番の大爆発が吹き起こった。

衝撃が全身を叩く。
エックスの意識と身体はホテルを飛び出して、昼の曇り空を飛んだ。


291 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:29:05.83 ID:eNUGwG2m0

「――そらぁ!!」
紫紺の脚が、女性型の腹部を蹴りあげる。
ヴァヴァは蹴球の遊戯でもするかのように、マンドリラーを蹴り付けた。

力強さに、どこか女らしさを持つボディは宙に浮き、落雷の如く落とされる踵がそれを叩く。
強制的に地面へ落下させられるマンドリラー。

全身を痛みが貫く。苦鳴を漏らさぬよう、噛み締められた唇が痛々しい。

「期待させといて!! オレを期待させといて!! エックスより期待させといて!!」
バネ仕掛けの脚部。
何度も何度も蹴り付けるヴァヴァは、怒りの声をあげるが、そこには笑みを含む。

「くぅっ……!」
下に広がるアスファルトに罅を入れる程、ヴァヴァの凶行は苛烈を極めた。
思わず、マンドリラーは呻いてしまう。

漆黒の自動車道。両端を、高いビルが隣接して立ち並ぶ。
大都市の中心で行われる一方的な暴行。

何故かこの街に人影はまったく無く、閑散とする道路に、肉を打つ音だけが空へと響いた。


293 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:31:14.02 ID:eNUGwG2m0

「このヴァヴァは!! 素晴らしく!! 失望したぜ!!」
リズム良く脚部が送り込まれる。
嫌な音を立て、肋骨をへし折られるマンドリラー。

「どらっ!!」
使用不能となった肋骨は本数を増やし、三本目が砕けた。
そして――ヴァヴァの掛け声と一緒くたに豪風を纏ったつま先が放たれる。

矢となるマンドリラーの身体が、近くの街灯をへし折りながら、洋服店の壁へと突き刺さった。
積み上げられた煉瓦を散らし、そして、長い髪の女は歩道に崩れ落ちる。

「はっはっはっ!! 楽しいねぇ!!」
「……あぐっ!」
桃色の頭髪を掴み、ヴァヴァはすかさず鼻面へと拳を叩き込む。
端整な鼻腔から血が溢れ、赤が顔を汚す。

「ほら、もっと鳴けよ!! ひゃははははは!!」
暴力の快感に、ヴァヴァの哄笑が自然と大きなものになった。
頭部を掴んだまま、マンドリラーを壁へと引きずり、彼女の顔を赤き煉瓦へと叩きつける。

「そら!! ――そらぁ!!」
叩きつけ、引き戻し、叩きつける。
赤を違う赤で染めるマンドリラーは、力の暴風に翻弄された。


295 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:32:36.32 ID:eNUGwG2m0

「人が居ないのは、あなたの命で避難勧告を?」
マンドリラーで遊ぶヴァヴァが立つ歩道。

そこから少し離れた、車道が縦横に横切るのを邪魔する、丸く切り取られた空間。
十字路の中心となる位置に、石作りの小さな噴水が、水を噴出して自分の存在を主張していた。

ちょっとした規模の公園に対峙する二人。
仁王立ちする、緑色のメタリックなボディを装着する影が、上に着込む黒衣を風で揺らす。

強烈な威圧を持つレプリロイド。

漆黒のぼろを羽織った金髪碧眼の女が口を開き、
「――父さん」
こちらを見つめる男を、そう呼んだ。

金に対する銀。
白髪を後ろに流した、整った目鼻立ちの老人が腕を組んでいる。

じっと注がれるケインの視線に、女は顔色を変えない。
思うところがあるのか、鋭い双眸を細め、老人の動きを待つ。


297 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:35:42.08 ID:eNUGwG2m0

「シグマ……私は後悔している」
喪服のようなスーツの上にある、皺の寄った顔が苦渋に歪む。
初老の男は眉間に力を込め、湧き上がる感情を押し殺した。

「お前の事は娘のように思っている。昔から……それは今でもだ」
きらきらと舞う長い髪の女へ向け、自分の腕を差し出す。

「あの時、お前に宿った深い闇。――それに、私は気づく事ができなかった」
ケインは突き出した掌を握り、自分の胸へ引き戻した。
後悔を詰める頭を振るケイン。

「もうやめてくれ、シグマ」
老人の口をつく嘆願が、シグマと呼ぶ女に与えられる。
だが彼女は眉一つ動かさない。

噴水の水より冷たい風が、二人の間を吹き抜いた。
黒衣が翼のように舞い、背広の裾とネクタイが時計の振り子となる。

「人間が愚かな事は解った。お前達の蜂起が、それを浮き彫りにしたよ」
人間を代表し、同じ人間であるケインが頭を下げた。

「いずれハンターは解体し……人間達はその罪を償うだろう」


300 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:37:37.39 ID:eNUGwG2m0

ケインは続け、
「――もう、いいだろう」
起こる悲劇の終結を願った。

沈黙が流れる。

「まだです」
数瞬の時を破る、シグマの言葉。意味するのは悲劇の継続。

「まだ、早い」
噴水を囲むベンチと梢を見回し、老人とは違い、シグマは決意に首を振った。

「シグマ……!」
掠れる声を出すケインは、胸から何かを取り出す。

それは無骨な鉄の塊である、曇り空と同じ色をした自動拳銃だ。
手に収まった、遠き目標を打ち抜く凶器が、女の額をポイントする。

「邪魔をするのなら、父さんでも……」
シグマが黒衣から引き抜いた握りが、拳銃に対する。
そして、白い筒の先から、収束された光が剣の形に集まった。

「あなたは、まだ解っていない」
ビームセイバーを構え、シグマは至極真面目な顔をして言った。


301 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:40:41.56 ID:eNUGwG2m0
雨が降り出す。
暗く淀んだ天から、小雨として雨粒が降り注ぎだした。

「人間が背負わなければならない、十字架を……」
「何を、言って……」
雨霧の帳に光る女の瞳に、初めて感情が宿る。
光刃より鋭い悲哀が、銃を構えるケインを貫いた。




突然の浮遊感を全身に。

意識を飛ばされ、客室から吹き飛ぶエックスの瞳が、雨降る灰色の空を理解した。
空中での再起動。
己の状況を素早く確認すれば、今居たホテルは複数の窓から火炎を吐き出し、半壊していた。

ナウマンダーの姿は見えない。
身体をくの字にする少年の前で、小柄な少女のイレギュラーも、自分と同じく勢いある放物線を描いていた。

尾を引く悲鳴が耳に届いた同時に、破砕音と衝撃。
ホテルの反対側に位置した建造物の窓を、青い背中で割りながら、少年は床に叩きつけられる。


304 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:44:13.30 ID:eNUGwG2m0

「く……」
苦痛の呻きを漏らしながら、周囲へ首を回す。
エックスは、ビルのテナントの一つ――喫茶店に放り出されたようだ。
押しつぶした丸型の机の破片を払い、立ち上がる。

大きな爆発音がし、壁の一部が通りにばら撒かれた。
窓の向こうのホテルは、静まる事なくその身を焦がし続けている。

「ひゃあああうう!?」
甲高い、少女の声と打ち割る音が唱和する。
丸びをおびたフォルムが、横手の窓から吐き出た。

カフェテリアの机をいくつも弾き飛ばし、カウンターに激突する装甲の球体。

頭を逆さまにした少女が、両足をひしゃげたカウンターに投げ出して、気絶していた。
少年は顔をひきつらせ、のびているアルマージに近づく。
女に見えると言われる自分の顔、幼い顔に寄せた。

かち合う両者の瞳。
エックスが考えていたよりも早く、少女は現実へと復帰した。

「う……ひゃあああああああああああああああああ!?」
そして喉から、恐れの感情を迸らせた。
耳を押さえた青い少年は、ぱっ、と彼女から離れる。


305 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:48:34.24 ID:eNUGwG2m0

「お、落ち着いて下さい!! ちょ、ちょっと!!」
腰を低くしたエックスは、アルマージの顔を伺いながら、沈静の言葉をかけるが意味を成さない。
少女は天地を逆にしたまま、悲鳴を連続させる。

エックスは屈める姿勢のまま、おろおろと困り果てる。
そんな姿を尻目に、アルマージは声を張り上げつつ、異常な姿勢を戻した。

「あう!?」
小さな身をかき抱いて立ち上がる少女が、悲鳴とは違う、切羽詰った呻き。

「や……駄目っ!?」
全身を揺らし、同じくがくがくと震わす両足。
一度、びくりとアルマージの身体が震えたかと思うと、股下から白い太ももをつたう液体が溢れた。

「な、何で……いやぁ……」
喫茶店の芝生のような絨毯を、アンモニア臭のする金色の液体が汚し、領域を広げる。
度重なる恐怖が、アルマージを失禁させた。

少女はいやいやと首を振りながら、股間を押さえるが、意図せずの排尿は止まらない。
膀胱に溜められたものは、女性の大事な部分を覆う白いテープを黄色くし、両手から零れる。

「やだぁ……やだよぉ……」
とうとう小さな双眸から涙をこぼすアルマージ。
ぺたりと彼女の膝は座り込むのを境に、黄金の放流は力を失った。



306 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:51:37.75 ID:eNUGwG2m0

「あ……あ……」
開かれた唇から失意を漏らし、さめざめと泣く少女。

――凄まじい戦闘能力持つレプリロイド。
だが、それ以前に、彼女は年端のいかぬ少女であるのだ。

アルマージを驚愕させた本人であるエックスは、後悔と申し訳なさを胸に広げる。
同時に、自分に微笑むペンギン型の少女を思い出した。

イレギュラー。
その単語の意味、そして範囲が解らなくなるエックス。

どこまでが〝異端〟であり、どこまでが〝真っ当〟なのか。

暴走するレプリロイド、狂気じみた調査をするハンター。
人間の行動に意義を唱えたレプリロイド、種別の違う両者の心を解するケインとライト。


何をもって分類すればいいのか――少年は、嗚咽をあげるアルマージを眺めながら悩んだ。

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