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幕間:「シャーリーと整備俺の語り合い」
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シャーリー「んっ……あん……」
整備俺「……はあ、そんな色っぽい声出さないでよシャーリーさん」
シャーリー「いいじゃないか。あ、そこら辺もうちょい強く頼むよ」
整備俺「分かりましたよ……。もう一度言っとくけど俺は機体の整備士であってね」
シャーリー「本体(ウィッチ)の整備士じゃない、だろ?何回言うんだ」
整備俺「はあ、頼むから誰も来ないでくれよぉ?」
シャーリー「こんな夜更けにハンガーに来る奴なんかいないってー。ほらほら手を動かせよー」
整備俺「深夜にウィッチに跨り腰を揉む整備士か……。これ隊長にでも見つかったら文字通り首が飛ぶよ……」
シャーリー「はは、そのスリルを楽しまなきゃ。……んあっ」
整備俺「それにしても、随分と凝ってるね、腰。運動したらちゃんと柔軟とかしなきゃ」
シャーリー「いやあ、ルッキーニの奴がさ。最近サッカーにハマったみたいで」
整備俺「ああ、ハンガーの壁に丸い汚れがついてる原因がわかったよ。ほら、そこら辺に」
シャーリー「あっちゃー。サッカーは外でしろって言ったんだけどなー」
整備俺「一応俺からも言っておこうかなあ。まあ効果があるかはわからないけど」
シャーリー「頼むよ。私のユニットならともかく、バルクホルンのユニットにぶつけて壊されたら、自室禁固じゃすまないだろうし」
整備俺「いやあ、世話のかかる子ですねえ」
シャーリー「まあなあ。でも、ルッキーニといると楽しくて仕方ないんだ。こんな明日死ぬともしれない世の中だろ?」
シャーリー「そういう事を考えるとさ、やっぱり怖くなって、無性に怖くて仕方なくって」
整備俺「わかるよ、特に俺達は軍人だから。死は隣室に潜んでいるようなものだしねえ」
シャーリー「でも、ルッキーニの笑顔は、そんな気持ちを吹き飛ばしてくれるんだ。」
シャーリー「もしルッキーニがいなかったら、私は今みたいに冗談を言ったりは出来なかったかもしれない」
俺「……」
シャーリー「私はきっと、ルッキーニに救われているんだ。んんっ……」
整備俺「……俺はさ、五年前までは民間の工場で働いてたんだ」
シャーリー「なんだ、お前もなんか語りたいのか?」
整備俺「俺だって、たまにはスポットライトを浴びたいのさ」
シャーリー「なんだそりゃ。まあいいや」
整備俺「で、ネウロイが攻めてくるということで、工場は閉鎖。ブリタニアに避難していた俺の親父から、お前もこっちに来て研究を手伝え、なんて言われてさ」
シャーリー「研究?」
整備俺「そう。俺の親父は魔導熱機関工学の研究者。魔法と工学のスペシャリスト」
整備俺「俺も君くらいの歳には実験を手伝わされてね、おかげで知識と技術はついたよ」
シャーリー「あー、なるほど。だから試作のユニットを弄れたのか」
整備俺「資料を読んだり技術部に連絡とったりしながら、なんとかね。話を戻すけど、俺はブリタニアに来いと言われて、だけどそれを断った」
整備俺「ブリタニアに行きたくなかった、どうしても残りたい理由があったんだ。まあ色々あってね」
シャーリー「……女だろ?」
整備俺「ああもう、女性は本当に鋭いなあ……。そう、ジョアンナさ」
整備俺「彼女は魔法糸を編んで魔方陣を作る天才だったんだ。ウィッチの衣服製作には必要不可欠な人材だったらしい」
シャーリー「凄いな、天才かー……」
整備俺「親父も実験機材を作る際に意見を聞いた事があるらしくて、知る人ぞ知るって感じだったよ」
整備俺「それで、彼女がロマーニャに残ると聞いて、俺は軍に入った。軍に入れば、少しでも彼女の近くにいられるんじゃないかと思ったんだ」
シャーリー「……ふーん」
整備俺「俺がジョアンナに軍に入ったと伝えた次の日、彼女は待ち合わせ場所に来なかった」
整備俺「その日以来、連絡も取れなくなって、部屋も訪ねたけど既に引っ越した後だった」
シャーリー「……」
整備俺「かなりショックだった。キツかったよ。俺がブリタニアに避難しなかった理由、軍に入った理由が一晩で無くなったわけだから」
整備俺「だけど軍は俺を逃がさなかった。俺はそこそこ優秀な整備士で、即戦力だったからね」
シャーリー「自慢かよー」
整備俺「いいじゃない、それが俺の唯一誇れる物なんだから」
整備俺「結局その後二、三年間俺はどうしようもない不安感に付き纏われながら戦闘機を整備してた」
整備俺「たまにちらっと、死ねばこの不安から解放されるのか、なんて考えるくらいには不安定だった」
シャーリー「よくわかんないけど、その、将来への不安とかそんな感じか?」
整備俺「そう。本当にこのまま軍で働いて大丈夫なのか、突然ネウロイに襲われて死んでしまうんじゃないか、とか」
整備俺「死ぬのが怖くて怯えてその解決策が自殺なんてねえ、笑い話にもならないよ」
シャーリー「……」
整備俺「そんなある日、何気なく読んだ雑誌に写真が載っていたんだ。リベリオンの、あるウィッチが笑っている写真だった」
整備俺「まるで澄み切った真夏の青空の下咲く大輪の花のような、とびっきりの笑顔でね」
シャーリー「雑誌の、写真……」
整備俺「その写真を見た瞬間、俺の心に火が灯るのを感じた。その少女は
最前線で戦っている」
整備俺「こんな素敵な笑顔が苦痛で歪むのは見たくない。この子だけじゃない、戦場へ向かう少女達に俺は何が出来るのか」
整備俺「決まってる、整備と修理だけだ。俺はその日のうちにストライカーユニットの整備班への転属を願った」
シャーリー「たしか、私が軍に入ったばかりのころ、何かの取材を受けた事があった……」
整備俺「……。それからしばらくは、そのウィッチの名前を耳にすることは無かった」
整備俺「だけどある出来事で彼女の名前は一躍有名になる。第501統合戦闘航空団の、ガリア解放だ」
シャーリー「整備俺……」
整備俺「そんな501が、今度はロマーニヤに基地を構えると聞いて俺はすぐに転属願を出した」
整備俺「腕のいい整備士を探していたらしく、俺の転属は許可された。そして、今こうしてこの基地にいる」
シャーリー「あっ、あの、さ……。それって……」
整備俺「シャーロット、俺は君の笑顔に救われたんだ。君がルッキーニ少尉の笑顔に救われたようにね」
シャーリー「~~~~!!」
整備俺「シャーリー、俺はずっと前から君が好きだったんだ。俺は君を……」
シャーリー「そんな、嘘、そんな事って……」
整備俺「……そろそろ見回りが来る時間だね。部屋に帰ろうか」
シャーリー「あっ。う、うん。わかった……。な、なあ、整備俺……」
整備俺「何?」
シャーリー「えっと、今の話って……」
整備俺「……今の話が?」
シャーリー「その、本当、なのか?」
整備俺「今の話が本当かどうか、か……」
整備俺「……ああ、嘘みたいだけど正真正銘作り話さ」
シャーリー「そ、そうか!えへへ、作り話かー……」
シャーリー「……ん?……作り話?」
整備俺「ははは、ごめんごめん。彼女にフラれたのは軍に入って機械弄りに夢中になってたからだし、ここに来たのは上からの命令さ」
シャーリー「……おい、整備俺君?」
整備俺「あ、ごめん待ってBARはマジで待ってセーフティ解除しないでごめんごめんごめんストップストップ!」
シャーリー「ふっざけんなあああああああああ!!!!!」
整備俺「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
意識が戻ったのは、明け方だった。思いっきりぶん殴られた後頭部は酷く腫れていた。
まあ、撃たれなかっただけましか。
身を起こし、昨夜のことを思い返す。
整備俺「……あの時、俺は何を言おうとした?」
俺は、君を……。
――心の底から、愛してる。
整備俺「馬鹿野郎め、俺」
もし告げていたら、もう止まれなかった。身体が彼女を求めてしまっていただろう。
整備俺「……決めただろ、もう」
最近、彼女はスピードが伸び悩んでいると言っていた。試しに魔法力を測定したら……。
整備俺「まさか、キスも駄目とはね……」
魔女は穢れ無き純粋な身でなくてはならない。キスが穢れとは本当にお堅いな、このルールを決めた誰かさんは。
整備俺「はあ、傷つけちゃったかなあ」
胸ポケットから手帳を取出し、一番後ろに挿んでいる雑誌の切り抜きを見る。
バイクに跨り、頬を染めて笑うシャーリー。今よりも顔がやや丸く、幼さが残る。
整備俺「嘘なら、なんで昔の雑誌に写真が載ったなんて知ってるんだ、なんてね」
その、俺にとっての御守りをまた手帳に挿む。立ち上がると、腰がバキバキと鳴った。
整備俺「どうしようかなあ、欲しがってたオイルでも買ってあげるか。機嫌直してくれるかなあ」
外から、坂本少佐の声が聞こえる。アイツは朝からしごかれているみたいだな。自分で決めた事とはいえ、大変そうだ。
整備俺「まったく。お互い、ウィッチに惚れると苦労するなあ、少年」
独り言を呟いて、痛む頭を擦りながら氷を貰いに医務室へ向かった。
さて、床で寝る俺に掛けられてたこの制服はいつ返せばいいのやら。
最終更新:2011年08月14日 03:01