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VIPロックマンまとめ
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VIPロックマンまとめ

ロックマンX12

最終更新:

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
103 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:18:44.23 ID:pomc27Au0

頭を撫でられる感触。
自分を見下ろし、笑顔を送ってくれたのは誰だったか。

――誰かの意見など、気にするな。君には、君の意思があるだろう。
エックスに戦闘を教授し、それ以上の物も教えた女性。

――君はその甘さによってB級だが……私はそんな君の甘さは嫌いでは無いよ。
ハンターからの命令。
少年の心は、人間とレプリロイドとの間で揺れる。

「嫌だよぉ……痛い事しないでぇ。……やだぁ……痛いの、やだぁ……」
目の前で泣く少女。
自分は何故、戦うのか――エックスは思い出す。
このような少女達を救うのでは無かったのか、このような戦乱から世界を解き放つのでは無かったのか。

「本部の意思も、他の誰かの意思も関係ない……」
少年の黒瞳に、決意が炎をあげて宿る。
自分の隊長、大切な仲間、出会った少女達の言葉が思い起こされた。

「正しいか、おかしいなんて――自分で決めるものだ……!」
伝説のレプリロイドと呼ばれた、少年が立ち上がる。
何を自分は成せば良いのかを再確認し、そして戦う相手を見極めようとした。


107 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:21:52.62 ID:pomc27Au0

「な、何でもしますからぁ……。ふ、服も脱ぎますからぁ……やだよぉ……」

少なくとも――
「…………ふえ?」
エックスは彼女を敵だとは思わなかった。

破壊されたカウンターをまたぎ、大量のグラスが入れてある棚から白いタオルを取り出す。
泣きじゃくる少女に近づき、滂沱と流れる涙に濡れた顔を、優しく拭いてやった。

「大丈夫? これ、使って」
〝過去〟が自分がしてくれたように、髪を布袋に収める頭を撫で、タオルを手渡した。
握らされた布と、少年の顔を見比べ、アルマージは困惑する。

そして、少年の言わんとしている事を、自分の足元に出来た水溜りを見て理解した。

「見ないよ。安心して」
赤面をタオルで隠す少女に、青い背中を向け、エックスは諭すように言った。
おどおどとアルマージが布を剥がし、不審の目で少年の背を見つめた。

少女の唇が、この行為に対しての説明を尋ねようと喘ぐ。

「もう、行くね。……出来れば、もう任務なんて止めて欲しいな」
だが、背を向けたままのエックスの言葉によって、それは叶わなかった。

それじゃ、とエックスは窓に向かい、下に広がる車道に向けて身を投げる。
答えが得られなかった少女――アルマージは無念を滲ませ、少年を見送った。


110 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:23:45.21 ID:pomc27Au0


真っ赤な液体が口から吐き出され、白い線が引かれたアスファルトを汚す。
暴虐な扱いを受けるマンドリラーの全身を、潤滑液であるオイルと擦過傷が埋め尽くす。

「つまらねぇな。エックスの方が、まだ良い声で鳴いたぜ」
ヴァヴァは心底失望した顔で、桃色の頭髪を掴み上げ、灰色に濁る天へ向かせた。
青く腫れる彼女の顔に、ぱらぱらと降る雨粒がぶつかる。

マンドリラーは再び地面に叩きつけられた。
苦痛に震わす背中を、力強く振り下ろされたヴァヴァの足が踏みつける。

嬲る者と、受ける者は噴水がある公園に近づいていた。

「シグマ、いったいお前は何を望んでいるんだ……」
それを横にするケインとシグマは、お互いの凶器で拮抗を保っている。
数歩の間隔は、老人が握る銃の有利性を認識させるが、相手はレプリロイドだ。

シグマは女性型ではあるが、戦闘用のレプリロイドである。
その気になれば、短き間合いなど瞬時に消し去り、構えるビームセイバーが男を焼くだろう。

「人の……傲慢を知らず、罪を知らず、ただ静かに生きてください。――父さん」
子供をあやすように、シグマは戦闘体勢を崩さず、警告というには柔らかいもので口を開いた。
雨に濡れ、額に張り付く金髪をかき上げる。

「父さん、あなただけは……」
憂いを湛えるもので、女はケインを見つめる。
年を経て加えられた皺が寄る、老人の顔は苦渋に満ちた。


112 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:27:09.95 ID:pomc27Au0

二人を尻目にするヴァヴァが、止めを刺さんと右肩の砲台を倒れるマンドリラーに向ける。
死を放つ銃口が、ピンク色の頭部に狙いを定めた。

「――その人から足をどけろ、ヴァヴァ!!」
轟く怒声。
少女の無慈悲な処刑が、雨霧を貫く光弾によって中断された。

白く輝くエネルギーが、飛び上がるヴァヴァの爪先を掠め、アスファルトが爆散する。
射撃は、言葉通りにマンドリラーから足をどけさせた。

「良い目をしている……」
ケインから目を離し、シグマが見たものは――怒れる少年――エックスだ。
隣に着地するヴァヴァを横目にしながら、彼女は緑光の切っ先を少年に突きつける。

「シグマ隊長…………お久しぶりです」
煙を吐き出すバスターを構えながら、少年が公園へ歩む。
エックスの挨拶に、シグマは斜めにする剣身で己のボディを隠した。

「もう、止めて下さい」
何も知らないものが聞けば、理解する事が出来ない一言。
だが、ここに居る全ての人物はそれを理解している。少年の言葉は、彼女らの心に重く圧し掛かるものだ。

闘いを止めろ、と少年は言う。
だが、答えは――無い。


118 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:32:44.31 ID:pomc27Au0

「なら……僕はあなたと闘います」
予想はしていたのだろう、僅かにあった期待を投げ捨て、少年はシグマに向けるバスターに力を籠めた。
収束される光が、大きな銃口に集まる。

「ヴァヴァ……君とも」
少年の瞳が左に移動し、中腰になる紫紺のボディを射抜いた。

それに対し、何故、ヴァヴァは安堵の笑みを浮かべるのか。
溶接用にも似たメットの下で、どこか寂しげに、誰にも気づかれぬよう少年に薄く笑いかけた。

眩いばかりに輝く、少年のボディと右腕。――空間を軋ませる音より早く、太陽のエネルギーが突進する。
チャージバスターが放たれると同時に、シグマは半身を捻った。

動きに呼応した斬撃が、迫り来る光を乱舞させる。
激突して、千切れる力。
拡散したバスターは目標を逸れ、周囲を穿った。ベンチが弾け、噴水の一部が石材を破裂させる。

エックスが駆ける。
紅を混じらせたフットパーツが煙をあげ、蒼穹色の身体が疾走した。

走りながら、横に出された腕が何かを掴もうと蠢く。
地に沈んで昏倒するマンドリラーの身体が光り、少年のボディも再び煌めく。

『エレクトリックスパーク、Ready』
治まる発光。
そして現れるエックスの全身から――紫電が解き放たれた。


123 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:35:13.23 ID:pomc27Au0

「ほう……」
相手の力を使う――異端の存在に、シグマは感嘆の呟きを漏らす。
凄まじい放電の産声を上げ、桃色の電流を纏うレプリロイドが出現した。

ケインも目を大きく開いて驚愕する。
彼の記憶に、エックスのような技能を持つレプリロイドは該当しない。

未知なる物への恐怖と畏怖――
だが、直ぐに合点がいったような顔をして少年を眺めた。

「なん、だ……」
「やってくれたか、クワンガー……。感謝をしなければならないな……」
ヴァヴァが意図せず後ずさり、シグマが暖かな目をして、とても満足そうに頷いた。

蜘蛛の糸のように放射される電撃が、辺りを焦がす。
据えた匂いが、駆けるエックスの後を追って流れた。

「素晴らしい力だ……。――これなら」
ちらりとケインを見やり、シグマは背にする黒衣を翻す。
そして、閑散とする後方に向けて声をかける。

「ナウマンダー。伝説のレプリロイドの力がどれほどか……君が試していいぞ」
エックスが間合いに入る。
横薙ぎされるブレイド。上体を逸らす少年の鼻先を、光刃が掠めた。

仰け反りながら、エックスは電流を籠めた拳を放つ。
直線の一撃が、竜巻のように回転するマントに絡められた。


128 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:39:22.99 ID:pomc27Au0

黒衣の裾を掴んで目前に放ったシグマが、少年の腹部に向け蹴りを放つ。
跳ね上がるブーツを捌き、エックスは横転。その動作の最中で、電撃を放っていた。

エレクトリックスパークが黒衣に着弾し、爆発して更に放電する。
シグマはそれを受けながら、ふわりと跳躍し、大きく間合いを取る。
直撃だったが、シグマ自身にも黒のボロにも損傷は無かった。

「退くぞ、ヴァヴァ」
バスターから発射される二対の雷の球体を斬り伏せながら、シグマは姿勢を低くする少女の首元を掴む。

飛び上がる女達の足元を、蛇のような電撃が長身を叩きつけた。
地面は紙の如く引き裂かれ、無数のアスファルトの破片が宙で踊る。

「何だと!? オレは――」
ストロボする世界に目を瞬かせながら、ヴァヴァは空中で抗議した。

「退くぞ」
シグマは有無を言わさぬ口調で、退避の意向を押し付ける。
少女は荒々しく舌打ちして、電球を両腕に走らせるエックスに中指を立てた。

「…………この借りは返す。今度こそ……今度こそな」
尾を引く、ヴァヴァの捨て台詞。


134 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:46:59.40 ID:pomc27Au0

「エックス……」
「次こそは、あなたを……」
表情を掻き消し、口の端を引き締め、エックスとは違った決意を宿すシグマ。
目前の少年と視線を激突させた後、ヴァヴァの後を追って市外への外へと消える。


――辺りに静寂が戻る。
ケインによって、住人達が全て避難させられた街。

天からの雨足が強くなった。
道路から雨粒の跳ねる霧が立ち上がり、車道――建物と建物の空間が白みおびる。

「お姉さん……!」
緊張を抜き、体を弛緩させるエックスは倒れるマンドリラーに駆け寄った。
ぼろぼろになった服装の下で、桃色の頭髪を持つ女は打撲の後とオイルの赤を滲ませる。

エックスは跪き、彼女の身体を抱き寄せると息を確認する。
微弱ながら、マンドリラーからは生命の鼓動を感じられた。

噴水の横に立ち尽くすケインに、救済の声を張り上げる。
呆然と、自分の娘の言葉の意味を吟味していたケインは、エックスに現実の世界へと引き戻された。

胸から白いペンケースのような物を取り出しながら、二人に近づく。
ケインはマンドリラーの傍らに膝を付け、ケースを開けた。
赤い十字が描かれたケースには、薬液の入った瓶と銃型の注射器が入っていた。


138 :Irregular`s Elegy:2006/11/18(土) 00:51:43.24 ID:pomc27Au0

瓶を注射器に装着し、ケインは女の白い腕にそれを刺す。押し込まれる薬液。
ガラスの胴体には、モルヒネとラベルが貼っていた。

「あの……」
「大丈夫だ」
マンドリラーの容態を心配するエックスに、片手をあげてケインは制止させる。


そして何かを言いかけて、中断する。
――ケインの鋭い瞳が、重なり合う二人を抜けて貫いた。

「私が応急的な治療する。――君には、我々を守ってくれると助かるな」
白いベールに覆われる車道。
煙立つ霧の壁が、地を震わせてこちらに向かう巨体によって切り裂かれた。

球体に近いボディが歩み、莫大な重量が踏み込む度に黒い地面を陥没させる。
垂れ下がる右腕に仕込まれたバスターの銃口に、蝋燭のような小さき炎が灯っていた。

忌々しげに顔を歪めるケインと、疲れた顔をするエックスに現れた巨人――バーニン・ナウマンダー。

「エックス!!」
機械の目に燃え盛る狂気を揺らめかせ、〝灼熱のオイルタンク〟の異名を持つイレギュラーが咆哮した。


422 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 22:37:38.86 ID:0avwvzTg0

エックスを見下ろす紅蓮からの使者が、破壊の歩行を間合い数十メートルという所で止める。

死、その物を吐き出すバーナーを左右に振った。
陽炎を作りながら、蛍の飛行のような炎の帯が揺らめく。

「さっきは楽しめさせなくて、悪かったんだぞう!!」
規則的な間隔で建設されるビル。それらの壁を揺らす程の声量が、角の無い形状の頭から送られた。
象型のボディに垂れ下がった長い鼻が、戦闘への歓喜にか、大蛇の如く撓る。

ホテルの一室でもそうだが、ナウマンダーは戦闘狂の嗜好があるようだ。
自ら、戦いを望む――エックスが理解出来ない事の一つである。

「伝説のレプリロイド……お前を焼いてやる……!! うははははははは!!」
憎悪に勝る歓喜で哄笑し、ナウマンダーは銃器を少年に向けて構えた。

「……それじゃ、任せます」
煩わしげに、メット下の濡れる髪の毛を払う。

絶え間なく降り注ぐ雨で、髪は直ぐに垂れて簾となった。
その間で光る瞳。
己の力を過信し、あまつさえ同僚を焼殺するイレギュラーに対して、エックスは闘志を燃やす。

マンドリラーの身体をケインに預け、ナウマンダーと戦うべく立ち上がった。


426 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 22:39:34.10 ID:0avwvzTg0

青きボデイの輪郭が歪み、掻き消える。
脚部がもたらす凄まじい速度で、エックスは山のような巨体に肉薄した。

待ち受けるのは、巨人から吐き出される業火。
龍を思わす炎の塊が、空中で範囲を広げエックスを包まんとする。

エックスは目前に広がる赤を限界まで引き付け、直角に逃げた。
人間では成しえない、鋭く回避行動をするダッシュパーツ。半瞬の後、爆炎が地を焦がす。
オレンジの炎が着弾と同時に膨れ上がり、強固な筈であるアスファルトを溶かした。

一瞬にして、世界は白から赤に。
摩擦熱に煙を出す踵を引きずりながら、エックスは連続してバスターを射撃した。
陽光を媒介とした純粋なエネルギーの散弾が、ナウマンダーへと撃ち放れる。

的は大きい。
容姿を裏切らない愚鈍な動きでは、回避は不可能だ。
火球を何度も生じさせる着弾の衝撃に、ナウマンダーの巨体が揺れる。

雨ではない白が広がった。
煙幕をボディで切りつけるエックスは、巨人の右脚付近に現れる。

黒い瞳に、綺麗に磨かれた球体が映った。
背筋に走る悪寒に触発され、後ろに跳ぶエックス。

――近くにあるトラックを越える質量が、雷撃の如く振り下ろされた。
抱えるほどの太さを持つ脚で地面を破砕させたナウマンダーに、これといった損傷は無い。


431 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 22:44:17.02 ID:0avwvzTg0

狐目が笑う。
同じく太い腕を横殴りにして、少年を牽制した。

頭を低くするエックスは、ナウマンダーに股下に逃げ場を見出し、滑るように移動する。

両足の間に向けスライディングする青き背に、叩きつけるもう一つの腕が掠めた。
綺麗な直線を描く腕は、爆弾のような威力を持つ。
アスファルトに大きく手を伸ばす罅――自分の足元を、ナウマンダーの拳が炸裂させた。

地の破片と衝撃波に後押しされながら、エックスはくるりと反転する。
背後を取り、絶好のチャンスを作り出した。
ナウマンダーが振り返るより早く、バスターをチャージ。壁のような背に、渾身の一撃を見舞う。

白光する強大な力に巨体は前のめりになり、そのまま引き倒れた。
小規模な地震を起こしたナウマンダーは、追い討ちをかけようとするエックスへ、振り向きざまに火炎を放射する。

大きくへこむ鉄の球体から、エックスは横に飛んで離れた。
大気を焼き、延長上の全てを燃焼させる炎が、右手に建造されたレストランに激突した。
家族連れを待つ飲食店は、何の予兆もなく爆発する。レストランは、自分の残滓を前の車道に吐き出した。

蒸発する雨粒の白煙。止みそうにない強い雨だが、被害を広げる炎には勝てないようだ。

「ちょこまかと、鬱陶しいんだぞう!! 大人しくしろ!!」
「――その攻撃をやめてくれたら、考えますよ。ナウマンダーさん」
ファイヤーウェーブの威力を目の当たりにし、冷や汗を垂らしながらエックスは愚にもつかない言葉を返した。


436 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 22:51:01.11 ID:0avwvzTg0

それを挑発と受け取ったナウマンダーは、少年の提案を火球で却下する。

先ほどの戦いと違い、この場は広い。
移動を限定された空間のホテルでは、フットパーツの緊急加速システムは発揮できなかったが、今はその縛りを受けない。

瞬発的に、そして小刻みに移動するエックスを、獣の唸りを奏でる炎は捉える事が出来なかった。

無意味に消費される燃料が、地を焼き、空を焼き、そして次の犠牲者を黒い乗用車に選んだ。

――車体が、チョコレートのように溶ける様は一瞬だけしか見えない。
タンクに内包したガソリンへ引火し、炎と黒き身を周囲に拡散させた。

用の無くなったドアが矢になり、着飾るマネキンが立つ横手のショーウィンドウに突き刺さる。
ドレスを着込む人形が、砕けたガラスから飛び込む雨に晒された。

「死ね!!」
吼えながら、ナウマンダーは出鱈目に爆炎を席巻させる。
放射を続けながら、空いている手で地面を打ちつけ、跳ねるように立ち上がった。

地面に落ちることなく蒸発する雨の霧と、燃焼による煙幕が辺りを白濁させる。

無数の火柱が、煙るベールに穴を開けた。
走りながらエックスは、蛇の様をする炎の先にバスターを撃つ。相殺は出来ないが、進行を遅らせる事は出来た。
ちりちりと全身を高熱で炙られながら、直撃を避けるエックスの前方に噴水が広がった。

走り回っていて気付かなかったが、少年は置いてきた二人の元に戻ってきたようだ。


441 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 22:57:41.60 ID:0avwvzTg0

「……おいおい、あっちへ行け」
「酷い!」
マンドリラーに包帯を巻くケインが、少年の後ろに位置する巨人を見て、ぞっとしない顔をする。
小瓶に入った紫色の薬液を、女の深い傷跡に塗りこみながら、エックスを追い払うように手を振った。

憤慨するエックスの前で座り込む二人の頭上に、猫がプリントされている可愛らしい折り畳み傘。

黄色の屋根が、勢力を強める雨風を防いでいる。
地面に立て掛けられている柄の部分に、ドップラーと書かれた名札が付いていた。

簡易に雨をしのぐケイン達から目を離し、エックスは後ろから怒りを撒き散らすレプリロイドに再度対峙する。
左右の建造物が焼かれ、炎熱の通り道――地獄がそこにあった。

死の手先が、放出者に先駆けてエックスに掴みかかる。
上空に飛び上がり、巨大な炎の大蛇の胴を見下ろす。転がる空き缶や、捨てられたゴミが、地を舐める炎に全てが灰と化す。

ナウマンダーはエックスだけを敵とみなしているようで、戦闘不能のマンドリラーと非戦闘員のケインには目もくれない。
アスファルトを粉砕させながらの突進をし、ナウマンダーは燃え盛る火炎を吐き続ける。

迎え撃つは、光弾の連撃。
火柱に連なる爆発が生じ、エックスを飲み込む軌道が反れる。途中で、ファイヤーウェーブは無数の火の粉となった。

幻想的に、業火の欠片が雨と一緒に降下する。

地面が白熱する前に右手に跳び、エックスの爪先はビルの壁を叩く。
そのまま疾走し、不安定な体勢のまま青い身体が――クリーム色をした壁の道を走った。


446 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 23:01:19.39 ID:0avwvzTg0

それに、火炎が追い縋った。エックスの後ろで、建造物が次々に崩壊してゆく。

エックスが再び壁を蹴り、蒼穹色がナウマンダーの頭部の横へ。
迎撃の炎は――

「ごめんなさい!!」
間に合わない。

光り輝くチャージショットが、丸い象形の頭を貫通する。エネルギーが右目から入り、後ろへ抜けて基盤や破片を撒くナウマンダー。
巨体が動作を停止した。だらりと、力無く右腕が下がる。

「なにか、おかしかったな……」
腑に落ちない表情のエックスが足を地に落ち着け、首を傾げた。
ホテルでも感じた違和感が、未だ拭えない。

「確かに、妙なレプリロイドだ。」
いつの間にか後ろに立っていたケインが、少年の言葉に同意する。漆黒のスーツは脱ぎ、シャツ一枚の姿になっていた。
風に揺れる赤いネクタイ。

エックスが預けたマンドリラーは、噴水の近くにあるベンチに寝かされていた。
傘はベンチの背もたれの隙間に刺さり、横になる女に黒い背広がかけられている。

寒さと冷たさに、エックスは小さくくしゃみをした。
ケインが胸のポケットから、煙草を取り出す。


454 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 23:06:23.58 ID:0avwvzTg0

「異常な巨体。愚鈍さを補う、広範囲の武器。――最初から、そのつもりで設計されたみたいだった」
「ナウマンダーさんの事、知らなかったんですか?」
そういう違和感では無かったのですけど、と口の中で呟きながら、エックスはケインに尋ねた。
火を付け、煙草を吸うケインは首を振る。

「中東地域は、私の管轄では無いのでな。君はどうだ?」
紫煙を口から吐き出しながら、ケインが問い返した。

「僕も、アイちゃんと仲悪いぐらいしか。通信してる声しか聞いて――」
ペンギンを模したメットを被る少女を思い起こし、エックスは平和な日常の記憶を辿る。

食堂や、一緒に散歩をした公園で、無線機を使い口論する二人。

陰鬱な表情に微かな笑みを浮かべて、辛辣な言葉を吐き出す少女。
大声を張り上げ、喧嘩をする無線の相手。

少女の嘘に直ぐに騙され、次の日は火を噴くように怒る。
少女はまた嘘をつき、最後には笑いながら謝っていた。

いつも口論にしているが、エックスには二人は実は仲が良いのだと、常々感じていた。

「――そうか、声だ……!!」
合点がいったエックスの顔に、理解の色が滲む。
無線の声は、いつも少女のものだった。しかし、仁王立ちのまま微動だにしない巨体の声はそれではない。


459 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 23:11:13.06 ID:0avwvzTg0

「――そうか、声だ……!!」
合点がいったエックスの顔に、理解の色が滲む。
無線の声は、いつも少女のものだった。しかし、仁王立ちのまま微動だにしない巨体の声は、それではない。

「ケイン博士、ナウマンダーさんは女の子なんですよ!」
「しわがれた声だったな、こいつは。レプリロイドとは思えない設計……まさか」
ケインが何か気付き、灰色の視線を巨体の頭から足元へと流す。

そして――
「やはり……!!」
ケインが舌打ちしながら、素早く後退。

頭部を撃ち抜かれた筈のナウマンダーが、動きを再開した。

光が消えた片方の狐目が、二人を睨む。
驚きに全身を縛られるエックスだが、間近の地鳴らしに正気に戻った。

跳躍して、ケインと同じく後ろに下がりながら射撃する。
スイングされた腕が、バスターを打ち払った。光弾が虚空へ飛び去る。


469 :Irregular`s Elegy:2006/11/19(日) 23:16:35.74 ID:0avwvzTg0

ゆったりと進む火を吐く戦車。
生身の人間と、生態部品が基本のレプリロイドが巻き込まれれば、一たまりも無いだろう。

「エックス、遠隔誘導だ! 奴はメカニロイド――こいつを、操作している奴が居る!」
手にした煙草を投げ、ケインは声を張り上げた。

筒の先に灯っていた小さな火は、しぶき続ける水溜りで消える。

エックスは頷き、空中で何度もバスターを唸らせた。
破壊の衝撃がナウマンダーの全身を埋めるが、仰け反らせるだけで、それ以上の効果は見込めない。

爆炎による破壊も復活し、生じる赤が全てを抱きしめる。
死の抱擁は、何者にも耐えれない。被害の一つ――バス亭が溶け、地面を濡らした。

放出される火炎。
数十の爆発。
あがる火柱。

――そして物体の死。

「殺してやる……殺してやるぞ・・・…エックス!! お前を焼いてやる!!」
怒りに燃えた少女の〝声〟が、どこからか流れた。

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