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命の道標プロローグ

とある海岸沿いにある大きな屋敷


ザザー…ザザーン……

俺「今日も海は穏やか、扶桑は平和そのもの……この海の向こう側じゃまだネウロイとの戦いが続いているなんて信じられない位に扶桑の海は穏やかだな……」

のっし…のっし…

使い魔「本当平和ですねぇ……ご主人様、手紙が来ておりますよ」

俺「私に手紙だなんて珍しい事もあるね。兄さん達からかな?」

使い魔「違います。ご主人様にとっては大変懐かしい方からの手紙でしたよ」

俺「懐かしい人物か。誰だろうな……差出人は扶桑皇国海軍遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊所属、連合軍第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ戦闘指揮官 坂本美緒……なるほど美緒からとは確かに懐かしい」

使い魔「イマサラご主人様に何の用でしょうか……まさか余命いくばくもないご主人様をまた戦場へと駆り出そうとするおつもりじゃないでしょうね?坂本少佐ならご主人様の今の状況を知っているはずなのに!」

俺「さあどうだろうか……読んでみないとわからないな」

俺「なるほどなるほど……」

使い魔「ご主人様、手紙の内容はどうでしたか?まさか本当に戦場へ再び出ろと?」

俺「そのまさかだ。今のベネツィアの状況は知ってるだろ?アルダーウィッチーズがトラヤヌス作戦で壊滅状態になり使い物にならない今、ストライクウィッチーズだけが頼りだ。どうやら一人でも多くの戦力が欲しいみたいだな」

使い魔「だけど、ご主人様じゃなくても他のウィッチはいくらでも居ましょう」

俺「ネウロイとの戦闘経験がそれなりにあって手の空いているウィッチは数が少ないだろうから仕方ない。美緒も私だから頼みやすかったのだろうね」

使い魔「まさかご主人様はこの要請を受けるんですか?ご自分の体の事はよーくわかっているはずでしょう」

俺「確かに。けどね、少し思うところがあるんだよ……」

使い魔「思う所ですか?」

俺「宮藤芳佳。宮藤博士のご息女がストライクウィッチーズの一員として戦っている」

使い魔「宮藤博士のご息女がですか!?」

俺「宮藤博士が行方不明になる前にした約束覚えているだろ?もし、娘がウィッチとして空を飛ぶことになったら美緒と共に道標になって欲しいと」

使い魔「覚えていますけど……イマサラじゃありませんか?確か芳佳嬢はガリア解放のおりもストライクウィッチーズの一員として戦闘に参加していたはずです。もう道標など必要ないのでは?」

俺「イマサラではないよ。人はいつでも迷い人だ……こんな死にぞこないでも役に立つ事があるのなら、道標として人を導いていけるのならこの命、喜んで燃やし尽くそう」

俺「すまないがこの手紙を横須賀の海軍基地へ届けてそこで待っていてくれ。俺は少し行かないといけない場所が出来てしまったよ……言っておくがまた兵達を脅かすなよ?」

使い魔「脅かしているつもりはありませんがいつもライオン、ライオンと……ライオンじゃないのに失礼してしまいます」

俺「百獣の王・ライオンに見て貰えてよかったじゃないか」

使い魔「私はれっきとした東方神犬、チベタン・マスティフです!これでも誇りを持っているんですよ?」

俺「それは済まなかったね。頼んだよ」



宮藤診療所


俺「ごめんください、どなたかいませんか?」

清佳「ごめんなさい、午後の診療はまだ……」

俺「お久しぶりです、清佳さん」

清佳「俺君久しぶりね。連絡を寄越してくれればよかったのに……あなたの体の事で心配していたのよ?」

俺「すみません、色々ありまして……来て早々なんですが相談とお願いがあります」

清佳「何かしら?」

俺「前も聞いたと思うんですが再度確認したい事があります……私の体はもう清佳さん達の力でも治す事は出来ないんですよね?」

清佳「ごめんなさい、私達にもっと力があればどうにかできたかもしれないのに……」

俺「清佳さん達のせいじゃありません。もう一つは私の体、後どの位持ちますか」

清香「半年前に言った通りよ。今からなら後1年持つか持たないか……」

俺「ゆっくり療養しての寿命じゃありません。ネウロイとの戦闘を行った場合です」

清香「……よくて半年。後は俺君が力を使えば使うほど短くなっていくわ」

俺「……そうですか。清佳さん、お願いがあります。再度あの治療とお願いします」

清佳「俺君、たとえあの治療をしたとしても……寿命が延びる訳じゃないわよ?」

俺「分かっています。1分……いや、1秒でもこの命が長らえられればいいんです」

清佳「分かったわ……そこへ寝て頂戴」

俺「無理を言ってすみません……最後にやることができてどうしてもね」

清佳「ネウロイと再び戦うみたいね、俺君はもう十分戦ったはずでしょう?」

俺「今まで幾多のネウロイと戦ってきました、もう戦いに出なくたって誰も私を責める者はいないでしょう。けど今回の戦いはいわば宮藤博士との約束を果たすため……」

清佳「あの人との約束ですって?」

俺「私は以前宮藤博士とのした約束通り、残り少ない時間だけど宮藤芳佳の道標になろうと思っているんです」

清佳「芳佳の為に残りの時間を……」

俺「だから今は約束を果たすため、1分1秒でも生きる時間が欲しい」

清佳「俺君、終わりましたよ?気分はどうかしら」

俺「随分と楽になった気がします、急に押し掛けてすみませんでした」

清佳「いいのよ?そうだ、芳佳の所へ行くのなら今から書く手紙を芳佳へ届けて貰えないかしら」

俺「お安い御用です、ご息女にその手紙必ずお渡しします」

清佳「俺君、言わなくてもわかっていると思うけど……」

俺「もちろんです。わかっています」

清佳「……くれぐれも気を付けて」





俺「……見ていてください宮藤博士、今こそあなたとの約束を果たします。芳佳の道標として未来へと導きます。この命が燃え尽きる前に激しく燃やして、光すら射さない暗闇でも迷わないように」



横須賀扶桑海軍基地・司令室


司令「閣下はまだお越しにならないのか……」

将校「あの、使い魔様?閣下は何時頃お越しになるか聞いてはおりませんか?」

使い魔「私にここで待ってろとしか聞いていないです。私を待たせているから今日中には来るはずですよ?」

司令「緊張してきた、末弟といえ我々とは身分が違うお方だ。粗相を起こしてそのことがあのお方達の耳に入ったら我々の命がないと思え」

将校達「はいいっ!」

司令「坂本少佐も何という方に増援の打診を……」

使い魔「坂本少佐とご主人様は古くからの友人ですから仕方ありません」

司令「なんで閣下は坂本少佐などと友人でおられるのだ……」

使い魔「私に愚痴られても知りません。あっ、ご主人様の匂いだ。もう来ますよ?」

司令「お前ら配置につけぇ!」

将校達「は、はいっ」

司令「いいか?今からお越しになる方に何か粗相をしてみろ?出世コースはそこでおしまいだからな。帝の耳に入ってしまったら命の危険が危ないからな」

将校達「はいいっ!」


コンコンッ……


司令「どうぞ開いております」

俺「失礼するよ」

司令「これは閣下お待ちしておりました。まさか閣下自らこちらへ出向いてくださるとは思いもしませんでしたよ。連絡を頂ければこちらからお迎えに上がったのにいやはや」

俺「私の為にいちいち迎えを寄越す必要なんてないよ。少し寄るところもあったから用事を済ませるついででもあったからね。それよりも司令、わかっているよね?」

司令「勿論でございますよ閣下。扶桑を出た後は閣下ではなくて俺大佐とお呼びするようにすればよろしいのですね?」

俺「大佐も大げさだと思うんだ。大尉や少佐位でよかったと思うんだが?」

司令「本来でしたら閣下には海軍元帥、最低でも将軍としての肩書を付けて頂きたいところなのですよ?」

俺「そんな階級を付けられたらかえって怪しまれるだろう。視察ならともかく、最前線で戦うんだぞ?」

司令「ですから、大佐という事で書類は作っておきました、大尉や少佐ではお乗りになる空母の艦長以下の階級になってしまいまた混乱を招くかと思い……」

俺「しかしストライクウィッチーズの司令は中佐と聞く。その階級より高いと振る舞いにくくなってしまうよ……」

司令「申し訳ございません、でしたら中佐として書類を作っておくべきでしたな」

俺「過ぎた事はもういい。ストライクウィッチーズに関する資料や私のストライカーユニットは準備できているね?」

司令「はい、ストライカーユニットは空母へ既に搬送しておりますので乗艦後お確かめください。書類はこちらに……」

俺「急な事だったのに迅速に事を進めてくれて助かった」

司令「この程度の事なら構いはしませんよ、それよりも閣下は本当に最前線へ出るおつもりでしょうか。お体の方があまりよろしくないとお聞きしておりますが……」

俺「喋ったね?」

使い魔「暇だったのでおしゃべりしていたらついポロっと……」

俺「司令、私の体の事は心配しなくてもいい。自分の事は自分自身一番わかっているよ。大丈夫だから私は再び飛ぶ事に決めたんだ」

司令「閣下の仰せのままに……」

空母


俺「司令、私のストライカーは?

司令「閣下のストライカーユニットはこちらになります」

俺「これは……」

司令「宮藤博士の技術理論を導入したものと平行で開発していた、噴流式魔導エンジン搭載型震電です。本来ならば扶桑皇国軍・帝専用機として運用するはずでした」

俺「だからこのカラーリングか……」

司令「閣下が再び戦場へ赴く事を知るなり、閣下の姉君様が『私じゃなくて俺に使わせろ!』と仰られまして、ここに賜わった所存です」

俺「兄さんや姉さん達は少しお節介すぎる……こんな濃紺のカラーリングで紋まで入ったストライカーユニットなんて使っていたら私の正体がすぐにわかってしまうのではないか?」

司令「扶桑に造詣が深い者ならばわかるかもしれません。ですが大丈夫でしょう、めったに人の目の前に出るような代物ではありませんからな」

俺「不安だが仕方ない。勝手にリペイントするわけにもいかないから大切に使わせてもらうと後で姉さんに伝えておいてくれ」

司令「御意」

俺「それでは頼んだよ。私はロマーニャへ発つとしよう」

司令「閣下、お気をつけて」


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最終更新:2011年09月10日 00:12
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