― 朝 ―
ジリリリリリ
俺「……ううん……もう…朝か…」
普段、早起きに慣れていない俺は、珍しく目覚まし時計をセットした
そのおかげで、スオムス行きの飛行機には間に合いそうだ
俺「…あれ…?」
いつもなら、俺の隣で寝ているはずのエーリカがいなかった
俺「…どこいったんだろ…」
気にはなったが、探している余裕は無い
今日は、この501の基地に別れを告げる日なのだから
まとめてあった荷物を持ち、俺は飛行機を待つため、滑走路へと向かった
― 格納庫 ―
俺「……ん?」
通り慣れた廊下を通って滑走路へ向かっていくと、その途中の格納庫で、俺は501の全員に出迎えられた
坂本「おっ! 来たか」
シャーリー「お~い、俺~」
俺「…あれ…? どうして…みんながここに…?」
ミーナ「そんなもの決まってるじゃない、俺さんの出発を見守る為よ」
俺「……あ、ありがと…」
思ってもいなかったことに、俺はただ呆然としていた
エイラ「俺! 行く途中で、コレ食べろヨ」
スオムス娘からは、ヒョイとサルミアッキの箱を渡された
俺「…あ…ありがとな、スオムス娘」
エイラ「ナンテコトナイッテ」
貰ったのはいいが、俺…あまりサルミアッキが好きじゃないんだ…ごめん、スオムス娘
サーニャ「俺さん、身体には気をつけて…」
ペリーヌ「お…お体に気をつけて… 」
俺「ありがとな、リトヴァク中尉、クロステルマン中尉」
リーネ「…俺さん…これ、芳佳ちゃんと一緒に作ったんです。 良かったら、機内で食べてください」
宮藤「ちょっと多めに作りすぎちゃったけど…」
2人が渡してくれたのは、一人では食べ切れなさそうな量のオニギリだった
俺「2人ともありがとう、これで朝食には困らなさそうだ」
シャーリー「俺! スオムスに行っても、お化けを怖がるなよぉ~?」ニヤニヤ
ルッキーニ「怖がるなよぉ~」ニヤニヤ
俺「俺が幽霊嫌いって事…まだ覚えてたのか……」
シャーリー「当然! 俺をからかうのは、面白いからな~」
俺「……はぁ…」
バルクホルン「俺医師、今まで世話になったな」
俺「こちらこそ、世話になったな。 あと、食いすぎには注意しろよ?」
バルクホルン「う、うるさい…////」
俺「…ハルトマン中尉…スオムスで逢おうぜ…」
エーリカ「…う、うん……」
坂本「俺医師、飛行機が来たぞ!」
俺「了解。 じゃ、またな」
俺は501のみんなに向けて、手を軽く振った
そして、着陸したJu-52の方へ歩き始めた
エーリカ「俺! ちょっと待って!!」
俺「ん?」
エーリカの大声で、俺は歩くのを一旦、止めた
俺の所に向かって、ととと、とエーリカが走ってきた
俺「おいおい、どうしたんだ?」
エーリカ「………」
エーリカは俯いたまま、何も喋ろうとはしなかった
俺「何か喋……」
喋りだそうとしないエーリカの肩をポンと叩こうとしたとき、エーリカは俺に勢い良く抱きついてきた
俺「…い、いきなり…どうした…?」
エーリカ「……俺……今…私のお願い…聞いてくれる…?」
俺「…お、おう…出来ることなら…別に…」
エーリカ「…じゃあ………キス……して…」
俺「な…な、なにっ!? み、みんなが見てるぞ!!」
エーリカ「…大丈夫…… だから…」
これは断れそうもないな、と思った俺は覚悟を決めた
俺「…いいんだな? みんなの目の前でも…」
エーリカ「……うん」
俺「…じゃ、いくぞ…」
エーリカの唇と俺の唇は軽く触れ合った
この唇をつたって、エーリカの愛情が伝わってきたような気がした
バルクホルン「な…! ////」
宮藤「え、えぇぇぇっ!?/////」
エイラ「あ、あああの二人は何してるんだヨ!?/////」
サーニャ「………////」
シャーリー「わぁお……///」
俺とエーリカの関係を知っていたヴィルケ中佐と、いまいち状況が分かっていない坂本少佐を除いた全員が、
顔を赤らめて、ただ呆然としていた
俺「じゃ、行ってくる…」
エーリカ「うん、すぐに俺の所に行くから…待っててね」
俺「うん、わかった」
俺はエーリカの笑顔を頭に焼き付けて、Ju-52のタラップを上った
そして、Ju-52は蒼い大空に向けて、飛び立っていった
坂本「…行っちゃったな…」
ミーナ「ええ…」
バルクホルン「ハ、ハハハ…ハルトマン!!//// さっき、俺医師と…///」
宮藤「ハルトマンさんは、俺さんと どんな関係なんですか!?/////」
エイラ「ま、前々から怪しいと思っていたケド… こんなに親密だったとはナ…///」
エーリカは、俺医師と交わしたキスの事について質問攻めにあった
だけど、エーリカは答えるどころか、質問を受け流した
シャーリー「なぁ、どうしてキスなんてしたんだよ?///」
エーリカ「ふっふー なんでもないよ~っと」
バルクホルン「お、おい!? どこへ行く!?」
サーニャ「…逃げちゃった…」
バルクホルン「……い、一体…どういう事なんだ…? ///」
― Ju-52機内 ―
機長「俺さん、お久しぶりです」
俺「あんたは…あの時の…!」
俺が501に来るときに乗ってきたJu-52の機長と、再び会った
その機長なんだが、俺を501へ輸送中にネウロイの攻撃で負傷してしまって、乗っていた俺が治療したという事があったのだ
機長「いやぁ~ あの時、応急処置されてなかったら、俺は死んでいたかもしれないですからね~」
「本当に感謝してます」
俺「いや、どうってことないさ。 そんな事より、今のスオムスはどうなってんだ?」
機長「今は、502と507が迎撃体制を整えてきたので、ひとまず膠着状態ってとこです」
「つい前までは、ウィッチの迎撃が皆無だったので、地上部隊は死闘だったみたいです」
俺「そうなのか…」
俺は話を聞きながら、宮藤軍曹とビショップ曹長から貰ったオニギリを食べ始めた
一人では食べきれないので、機長と副機長にも分けてあげた
機長「スオムスまで暫くかかりそうなので、お休みになったらどうですか?」
俺「お言葉に甘えることにするよ」
俺は身体を倒し、仮眠を取り始めた
― 一方 501では ―
エーリカ「…はぁ……」
バルクホルン「…どうした? 手が動いてないぞ?」
エーリカ「…もう…分かってるよ…」
シャーリー「…わたしも手伝ってあげようか?」
エーリカ「本当!? お願い!!」
バルクホルン「駄目だ!! ハルトマンを甘やかすな!!」
エーリカ「ちぇ~っ……」
エーリカは、箱いっぱいにあるジャカイモの皮をせっせと剥いていく
501の基地では、男女の必要以上の交流は禁止という規則がある
そして今日、エーリカと俺医師は恋人関係であるという事が隊全体にバレた
ミーナは前々から知っていたが、みんなにバレては仕方が無いという事で、罰を下した
バルクホルン「まったく…俺医師の様子が、スオムスへ行く一ヶ月前辺りから、おかしいと思っていたんだが…」
「まさか、こんな事だとは……」
シャーリー「ほんと、ほんと。 なぁ、ハルトマン、いつ頃から俺のこと好きになったんだ?」
エーリカ「んー 気づいたら、好きになってた、ってとこかな」
バルクホルン「なんかハッキリしないな…」
エーリカ「そんなもんじゃないの? 人を好きになるって」
シャーリー「な、なんか…ハルトマンは私たちよりも、大人って感じだな……」
エーリカ「私は大人になったのか~ じゃあ、トゥルーデは私よりも子供って事になるね!」
バルクホルン「なんでそうなる!!」
口を動かしつつ、手も動かすエーリカ
半分ほどのジャガイモは既に皮を剥き終えていた
シャーリー「なぁハルトマン、俺のどんな所が好きなんだ?」
エーリカ「んー 言わなくちゃだめ?」
シャーリー「ああ、ちょっと聞いてみたいなと思ってさ」
エーリカ「…分かったよ… えっとね…///」
バルクホルン「ん? ハルトマン、なんだか顔が赤くなってきてるぞ? 熱でもあるのか!?」
エーリカ「だ、大丈夫だよ… ///」
バルクホルン「む…そうか…」
シャーリー「わたし
初めてだな、ハルトマンの照れてるところを見るの」ニヤニヤ
バルクホルン「ん? ハルトマン、照れてるのか?」
エーリカ「別に、照れてないよ…////」
シャーリー「ま、それより早く聞かせてくれよ、俺の好きなところを」
エーリカ「えっとね… 俺の…優しいところ…かな…?」
シャーリー「なるほどね~ 確かに俺は、態度は冷たいけど、意外と優しいんだよな」
バルクホルン「…ま、まぁ…俺医師が優しいところは分かるが…」
話し始めてから、しばらく時間が経ち、ここでエーリカは、最後のジャガイモをひょいと取り上げて、皮を剥き始めた
バルクホルン「やっと、最後のジャガイモか…」
エーリカ「もう腕痛い…」
バルクホルン「それぐらい我慢だ!」
シャーリー「あのさ、ハルトマンは将来、俺と結婚したいな~とか思ってるのか? それとも、もう結婚の約束しちゃってたりして」
バルクホルン「そんな事あるわけが無いだろ…… それにリベリアン、今は戦時中なんだ。 いくらなんでも結婚までは考えて……」
エーリカ「うん、結婚したいね~ ていうか、もう結婚の約束したし」
バルクホルン「……え?」
シャーリー「……い、今…なんて……?」
エーリカ「だから、もう俺と結婚の約束しちゃった」
シャーリー「………」
バルクホルン「………」
シャーリー・バルクホルン「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」
エーリカ「そ、そんな驚かなくてもいいじゃん…」
シャーリー「お、驚かなくてもって……」
バルクホルン「驚くに決まってるだろうがぁぁぁっ!!」
エーリカ「え? なんで?」
バルクホルン「な、何でって…貴様は軍人であり、しかも戦時中なんだぞ!? 」
シャーリー「いやぁ…驚いたな…… 冗談で言ったつもりなんだけどなぁ…」
「ちなみに、結婚しようって言い出したのはどっちなんだ?」
エーリカ「俺だよ。 あの時の俺、顔真っ赤にして可愛かったな~」
シャーリー「なんか、その時の話聞いてみたいな~ いいか?」
エーリカ「うん、別にいいよ~」
バルクホルン「せ、戦時中に…け、け、けけけ結婚など…!!」
シャーリー「ほら、バルクホルンも落ち着いて、話を聞けよ」
エーリカは頬を赤く染めながら、二人に向けて、あの時のことを話し始めた
エーリカ「…まぁ、こんな感じかな」
シャーリー「へぇ~ なかなかロマンチックじゃないか~ なぁ、どう思う?バルクホルン」
バルクホルン「ま、まぁ……いいんじゃないか?」
シャーリー「相変わらず素っ気無いなぁ~ バルクホルンは結婚したいと思ったことはないのか?」
バルクホルン「ふん、考えたこともない。 私は、ネウロイをこの世界から消し去ることしか考えていない」
エーリカ「じゃぁ、もしネウロイがいなくなったら、どうするの?」
バルクホルン「…そ、そうだな……」
シャーリー「妹さんと一緒に暮らすって言うんだろ?」ニヤニヤ
バルクホルン「そ、そうだ!! それで何が悪い!!///」
シャーリー「いや、別にぃ~」ニヤニヤ
エーリカ「トゥルーデはクリスのことが大好きだからね~」
バルクホルン「も、もう私の事はいいだろっ! そ、そんな事より、リベリアンはどうなんだっ!?」
シャーリー「わ、わたしの事は…どうだっていいだろ!」
エーリカ「えぇ~!? ひとりだけ逃げるなんて、ズルイよ~」
バルクホルン「そうだぞ! ちょうどいい、お前の将来についての考えを聞かせてもらおう」
シャーリー「えぇぇ…」
エーリカ「ほらほら、聞かせてよ~」
シャーリー「わ、分かったって…」
とっくの前にジャガイモの皮は剥き終わっていたのだが、3人のガールズトークは終わらない
昼食の知らせに来た宮藤に呼ばれるまで、3人の話は続いた
最終更新:2011年07月29日 16:14