― 俺の部屋 ―
俺の部屋は医務室に隣接する所にある
俺はウィッチだけを診るのではなく、整備士たちも診るらしい
俺「…名前を覚えるのが大変だな……めんどくせぇ…」
俺は暗記などの記憶系が苦手だ
中学、高校の歴史での暗記
テストでいつも0点を取っていた記憶がある
だが、病名、病状などはしっかりと覚えている
これが不思議だ
俺「えーっと……あのちっちゃいやつがフランチェスカ・ルッキーニ少尉…ロマーニャ人か…」
「で、あの爆乳小娘がシャーロット・E・イェーガー大尉……リベリアンか…」
「俺と同じスオムス人は……エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉……なんか聞いたことある名前だな」
「…ん? 宮藤芳佳軍曹……治癒魔法を使う…ほう…治療が魔法で出来ちゃうのか…扶桑出身…」
俺は一通り隊員の名を覚え、ひとまず休息をとった
酒を飲みたいと思ったが、部屋にはベッドのみぐらいで酒どころか飲み物すら無い
俺「しゃぁねぇな……貰ったサルミアッキで我慢すっか……」
「相変わらず……凄い味だぜ…」
俺はスオムス出身だが母国料理でうまいと感じた料理は殆ど無い
特にシュールストレミングは一番苦手だ
一度食べたことがあるが、あれは食べ物とは思えない
俺「さて…また名前を覚えるか…」
「あの金髪頭のちびっこは……エーリカ・ハルトマン中尉……カールスラント出身…」
「あのスオムス人の隣にいたやつは…サーニャ・V・リトヴャク中尉か…オラーシャ出身…」
「本名はアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク……長い…」
「あの眼鏡っ子が…ぺリーヌ・クロステルマン中尉…ガリア出身か…」
「ツインテールのやつが……ゲルトルート・バルクホルン大尉…金髪娘と同じカールスラント出身か…」
「…大人しそうなやつが…リネット・ビショップ曹長……ブリタニア出身…」
「それで、あの階級の高そうな2人が坂本美緒少佐とミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐か…」
「坂本美緒少佐は…扶桑出身… ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐がカールスラントか…」
一通り隊員の名前を覚えたところで、俺は寝ることにした
俺「……はぁ……」
俺は想像していた以上にウィッチが子供であったことに驚きを感じながら、眠りに落ちた
俺「……ん……もう朝か……」
普段から寝起きの悪い俺だが、慣れない環境のせいかいつもより早く目覚めてしまった
俺は起きたらすぐにシャワーを浴びる習慣があるが、風呂場などを知らされていないので浴びることができない
俺「そういえば…飯はどうするんだ?……」
俺が飯について考えていたとき、ドアがノックされた
コンコン
《俺さーん、起きてますか?》
俺「…起きてるよ…」
(この声は……治癒魔法のやつか?)
俺は大方の予想をつけながら、ドアを開けた
ガチャッ
宮藤「あっ!起きてましたか!俺さん、朝食ですから食堂に来てください!!」
俺「おい…俺がお前達と一緒に飯食っていいのかよ?……」
宮藤「はい!ミーナ中佐にも俺さんを呼んできてくれって頼まれたので」
俺「……そうか……今すぐ、行く」
宮藤「分かりました!すぐ来てくださいね!!」
バタン
俺「…………さて、行くか…」
― 食堂 ―
「「「「「いただきまーす!!」」」」
俺「い、いただきますってなんだ?」
宮藤「あっ!いただきますってのは……いただきます?」
俺「……訳分からん…」
坂本「扶桑の食文化には食べる前に"いただきます"、食べ終わった後に"ごちそうさま"と言うんだ」
「"いただきます"は私たちの命のために動植物の命を頂きますという意味だ」
「そして、"ごちそうさま"は、ご馳走になりましたという意味だな!」
「まぁ、そのうち慣れるさ!!」
俺「ほぅ……扶桑にはそんな食文化があるのか……」
「じゃ、いただきます」
俺は
初めて触れた他文化に多少の戸惑いを感じながらも、朝食を食べ終えた
この朝食も俺の食べたことのないものばかりであった
この…米ってやつは…今までに何回か食ったことがあった
だが…この"なっとう"ってやつは無理だ… 食べ物じゃない…
まぁ、"なっとう"以外は凄くうまかった
食べ終わって、ウィッチ達が訓練に向かうとき、俺はヴィルケ中佐にシャワーについて尋ねた
俺「ヴィルケ中佐、シャワーはどうしたらいいんだ?できれば、サウナの方がいいが、さすがに無いだろう…」
ミーナ「シャワーもサウナもあるわよ。俺さんは…そうね… 私達がお風呂に入り終わったらでいいかしら?」
俺「サウナとシャワーがあるのは嬉しいが…"ふろ"ってなんだ?」
ミーナ「扶桑の物よ。俺さんも一度、入ってみるといいわ。ちょうど、今の時間帯なら大丈夫だと思うわ」
俺「じゃ、お言葉に甘えることにする」
俺は教えられた所に向かった
俺「……これは…何だ?」
教えられた場所の入り口に布のような物が垂れ下がっていた
これなんて書いてあるんだろう……扶桑語は少しだけ勉強したことがあるが…大分前だったからなぁ…
えーっと……"ぬ"…違うな…"ゆ"だっけ?……
俺「…まぁ、後で扶桑人に聞いておくか…」
俺は特に気にせずに、布をくぐった
俺「さて、風呂ってやつに入ってみるか……」
俺は脱いだ服をきちんと畳み、籠に入れた
そして、木製のドアをゆっくりと開けた
俺「……あんな所まで歩かなきゃならないのか……」
少し先にある丘に風呂があるので、そこまで裸で歩いていかなければならない
時々来る風に身を縮ませながらも、辿り着いた
俺「おお……これが風呂ってやつか……」
俺は湯気を立てているお湯にゆっくりと体を沈めた
俺「…温けぇ……癖になりそうだ…この感覚…」
俺は幸せな気持ちを感じつつ、素晴らしい景色をしばらく眺め続けた
俺「ふぅ~ さっぱりした…」
俺が濡れた髪を手で乾かしながら、医務室へ向かった
そして、医務室の椅子に座ったと同時に隊一番のちびっ子
フランチェスカ・ルッキーニ少尉が入ってきた
ルッキーニ「ねぇねぇ!俺!ちょっといい?」
俺「…なんだよ?」
ルッキーニ「あのね!ちょっとお腹がイタイの!」
俺「……昨日、どんなやつ食ったんだ?…」
ルッキーニ「えーっとね!チョコクッキーいっぱいでしょ!あと、芳佳に作ってもらった扶桑のお菓子をいっぱい!」
「あと、ケーキもいっぱい!ピッツァも!」
俺「………それは食べすぎによる腹痛だ…」
俺はルッキーニの口から出てくるたくさんの食べ物の名に少し呆れた
ルッキーニ「そうなの?食べすぎ?」
俺「…そうだ……しばらく菓子を控えろ…」
ルッキーニ「えぇーっ!?ヤダーッ!!」
ルッキーニは嫌そうな顔をして、すぐさま医務室を去っていった
俺「…………はぁ…」
何ともいえぬ倦怠感から溜息が出る
俺が医務室の窓から海を見ようとしたとき、一人の金髪娘がコソコソと医務室に入ってきた
俺「……なにやってるんだよ…」
エーリカ「わっ!?気づかれちゃった…」
俺「気づかれちゃったじゃねぇよ……バレバレだ」
エーリカ「む~ 気づかない振りしてくれてもいいじゃん!!」
俺「……そんな事より、なんか用か? 腹痛か?」
エーリカ「違うよ~ ちょっと聞きたい事があってね~」
俺「…なんだよ?」
エーリカ「ん~ 大した事じゃないんだけど…」
俺「大したことじゃないなら、帰れ」
エーリカ「俺~ ちょっと冷たいよ~」
俺「温かいに決ってんだろ…冷たきゃ死人だ…」
エーリカ「違うよ!態度が冷たいってこと!!」
俺「…はいはい……で、用は?」
エーリカ「あのね、俺はどうやってお医者さんになったの?」
俺「…どうやってなったのと聞かれてもなぁ………気がついたらなってた」
エーリカ「もう!真面目に話してよ!!」
俺「…これでも大真面目だ。まぁ、いつの間にか患者を診てた、ただそれだけ」
エーリカ「ね~ お願いだから、真面目に話してよ!!」
俺「…ったく…しつけぇな……どうして、そんな事聞くんだよ?」
エーリカ「私、将来お医者さんになりたいんだ」
俺「……ほぅ……お気楽そうに見えて、結構将来の事考えてるんだな…」
エーリカ「…俺、ヒドイ…」
俺「……まぁ、気にすんな」
「まぁ医者になりたいなら、人を助けたいっていう気持ちを持ち続けてればいいと思うぜ」
エーリカ「ん~ そうだよね!俺、ありがとう!!」
俺「はいはい…」
「まったく……騒がしいヤツだ…」
この基地に来て3日も経っていないが、疲れは既にピークだ
俺「……眠っ………」
俺は医務室にある簡易ベッドの上にねっころがり、静かにまぶたを閉じた
ドン!
俺「うわっ!?な、なんだ!?」
俺はドンという大きい音で目を覚ました
バルクホルン「起こしてすまない。この書類はミーナから俺へのものだ」
ドンという音は大量の紙を机に置く音だった
俺「………その量…なんなんだよ…」
バルクホルン「言っておくが、ミーナ…ミーナ中佐に文句を言うと、自分の手で自分の首を絞めることになるぞ」
俺「……へいへい……なんの資料だ?」
バルクホルン「今度、実施する身体検査の資料だ。我々ウィッチだけではなく、整備士たちの資料も含まれている」
俺「…まさか、俺一人で全部やるのか?……」
バルクホルン「当たり前だ」
少し強気な態度をとる女……ゲルトルート・バルクホルン大尉か…
あんな子供っぽい顔して大尉かよ……それを言ったら、さっきの陽気な2人もそうか…
俺「……なんとか軽減できないのか?…」
バルクホルン「無理だ。身体検査は明日行う。それまでに一通りこの資料に目を通しておくように」
バルクホルン大尉はそういうと、部屋をつかつかと去っていった
俺「……はぁ……こんな量…無理だっつーの…」
俺は愚痴をぶつぶつと言いながら、資料の一枚一枚に目を通していった
俺「……ほぅ…前回のデータだと、爆乳リベリアンはバスト94cm、ウエスト61cm、ヒップ86cmか……」
「……やべぇ体してんな……シャーロット・E・イェーガー大尉…」
「16歳って……反則じゃねぇか……」
俺はイェーガー大尉のスリーサイズを記憶にしっかりと残し、次の資料へと目を移した
その時、コンコンと軽くドアが叩かれた
俺「……はい?」
ガチャッ
ミーナ「俺さん、資料は見てるかしら?」
俺「……見ての通りだよ……この量なんとかしてくだせぇ……」
ミーナ「仕方が無いわ、俺さんの仕事だもの」
俺「………はぁ…」
笑顔で無理と言われるほど、絶望を感じるものは無い
俺「………これ読み終わらなかったら、どうなるんだ?」
ミーナ「読み終わらせるのよ」
俺「…………終わらなかったら?」
ミーナ「終わらせるのよ」
俺「……………はぁ…」
何を言ってもムダだということを悟った俺は再び資料を見始めた
そういえば、バルクホルン大尉に"文句を言うとヒドイ目に遭う"とか言われた気がする
ミーナ「俺さん、ここでの暮らしはどう?」
俺「どうって……普通だよ…」
ミーナ「それなら問題は無いわね。必要な物とかないの?」
俺「……そうだな……煙草と酒が欲しい…」
ミーナ「お酒はいいけど……煙草は駄目よ」
俺「……どうせ、ここの隊員に悪影響を与えるからだろ?」
ミーナ「あら、よくわかったわね」
俺「…煙草吸うと周りに悪いからな……それに、吸う方にも悪い…」
ミーナ「でも、なぜそういうことが分かっていて俺さんは吸うの?」
俺「……まぁ…気休めだな…」
ミーナ「そう……お酒は明日からでも用意できるけど…煙草はしばらく考えさせてくれないかしら?」
俺「…別にそれでいい」
ミーナ「では、引き続きがんばってください」
バタン
俺「……はぁ……」
さっきから溜息しか出てない
仕方が無いさ…疲れることばっかりなんだから…
俺「……まだ半分以上あるし…」
俺は半分以上ある資料に嫌気を感じながらも、一枚一枚読んでいった
続く
最終更新:2011年06月20日 20:23