― 俺の部屋 ―
俺「うおっ!? 煙草と酒が返却されてるっ!?」
机の脇に、どっさりと煙草と酒が積まれていた
取り上げられた物が、どうしてここにあるのだろうと疑問に思っていると、
俺の心を読み取ったかのように、ある大尉が喋りかけてきた
バルクホルン「禁煙・禁酒期間が終わったからな」
俺「うげっ!? ど、どこから現れたんだよ!?」
バルクホルン「さっきから、ずっとこの部屋に居た」
俺「……そ、そうか……」
まるで、扶桑で言い伝えられているニンジャのように大尉の気配は消されていた
迂闊に書類の量の多さの愚痴も言えないな…
バルクホルン「ところで俺医師、この部屋で、何か生ものを食べたか?」
俺「生もの? 俺の部屋、生臭いか?」
バルクホルン「いや、生臭いというか…特殊な匂いというか……その…イカの匂い?」
俺「イカ? そんなもん俺は食ってね………」
俺は思い当たる事があった
生臭いものとして挙げられる物は、決して魚介類とは限らない……
そう……カルピス、愛液などと呼ばれるものは時間が経つと、生臭く感じられることがあるのだ
俺は昨日、エーリカとした行為の後処理を忘れていた
バルクホルン「どうした? 固まってるぞ?」
俺「ははははは……」
俺は作り笑いをしながら、ベッドのシーツを取り外そうとした
バルクホルン「何をしている?」
俺「シ、シーツの洗濯をしようと思ってな……」
バルクホルン「そうか。 それより、俺医師に話があるのだが……」
俺「なんだ?」
バルクホルン「俺医師は……私たち、501のみんなに隠し事があるんじゃないのか?」
俺「ど、どうしてそんな事を…言うんだ…? それに…か…隠し事…?……そんな事して…」
俺が言い終わる前に、バルクホルン大尉は"嘘をつくなっ!"と叫んだ
確かに、バルクホルン大尉の言う通り、俺はみんなに隠し事をしている
エーリカにも直ぐに隠し事をしていると見破られたし、バルクホルン大尉にも見破られた
俺は嘘をつくのが下手なのだろうか?
バルクホルン「……最近の俺医師の様子はどうもおかしい!」
俺「……そんな事言われてもなぁ…」
俺は言う言葉に詰まりながら、右頬を指でぽりぽりと掻いた
バルクホルン「……悩みがあるなら…相談相手ぐらいしてやるぞ……」
俺「…………」
俺は大尉の言葉を受け流し、届けられた煙草を手に取り、吸いはじめた
ヴィルケ中佐に言われたウィッチの前で煙草を吸ってはいけないとの規則などすっかり忘れていた
バルクホルン「……その様子だと隠し事をしているのだな………」
俺「…………」
バルクホルン「…私たちには言えないことなのか…?」
俺「………いや……」
バルクホルン「……俺医師は…私たちを信頼していないのか……?」
俺「そんな事はない!! 501の全員を俺は信頼している!!」
バルクホルン「なら……それなら…言ってくれてもいいんじゃないのか!?」
俺「……無理だ…」
バルクホルン「なんで…なんで…言ってくれないんだ……俺医師は…私たち501の仲間だ!そして家族なんだっ!!」
「だから…隠し事など…して欲しくない……」
真剣な表情で俺に迫ってくる大尉に俺は心を動かされた気がした
501のみんなに、スオムスの
最前線へ行くという事を隠してきたのがバカらしくなってきた
俺「…ふっ……そうだな……大尉の言う通りだ……」
「…隠し事は…良くないよな…」
俺はバルクホルン大尉に、ステルス型ネウロイと戦うスオムス最前線へ行くことを命じられたことを素直に話した
バルクホルン「……3日後……」
俺「ああ」
少しバルクホルン大尉は戸惑っていたが、直ぐにいつもの表情へと戻った
大尉にも俺が命じられた任務を話したこともあり、俺は今夜のミーティングで501のみんなに"隠し事"を話すことにした
バルクホルン「……その…任務が終わったら…501に戻ってくるのか…?」
俺「いや、こっちにはもう戻らない」
バルクホルン「…寂しくなるな……」
俺「こっちだって寂しいさ」
バルクホルン「…そうか…」
大尉は言い終えると、軍服をぽんぽんと叩き、邪魔したなという言葉を残して、俺の部屋を後にした
昼間、バルクホルン大尉に"隠し事"を告げたことをキッカケに、501全員に俺の任務を告げることにした
そして今、夜のミーティングが始まった
いつも通りに、明日の訓練内容などを告げられて簡単に終わろうとしていた
俺は終了間際に、ちょっといいかと口を挟んだ
みんなの前に立ち、バルクホルン大尉やエーリカに言ったように"隠し事"を伝えた
伝え終わると、宮藤軍曹を始め、さまざまな隊員から驚きの声が上がった
宮藤「お、俺さん! いくらなんでも急すぎます!!」
俺「そんな事言われてもなぁ…今更、どうにもならないし…」
シャーリー「なぁ、俺。 その任務はいつ下ったんだ?」
俺「2日前だよ」
シャーリー「2日前…それで3日後にはスオムス…か……」
俺「まぁ…そういうことだ」
最後に、明日からも今までどおりに接してくれと付け加えて、話を終りにした
501のみんながこんなにも心配してくれるとは思わなかったので、俺はとても嬉しかった
俺がこの基地を去るまで、残り3日間……悔いの残らないように過ごせればいいな…
最終更新:2011年07月04日 22:53