49 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:50:49.81 ID:Uv2z/sXo0
「約束を果たしに来たぜ、エックス。ついでに、クズの処刑もな!!」
「くっ……!」
ヴァヴァのブーツが床を踏みしめる。
突き刺すように出された指先が、マンドリラーの死を求めた。
悔しさに、口元を歪めるエックス。
「くっ……!」
ヴァヴァのブーツが床を踏みしめる。
突き刺すように出された指先が、マンドリラーの死を求めた。
悔しさに、口元を歪めるエックス。
「隊長のお遣いか? ご苦労な事だ」
死の宣告の先にいる彼女は、両手に桃色に光る電流を溜める。
死の宣告の先にいる彼女は、両手に桃色に光る電流を溜める。
――マンドリル型のボディを着込んでいない状態。
装着時よりかは脆弱な感じを覚えるが、それでも紫電は拳に集まった。
装着時よりかは脆弱な感じを覚えるが、それでも紫電は拳に集まった。
「裏切り以前に、お前のそのしたり顔が気に入らねぇ。死ぬには、充分過ぎる理由だよなぁ……!」
マンドリラーの戦闘の構えに、嬉しそうな顔をしてヴァヴァは両手を広げる。
ジャラジャラと弾丸の帯が鳴り響き、天を向いていた右肩の銃口が向けられた。
マンドリラーの戦闘の構えに、嬉しそうな顔をしてヴァヴァは両手を広げる。
ジャラジャラと弾丸の帯が鳴り響き、天を向いていた右肩の銃口が向けられた。
そこで廊下側にいた二人も、部屋に踏み込んでくる。
先に入室する一人の頭の位置は、そう高くない背のヴァヴァの腰あたりしかない。
先に入室する一人の頭の位置は、そう高くない背のヴァヴァの腰あたりしかない。
「や、やだな……お、お仕事なんて。ヴァ、ヴァーちゃん……あ、あたしね、観たいアニメがあったんだ……」
か細い声の主――丸びを帯びた装甲に身を包んだ少女が現れる。
か細い声の主――丸びを帯びた装甲に身を包んだ少女が現れる。
肉厚の装甲が全身に宛がわれる、その中身には半裸に近い肢体。
50 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:52:42.01 ID:Uv2z/sXo0
胸元に、全身と同じく滑らかな装甲を貼り付けているが、それ以外は幼い肌が露出していた。
下半身は、湿布のようなテープだけが股間部分を隠す。
胸元に、全身と同じく滑らかな装甲を貼り付けているが、それ以外は幼い肌が露出していた。
下半身は、湿布のようなテープだけが股間部分を隠す。
布状の物など、頭髪をお団子状に纏めた布きれ以外は、皆無の装いだ。
「だ、だからね……その、か、帰りたいなぁ……って」
おどおど、と足元で不審に動く少女を、ヴァヴァは一睨みで黙らせる。
おどおど、と足元で不審に動く少女を、ヴァヴァは一睨みで黙らせる。
「ご、ごめんね?」
射る視線に竦みあがるレプリロイド――アーマー・アルマージ。
射る視線に竦みあがるレプリロイド――アーマー・アルマージ。
その様を眺めるエックスは、とても彼女がイレギュラーとは思えなかった。
壁が破砕され、石塊が飛び込んでくる。
巨大な石の礫が、玄関周りの壁や床に突き刺さり、玄関それ自体も完全に破壊された。
巨大な石の礫が、玄関周りの壁や床に突き刺さり、玄関それ自体も完全に破壊された。
アルマージの後に、巨大な質量が突入。
玄関口の許容量を超えた体格のレプリロイドが、頭を天井で擦りながら進み出る。
その姿は象を模していた。
玄関口の許容量を超えた体格のレプリロイドが、頭を天井で擦りながら進み出る。
その姿は象を模していた。
「ナ、ナーちゃん。……あ、あたし、お仕事なんて……や、やだな」
巨体によって作られる蔭りに、顔を曇らせるアルマージが蚊の鳴く声で、不満も漏らす。
巨体によって作られる蔭りに、顔を曇らせるアルマージが蚊の鳴く声で、不満も漏らす。
象型のレプリロイドは、小柄な少女とは反対に、全く肌を露出していない。
戦車の如き厚みを持つ装甲。
アルマージは装甲自体が円形だったが、こちらは体格自体が丸を形成していた。
戦車の如き厚みを持つ装甲。
アルマージは装甲自体が円形だったが、こちらは体格自体が丸を形成していた。
52 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:54:33.81 ID:Uv2z/sXo0
エックスは妙な違和感を、象のイレギュラーに覚えた。
しかし、直ぐに非生産的な思考を中止し、彼女等の行動に注意を払う。
しかし、直ぐに非生産的な思考を中止し、彼女等の行動に注意を払う。
闘いは、いつ起きてもおかしくない。
肥満体と言える体に載る象の頭部――取り付けられた狐目のカメラが、上目遣いの少女を睨み付けた。
「ご、ごめんね? も、もう言わないから……もう言わないよぉ……」
謝罪をし、小さな体に恐怖の電流が走るアルマージ。
謝罪をし、小さな体に恐怖の電流が走るアルマージ。
「こ、怖いよぉ……。ク、クーお姉ちゃんと待機してれば、良かった……」
仲間の二人を見、敵であるエックスとマンドリラーの二人を見て、アルマージは目尻に涙を浮かべる。
仲間の二人を見、敵であるエックスとマンドリラーの二人を見て、アルマージは目尻に涙を浮かべる。
「ヴァヴァ……どうするんだな?」
同僚の悲哀を尻目に、機械仕掛けの象――ナウマンダーがしわがれた声で、ヴァヴァに尋ねた。
同僚の悲哀を尻目に、機械仕掛けの象――ナウマンダーがしわがれた声で、ヴァヴァに尋ねた。
ヴァヴァは頷き、エックスを指差し、そのまま爪の先をナウマンダーへ。
そして自分に親指を向け、最後にマンドリラーを顎で指し示す。
そして自分に親指を向け、最後にマンドリラーを顎で指し示す。
ナウマンダーは首の無い頭を揺らして、了解の意を表した。
「くっくっくっ……処刑される理由は自分でも解ってるだろ? 遊んで、嬲って、殺してやるよ、マンドリラー」
愉悦の笑いを口角から溢れさせながら、ヴァッヴァが残酷な死刑執行の台詞を言い放つ。
いよいよ、部屋の空気が緊張に張り詰め、エックスとマンドリラーの顔を渋いものに変えた。
愉悦の笑いを口角から溢れさせながら、ヴァッヴァが残酷な死刑執行の台詞を言い放つ。
いよいよ、部屋の空気が緊張に張り詰め、エックスとマンドリラーの顔を渋いものに変えた。
54 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:56:50.33 ID:Uv2z/sXo0
「裏切りなんか興味は無いんだなぁ! だが、特Aと戦えるのは願ってもないぞぉお!!」
壁を震わす音量が、象のメットから腹部まで垂れる鼻から発せられる。
ナウマンダーも隣のイレギュラーと同じく、闘いの時に心を躍らせているようだった。
壁を震わす音量が、象のメットから腹部まで垂れる鼻から発せられる。
ナウマンダーも隣のイレギュラーと同じく、闘いの時に心を躍らせているようだった。
「特に、エックス!! ペンギーゴを倒したお前も、丸焼きにしてみたいんだなぁ!!」
戦闘願望を内包する巨大なボディは、爆発寸前の炉心を思わせた。
戦闘願望を内包する巨大なボディは、爆発寸前の炉心を思わせた。
「あの馬鹿ペンギンは、チビのくせに強かったんだな! まぐれで勝つのは無理なんだぞぉ!!」
「…………アイちゃん」
闘いたくてしょうがないナウマンダーの心情に合わせ、太い鼻が波立つ。
「…………アイちゃん」
闘いたくてしょうがないナウマンダーの心情に合わせ、太い鼻が波立つ。
喜悦を重ねたバーニン・ナウマンダーのプレッシャーが、部屋全体を震動させた。
対するエックスは、思い出させられるアイシー・ペンギーゴへの想いに、心を部屋のように震わせる。
対するエックスは、思い出させられるアイシー・ペンギーゴへの想いに、心を部屋のように震わせる。
「楽しい一日しようぜぇ、お二人さん。心に残る思い出を作って――あの世に旅立ちな!!」
そして、とうとう落とされる乱戦の火蓋。
そして、とうとう落とされる乱戦の火蓋。
ヴァヴァが吼え、右肩から銃弾を撒き散らしながら突進。
拡散する火線が進行方向上の物、全てを貫く。
拡散する火線が進行方向上の物、全てを貫く。
「やれやれ、昼飯は遅くなりそうだな」
何処かに出かけるような、マンドリラーの軽い言葉。
ヴァヴァとの対立からチャージしていた電撃を、イレギュラーである三人に向かって放つ。
何処かに出かけるような、マンドリラーの軽い言葉。
ヴァヴァとの対立からチャージしていた電撃を、イレギュラーである三人に向かって放つ。
銃弾型のエネルギーの嵐は、扇状に放出された電流によって相殺される。
56 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08:59:38.44 ID:Uv2z/sXo0
リビングの中央で爆裂音が、そして衝撃波。
マンドリラーが横に跳び、爆風と煙から突き出るヴァヴァの貫き手を避ける。
リビングの中央で爆裂音が、そして衝撃波。
マンドリラーが横に跳び、爆風と煙から突き出るヴァヴァの貫き手を避ける。
「手早く決着をつけよう。忙しい身なんでな」
挑発的に、マンドリラーは手招きした。
挑発的に、マンドリラーは手招きした。
「ヒャーッハァッハァ!! 寝酒のバーボンって奴を教えてやるよ!!」
床に指を埋めながら、ヴァヴァは狂声をあげての旋回。
紫色の身体に振り回された蹴りが、綺麗な弧を描く。
床に指を埋めながら、ヴァヴァは狂声をあげての旋回。
紫色の身体に振り回された蹴りが、綺麗な弧を描く。
首元を狙う回し蹴りを肘で受け、マンドリラーが肩からの体当たりを敢行。
二人はもつれ合い、床に落下――する前にお互いのボディを左右に弾く。
マンドリラーは窓へと身投げ出して、ガラス割りながら外へと飛び出る。
マンドリラーは窓へと身投げ出して、ガラス割りながら外へと飛び出る。
「良いねぇ、マンドリラー。良いねぇ! エックスよりかは楽しめそうだ!!」
本当に楽しそうに顔を緩ませたヴァヴァが、破砕した窓枠に跳躍し、獲物の後を追った。
本当に楽しそうに顔を緩ませたヴァヴァが、破砕した窓枠に跳躍し、獲物の後を追った。
攻防を眺めていたエックスは、彼女等を追おうと考えたが、目前のイレギュラーがそれを許さない。
「し、仕事じゃ……しょ、しょうがないよね……! ご、ごめんね……お兄ちゃん!!」
背中に挿してあった片刃の剣――刀を引き抜きアルマージが構える。
背中に挿してあった片刃の剣――刀を引き抜きアルマージが構える。
下段の構えが疾走。
性格に似合わず、エックスの懐へ走りこむ速さは、目も見張るものがあった。
性格に似合わず、エックスの懐へ走りこむ速さは、目も見張るものがあった。
57 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:01:35.38 ID:Uv2z/sXo0
「つ、通信販売で買った日本刀と……つ、通信教育の成果……い、いきます!」
高速で振り下げられる刃が、エックスの青い頭部に迫る。
限界まで体を捻り、切断をもたらす鋼を回避したエックス。
高速で振り下げられる刃が、エックスの青い頭部に迫る。
限界まで体を捻り、切断をもたらす鋼を回避したエックス。
バスターの銃口を、刀を下げた状態のアルマージの頭に向けるが、俊敏に放たれた横薙ぎの斬撃の方が速い。
剣術に心得のある太刀筋で、少年に肉薄する全身装甲の少女。
後ろに飛ぶブルーの脇腹を薄く撫で切り、反す刃がエックスに追い討ちをかけた。
後ろに飛ぶブルーの脇腹を薄く撫で切り、反す刃がエックスに追い討ちをかけた。
アルマージの袈裟斬りは、太陽のエネルギーに弾かれる。
火を噴くバスター。
闘いに対する嫌悪感に顔を歪めたエックスが、自分の命の為に連続して射撃する。
火を噴くバスター。
闘いに対する嫌悪感に顔を歪めたエックスが、自分の命の為に連続して射撃する。
至近距離の連射は、蜂の巣という死を進呈する攻撃。
――だが、相手は特A級のハンターだ。
鼻先で発射された光弾を、幼い体をよじりながらの、振り回される刀によって全て弾いてみせた。
――だが、相手は特A級のハンターだ。
鼻先で発射された光弾を、幼い体をよじりながらの、振り回される刀によって全て弾いてみせた。
「こ、怖いよぉ……!」
言葉とは裏腹に、銃口とエックスの動きに合わせ刃を振った。
アルマージの顔面に喰らいつかんとするエネルギーも、翻る刃によって軌道を変えられる。
跳弾した銃弾が椅子に着弾し、背もたれを消失させた。
言葉とは裏腹に、銃口とエックスの動きに合わせ刃を振った。
アルマージの顔面に喰らいつかんとするエネルギーも、翻る刃によって軌道を変えられる。
跳弾した銃弾が椅子に着弾し、背もたれを消失させた。
連撃で畳みかけながら前進するアルマージと、銃撃しながら後退するエックス。
銀光が、オレンジの軌跡を弾く。
銃撃の間隔を縫って、アルマージは刺突を繰り出した。
銀光が、オレンジの軌跡を弾く。
銃撃の間隔を縫って、アルマージは刺突を繰り出した。
61 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:05:58.49 ID:Uv2z/sXo0
煌めきがエックスの頬を撫で、オイルがしぶく。
突きを戻し、再び刺突。
突きを戻し、再び刺突。
一撃は空を刺す。かろうじて、肩から身を投げたエックスが回避した。
少年の回る視界が背のない椅子を見つけ、それを掴む。
立ち上がながら投擲。
勢いある家具が、アルマージに迫る。が、それも薙がれた刃によって両断された。
立ち上がながら投擲。
勢いある家具が、アルマージに迫る。が、それも薙がれた刃によって両断された。
刀を振り切る少女は、エックスのバスターが光を収束させている事に気づく。
勝機を見出したエックスが、溜められたエネルギーを解き放った。
勝機を見出したエックスが、溜められたエネルギーを解き放った。
全てを貫く必殺の一撃。
「え、えい!!」
――アルマージの身体に当たると思いきや、意外なものに阻まれた。
激突したのは、頭部の装甲から吐き出される、空色をしたエネルギーの球体だ。
――アルマージの身体に当たると思いきや、意外なものに阻まれた。
激突したのは、頭部の装甲から吐き出される、空色をしたエネルギーの球体だ。
布によって団子にされた髪とメットの間に、大きな銃口が存在していた。
「バスターまで持ってるのか……!」
隠されていた武装に、頬を赤で濡らすエックスの顔が驚きを滲ませる。
性格こそイレギュラーの中で一番子供らしく、度胸もないものだが、戦闘に関しては特Aの名に恥じないものだ。
隠されていた武装に、頬を赤で濡らすエックスの顔が驚きを滲ませる。
性格こそイレギュラーの中で一番子供らしく、度胸もないものだが、戦闘に関しては特Aの名に恥じないものだ。
62 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:08:59.07 ID:Uv2z/sXo0
「狭い所は嫌いなんだなぁ!!」
どう戦うか、悩む少年の横から迸るのは、紅蓮の炎。
「狭い所は嫌いなんだなぁ!!」
どう戦うか、悩む少年の横から迸るのは、紅蓮の炎。
静観――というよりもエックスの出方を観ていた、ナウマンダーが繰り広げられる戦闘に加わった。
床を舐め、絨毯を灰燼にしながら、炎の蛇が突き進む。
床を舐め、絨毯を灰燼にしながら、炎の蛇が突き進む。
ナウマンダーの右腕から放射された業火は、近くのアルマージを気にかけていない。
宙を跳ね、慌てて逃げる少年と少女。
宙を跳ね、慌てて逃げる少年と少女。
「ひ、ひどいよぉ……! ナーちゃぁん……あ、あたし、死んじゃう所だったよぉ……!」
部屋の隅に着地したアルマージが、涙交じりに声を張り上げた。
部屋の隅に着地したアルマージが、涙交じりに声を張り上げた。
少女の反対方向に舞いあがるエックスの足は、寝台の上に落ち着く。
乱入する巨体に、少年はバスターを向けた。
乱入する巨体に、少年はバスターを向けた。
「お前の力ぁ!! オデに見せてみるんだなぁ!!」
その姿はナウマンダーを喜ばせる。
感謝の気持ちとして、自分の特殊兵器であるファイヤーウェーブの洗礼を少年に送った。
その姿はナウマンダーを喜ばせる。
感謝の気持ちとして、自分の特殊兵器であるファイヤーウェーブの洗礼を少年に送った。
「なんて事を……! ナウマンダー……あなたは!!」
火が付く木片と一緒に、天井すれすれを飛ぶエックスが、同僚の死に怒る。
空中でバスターをチャージし、一拍遅れて発射。
火が付く木片と一緒に、天井すれすれを飛ぶエックスが、同僚の死に怒る。
空中でバスターをチャージし、一拍遅れて発射。
63 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:12:24.96 ID:Uv2z/sXo0
怒気が練られたチャージショットが、投擲された槍のように部屋を横断する。
「うはははは、弱い奴はオデの前から消えろ!!」
亜音速で進むエネルギーに向け、ナウマンダーは哄笑しながら爆炎を振りまく。
銃器の形をした火炎放射器の、数倍の火力を誇るファイヤーウェーブが、エックスの怒りの攻撃を霧散させた。
亜音速で進むエネルギーに向け、ナウマンダーは哄笑しながら爆炎を振りまく。
銃器の形をした火炎放射器の、数倍の火力を誇るファイヤーウェーブが、エックスの怒りの攻撃を霧散させた。
「エックス、頑張るんだぞぉ!! ――じゃなきゃ、燃え尽きるんだなぁ!!」
銃撃を光の霧に変えたに止まらず、紅蓮は落下するエックスに、その身を差し出す。
銃撃を光の霧に変えたに止まらず、紅蓮は落下するエックスに、その身を差し出す。
少年の肩が嫌な音を立て焼けた。
岩のような頑丈さ持つ筈のボディは高温に負け、黒ずむ。
岩のような頑丈さ持つ筈のボディは高温に負け、黒ずむ。
かわしきれぬナウマンダーの特殊武器に、顎に冷や汗を垂らすエックスは、背中から地面に激突。
反動を利用して、横転すると即座に立ち上がる。
反動を利用して、横転すると即座に立ち上がる。
胸を掠める鋼。
隅から疾走したアルマージが、一気に間合いを詰め、刀を振り下ろしたのだ。
隅から疾走したアルマージが、一気に間合いを詰め、刀を振り下ろしたのだ。
「えぇい!!」
「くぅ……!」
少女の掛け声と共に、跳ね上がる刃をガラス製のボウルが弾く。
机に置いてあったのを、エックスが機転を利かし、手にしたものだ。
「くぅ……!」
少女の掛け声と共に、跳ね上がる刃をガラス製のボウルが弾く。
机に置いてあったのを、エックスが機転を利かし、手にしたものだ。
使用できるのは一度のみ。
刀に砕かれ、残っていた果物とガラスが、花火のように散る。
刀に砕かれ、残っていた果物とガラスが、花火のように散る。
64 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:15:34.52 ID:Uv2z/sXo0
「うはははははははははは!!」
爆炎。
巨体に秘められた燃料が、主の意思に従い銃口から放流――そして死神となる。
爆炎。
巨体に秘められた燃料が、主の意思に従い銃口から放流――そして死神となる。
またもアルマージの存在を無視した炎の帯が、周囲を焦がしながらエックスを襲った。
エックスとアルマージよりも先に悲鳴をあげたのは、宿泊所の方だった。
「んあ? ――うおおおおおおお!?」
――床から鳴り響く轟音。
数トンの質量。そして焼け焦げ、銃撃にさらされた床。
――床から鳴り響く轟音。
数トンの質量。そして焼け焦げ、銃撃にさらされた床。
それらが合わさり、この部屋――ナウマンダーの付近の床板が滑落する。
急な落下に銃口がぶれ、エックス等から逸れた迸る炎。
天井を焼きながら巨体は落下した。
天井を焼きながら巨体は落下した。
消える放火するイレギュラー。
だが、二人は助かった訳ではない。
だが、二人は助かった訳ではない。
65 :Irregular's Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09:20:14.31 ID:Uv2z/sXo0
「うわっ……!」
「……ふ、ふえ? ふぎゃあう!?」
床下から吹き荒れるファイヤーウェーブが、部屋で爆発を引き起こす。
「……ふ、ふえ? ふぎゃあう!?」
床下から吹き荒れるファイヤーウェーブが、部屋で爆発を引き起こす。
「クソがぁ!! 死ねぇええええええええ!! 丸焼きになれぇぇぇぇ!!」
一階下の部屋から、怒り狂ったナウマンダーが業火を繰り出し続ける。
ボイラーなどが火を噴き、紅蓮自体も炎の破片を拡散させ、凄まじい衝撃波を作り出した。
一階下の部屋から、怒り狂ったナウマンダーが業火を繰り出し続ける。
ボイラーなどが火を噴き、紅蓮自体も炎の破片を拡散させ、凄まじい衝撃波を作り出した。
「ナ、ナーちゃん止めて……! 止めてよぉ……!」
幼き悲鳴。
床を突き破り噴出する火柱が、天まで焦がす。
幼き悲鳴。
床を突き破り噴出する火柱が、天まで焦がす。
「うわわ……うわぁ!?」
部屋を駆け回り、エックスは逃げ惑う。
世界は真っ赤となった。
部屋を駆け回り、エックスは逃げ惑う。
世界は真っ赤となった。
そして、今までで一番の大爆発が吹き起こった。
衝撃が全身を叩く。
エックスの意識と身体はホテルを飛び出して、昼の曇り空を飛んだ。
エックスの意識と身体はホテルを飛び出して、昼の曇り空を飛んだ。
291 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:29:05.83 ID:eNUGwG2m0
「――そらぁ!!」
紫紺の脚が、女性型の腹部を蹴りあげる。
ヴァヴァは蹴球の遊戯でもするかのように、マンドリラーを蹴り付けた。
紫紺の脚が、女性型の腹部を蹴りあげる。
ヴァヴァは蹴球の遊戯でもするかのように、マンドリラーを蹴り付けた。
力強さに、どこか女らしさを持つボディは宙に浮き、落雷の如く落とされる踵がそれを叩く。
強制的に地面へ落下させられるマンドリラー。
強制的に地面へ落下させられるマンドリラー。
全身を痛みが貫く。苦鳴を漏らさぬよう、噛み締められた唇が痛々しい。
「期待させといて!! オレを期待させといて!! エックスより期待させといて!!」
バネ仕掛けの脚部。
何度も何度も蹴り付けるヴァヴァは、怒りの声をあげるが、そこには笑みを含む。
バネ仕掛けの脚部。
何度も何度も蹴り付けるヴァヴァは、怒りの声をあげるが、そこには笑みを含む。
「くぅっ……!」
下に広がるアスファルトに罅を入れる程、ヴァヴァの凶行は苛烈を極めた。
思わず、マンドリラーは呻いてしまう。
下に広がるアスファルトに罅を入れる程、ヴァヴァの凶行は苛烈を極めた。
思わず、マンドリラーは呻いてしまう。
漆黒の自動車道。両端を、高いビルが隣接して立ち並ぶ。
大都市の中心で行われる一方的な暴行。
大都市の中心で行われる一方的な暴行。
何故かこの街に人影はまったく無く、閑散とする道路に、肉を打つ音だけが空へと響いた。
293 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:31:14.02 ID:eNUGwG2m0
「このヴァヴァは!! 素晴らしく!! 失望したぜ!!」
リズム良く脚部が送り込まれる。
嫌な音を立て、肋骨をへし折られるマンドリラー。
リズム良く脚部が送り込まれる。
嫌な音を立て、肋骨をへし折られるマンドリラー。
「どらっ!!」
使用不能となった肋骨は本数を増やし、三本目が砕けた。
そして――ヴァヴァの掛け声と一緒くたに豪風を纏ったつま先が放たれる。
使用不能となった肋骨は本数を増やし、三本目が砕けた。
そして――ヴァヴァの掛け声と一緒くたに豪風を纏ったつま先が放たれる。
矢となるマンドリラーの身体が、近くの街灯をへし折りながら、洋服店の壁へと突き刺さった。
積み上げられた煉瓦を散らし、そして、長い髪の女は歩道に崩れ落ちる。
積み上げられた煉瓦を散らし、そして、長い髪の女は歩道に崩れ落ちる。
「はっはっはっ!! 楽しいねぇ!!」
「……あぐっ!」
桃色の頭髪を掴み、ヴァヴァはすかさず鼻面へと拳を叩き込む。
端整な鼻腔から血が溢れ、赤が顔を汚す。
「……あぐっ!」
桃色の頭髪を掴み、ヴァヴァはすかさず鼻面へと拳を叩き込む。
端整な鼻腔から血が溢れ、赤が顔を汚す。
「ほら、もっと鳴けよ!! ひゃははははは!!」
暴力の快感に、ヴァヴァの哄笑が自然と大きなものになった。
頭部を掴んだまま、マンドリラーを壁へと引きずり、彼女の顔を赤き煉瓦へと叩きつける。
暴力の快感に、ヴァヴァの哄笑が自然と大きなものになった。
頭部を掴んだまま、マンドリラーを壁へと引きずり、彼女の顔を赤き煉瓦へと叩きつける。
「そら!! ――そらぁ!!」
叩きつけ、引き戻し、叩きつける。
赤を違う赤で染めるマンドリラーは、力の暴風に翻弄された。
叩きつけ、引き戻し、叩きつける。
赤を違う赤で染めるマンドリラーは、力の暴風に翻弄された。
295 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:32:36.32 ID:eNUGwG2m0
「人が居ないのは、あなたの命で避難勧告を?」
マンドリラーで遊ぶヴァヴァが立つ歩道。
マンドリラーで遊ぶヴァヴァが立つ歩道。
そこから少し離れた、車道が縦横に横切るのを邪魔する、丸く切り取られた空間。
十字路の中心となる位置に、石作りの小さな噴水が、水を噴出して自分の存在を主張していた。
十字路の中心となる位置に、石作りの小さな噴水が、水を噴出して自分の存在を主張していた。
ちょっとした規模の公園に対峙する二人。
仁王立ちする、緑色のメタリックなボディを装着する影が、上に着込む黒衣を風で揺らす。
仁王立ちする、緑色のメタリックなボディを装着する影が、上に着込む黒衣を風で揺らす。
強烈な威圧を持つレプリロイド。
漆黒のぼろを羽織った金髪碧眼の女が口を開き、
「――父さん」
こちらを見つめる男を、そう呼んだ。
「――父さん」
こちらを見つめる男を、そう呼んだ。
金に対する銀。
白髪を後ろに流した、整った目鼻立ちの老人が腕を組んでいる。
白髪を後ろに流した、整った目鼻立ちの老人が腕を組んでいる。
じっと注がれるケインの視線に、女は顔色を変えない。
思うところがあるのか、鋭い双眸を細め、老人の動きを待つ。
思うところがあるのか、鋭い双眸を細め、老人の動きを待つ。
297 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:35:42.08 ID:eNUGwG2m0
「シグマ……私は後悔している」
喪服のようなスーツの上にある、皺の寄った顔が苦渋に歪む。
初老の男は眉間に力を込め、湧き上がる感情を押し殺した。
喪服のようなスーツの上にある、皺の寄った顔が苦渋に歪む。
初老の男は眉間に力を込め、湧き上がる感情を押し殺した。
「お前の事は娘のように思っている。昔から……それは今でもだ」
きらきらと舞う長い髪の女へ向け、自分の腕を差し出す。
きらきらと舞う長い髪の女へ向け、自分の腕を差し出す。
「あの時、お前に宿った深い闇。――それに、私は気づく事ができなかった」
ケインは突き出した掌を握り、自分の胸へ引き戻した。
後悔を詰める頭を振るケイン。
ケインは突き出した掌を握り、自分の胸へ引き戻した。
後悔を詰める頭を振るケイン。
「もうやめてくれ、シグマ」
老人の口をつく嘆願が、シグマと呼ぶ女に与えられる。
だが彼女は眉一つ動かさない。
老人の口をつく嘆願が、シグマと呼ぶ女に与えられる。
だが彼女は眉一つ動かさない。
噴水の水より冷たい風が、二人の間を吹き抜いた。
黒衣が翼のように舞い、背広の裾とネクタイが時計の振り子となる。
黒衣が翼のように舞い、背広の裾とネクタイが時計の振り子となる。
「人間が愚かな事は解った。お前達の蜂起が、それを浮き彫りにしたよ」
人間を代表し、同じ人間であるケインが頭を下げた。
人間を代表し、同じ人間であるケインが頭を下げた。
「いずれハンターは解体し……人間達はその罪を償うだろう」
300 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:37:37.39 ID:eNUGwG2m0
ケインは続け、
「――もう、いいだろう」
起こる悲劇の終結を願った。
「――もう、いいだろう」
起こる悲劇の終結を願った。
沈黙が流れる。
「まだです」
数瞬の時を破る、シグマの言葉。意味するのは悲劇の継続。
数瞬の時を破る、シグマの言葉。意味するのは悲劇の継続。
「まだ、早い」
噴水を囲むベンチと梢を見回し、老人とは違い、シグマは決意に首を振った。
噴水を囲むベンチと梢を見回し、老人とは違い、シグマは決意に首を振った。
「シグマ……!」
掠れる声を出すケインは、胸から何かを取り出す。
掠れる声を出すケインは、胸から何かを取り出す。
それは無骨な鉄の塊である、曇り空と同じ色をした自動拳銃だ。
手に収まった、遠き目標を打ち抜く凶器が、女の額をポイントする。
手に収まった、遠き目標を打ち抜く凶器が、女の額をポイントする。
「邪魔をするのなら、父さんでも……」
シグマが黒衣から引き抜いた握りが、拳銃に対する。
そして、白い筒の先から、収束された光が剣の形に集まった。
シグマが黒衣から引き抜いた握りが、拳銃に対する。
そして、白い筒の先から、収束された光が剣の形に集まった。
「あなたは、まだ解っていない」
ビームセイバーを構え、シグマは至極真面目な顔をして言った。
ビームセイバーを構え、シグマは至極真面目な顔をして言った。
301 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:40:41.56 ID:eNUGwG2m0
雨が降り出す。
暗く淀んだ天から、小雨として雨粒が降り注ぎだした。
雨が降り出す。
暗く淀んだ天から、小雨として雨粒が降り注ぎだした。
「人間が背負わなければならない、十字架を……」
「何を、言って……」
雨霧の帳に光る女の瞳に、初めて感情が宿る。
光刃より鋭い悲哀が、銃を構えるケインを貫いた。
「何を、言って……」
雨霧の帳に光る女の瞳に、初めて感情が宿る。
光刃より鋭い悲哀が、銃を構えるケインを貫いた。
突然の浮遊感を全身に。
意識を飛ばされ、客室から吹き飛ぶエックスの瞳が、雨降る灰色の空を理解した。
空中での再起動。
己の状況を素早く確認すれば、今居たホテルは複数の窓から火炎を吐き出し、半壊していた。
空中での再起動。
己の状況を素早く確認すれば、今居たホテルは複数の窓から火炎を吐き出し、半壊していた。
ナウマンダーの姿は見えない。
身体をくの字にする少年の前で、小柄な少女のイレギュラーも、自分と同じく勢いある放物線を描いていた。
身体をくの字にする少年の前で、小柄な少女のイレギュラーも、自分と同じく勢いある放物線を描いていた。
尾を引く悲鳴が耳に届いた同時に、破砕音と衝撃。
ホテルの反対側に位置した建造物の窓を、青い背中で割りながら、少年は床に叩きつけられる。
ホテルの反対側に位置した建造物の窓を、青い背中で割りながら、少年は床に叩きつけられる。
304 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:44:13.30 ID:eNUGwG2m0
「く……」
苦痛の呻きを漏らしながら、周囲へ首を回す。
エックスは、ビルのテナントの一つ――喫茶店に放り出されたようだ。
押しつぶした丸型の机の破片を払い、立ち上がる。
苦痛の呻きを漏らしながら、周囲へ首を回す。
エックスは、ビルのテナントの一つ――喫茶店に放り出されたようだ。
押しつぶした丸型の机の破片を払い、立ち上がる。
大きな爆発音がし、壁の一部が通りにばら撒かれた。
窓の向こうのホテルは、静まる事なくその身を焦がし続けている。
窓の向こうのホテルは、静まる事なくその身を焦がし続けている。
「ひゃあああうう!?」
甲高い、少女の声と打ち割る音が唱和する。
丸びをおびたフォルムが、横手の窓から吐き出た。
甲高い、少女の声と打ち割る音が唱和する。
丸びをおびたフォルムが、横手の窓から吐き出た。
カフェテリアの机をいくつも弾き飛ばし、カウンターに激突する装甲の球体。
頭を逆さまにした少女が、両足をひしゃげたカウンターに投げ出して、気絶していた。
少年は顔をひきつらせ、のびているアルマージに近づく。
女に見えると言われる自分の顔、幼い顔に寄せた。
少年は顔をひきつらせ、のびているアルマージに近づく。
女に見えると言われる自分の顔、幼い顔に寄せた。
かち合う両者の瞳。
エックスが考えていたよりも早く、少女は現実へと復帰した。
エックスが考えていたよりも早く、少女は現実へと復帰した。
「う……ひゃあああああああああああああああああ!?」
そして喉から、恐れの感情を迸らせた。
耳を押さえた青い少年は、ぱっ、と彼女から離れる。
そして喉から、恐れの感情を迸らせた。
耳を押さえた青い少年は、ぱっ、と彼女から離れる。
305 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:48:34.24 ID:eNUGwG2m0
「お、落ち着いて下さい!! ちょ、ちょっと!!」
腰を低くしたエックスは、アルマージの顔を伺いながら、沈静の言葉をかけるが意味を成さない。
少女は天地を逆にしたまま、悲鳴を連続させる。
腰を低くしたエックスは、アルマージの顔を伺いながら、沈静の言葉をかけるが意味を成さない。
少女は天地を逆にしたまま、悲鳴を連続させる。
エックスは屈める姿勢のまま、おろおろと困り果てる。
そんな姿を尻目に、アルマージは声を張り上げつつ、異常な姿勢を戻した。
そんな姿を尻目に、アルマージは声を張り上げつつ、異常な姿勢を戻した。
「あう!?」
小さな身をかき抱いて立ち上がる少女が、悲鳴とは違う、切羽詰った呻き。
小さな身をかき抱いて立ち上がる少女が、悲鳴とは違う、切羽詰った呻き。
「や……駄目っ!?」
全身を揺らし、同じくがくがくと震わす両足。
一度、びくりとアルマージの身体が震えたかと思うと、股下から白い太ももをつたう液体が溢れた。
全身を揺らし、同じくがくがくと震わす両足。
一度、びくりとアルマージの身体が震えたかと思うと、股下から白い太ももをつたう液体が溢れた。
「な、何で……いやぁ……」
喫茶店の芝生のような絨毯を、アンモニア臭のする金色の液体が汚し、領域を広げる。
度重なる恐怖が、アルマージを失禁させた。
喫茶店の芝生のような絨毯を、アンモニア臭のする金色の液体が汚し、領域を広げる。
度重なる恐怖が、アルマージを失禁させた。
少女はいやいやと首を振りながら、股間を押さえるが、意図せずの排尿は止まらない。
膀胱に溜められたものは、女性の大事な部分を覆う白いテープを黄色くし、両手から零れる。
膀胱に溜められたものは、女性の大事な部分を覆う白いテープを黄色くし、両手から零れる。
「やだぁ……やだよぉ……」
とうとう小さな双眸から涙をこぼすアルマージ。
ぺたりと彼女の膝は座り込むのを境に、黄金の放流は力を失った。
とうとう小さな双眸から涙をこぼすアルマージ。
ぺたりと彼女の膝は座り込むのを境に、黄金の放流は力を失った。
306 :Irregular's Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:51:37.75 ID:eNUGwG2m0
「あ……あ……」
開かれた唇から失意を漏らし、さめざめと泣く少女。
開かれた唇から失意を漏らし、さめざめと泣く少女。
――凄まじい戦闘能力持つレプリロイド。
だが、それ以前に、彼女は年端のいかぬ少女であるのだ。
だが、それ以前に、彼女は年端のいかぬ少女であるのだ。
アルマージを驚愕させた本人であるエックスは、後悔と申し訳なさを胸に広げる。
同時に、自分に微笑むペンギン型の少女を思い出した。
同時に、自分に微笑むペンギン型の少女を思い出した。
イレギュラー。
その単語の意味、そして範囲が解らなくなるエックス。
その単語の意味、そして範囲が解らなくなるエックス。
どこまでが〝異端〟であり、どこまでが〝真っ当〟なのか。
暴走するレプリロイド、狂気じみた調査をするハンター。
人間の行動に意義を唱えたレプリロイド、種別の違う両者の心を解するケインとライト。
人間の行動に意義を唱えたレプリロイド、種別の違う両者の心を解するケインとライト。
何をもって分類すればいいのか――少年は、嗚咽をあげるアルマージを眺めながら悩んだ。